都市キャニオンの日射環境の調整を目的とする指向性反射外壁の研究

科研費2012-2014 基盤研究(C) [課題番号24560722]
都市キャニオンの日射環境を調整を目的とす
る指向性反射外壁の研究
-再帰性日射反射体の実験的性能評価法-
SPECULAR SOLAR REFLECTORS AIMED AT INCREASING SOLAR REFLECTIVITY OF
BUILDING ENVELOPE
ーEXPERIMENTAL STUDY ON PERFORMANCE OF SOLAR DIRECTIONAL
REFLECTORー
大阪市立大学地域環境計画研究室
太田翔也, 西岡真稔
1. はじめに
近年,都市部においてヒートアイランド現象が顕著
 対策として建物表面の反射率を高める高反射率塗料などの技術が普及
 拡散反射が主体なため,反射の半分以上が吸収
~対策~
 都市内の建物壁面に指向性を有する反射体を設置
 入射する日射を天空方向へ反射
 入射方向と同方向に光を反射させる再帰性反射体の研究
建物の屋根面など
(天空へ反射)
直達日射
直達日射
建物の屋根面など
(天空へ反射)
都市キャニオン
(周辺の地物へ反射)
都市キャニオン
(天空へ反射)
Urban Engineering Regional Environmental Planning Lab.
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1. はじめに
再帰性反射体の反射特性の性能評価
 再帰性反射体:5~10[cm]程度の寸法を研究の対象
 市販の光度計では測定不可
→反射体の寸法に制限,再帰反射方向の測定が不可
既往研究(1)
 再帰性反射体の双方向反射率分布関数(BRDF)を測定できる装置の製作
 反射体の部分毎のBRDFの測定
 測定できる範囲に制限
本研究の目的
 再帰性反射体のBRDFを測定できる装置の製作
 再帰性反射体全体の平均的BRDFの測定が可能
 測定装置に用いる測定器の精度を検証
 再帰性反射体のBRDFの測定
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2. 変角放射輝度計について
変角放射輝度計はBRDFの基本的測定方法に基づき製作
 BRDF(双方向反射率分布関数)
 式(1)で定義
 光源から試料への入射光の放射照度を測定
 試験体の反射光の放射輝度を受光器で測定
 照射角と受光角によって変わる材料固有の分布形状
 光源と受光器を動かし,照射角と受光角毎の反射率を測定
 BRDFの分布形状が測定
光源
式(1)
光
受光器
射
光
反
射
放射照度センサー
受光角
入
光
射
E:放射照度[W/m2]
L:放射輝度[W/m2sr]
照射角
入
L
BRDF =
E
試料
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2. 変角放射輝度計について
BRDFの基本的測定方法に基づき製作
 平行光源として,光源は太陽光(日射)
 光源と受光器の間に干渉が生じないようにハーフミラーを設置
遮光筒式輝度計
Y
ハーフミラー
試験体
照射方向
入射光(太陽光)
θi
θo
放射照度センサー
支持板
回転軸
回転軸
X
法線n
反射方向
100mm
Urban Engineering Regional Environmental Planning Lab.
