- 6 - UF-1000i(sysmex)アップグレードソフト導入後の細菌 形態情報判定

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UF-1000i(sysmex)アップグレードソフト導入後の細菌
形態情報判定一致率について
XE-5000 による体腔液測定値と目視法との比較
○佐々木 紀恵、安永 泰彰、鎌田 佳代子、
瀬川 光星、山本 岳雄
○木津 綾乃 1)、秋元 広之 1)、四釜 佳子 1)、
小島 佳也 1)、萱場 広之 2)
八戸赤十字病院 医療技術部 検査技術課
1)弘前大学医学部附属病院 検査部
2)弘前大学院医学研究科 臨床検査医学講座
【はじめに】
当検査課では、2013 年 12 月に全自動尿中有形成分分
析装置 UF-1000i(sysmex)に細菌形態フラッグとして桿
菌(Rods?)あるいは球菌/混合(Cocci/Mixed?)が表示され
るソフトウェアを導入した。これにより尿中の白血球数
10 個/µl かつ細菌数 100 個/µl 以上である場合にいずれか
のフラッグが表示され、尿中細菌の形態を予測出来る。
今回、
外来患者尿でフラッグが表示されたものを集計し、
培養結果と比較してその一致率を調べた。
【対象と方法】
2014 年 6 月から 2015 年 2 月までの外来患者尿でフラ
ッグが表示された 371 件を対象とした。対象を二分した
尿を用いてグラム染色と分離用培地で培養を行い、推定
される尿中細菌の種類とフラッグの表示結果を比較した。
【結果】
グラム染色や培養で細菌が検出されなかった 4 件を除
外し、対象は全 367 件とした。そのうち Rods?と表示さ
れたものは 165 件で、Cocci/Mixed?と表示されたものは
202 件であった。フラッグの表示と培養結果が一致した
件数とその割合は 251 件(68.39%)で、その内訳は Rods?
で 93 件(56.36%)、Cocci/Mixed?で 158 件(78.21%)であ
った。また Rods?と判定されたが培養で球菌しか検出さ
れなかった件数は全体のうち 6 件であった。
【考察】
Rods?と判定されたうち 4 割で桿菌と球菌が混合して
検出されたが、球菌では連鎖状配列の Enterococcus 属
や不規則配列の集合体を形成する Staphylococcus 属が
多く検出されており、その形態的特徴から桿菌と判定さ
れた可能性が考えられた。また、桿菌が大多数を占め球
菌がわずかしか含まれない検体においても桿菌と判定さ
れやすいことが考えられた。
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【はじめに】
穿刺液検査において細胞数・細胞分類などの情報は原
因疾患を診断する上で重要である。しかし、体腔液には
各種血液細胞の他に中皮細胞、組織球、上皮細胞等多様
な細胞が出現するため習熟の度合い等による技師間差が
生じる。特に夜間・休日に担当者以外が報告するのは困
難である。そこで今回、自動血球分析装置を用いた体腔
液測定について結果をまとめたので報告する。
【対象および検討項目】
対象:2014 年度に検査依頼のあった体腔液(胸水 39
件、腹水 6 件、その他 1 件、材料不明 7 件)計 53 件。
検討項目:総細胞数、単核球(リンパ球、単球、組織球)
、
多核球(好中球、好酸球、好塩基球)
、その他(中皮細胞、
上皮細胞類)数について Fuchs-Rosenthal 計算盤や塗沫
標本による目視法と XE-5000(シスメックス株式会社)
の体液測定モードによる測定値を比較検討した。
【結果】
総細胞数、単核球数、多核球数、その他の細胞数の相
関係数はそれぞれ r=0.999、0.982、0.982、0.874 であ
った。組織球、中皮細胞、悪性細胞が出現した症例およ
び細胞崩壊が著しい症例で乖離が生じた。また、
XE-5000 は目視法に比べ多核球を多く取る傾向が窺え
た。
【考察】
体液測定モードによる測定値と目視法との相関係数は
総細胞数、単核球、多核球すべてにおいて r>0.9 であり
良好な結果が得られたが一部乖離する例もあった。原因
として組織球、中皮細胞、悪性細胞は形態が多様なため
DIFF スキャッタグラムでWBC-BF とHF-BF のどちら
の領域にも出現する可能性があるためと思われる。この
結果から、中間報告として夜間・当直帯における体液測
定モードによる細胞数、細胞分画の測定は技師間差の解
消や不慣れな技師の心理的負担の減少に有用であると考
えられるが、最終報告には熟練した技師の確認が必要と
なる。
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ヒトパルボウイルス B19 感染症により無形成発作を生じ
た遺伝性球状赤血球症の一症例
臨床検査部門が加わった院内大規模
災害訓練について
○太田 絵美 1)、小笠原 脩 1)、中田 良子 1)、
櫛引 美穂子 1)、齋藤 紀先 2)、萱場 広之 2)、
○大井 惇矢、中里 早見、高畑 英智、鎌田 恵理子、
中村 尚子、松橋 優子、能登 温子、奥沢 悦子
弘前大学医学部附属病院 検査部 1)、
弘前大学大学院医学研究科臨床検査医学講座 2)
八戸市立市民病院 臨床検査科
【はじめに】ヒトパルボウイルス B19(HPV-B19)は特に
赤芽球前駆細胞に感染し、一連の赤血球産生停止を起こ
