「工事監理契約と建築士法上の制約」(本文 p.17)補足説明 建築物の

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平成 27 年 6 月施行
改正建築士法の施行に伴う
「工事監理契約と建築士法上の制約」(本文 p.17)補足説明
建築物の設計又は工事監理の業務の契約について、改正前の建築士法においては、契約前
に行う重要事項説明(建築士法第 24 条の7)と、契約後に行う書面の交付(建築士法第 24
条の 8)が規定されていましたが、契約そのものについての規定はありませんでした。長年
の設計等の業界慣行では、口頭による契約(いわゆる口約束)のみで、契約書が交わされな
い場合もあり、業務を行う建築士事務所の責任が不明確となっていました。最高裁において
も、建築紛争において設計や工事監理についての契約書が存在しないケースが多く、契約書
がないことが紛争を生じやすく、また、長期化・複雑化しているとの指摘がされています。
このため、建築紛争の発生を未然に防止し、契約の当事者の利益を保護するために、延べ
面積が 300 ㎡を超える建築物の設計又は工事監理の業務について、平成 27 年 6 月 25 日
から書面による契約が義務付けられました。
【改正の内容】
①設計受託契約、工事監理受託契約の原則(建築士法第 22 条の 3 の 2)
建築物の設計又は工事監理の業務に関する契約の原則として、その契約の当事者は、
各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にその
契約を履行しなければならないことが規定されました。
この規定は契約における原則を示したものであり、「契約の当事者」である建築主と業
務を受託する建築士事務所の開設者の双方に適用されます。対象となる契約は、建築物の
規模等に関わらず設計又は工事監理の業務に関するすべての契約であり、再委託契約など
建築士事務所同士の契約も含まれます。
②延べ面積が 300 ㎡を超える建築物の設計、工事監理について書面による契約の義務化
(建築士法第 22 条の 3 の 3 第 1 項)
延べ面積が 300 ㎡を超える建築物の設計又は工事監理の業務に関する契約の当事者は、
契約の締結に際して、契約の内容や契約の履行に関する事項を書面に記載し、署名又は記
名押印して相互に交付しなければならないことになりました。
契約の内容等については、契約前の重要事項説明(建築士法第 24 条の7)と、契約後
の書面の交付(建築士法第 24 条の 8)を行うことになっていますが、契約内容等につい
て契約の当事者双方が合意していることをより明確にするため、このような重要事項説明
や書面の交付だけでなく、契約に際して相互に書面でとりかわすことになりました。
この義務は「契約の当事者」に課せられますので、建築主(委託者)と建築士事務所の
開設者の双方(建築士事務所同士の契約の場合は双方の建築士事務所の開設者)に書面に
よる契約の義務が課せられることになります。
また、工事請負契約において、設計・工事監理の内容を含み一括で契約する場合も本規
定の対象になり、法令に規定される事項を書面に記載しなければならないので注意が必要
です。
※参考文献1:平成 26 年度建築士法改正に係る説明会テキスト(第 2 版)
(発行:
(一社)新・建築士制度普及協会)
参考文献2:建築三会による建築士・建築士事務所のための改正建築士法講習会 第3部編 改正建築士法による設
計受託契約等のポイント(編集:建築設計業務等の契約内容検討会 発行:
(一社)日本建築士事務所
協会連合会)