バベシア原虫メロゾイトの赤血球遊出・滑走・侵入に関わるカルシウム

(様式1-3)
受理年月日
受理番号
帯広畜産大学原虫病研究センター共同研究報告書
平成27年
採択番号
26共同-13
原虫病研究センター
内共同研究担当教員
診断治療研究部門
研究部門
研究課題名
まさひと
麻田
正仁
かねこ
おさむ
やはた
かずひで
イーハブ
Mossaad
かわづ
河津
研 究 の 総 括 、 Yellow cameleon 発 現 バ ベ シ ア 原 虫 の 作
出 ,Ca 2+ ラ イ ブ イ メ ー ジ ン グ 実 験
長崎大学熱帯医学研究所・教授
長崎大学熱帯医学研究所・助教
・カルシウムイオノフォア投与実験
一英
モサード
長崎大学熱帯医学研究所・助教・
・マラリア原虫との比較研究
修
矢幡
所属部局等・職名・役割分担
名
あさだ
金子
研究期間
信一郎
態のライブイメージング解析
氏
研究分担者
河津
バベシア原虫メロゾイトの赤血球遊出・滑走・侵入に関わるカルシウムイオン動
(ふりがな)
研究代表者
5月27日
Ehab
しんいちろう
信一郎
帯 広 畜 産 大 学 原 虫 病 研 究 セ ン タ ー・岐 阜 大 学 大 学 院 連 合 獣
医学研究科博士課程
・ Ca 2+ イ メ ー ジ ン グ 実 験
帯広畜産大学原虫病研究センター
・ Ca 2+ イ メ ー ジ ン グ 実 験
平成26年
4月
1日
~
平成27年
3月31日
バ ベ シ ア 原 虫 は ア ピ コ ン プ レ ク サ 門 に 属 し 、ウ シ な ど に 感 染 し 家 畜 に 多 大 な
経済的損失を与える住血原虫である。マラリア原虫やトキソプラズマ原虫等、
同 門 の 原 虫 は 宿 主 細 胞 か ら の 脱 出 や 侵 入 に カ ル シ ウ ム イ オ ン [Ca 2+ ]を 利 用 し
て い る こ と が 知 ら れ て い る 。し か し な が ら 、バ ベ シ ア 原 虫 に お い て メ ロ ゾ イ ト
目的・趣旨
の 宿 主 赤 血 球 へ の 遊 出・滑 走・侵 入 に お け る [Ca 2+ ]の 役 割 は ほ と ん ど 明 ら か と
な っ て い な い 。本 研 究 で は 申 請 者 ら が 開 発 し た ウ シ の バ ベ シ ア 原 虫 B. bovis に
お け る 遺 伝 子 改 変 技 術 を 応 用 し 、バ ベ シ ア 原 虫 の 宿 主 赤 血 球 へ の 遊 出・滑 走 ・
侵 入 に お け る [Ca 2+ ]の 役 割 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て い る 。
B. bovis の in vitro 培 養 感 染 血 へ の カ ル シ ウ ム イ オ ノ フ ォ ア A23187 投 与
実 験 に よ り 、原 虫 寄 生 率 の 有 意 な 低 下 が 観 察 さ れ 、A23187 に よ る 原 虫 細 胞 質
[Ca 2+ ]の 一 過 性 の 上 昇 が B. bovis メ ロ ゾ イ ト の 赤 血 球 か ら の 遊 出 を 誘 導 し た こ
と が 示 唆 さ れ た 。本 実 験 は バ ベ シ ア 原 虫 メ ロ ゾ イ ト の 宿 主 赤 血 球 か ら の 遊 出 が
研究経過の
原 虫 細 胞 内 カ ル シ ウ ム イ オ ン 濃 度 [Ca 2+ ]依 存 性 で あ る こ と を 初 め て 見 出 し た
概要
知 見 で あ る 。さ ら に 、メ ロ ゾ イ ト 遊 出 時 の 細 胞 内 カ ル シ ウ ム イ オ ン [Ca 2+ ]の 動
態を明らかとするため、
[Ca 2 + ] イ ン デ ィ ケ ー タ ー タ ン パ ク 質 Yellow
cameleon-Nano (YCnano50)を 原 虫 細 胞 質 内 で 発 現 す る B. bovis を 作 出 し た 。
現 在 YCnano50 発 現 B. bovis を 用 い た 詳 細 な イ メ ー ジ ン グ 解 析 を 進 め て い る と
ころである。
(様式1-3)
受理年月日
研究成果の
概要
研究成果の
発表
受理番号
メ ロ ゾ イ ト の 遊 出 と カ ル シ ウ ム イ オ ン [Ca 2+ ] の 関 係 を 明 ら か と
す る た め B. bovis の in vitro 培 養 感 染 血 に カ ル シ ウ ム イ オ ノ フ ォ ア