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2. 変角放射輝度計について
遮光筒式輝度計の詳細
 視野角θを決定すれば,その範囲内に入射する光のみを測定する装置
 開口面と輝度計から開口面までの距離で視野角を2.5度,4.7度,6.8度
 θ’で入射する光も若干測定するため,予め,測定範囲θ’の確認
遮光筒式輝度計の測定値
 輝度計の測定には放射照度センサーを利用
 式(2)より放射輝度LRに変換
Y
50mm
25mm
110mm
(A) センサー
θ
(B)
θ'
放射照度
30mm
Z
斜線部:輝度計から覗く視野の範囲
1
1
LR = ⋅ E R ⋅ S S ⋅
SO
ω
式(2)
ER:放射照度センサーの測定値 [W/m2]
ω:輝度計の立体角 [sr]
SS:放射照度センサーの受感部の面積 [m2]
SO:輝度計の開口部の面積 [m2]
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2. 変角放射輝度計について
測定値からのBRDFの算出方法
 BRDFは式(1)で定義
 放射輝度L:遮光筒式輝度計より放射輝度を測定
→ハーフミラーの反射率ρMで補正
 放射照度E:放射照度センサーより放射照度を測定
→ハーフミラーの透過率τMで補正
 BRDFは式(5)より算出
遮光筒式輝度計
Y
L
BRDF =
E
L
L= R
ρM
式(1)
E = τ M E S cos θi
式(4)
BRDF =
LR
τ M ρM ES
ハーフミラー
試験体
式(3)
式(5)
入射光(太陽光)
放射照度センサー
支持板
回転軸
回転軸
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X
100mm
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3. 測定器の精度の確認
BRDFの算出に必要なハーフミラーの透過率と反射率の積ρMτMの算出
 反射率ρWが既知である反射材を用いて算出
 放射照度センサーと輝度計よりES,LRを測定し,式 (6)を用いて算出
 算出したρMτMは,視野角によらず一定
1 πLW
⋅
E S ρW
πLW
=
ρ M ρW
式(6)
τ M ρM =
EW
式(7)
遮光筒式輝度計
Y
ハーフミラー
白色拡散板
LW:白色拡散板測定時の放射輝度 [W/m2sr]
EW:式(7)を用いて算出した放射照度
ρW:白色拡散板の反射率 0.97 [-]
入射光(太陽光)
透過率と反射率の積
放射照度センサー
1.0
支持板
0.8
0.6
回転軸
回転軸
X
100mm
0.4
0.2
0.0
2.5
4.7
6.8
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3. 測定器の精度の確認
視野角は,視野角測定用の試料を製作し,本装置の測定値と分光光度計の
測定値との比較し検証
 試料の構成:白色の水彩用紙(反射材A),黒色紙(反射材B)
 反射材A,Bは拡散性が高く,反射率ρA,ρBが89.4%,4.0%
 反射材Aの面積SAを視野角θに
 S ρ + (S − S A )ρ B 
合わせて大きくするρSは比例して増大
ρS =  A A
 式(5)
S
 反射率ρSの増大が止まった点が面積S


θ’の範囲
πL
ρS = S
Y
式(6)
E
S
ハーフミラー
Y
視野角測定用の試料
反射材A
遮光筒式輝度計
θ
直径
ρS =
EW LS
⋅
⋅ ρW
E S LW
式(7)
反射材B
Z
X
500[mm]
斜線部:
輝度計から覗いた時の視野の面積
S:輝度計からみた視野の範囲[m2]
SA:反射材Aの面積[m2]
ρS:試料の平均反射率[%]
ρA:反射材Aの反射率[%]
ρB:反射材Bの反射率[%]
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3. 測定器の精度の確認
 各視野角の測定値は反射材Aの面積が増加つれて反射率ρSも増加
 反射材Aの面積が設計値で反射率ρSは分光光度計の測定値と一致
 θ’の範囲はほぼ設計値通りの範囲
設計値
反射材Aの直径
[度]
[mm]
[mm]
2.5
4.7
6.8
21.5
41.0
59.3
15.0
20.0
21.0
22.0
35.0
40.0
41.0
42.0
55.0
58.0
59.0
60.0
20
100
試料の平均反射率 [%]
視野角
15
21
22
35
21
22
視野角2.5度
40
41
42
視野角4.7度
55
58
59
60
視野角6.8度
80
60
40
20
0
15
20
35
40
41
42
55
58
59
60
反射材Aの直径 [mm]
輝度計の視野角
θ' の範囲
[度]
2.5
4.7
6.7
[度]
2.4~2.5
4.7~4.8
6.7~6.8
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4. 再帰性反射体について
再帰性反射体は複数の反射材を組み合わせて構成(2)
 南壁面への適用を考え反射面bを夏季の日射の照射に正対する角度に設置
 1個体あたりX:25×Y:50×Z:15[mm]の寸法
再帰性反射体の種類
 反射体A:反射面a~dをアルミ輝面で構成
 反射体ABG:反射面b~dをアルミ輝面,反射面aが黒色紙とガラスで構成