すことが知られている。この機序としては、赤血球系細
胞 P 式血液型の P 抗原がウイルスのレセプターとして働
くためと考えられている。このため遺伝性球状赤血球症
(hereditary spherocytosis HS)などの溶血性貧血患者
が HPV-B19 感染を合併すると、無形成発作(aplastic
crisis)とよばれる高度の急性貧血発作となる。今回
HPV-B19 感染症により aplastic crisis を生じた HS を経
験したので報告する。
【症例】4 歳、男児
【主訴】めまい、ふらつき、活気不良。他院で溶血性貧
血を指摘され当院紹介入院となった。
【家族歴】父 39 歳:17~18 歳頃貧血、脾腫について精査
され溶血性貧血の診断
【入院時検査所見】末梢血;WBC4960/μl(Neu47.0%、
Ly39.0%、Mo10.0%、Aty-Ly4.0%)
、Hb4.1g/dl、Plt27.2
万/μl 、MCV 74.0fl、MCH 27.3pg、MCHC 36.9%、Ret9.5‰、
LDH428 IU/l、T-bil 0.8mg/dl、D-bil 0.4mg/dl、ハプト
グロビン<1mg/dl、抗ヒトパルボウイルス B19 IgM 抗体
(+)、末梢血液像;球状赤血球、赤血球の大小不同、血
小板大小不同、巨大血小板あり。骨髄像;M/E 比 17.8:
1 と赤芽球系は高度に減少し、残存する前赤芽球には巨
大化がみられた。
【診断・経過】検査所見から HS に HPV-B19 が感染したこ
とにより aplastic crisis が引き起こされたと診断され
た。
入院初日、
翌日に輸血施行され以後経過観察となり、
3日後Ret15.2‰、
5日後Ret135.9‰と赤血球造血が回復、
9 日後退院し外来通院となった。今後は貧血の程度によ
り脾摘を検討する。
【結語】HS は持続的網赤血球増加が認められるが、突然
の減少、消失で HPV-B19 感染が発覚することが多い。骨
髄では赤芽球系のみの選択的、
単独の産生抑制が起こり、
急性期には形態学的特徴となる巨大前赤芽球を認めるた
め、末梢血、骨髄塗抹標本ともに注意深い観察が必要と
考えられる。
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【はじめに】
当院は全国 676 施設ある災害拠点病院の 1 施設である。
災害時、入院患者の安全確保はもちろん、外部からの多
数傷病者に対して適切な災害医療の提供、統制の取れた
災害対応が必要とされる。今回、院内における大規模災
害訓練に対して、検査技師業務として参加し、その必要
性と役割について検討したので報告する。
【訓練概要】
災害想定:平成 27 年 3 月 7 日土曜日(休日)午前
8 時 30 分三陸沖北部で M8.5 の地震発生
(八戸市震度 6 弱)したとの想定。
被害状況:電子カルテ停止、検査科システム(A&T)
稼働。これを受け、臨時検査受付窓口を展
開した。受付対応人数のべ 4 人(電話対応
1 人、検体及び検査結果搬送 3 人)
、検査業
務人数 6 人。緑、黄、赤にトリアージされ
た患者の検体検査および輸血検査業務を
実施した。
【検討項目】
上記想定内において、検体検査、輸血検査における
受付から結果報告書提出まで業務フローの検討を行っ
た。
【結果】
検体検査:予定依頼件数 9 件、結果報告可能であっ
た件数 5 件。
輸血検査:予定依頼件数 3 件、払出し可能であった件
数 1 件。
【考察】
電子カルテ停止での業務では以下のことが困難であ
った。①電子カルテ停止による検査科システムでのオ
ーダー入力、②依頼内容の不備、③人的資源の不足。
これらを改善するためには災害時の業務フローの確認
と POCT 等の人的介入を少なくしたフローの運用が
必要であると考えた。
【結語】
大規模災害においても、緊急検査の依頼はあり、検
査技師として必要とされる役割があることを再認識し
た。それと同時に、業務フローの改善と連絡体制の見
直しが次回の課題である。
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紫外顕微分光法を用いた甲状腺乳頭癌のがん検出法の
有用性についての検討
子宮内膜異型増殖症と類内膜腺癌 G1 の画像解析による
鑑別評価法の検討
○萩生田 美穂 1)、 吉岡 治彦 2)、 堀江 香代 2)、
佐藤 達資 3)、 渡邉 純 2)
○五ノ井 綾子 1)、吉岡 治彦 2)、岩谷 美歩 3)、
堀江 香代 2)、二神 真行 4)、横山 良仁 4)、渡邉 純 2)
1)弘前大学医学部保健学科 検査技術科学専攻
2)弘前大学大学院保健学研究科
医療生命科学領域病態解析科学分野
3)株式会社 クラーロ
1)弘前大学医学部保健学科 検査技術科学専攻
2)弘前大学大学院保健学研究科
医療生命科学領域病態解析科学分野
3)大館市立病院 臨床検査科
4)弘前大学大学院医学研究科 産科婦人科学講座
【背景・目的】
紫外線は可視光線よりも短い約 10~380 nm の波長を
指す。その最大吸収波長は、核酸で 260 nm 付近、タン
パク質で 280 nm 付近にあるため、これらの定量に重要
となる。本研究の目的は、放射線被ばくにより発生頻度
が高まる甲状腺乳頭癌に対して、紫外顕微分光法
(UV-MS: Ultraviolet Microscopic Spectroscopy)を用
いたがん検出法が有用であるかどうかを検討することで
ある。
