新規NF-κB活性阻害剤を用いた前立腺癌に対する放射線感受性増強の

財 団 法 人 前 立 腺 研 究 財 団 平 成 18 年 度 研 究 助 成
新 規 NF-κB 活 性 阻 害 剤 を 用 い た 前 立 腺 癌 に 対 す る 放 射 線 感 受 性 増 強
の検討
菊地栄次
1)
、小堺紀英
1)
、梅澤一夫
2)
、大家基嗣
1)
1)慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 泌 尿 器 科 、 2)慶 應 義 塾 大 学 理 工 学 部
【 目 的 】 前 立 腺 癌 お い て 放 射 線 照 射 に よ り NF-κB 活 性 が 上 昇 す る こ
と が 知 ら れ て い る 。 NF-κB 活 性 化 が 前 立 腺 癌 に 対 す る 放 射 線 治 療 の
限 界 と な っ て い る 。 DHMEQ( dehydroxymethylepoxyquinomicin) は
epoxyquinomicin C を 基 本 骨 格 と し た 新 規 NF-κB 活 性 阻 害 剤 で あ り 、
すでに前立腺癌を含めた各種癌細胞において細胞障害効果の有効性
が 報 告 さ れ て い る 。 今 回 、 DHMEQ を 用 い て 前 立 腺 癌 に 対 す る 放 射 線
感受性増強を検証することを目的とした。
【 方 法 】 前 立 腺 癌 細 胞 株 LNCaP、 PC-3 を 用 い て 種 々 の 濃 度 の DHMEQ
を加え 6 時間後、放射線照射を行った。細胞直接障害はトリパンブ
ル ー 細 胞 分 染 法 を 、 細 胞 周 期 は BrdU を 用 い た flow cytometry 解 析
を 行 い 、NF-κ B 活 性 は p65 に よ る DNA binding assay に て 測 定 し た 。
【結果】放射線照射により照射量依存性の細胞死が確認された。
DHMEQ 投 与 お よ び 放 射 線 照 射 併 用 群 は 、DHMEQ 単 独 投 与 (1.25μ g/ml)、
放 射 線 単 独 照 射 群 (2Gy)と 比 べ 細 胞 障 害 効 果 の 増 強 が 認 め ら れ た 。
LNCaP、 PC-3 そ れ ぞ れ に お い て 無 治 療 群 ( 25.1%、 33.1%)、 DHMEQ 単
独 群( 23.3% 、38.2%)、放 射 線 単 独 群( 27.6% 、42.2%)と 比 べ 、併
用 治 療 群( 43.8% 、57.6%)に お い て 明 ら か な G2/M arrest の 増 強 が
確 認 さ れ た 。放 射 線 照 射 に よ り 前 立 腺 癌 細 胞 株 で NF-κ B 活 性 化 が 確
認 さ れ た が DHMEQ は こ れ を 抑 制 し た 。
【 結 語 】 DHMEQ は 前 立 腺 癌 に お い て 放 射 線 照 射 に よ り 活 性 化 さ れ た
NF-κ B を 抑 制 し 、細 胞 障 害 効 果 の 増 強 を 起 こ す と 考 え ら れ た 。DHMEQ
および放射線照射併用療法は放射線抵抗性前立腺癌に対して有用で
あることが示唆された。