 反射体Aは,冬季については,反射光が周囲に散乱し障害光となる可能性
 反射体ABGであれば,冬季における障害光の低減となる可能性
反射面a
Z
Y
反射面c
X
71度
反射面b
19度
反射面d
反射体A
反射体ABG
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5. 変角放射輝度計の測定値
変角光度計(GCMS-4)のBRDFと比較検討
平板反射材の測定条件
 照射角:反射面における法線nと日射の照射光が成す角
 受光角:反射面における法線nと受光器が成す角
 照射角:0度 受光角:0~10度 1度間隔
 反射材はAlmiteと白色拡散板を測定
GCMS-4の測定条件
 照射角:30度 受光角:±75度 5度間隔
 BRDFは受光角30~40度までの測定値を0~10度までの測定値として表示
入射光
θi
反射光
θo
n
n
法線n方向
θi:照射角 [度]
反射材
反射材
θo:受光角 [度]
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5. 変角放射輝度計の測定値
【反射材Almite】
【白色拡散板】
本装置
本装置
GCMS-4
10.0
BRDF[1/sr]
BRDF[1/sr]
10.0
GCMS-4
1.0
1.0
0.1
0.1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
0
受光角 [度]
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
受光角 [度]
反射材Almite
 再帰反射方向でBRDF=3.0[1/sr]とピーク
 そこから離れるに連れてBRDFは減少し,受光角10度では1.3[1/sr]
白色拡散板
 どの角度においてもBRDF=0.30[1/sr]と一定の値
 白色拡散板のBRDFは1/π(0.31)[1/sr]になることが既知
 本装置はGCMS-4と同程度の性能で測定が可能
 平板反射材のBRDFを測定できた
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5. 変角放射輝度計の測定値
再帰性反射体の測定条件
 照射角:開口面における法線nと日射の照射光が成す角
 受光角:開口面における法線nと受光器が成す角
 照射角:71,30度 受光角:66~76,10~50度
 夏季・冬季の日射の照射方向を想定
 受光角は再帰反射方向から±5度は1度間隔,それ以外は5度間隔で測定
開口面
開口面
入射光
θi
反射光
θo
n
n
法線n方向
θi:照射角 [度]
θo:受光角 [度]
反射体
反射体
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5. 変角放射輝度計の測定値
【照射角:71度
受光角:66~76度】【照射角:30度
反射体ABG
反射体A
100.0
100.0
10.0
10.0
BRDF[1/sr]
BRDF[1/sr]
反射体A
受光角:10~50度】
反射体ABG
1.0
1.0
0.1
0.1
66
67
68
69
70
71
受光角[度]
72
73
74
反射体A
最高値:54.4[1/sr],14.1[1/sr]
反射体ABG
最高値:35.3[1/sr],1.0[1/sr]
75
76
10
15
20
25
30
35
40
45
50
受光角[度]
最低値:1.2[1/sr],0.1[1/sr]
最低値:3.7[1/sr],0.1[1/sr]
 照射角71度,30度の測定値は,それぞれ再帰反射方向でピークを示し,
そこから離れるに連れてBRDFは低下した
 反射体A,ABGのピークの絶対値については,照射角71度,30度ともに大きく
異なった
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5. 変角放射輝度計の測定値
【反射体A】
 照射角71度では,1回の反射で再帰反射方向へ照射光が反射
 照射角30度では,2回の反射で再帰反射方向へ照射光が反射
 反射率が低下しBRDFが小さくなったと考えられる
【反射体ABG】
 反射体Aと同様に反射率の低下が影響
 反射体Aと比べBRDFの低下が大きいのは,ガラスの反射特性の影響
 ガラスは,面に入射する光の角度によって反射量が大きく変化
 照射角30度では,黒色紙で吸収されたため,BRDFがより小さくなった
反射体A
反射面a
天空方向
反射面b
【照射角:71度】
反射体ABG
反射面a
天空方向
反射面b
【照射角:30度】
反射面a
天空方向
反射面a
反射面b
反射面b
ガラス面
ガラス面
【照射角:71度】
天空方向
【照射角:30度】
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6. まとめ
本研究のまとめ
 変角放射輝度計を製作し,再帰性反射体のBRDFを測定
 装置は,再帰反射方向から±20度の範囲でBRDFの測定が可能
 変角放射輝度計で反射率が既知である反射材のBRDFを測定したところ,
分布形状は一致し,また,絶対値もほぼ同等の値
 再帰性反射体のBRDFは,再帰反射方向でピークを示し,
そこから離れるに連れてBRDFが減少する分布形状
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