【材料・方法】
甲状腺乳頭癌 10 症例の無染色組織標本を検討材料と
した。1 症例につき各 50 個の正常核と乳頭癌核を測定し
た。UV-MS は、紫外線透過画像の核領域を観察しなが
ら UV 透過率を測定した。260 nm、280 nm、300 nm、
320 nm の透過率(%)と、各々の波長における透過率を
260 nm 透過率で除した 3 つの補正値において、ロジス
ティック回帰分析により評価した。統計解析ソフトは
SPSS, エクセル統計 2012 を用いた。
【結果・考察】
各波長における紫外線透過率は、全症例で癌が正常よ
り有意に低く、各波長を吸収する物質が癌で増加してい
た。一方、260 nm 透過率で除した 3 つの補正値では、
全症例で癌が正常より有意に高かった。二項ロジスティ
ック回帰分析の結果、10 症例における判別的中率の平均
は 96.4±2.5%であった。そのうち 5 症例では、320 nm
透過率と補正値 280/260 の 2 項目を説明変数として構築
した式 (p<0.001)が、がん細胞判定確率 P(x)を求める
のに最適な回帰モデル式が得られた。
【結論】
UV-MS は、甲状腺乳頭癌を客観的かつ高い判別的中
率(96.4±2.5%)で判定することができ、がん検出法と
して有用であることが明らかとなった。
【目的】
子宮内膜異型増殖症(AH)と類内膜腺癌G1 では細胞像
や組織像が類似するため鑑別困難である場合が多い。目
的は、子宮内膜の核異型度を画像解析より数値化し、両
者の鑑別のための評価項目を検討することである。
【材料・方法】
弘前大学医学部附属病院 手術材料(2006~2013 年)
を用いた。症例は萎縮内膜(atro):6 例、増殖期(PP):6
例、分泌期(SP):6 例、AH:6 例、G1:8 例、G3:7
例の合計 39 例である。測定する核は 1 症例につき 100
個を任意で選択した。検討する核異型度は、核面積と核
大小不同、真円度(4π×面積/外周 2)とその症例間差、複
雑度(外周長 2/面積)とその症例間差、核配列極性の乱れ
とその症例間差、の 8 項目である。画像解析ソフトは
Photoshop、統計ソフトは SPSS を用い、症例間の分散
分析(kraskal-Wallis 検定)後、AH と G1 を多重比較
法(Bonferroni 法)により比較検討した。
【結果】
核異型度の 8 項目は、各グループ間(atro、PP、SP、
AH、G1、G3)で分散に差(p<0.01)があり検定多重性
の問題はなかった。
次にAHとG1の群間比較した結果、
G1 は AH に比べ、真円度(G1: 0.79±0.06, AH: 0.76±
0.03)
、極性の乱れ(G1: 23.8±5.4, AH: 16.2±4.8)の 2
項目で有意に高く、複雑度(G1: 16.2±2.8,AH: 16.7
±3.0)においては有意に低かった。しかし、核面積(G1:
、
核の大小不同
(G1: 12.6
45.5±7.1,
AH: 47.6±5.6μm2)
±2.7,AH: 14.2±2.9)
、および、真円度(G1: 0.08±0.03,
AH: 0.09±0.01)
・核極性の乱れ(G1: 23.8±5.9,AH:
16.8±5.8)
・複雑度(G1: 2.8±1.2,AH: 3.0±0.4)の症
例間差では有意差はなかった。
【結論】
画像解析よる核異型度の評価法は、症例間で各項目値
の分散に有意差を認め、G1 は AH に比べ真円度、極性
の乱れが高く、複雑度が低い、ことにより鑑別評価でき
ることが明らかとなった。
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非乳癌細胞集塊と乳癌細胞集塊の画像解析による
鑑別法の検討
胸水のセルブロック診断が有用であった肺腺癌の一例
○戸来 安那 1)、吉岡 治彦 2)、及川 颯太 3)、
石山 雅大 3)、田中 正則 3)、堀江 香代 2)、渡邉 純 2)
○成田 萌菜実 1)、竹谷 祥平 1)、三橋 季子 1)、
鎌田 義正 2)、三国谷 恵 3)、奥寺 光一 3)、
熊谷 直哉 4)、水木 惠美子 4)
1)弘前大学医学部保健学科 検査技術科学専攻
2)弘前大学大学院保健学研究科
医療生命科学領域病態解析科学分野
3)弘前市立病院 臨床検査科
1)弘前中央病院 臨床検査部
2)弘前中央病院 病理診断科
3)弘前中央病院 呼吸器内科
4)弘前大学医学部附属病院 病理部
【目的】
乳腺穿刺吸引標本(FNAC)では、良性の細胞集塊であ
っても不整な重積や細胞のほつれがみられることがあり、
悪性との鑑別が困難なことがある。そこで、非乳癌細胞
集塊、乳癌細胞集塊の鑑別法として、画像解析による形
態学的特徴、集塊内不整性を客観的に評価しその有用性
を検討した。
【材料・方法】
材料は、弘前市立病院 FNAC(2011~2013 年)の線
維腺種(FA)
:3 症例、浸潤性乳管癌(IDC)
:3 症例を
用いた。1 症例につき 10 個の集塊画像を撮影した。集塊
の検討項目は、(1)形態 5 項目(面積,外周,真円度,明
るさ平均,複雑度)
、(2)集塊内構造の不整を評価するフ
ラクタル値(核配列不整 index)の 2 項目([核配列]-[集
塊形]、[核配列]/[集塊形])である。画像解析ソフトは
Photoshop、Popimaging を、統計ソフトは SPSS、Excel
統計(Mulcel)を用い有意差検定、判別分析法により評
