Hirosaki University Repository for Academic Resources Title Author(s) Development of perovskite symmetrical electrodes with enhanced coking resistance for solid oxide fuel cell (SOFC) Zhang, Peng Citation Issue Date URL 2015-09-30 http://hdl.handle.net/10129/5671 Rights Text version author http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/ 様式第8号(第18条,第36条関係) 学 位 論文 審 査結 果 の概 要 氏 名 学位論文審査委員氏名 論 文 題 目 ZHANG PENG(張 鵬) 主査 阿布 里提 副査 笹川 和彦 副査 官 国清 副査 古屋 泰 副査 佐藤 裕之 Development of perovskite symmetrical electrodes with enhanced coking resistance for solid oxide fuel cell(SOFC)(炭素析出の抑制機能を持つペロ ブスカイト酸化物型 SOFC 対称電極の創製) 審査結果の概要(2,000 字以内) 固体酸化物形燃料電池(SOFC)の高温作動及び高温製造プロセスは、構成材料の劣化進行と材料の選 択を著しく制限するため、その解決策の 1 つとしてアノード及びカソードの両方に適用する新規材料 の開発を挙げられる。また、多様な燃料を直接利用可能という SOFC の特徴を活かすためには、炭化 水素燃料供給時の炭素析出による燃料極(アノード)の劣化防止も重要課題である。本論文は、SOFC の両電極に適用しかつイオン・電子混合導電性を持つ上、高温のみならず低温においても優れた炭素 析出抑制性機能が期待できるペロブスカイト型酸化物対称電極の開発を行った研究成果をまとめたも のである。本論文は英語で書かれており全部で 8 つの章から構成されている。 第 1 章では、燃料電池研究開発の背景と SOFC の基本的な原理・特徴、セルの構成材料とその製造 方法、研究開発の現状と課題、本研究の目的及び実験測定システムについて概説している。 SOFC の炭素析出を抑制するために、まずイオン導電率や電極反応速度等の温度依存性を正しく理 解する必要があり、第 2 章では、SOFC アノードに最も一般的に使用されている数種類の電極材料 (Ni,Cu,Ce 等)を用いた発電実験を行い、水素及び炭化水素を燃料とした際にそれぞれの電極における 反応メカニズム及び炭素析出によるアノード劣化機構の解析と既存材料の課題について述べている。 第 3 章 で は 、 ペ ロ ブ ス カ イ ト 型 酸 化 物 Pr0.4Sr0.6Co0.19Fe0.76Mo0.05O3-σ (PSCFM) を 調 製 し 、 Ni-SDC/LSGM/PSCFM セルを用いた H2 燃料での発電試験の結果を述べている。その結果、PSCFM アノードの導電率は 600℃、700℃と 800℃でそれぞれ 236.7、212.7 と 160.2S/cm である上、過電圧 も 0.221、0.06 と 0.025Ω/cm2 と小さく、750℃と 800℃でセルの最大出力は 442 と 555W/cm2 であ ること、また、750℃において定電流(0.44 A/cm2)条件で 100 時間連続発電試験を行った結果常に安 定した出力が得られ、PSCFM は優れたアノード材料であることを明らかにしている。 第 4 章では、 異なる Mo ドープ量のペロブスカイト型酸化物 Pr0.4Sr0.6(Co0.2Fe0.8)1-xMoxO3-σ (PSCFMx, x = 0, 0.05, 0.1 and 0.2)を調整し、B サイト元素(Mo)量の組み合わせによって、PSCFM0.05 の酸化還 元雰囲気でもっとも高い化学的安定性を持つことと、導電性も比較的に高い等の特性を確認した上で、 対称電極型 SOFC セル(PSCFM/LSGM/PSCFM)を用いた H2 と CH4 燃料での発電試験の結果を述べ ている。その結果、850℃において、H2 と CH4 燃料でセルの最大出力は 493 と 160mW/cm2 である他、 CH4 燃料と定電流(0.217A/cm2)条件で 100 時間連続発電試験を行った結果、セル性能の低下は全く見 受けられず、EDS 分析の結果からも炭素成分検出できず、PSCFM は優れた抗炭素析出特性を有する ことを明らかにしている。 第 5 章では、炭化水素燃料を使用した場合の PSCFM アノードの過電圧を低減させるため、A サイ トイオン(Pr)が活性点であることを考慮して、ペロブスカイト型酸化物 PrxSr0.6Co0.2Fe0.7Nb0.1O3- σ (PxSCFN, x = 0.36, 0.38, 0.40, 0.42 と 0.44)を調製し、A サイトイ元素(Pr)量の PSCFM 物性(導電 率 、 酸 素 欠 損 、 熱 膨 張 係 数 な ど ) へ の 影 響 を 検 討 し た 上 で 、 対 称 電 極 型 SOFC セ ル (PSCFN/LSGM/PSCFN)の発電試験の結果を述べている。