A23187 を 投 与 し 、 投 与 後 10 分 ご と に 薄 層 塗 抹 標 本 を 作 製 し て 原 虫
寄 生 率( 赤 血 球 内 に 留 ま る メ ロ ゾ イ ト の 割 合 )を 算 定 し た 。そ の 結 果 ,
A23187 投 与 群 に お い て 投 与 10 分 後 に 寄 生 率 の 有 意 な 低 下 が 見 ら れ 、
投 与 20 分 後 、30 分 後 で は 有 意 な 寄 生 率 の 上 昇 が 観 察 さ れ た 。こ の こ
と か ら 、 A23187 に よ る 原 虫 細 胞 質 [Ca 2 + ]の 一 過 性 の 上 昇 が B. bovis
メロゾイトの赤血球からの遊出を誘導したことが示唆された。一方
で 、( 1 ) メ ロ ゾ イ ト 遊 出 を 誘 導 す る A23187 の 濃 度 が nMレ ベ ル と 他
の ア ピ コ ン プ レ ク サ 門 原 虫 で の そ れ( µMレ ベ ル )よ り 低 い( 2 )E-64
を始めとするプロテアーゼインヒビターを培養原虫に添加し培養し
てもメロゾイトの遊出阻害を意味する双梨子状原虫の増加は観察さ
れ な い 、と い っ た こ と か ら [Ca 2+ ]上 昇 以 降 か ら 原 虫 の 遊 出 ま で の 分 子
機構はマラリア原虫でのそれとは異なることが示唆された。
さ ら に 、 B. bovis メ ロ ゾ イ ト 細 胞 質 内 [Ca 2+ ]の 動 態 を 観 察 す る 目
的 で Yellow cameleon-Nano (YCnano50)を 発 現 す る B. bovis を 作 出 し
た 。 こ れ ま で に 作 製 し た B. bovis GFP発 現 用 プ ラ ス ミ ド の gfp 遺 伝 子
部 分 を YCnano50 に 置 換 し た 発 現 用 プ ラ ス ミ ド を 構 築 し た 。エ レ ク ト
ロポレーションによるプラスミドの原虫エピソームへの導入とその
後 の WR99210 に よ る 薬 剤 選 択 に よ り 、 YCnano50 の 発 現 を 示 す YFP
並 び に CFPの 蛍 光 が 観 察 さ れ る 原 虫 が 得 ら れ た 。 YCnano50 発 現 B.
bovis 培 養 感 染 血 に カ ル シ ウ ム イ オ ノ フ ォ ア A23187 を 投 与 し 、タ イ ム
ラ プ ス イ メ ー ジ ン グ を 行 っ た と こ ろ 、原 虫 細 胞 質 内 [Ca 2+ ]の 一 過 性 上
昇 を 示 す YFP/CFPシ グ ナ ル 比 率 の 一 過 性 上 昇 が 見 ら れ 、 そ の 後 感 染
赤血球膜の崩壊とそれに続くメロゾイトの遊出が観察された。
原著論文
[1] Ehab Mossaad , Masahito Asada , Daichi Nakatani, Noboru
Inoue, Naoaki Yokoyama, Osamu Kaneko , Shin-ichiro Kawazu :
Calcium ions are involved in egress of Babesia bovis merozoites
from bovine erythrocytes. J Vet Med Sci. 2015 Jan; 77(1):53-8.
学会発表
[1] 麻 田 正 仁 、 矢 幡 一 英 、 Hassan Hakimi、 横 山 直 明 、 五 十 嵐 郁 男 、
金 子 修 、 Carlos Suarez、 河 津 信 一 郎 : バ ベ シ ア 原 虫 に お け る 遺 伝 子
改変技術の開発
第 12 回 分 子 寄 生 虫 学 マ ラ リ ア 研 究 フ ォ ー ラ ム 合 同 大 会 、 2014 年 9
月、帯広
[2] Ehab Mossaad , Masahito Asada , Daichi Nakatani, Noboru
Inoue, Naoaki Yokoyama, Osamu Kaneko and Shin-ichiro Kawazu :
Calcium ions are involved in egress of Babesia bovis merozoites
from bovine erythrocytes.
第 60 回 日 本 寄 生 虫 学 会・日 本 衛 生 動 物 学 会 北 日 本 支 部 合 同 大 会 、2014
年 10 月 、 盛 岡