価した。
【結果】
IDC は FA と比較して、
形態項目では面積(IDC: 535.1
±470.3, FA: 1495.3±1104.5μm2)、外周(IDC: 158.5±
89.0, FA: 233.1±96μm)、明るさ平均(IDC: 51.0±17.0,
FA: 76.2±31.3)の 3 項目において有意に低かった。フラ
クタル値(配列不整 index)の 2 項目では、IDC は、[核
配列]-[集塊形] (IDC: 0.926±0.025, FA: 0.903±0.040)、
[核配列]/[集塊形] (IDC: 1.654±0.051, FA: 1.564±
0.051)のいずれも有意に高かった。判別分析の結果、FA、
IDC を判別する 2 次判別関数が得られ判別的中率は、形
態 5 項目では 81.7%、フラクタル値(核配列不整 index)
2 項目では 81.7%であった。これら全 7 項目では判別的
中率は 90.0%、感度 93.3%、特異度 86.7%となった。
【結論】
画像解析において非乳癌細胞集塊、乳癌細胞集塊は、
形態 5 項目と、フラクタル値(核配列不整 index)の 2
項目を用いることにより、客観的に鑑別できることが明
らかとなった。
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【はじめに】
細胞検体のセルブロックは、原発巣が不明な患者の病
態や生検が困難な病変の細胞診断に有用である。今回、
胸水のセルブロック診断により、臨床的に病変を確認す
る前に原発性肺腺癌と診断し得た一例を経験したので報
告する。
【症例】
47 才、男性。平成 24 年 5 月頃より咳嗽と呼吸苦を訴
え、8 月 21 日に前医から精査目的に当院へ紹介された。
初診時の胸部X線やCT画像では左側に大量の胸水と無気
肺があり、明らかな腫瘍性病変は指摘できなかった。
【方法と結果】
初診時に穿刺吸引した胸水から Ebis 1 セルブロック
作製キット(アジア器材, 東京) を用いてセルブロック
を作り、通常のホルマリン固定パラフィン包埋標本を作
製した。胸水の細胞診では、核クロマチンが増量した異
型細胞が小集塊状に見られ、
腺癌細胞陽性と診断された。
胸水のセルブロックでは癌細胞が腺管状に配列し、免疫
染色で CK7 や TTF-1、Napsin A に陽性であり、原発性肺
腺癌と診断された。
【臨床経過】
9月3日
(胸水排液後)
の PET-CT で、
左肺上葉に約 13mm
大の結節があり、FDG の集積から原発の病変と診断され
た。病変が末梢のために生検は行わず、肺腺癌に対する
6コースの化学療法などを実施した。治療後の経過は良
好で、仕事の関係で平成 26 年 3 月より東京へ転居。発症
後 2 年 7 ヶ月の現在、国立がんセンターで通院加療中で
ある。
【まとめ】
胸水のセルブロックは、組織構築の判定が比較的容易
で、多くの免疫染色が可能である。従って、肺癌の原発
か否かの鑑別も容易である。塗抹標本で確定診断が難し
い胸水については, セルブロックを併用するべきである。
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腹膜偽粘液腫を認めた 1 例
腎アミロイドーシスの精査中に判明した
低細胞性骨髄腫(IgA、λ型)の一例
○石井 昌子 1)、柴山 恵理佳 1)、上野 紀子 1)、
川村 多蔵 1)、冨浦一行 2)、村上圭吾 3)
○浅瀬石 絢子 1)、斎藤 綾子 1)、米沢 統子 1)、
畑中 司 1)、鎌田義正 2)、白戸研一 3)、熊谷直哉 4)、
水木惠美子 4)
1)十和田市立中央病院 臨床検査科
2)十和田市立中央病院 産婦人科
3)東北大学医学部 病理診断学講座
【はじめに】
腹膜偽粘液腫(pseudomyxoma peritonei:以下 PMP)
は粘液産生腫瘍細胞が腹膜に播種し長期にわたり増殖を
続け、腹腔内にきわめて粘調な粘液が貯留する腹膜癌腫
症である。100 万人に 1 人の割合で発生するとされ、極
めて稀な疾患である。好発年齢は 40~60 代、男女比は 1:
2~5 と女性に多いとされている。発生機序に関して詳細
は不明であるが、虫垂や卵巣の腫瘍細胞による粘液の産
生に伴って組織内圧が高まり、腫瘍細胞とともに粘液が
腹腔内に漏出することに起因するとされている。今回
我々は、PMP の症例を経験したので画像所見や摘出材料
の組織学的所見を中心に報告する。
【症例】
65 歳女性
〈現病歴〉平成 26 年 11 月頃より腹部膨満感、12 月に不
正性器出血出現し近医を受診した際、巨大卵巣腫瘍を指
摘され、当院産婦人科に紹介となった。
〈既往歴〉高血圧症、高脂血症、骨粗しょう症、40 歳代
卵巣嚢腫指摘あり。
〈健診歴〉平成 9 年から毎年十和田で健診。平成 26 年 6
月の健診では異常なし。
〈検査所見〉USG、MRI、CT などの所見から、悪性卵巣腫
瘍疑いとされる。血液検査では、CA125、CEA、CRP が高
値であった。
〈手術所見〉
平成 27 年 2 月 腹腔内は八つ頭状の腫瘍と
ゼリー状の濃い粘液が充満し PMP の状態を呈していた。
左卵巣は約 3kg。他虫垂、大網、腸間膜病変、腹腔内病
変を摘出した。
【まとめ】
PMP は術前に確定診断されることが困難な疾患であり、
本症例も開腹術後に PMP と診断された。本疾患では全身
化学療法がほとんど無効とされ、腹腔内に溜まった粘液