その結果、P0.42SCFN を対称電極に用いた SOFC セルの 900℃における最大出力は、H2 と CH4 燃料でそれぞれ 1130 と 670W/cm2 と大きく向上 し、これまでの対称電極文献値と比べても高い値を示している。 第 6 章では、第 5 章の成果に基づき、SOFC の対称電極として開発した PSCFN について、より詳 細な情報を得るために、P0.38SCFN、P0.40SCFN、P0.42SCFN、P0.44SCFN の四種類の対称電極材料を 物性から発電試験まで詳細に検討した結果を述べている。その結果、P0.42SCFN/LSGM/P0.42SCFN セ ルはもっとも高い性能を示し、850℃において CH4 燃料と定電流(0.43A/cm2)条件で 100 時間以上連 続発電試験でセル性能の低下は全く見受けられず、P0.42SCFN は炭素析出の抑制機能を持つ SOFC 対 称電極への適用が有望であることを示している。 第 7 章では、PSCFM0.05 と P0.42SCFN の炭素析出に対する抑制効果のメカニズムを解明するため、 SOFC のアノードとして通常使用されている Ni-YSZ を比較対象に用い、3 種類の材料を 30 分間 CH4 ガス中で処理を行った後 O2-TPD による分析を行った結果、Ni-YSZ 上に球状炭素粒子が多く形成し たことに対し、 PSCFM0.05 と P0.42SCFN 上にはカーボンナノチューブ状の形成が観察された他、 500℃ に お い て は O2 と 急 速 に 反 応 し 高 い 活 性 を 示 し て い る 。 ま た 、 こ の 材 料 で 作 成 し た PSCFM0.05/LSGM/PSCFM0.05 セルと P0.42SCFN/LSGM/P0.42SCFN セルについて、CH4 を燃料とした 発電試験で調べた結果、試験前後のオーム抵抗と過電圧に変化はなく、また、元素分析(XRD)の結果 も異物成分を検出されず、PSCFM0.05 と P0.42SCFN は、SOFC 対称電極材料として有望であることを 再確認している。 第 8 章では、これまでの研究結果をまとめるとともに、今後の展望を述べている。 以上を要約するに、本論文は、SOFC のアノード及びカソードに同一材料を用いた対称電極の開発 と炭素析出抑制技術の開発を同時に行い、製造条件の単純化によって化学的及び機械的適合性の課題 解決と共に、不純物(C)耐性と低温・低コスト化の課題も総合的解決するために行った研究成果をまと めたものである。本研究で得られた知見は、今後の SOFC の早期実用化における基礎から応用にわた る有益な情報を提供するもので、学術及び技術の発展に寄与するところが少なくない。 よって本論文は博士(工学) の学位論文として合格と認められる。 学位論文の基礎となる参考論文 Properties of A-site nonstoichiometry (Pr0.4)xSr0.6Co0.2Fe0.7Nb0.1O3-σ (0.9 ≤ x ≤ 1.1) as symmetrical electrode material for solid oxide fuel cells(固体酸化物型 燃料電池の対称電極用 A サイト欠陥型(Pr0.4)xSr0.6Co0.2Fe0.7Nb0.1O3-σ (0.9 ≤ x ≤ 1.1)材料の特性) 公表の方法 Journal of Power Sources, 248 巻,163-171 頁に掲載 公表の年月 2014 年 2 月 (2)題 名 Evaluation of performances of solid oxide fuel cells with symmetrical electrode material(同一材料を対称電極に用いた固体酸化物型燃料電池の特性評価) 公表の方法 Journal of Power Sources, 266 巻,241-249 頁に掲載 公表の年月 2014 年 11 月 (3)題 名 Mo doped Pr0.4Sr0.6Co0.2Fe0.8O3-σcathode material with high catalytic activity for intermediate-temperature solid oxide fuel cells(中温型固体酸化物型燃料 電池用高活性 Mo をドープした Pr0.4Sr0.6Co0.2Fe0.8O3-σカソードの創製) 公表の方法 Electrochimica Acta, 146 巻,591-597 頁に掲載 公表の年月 2014 年 11 月 (4)題 名 B-site Mo-doped perovskite Pr0.4Sr0.6(Co0.2Fe0.8)1-xMoxO3-σ (x = 0, 0.05, 0.1 and 0.2) as electrode for symmetrical solid oxide fuel cell(固体酸化物型燃料電池の 対称電極材料 Pr0.4Sr0.6(Co0.2Fe0.8)1-xMoxO3-σ(x = 0, 0.05, 0.1, 0.2)の B サイト(Mo) 置換効果) 公表の方法 Journal of Power Sources, 276 巻,347-356 頁に掲載 公表の年月 2015 年 2 月 (1)題 名
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