や転移した腹膜を取り除く外科的治療法が主流である。
診断においては、卵巣より虫垂原発が多いと報告されて
おり、虫垂を中心に詳細な検索が重要であると考えられ
る。
1)弘前中央病院 臨床検査部
2)弘前中央病院 病理診断科
3)弘前中央病院 腎臓内科
4)弘前大学医学部附属病院 病理部
【はじめに】
骨髄腫はしばしば腎障害をきたす。今回、ネフローゼ症
候群を呈した腎アミロイドーシスの精査中に確定診断がな
された IgA、λ型で、低細胞性の骨髄腫の一例を経験した
ので報告する。
【症例】
67 才、女性。前医にてうっ血性心不全にて加療中、平成
26 年 4 月頃より蛋白尿などのネフローゼ症候群を呈したた
め、8 月 11 日に精査目的に当院へ紹介入院。入院時検査で
腎不全が指摘され、8 月 15 日に実施された腎生検では病理
学的に AL 型の腎アミロイドーシスと診断された。病態を
解明するために 8 月 21 日に骨髄穿刺が行われた。
【骨髄検査所見】
低形成性骨髄で、三系の造血細胞に混じって形質細胞様
細胞の集簇が散見された。免疫染色でこれらの細胞は IgA
とλのみに陽性であった。骨髄血の塗抹標本の分析では、
polyploid 型や flaming 型の異常な形質細胞が約 6%同定さ
れた。低細胞性の症候性骨髄腫(IgA、λ型)と診断された。
【主な検査成績と臨床経過
免疫グロブリン定量では IgA が高値。血清並びに尿の免
疫電気泳動では IgA、λ型の M 蛋白が、表面マーカーの解
析では単クローン性の骨髄腫細胞が証明された。臨床的に
は利尿剤による対症的療法を実施し、患者の希望により前
医に転院した。
【まとめ】
本症例は、原発性アミロイドーシスなどの非腫瘍性より
は骨髄腫という腫瘍性の M 蛋白血症が考えられた。無症候
性骨髄腫の時期に M 蛋白に起因する AL 型の腎アミロイド
ーシスを合併し、低細胞性の症候性骨髄腫に進展したもの
と考えられた。骨髄血中の腫瘍細胞が少数であっても、異
常な形質細胞とその単クローン性を的確に診断することが
大切である。
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Shewanella algae による菌血症を繰り返した一症例
特徴的で珍しい性状のため同定が遅れた
Clostridium tertium 菌血症の一例
○金澤 雄大、佐藤 真喜、村山 久恵、中村 尚子、
鎌田 恵理子、堀内 弘子
○手代森 隆一、柴田 絵里子、古里 聡子、高野 康之、
目黒 冬樹
八戸市立市民病院 臨床検査科
青森県立中央病院 臨床検査・輸血部
【はじめに】
【はじめに】Clostridium tertium は、環境・腸管に存在する
Shewanella algae は自然界に広く分布する好気性グラ
ム陰性桿菌で、肝胆道系疾患や悪性腫瘍などの基礎疾患
を持つ患者に、しばしば重篤な感染症を起こすといわれ
ている。今回、われわれは S.algae による菌血症を繰り
返した症例を経験したので報告する。
【症例】
74歳男性。
2012年6月、
胆管癌多発肝転移と診断され、
同年 10 月に肝門部胆管切除術を施行。2014 年 10 月、化
学療法のため当院へ入院。入院 7 日目から発熱を認め、9
日目に 41℃台まで上昇したため化学療法中止。血液培養
(以下血培)2 セット採取し、S.algae が検出された。抗
菌薬投与で改善し 20 日目に退院となった。
しかし、2015 年 1 月に発熱と黄疸を認め当院 ER 受診。
急性胆管炎で入院となり、入院時の血培から再び
S.algae が検出された。
【細菌学的検査】
血培陽転時のグラム染色で、細長いグラム陰性桿菌を
検出。5%ヒツジ血液寒天培地(以下血寒)で 35℃、5%
CO2培養を実施。24 時間後にオキシダーゼ陽性、カタラ
ーゼ陽性の湿潤な褐色コロニーが発育し、48 時間後には
β溶血を呈した。TSI 寒天培地で H2S 産生を認めたこと
から、この時点で Shewanella 属が強く疑われた。
MicroScanWalkAway96plus(ベックマン・コールター)
NNFC1J パネルおよび RapID NF Plus(アムコ)では、と
もに Shewanella putrefaciens と同定された。しかし血
寒でβ溶血を呈し、SS 寒天培地に発育陽性、42℃で発育
陽性であったため S.algae を疑い、VITEC MS(ビオメリ
ュー)による質量分析を行ったところ S.algae と同定さ
れた。
【結語】
Shewanella 属は胆汁酸抵抗性であり、今回の症例では
胆嚢内部に定着した S.algae が日和見感染を起こし、菌
血症を繰り返したと思われる。特異的な生化学性状から
Shewanella 属を同定するのは難しくないが、多くの同定
機器やキットには S.algae のデータベースがないため、
S.putrefaciens と同定される。遺伝子解析や質量分析を
行えない施設では、両者の鑑別に注意が必要である。
連絡先:0178-72-5111(2430)
有芽胞菌である。本菌は耐気性が強く好気培養でも発育可能
な菌種である。稀に、特に免疫不全(造血器の悪性腫瘍など)
の宿主に菌血症を起こす菌として知られている。今回、その
菌の特徴的で珍しい性状により菌種同定が遅れた C.tertium
菌血症の一例を経験したので報告する。
【症例】28 歳、男性。急性骨髄性白血病。寛解導入中に 38℃
台の発熱が認められた。発熱時に血液培養が行われた。発熱
後、DRPM、TEIC、MCFG の抗菌薬投与により解熱し、臨
床的に改善がみられた。
【検査成績】培養 48 時間後に嫌気ボトルが、52 時間後に好気
ボトルが陽性となり、両ボトルのグラム染色で陰性桿菌が確
認された。サブカルチャーでは羊血液寒天、チョコレート寒
天培地に灰白色の 2mm の S 型集落が、ブルセラ HK(RS)
寒天培地では灰白色の 3mm の R 型集落が認められた。嫌気
ボトルからの菌液の採取時にガス産生を確認した。分離株も
グラム陰性桿菌に染色された。
生化学的性状検査はTSI+/+、
チトクロームオキシダーゼ試験(陰性)
、カタラーゼ試験(陰
性)
、マッコンキー寒天培地は発育が認められなかった。Ryu
の方法(陽性)を確認し、腸内細菌科を疑い VITEK-GN で同
定を試みたが、同定不能であった。そこで、嫌気・好気ボト
ルからの菌液と分離平板上の集落を再度グラム染色を実施
したところ、嫌気ボトルと RS 寒天培地から端在性の芽胞が
確認された。分離株のカタラーゼ試験が陰性であったことか
ら Clostridium 属を疑い VITEK-ANC により、C. tertium
(同定確率 95%)と同定された。岐阜大学生命科学総合研
究支援センター嫌気性菌研究分野に同定を依頼したところ、
MALDI-TOF MS により C. tertium と同定された。
【まとめ】C. tertium は嫌気性有芽胞菌に分類され、耐気性が
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強く、芽胞の発見が容易でないことなど珍しい性状を示し、
Bacillus spp.や Lactobacillus spp.と誤同定される可能性が
指摘されている。今回の株は Ryu の試験が陽性というグラ
ム陰性菌に特徴的な性状を示したことから、正確な菌種同定
を遅らせる結果となった。日常検査においては、本菌のよう
に属の特徴的な性状を示さない菌の存在を念頭に置いた正
確で迅速な対応が必要と思われた。また、本菌は
MALDI-TOF MS により、性状に関わらず迅速同定が可能
な菌種の一つであることが確認された。
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当院におけるバンコマイシン MIC 値 2µg/mL の
MRSA についての検討
感染防止対策に係る合同カンファレンスに参加して
-当院の院内感染対策の変化-
○村山 久恵、佐藤 真喜、中村 尚子、鎌田 恵理子、
金澤 雄大、堀内 弘子
○工藤 由衣 1)、堀内 弘子 2)
1)社会医療法人 博進会 南部病院
2)八戸市立市民病院 臨床検査科
八戸市立市民病院 臨床検査科
【はじめに】
バンコマイシン(VCM)はメチシリン耐性黄色ブドウ球
菌 (MRSA)感染症の治療薬の一つである。
最小発育阻止濃
度(MIC)値 2µg/mL の MRSA は VCM に感性であるが、
治療に
は高い血中濃度が必要となり、腎障害のリスクが上昇す
るため、他の治療薬使用が望まれる。しかし、測定機器
や方法によって MIC 値が変化することがあるため、異な
る測定方法による MIC 値の比較とその治療効果について
検討した。
【対象】
2013 年 4 月~2014 年 12 月の間に検出され、微量液体
希釈法で VCM の MIC 値 2µg/mL の MRSA のうち、
ディスク
拡散法で MIC 値を測定した 61 株
【方法】
微量液体希釈法による MIC 値測定は Micro Scan Walk
Away 96plus(ベックマン・コールター社)を用い、基準濁
度法で実施した。また、ディスク拡散法による MIC 値測
定は MIC テストストリップ(アリーアメディカル)を用い
た。
【結果】
対象の 61 株について、材料系統別検出株数は、呼吸器
系 34 株、皮膚軟部組織系 18 株、泌尿器系 5 株、血液系
3 株、骨髄系 1 株であった。ディスク拡散法における MIC
値は 0.5µg/mL が 9 株(14.8%)、 0.75µg/mL が 27 株
(44.3%) 、1µg/mL が 22 株(36.1%)、1.5µg/mL が 3 株
(4.9%)であった。起炎性については、起炎菌 11 例
(18.0%)、起炎性不明(以下不明)3 例(4.9%)、定着 47
例(77.0%)であった。起炎菌の割合が高い材料系統は皮
膚軟部組織系、血液系、骨髄系であった。また、起炎菌
と不明 14 例のうち、VCM 投与症例は 10 例で、治療効果
は軽快または治癒が 9 例、死亡が 1 例であった。
【考察】
測定方法により MIC 値に違いがあり、微量液体希釈法
よりもディスク拡散法のほうが MIC 値が低かった。起炎
菌と不明の症例における VCM の治療効果は良好な傾向と
なっており、微量液体希釈法による MIC 値の解釈に注意
が必要であると思われた。
【連絡先】0178-72-5111(内線 2430)
【はじめに】
当院では、感染防止対策加算の算定に伴い、八戸市立
市民病院による合同カンファレンスに参加し院内感染対
策の向上に取り組んできたのでその一部を報告する。
【取り組み】
当院は外科・内科・整形外科・脳神経科・眼科を有す
る病床数60床の一般病院である。
感染症治療は培養と経験的治療から始まるが、細菌検
査はグラム染色を含めて全面的に外注であったため結果
が判明時にはすでに治療の結論が出ている状況であった。
そこで、
平成 26 年度には八戸市立市民病院の細菌検査室
で研修を受け、グラム染色を院内実施し、医師からも好
評で初期治療に役立てている。さらに、カンファレンス
で検査技師の役割の重要性を再認識し、感受性薬剤の変
更や ESBL などの耐性菌の報告体制の整備などを行った。
抗菌薬の適正使用に関しては、カルバペネム系薬剤に
ついてのAUDでの評価により自院の使用状況を知るこ
とが出来たのは有意義であった。
また、キノロンの大腸菌に関する感受性率の低下の問題
は当院も含め他院においても同様であることが分かり、
耐性菌対策は地域で取り組むべき問題と捉え、その使用
には特に注意し使用量は減少傾向を示している。
【まとめ】
合同カンファレンスに参加しての最も大きな効果は自
分たちの立ち位置が見えるということと、連携施設と感
染対策というキーワードで繋がりカンファレンスの参加
メンバー同志顔の見える関係を築けたことで、病院間の
垣根なく相談し問題解決への道が出来たことである。ま
たそこで得られた情報を院内へ発信することで感染対策
に関心を高めることができている。感染症に対して地域
ぐるみで取り組むことが大切だと実感している。
【連絡先】0179‐34‐3131(内線 1143)
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バルサルバ洞動脈瘤破裂合併の心室中隔欠損症を器質と
した感染性心内膜炎の1例
術前の心エコーで見つかった
非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)
○横沢 ひとみ、石澤 亜紗子、佐藤 舞、出田 朗子、
下山 純子、三上 英子、兎内 謙始
○小山内 誠、工藤 里美、工藤 佐友里、川浪 志保、
八木澤 利架子、長利 留津子、菅原 由美、櫛引 基
青森県立中央病院 臨床検査・輸血部
つがる総合病院 臨床検査部
【はじめに】
バルサルバ洞動脈瘤(VSA)の多くは先天性であり、先
天性心疾患の約 0.6%と比較的稀で、多くは 20~40 歳ご
ろに破裂し、発見される。発生機序の共通性により心室
中隔欠損(VSD)の合併が多くみられる。今回、VSA・VSD
に感染性心内膜炎(IE)を合併した稀な1例を経験した
ので報告する。
【症例】
40 歳代、男性。
【既往歴】
生後間もなくVSDを指摘されていたが20年前から定期
受診していない。
【現病歴】
平成26 年1 月頃より原因不明の38~39 度台の発熱と発
熱時胸痛が持続。同年 5 月当院総合診療部を受診し、部
位を変えて採取した血液培養のいずれからも
Streptococcus mutans が検出された。IE が疑われ、循環
器科に紹介となった。
【検査所見】
初回と 2 回目に施行された経胸壁心臓超音波検査
(TTE)では、VSD 短絡血流のみを指摘したが、臨床症状
から IE を否定できず、続けて経食道超音波検査(TEE)
施行。TEE では VSD ははっきりせず、バルサルバ洞と右
室の交通を認め、同部位に疣贅の付着が疑われた。2 週
間後に再度施行された TTE では、大動脈弁直下付近より
吹く VSD 短絡血流、拡大したバルサルバ洞に付着する高
輝度エコー塊とその部位より右室に吹き付ける血流を認
めた。
【考察】
TEE や数回施行された TTE により2か所から吹く短絡
血流を指摘し得た。初回検査時の VSD 短絡血流は VSA 破
裂による短絡血流を描出していたと考えられ、病態の知
識の有無が結果に影響を与えた。
【まとめ】
う歯が原因で発症したと考えられた本症例の IE は、
抗
生剤による感染コントロールが良好であったため、パッ
チ閉鎖と直接縫合閉鎖の手術が施行された。
術中所見は、
高位欠損 Kirklin 分類Ⅰ型 VSD(欠損孔 4mm程度)
、
IE、
VSA 破裂で超音波検査と相違なかった。
【はじめに】
非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)は外傷、循環血液中
の免疫複合体、脈管炎、または凝固亢進状態に対する反
応として、無菌性の血小板やフィブリン血栓が心臓の弁
および隣接する心内膜に形成される病態である。感染性
心内膜炎とは異なり、NBTE における増殖症の塊は規模が
小さく、成長が遅く、また弁の縁や尖端に発生する。NBTE
は癌患者、
特に Trousseu 症候群を起こす膠様腺癌の患者
でみられる。今回術前の心エコー図検査にて偶然発見さ
れた NBTE を経験したので報告する。
【症例・経過】
男性 55 歳 2014 年 10 月頃、
嘔気および食欲低下認め、
近医受診。2015 年 1 月に精査を行い、S 状結腸癌および
多発性肝転移と診断された。
治療目的に当院紹介となり、
S 状結腸癌切除術の予定となった。術前に心エコー図検
査を実施したところ、大動脈弁尖に付着した可動性のあ
る mass を認めた。CRP1.12 と炎症反応が低く、感染性心
内膜炎の可能性は低いと判断し、大動脈弁の逸脱も考慮
した報告をした。その後循環器内科にコンサルテーショ
ンとなり、経食動エコーを実施して疣贅と診断された。
循環器内科で施行した 3 回の血液培養ではいずれも原因
菌が特定できず、NBTE が疑われる所見であった。血液デ
ータから DIC を起こしており、スクリーニングで施行し
た脳 MRI では新鮮脳梗塞所見も見つかったことから、
Trousseu 症候群と診断した。その後、ヘパリンの持続投
与を開始して、NBTE は縮小傾向を認めている。
【まとめ】
心エコー図検査において、非感染性心内膜炎か感染性
心内膜炎における疣贅の判断は困難である。癌患者にお
ける NBTE の発生頻度は血培陰性結果において 0.3~
9.3%と稀ではあるが、
心エコー図にて疣贅所見があった
場合には患者の病態を考慮して、感染性によるものなの
かを診断する必要性がある。
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当院における新生児聴覚スクリーニング検査の現状
当院における骨折患者の深部静脈血栓症陽性率と
D-dimer の相関
○小倉 歌織、大場 秋子、佐藤 啓子、斎藤 裕子、
能登温子、松橋 優子、中村 智代、高畑 英智、
坂野 あゆみ、蛯名 千恵子、松本 明子
○川浪 志保、工藤 里美、工藤 佐友里、小山内 誠、
八木澤 利架子、長利 留津子、菅原 由美
つがる総合病院 臨床検査部
八戸市立市民病院 臨床検査科
【はじめに】
難聴児を早期発見し、早期に療育を開始することによ
り難聴の影響を最小限にすることができる。新生児聴覚
スクリーニング検査はその早期発見を目的に行われる検
査であり、当院でも 2008 年 4 月より自動聴性脳幹反応
(AABR)を用いたスクリーニング検査を導入している。今
回新生児スクリーニング検査の必要性とその方法、当院
での導入後の現状と結果について述べたいと思う。
【対象と方法】
対象は 2008 年 4 月から 2015 年 2 月までに当院または
他院で生まれ、
検査に同意が得られた 6737 名の乳児であ
る。初めにスクリーニング検査として natus 社製 natus
algo 3i を用いて AABR を行い、AABR で要再検となった児
に精密検査として NEC 社製 SYNAX 2100 または RION 社製
誘発反応検査装置 Audera を用いて聴性脳幹反応(ABR)、
聴性定常反応(ASSR)を行った。
【結果】
対象 6737 名中、41 名(0.6%)が AABR にて要再検となっ
た。初回時に要再検であっても 2 回目でパスとなる児も
多かった。41 名のうち 34 名が ABR または ASSR で片側ま
たは両側の難聴あるいはその疑いとされ、1 名が他の病
院にて AABR でパスとなり、6 名はその後の追跡ができな
かった。早期療育が必要とされている両側中等度以上の
難聴児、言語習得への影響が疑われる児はいずれも精密
検査、リハビリ等のため他の専門病院へ紹介となった。
【考察】
追跡調査が可能だった 35 名の AABR 要再検の児のうち
34 名は精密検査でも難聴とされ、
AABR と精密検査でほぼ
一致する結果が得られた。AABR は睡眠状態、測定環境等
が検査結果に影響するため、スクリーニング検査の精度
を高めるため病棟との連携を強め、要再検の場合には複
数回 AABR を行うことが重要であると思われる。
【連絡先】0178-72-5111(内線 2410)
【はじめに】
2次線溶系の代謝産物である D-dimer は血栓症リスクの
高い骨折患者の深部静脈血栓症(以下 DVT)のスクリー
ニングとして有用されている。当院においても DVT スク
リーニングに有用しているが、D-dimer 値と下肢静脈エ
コーの陽性率が相関しているのか検討した。
【対象】
下肢骨折患者の入院時の D-dimer が陽性で、下肢静脈
エコーによって DVT の有無を判定した 75 症例。また、こ
のうち術後 1 日目、3 日目、7 日目に D-dimer を測定し、
術後 1 日目のデータから D-dimer が再上昇し、下肢静脈
エコーによってDVTの有無を判定した21症例を対象とし
た。
【結果】
75 症例中 13 症例で DVT が認められ、下肢静脈エコー
の DVT 検出率は 17.3%であった。DVT が認められた 13
症例のうち D-dimer 値が 20μg/ml 以下では 1 症例、30
~40μg/ml では 2 症例、41~50μg/ml では 6 症例、50
~60μg/ml では 1 症例、61~70μg/ml では 1 症例、71
~100μg/ml では 1 症例、
100μg/ml 以上では 1 症例であ
った。また、術後に D-dimer が再上昇した 21 症例中 5
症例で DVT が認められ、下肢静脈エコーの DVT 検出率は
23.8%であった。有 DVT 群の D-dimer は平均 35.1μg/ml
上昇し、
非 DVT 群の D-dimer は平均 17.5μg/ml 上昇して
いた。
【考察】
結果より入院時の D-dimer 値の大きさと下肢静脈エコ
ーによる血栓陽性率に有意な相関は認めなかった。今回
の対象は血栓以外に D-dimer が上昇する要因があったた
め、入院時における D-dimer の値は DVT 診断の参考には
ならないと考える。また、非 DVT 群と有 DVT 群の D-dimer
上昇度を比較検討した結果、有 DVT 群の上昇度が高く、
下肢静脈エコーとの有意な相関が得られた。このことか
ら血栓以外に D-dimer が上昇する要因がある患者におい
ては、D-dimer 値の大きさではなく、上昇度を参考にす
べきであると考える。
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