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民法予習編
第 9 回目
レジュメ
・物権
物権とは、
物を支配する権利
物権とは、排他的に物を支配する権利
⇒支配権を妨害された場合、妨害することをやめるように請求できる
Ex.パソコンの返還請求
⇒所有権に基づく返還請求権
物権的請求権(物権に基づく請求権)
① 返還請求権
② 妨害排除請求権
③ 妨害予防請求権
②妨害排除請求権
Aの土地
(Bが勝手に登記)
Bが「物理的に」Aの排他的支配を妨害しているわけではないが、
登記があることによってAの排他的支配は妨害されている
⇒この場合、妨害排除請求権
③妨害予防請求権
Aの土地
・物権法定主義
民法 175 条「物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができな
い。
」
どのような物権が規定されているか?
民法第 2 編「物権」
第 1 章「総則」
第 2 章「占有権」
第 3 章「所有権」
第 9 章「質権」
第 10 章「抵当権」
なぜ物権法定主義?
・1 つの土地に対する多重支配から農民を解放する
・権利を明確化する → 取引の促進、取引の安全の保護
・物権法定主義の例外
Ex.河川の水についての専用利用権
・民法 85 条「この法律において「物」とは、有体物をいう。」
・民法 86 条 1 項「土地及びその定着物は、不動産とする。」
・民法 86 条 2 項「不動産以外の物は、すべて動産とする。」
・民法 87 条 1 項「物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物を
これに付属させたときは、その付属させた物を従物とする。」
⇒主物と従物についての規定 ex.刀と鞘
「常用に供するため」 = 効用を高めること、価値を高めること
「自己の所有に属するほかの物」 → 主物と従物の所有者は同一
である必要がある
・民法 87 条 2 項「従物は、主物の処分に従う。」
⇒AがBに刀を売ると、鞘について特に売買の対象として明示していなく
ても、AからBに売られたことになる
ただし、私的自治の原則
・民法 89 条「果実」について
天然果実 ex.くだもの
法定果実 ex.賃料
・民法 88 条 1 項「物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。」
2 項「物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。」
・民法 176 条「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。」
ex.抵当権の設定は、当事者の意思表示のみによって、効果が発生する
所有権の移転も、当事者の意思表示のみによって、効果が発生する
・意思主義(意思表示のみで足りる)
・形式主義(意思表示以外の形式を求める)
日本の民法は、意思主義を採用している
・
「対抗する」という概念の復習
A
C
対抗関係
B
B、Cは登記があれば、自分が所有権者であると主張できる
=「対抗できる」
・民法 177 条「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に
関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対
抗することができない。
」
A
登記手続きをC(司法書士)
に委託
B
A
C
CはBに登記を移転すること
を委託されたにも関わらず、自
分に登記を移転する
B
Bは登記がなくても、Cに対して自分が所有権者であると主張できる
← Cの行為はBの信頼を大きく損ねる行為
民法 1 条 2 項の信義則に反する行為
司法書士は依頼者による依頼を、誠実に遂行する義務がある
登記
A
C
背信的悪意者
B
Cが単なる悪意者ならば、登記を得ているCが勝つ
しかし、Cは信頼に違反する行為、背信的行為を行っている
したがって、Bは登記なくして、Cに権利主張できる
登記
A
B
C
① AB間の売買
② BC間の売買
③ Aによる取消
土地の所有権がAに戻ってくるのか、Cのもとにあるのか?
強迫取消(96 条 1 項) → 善意の第三者に対抗できる
⇒Aは強迫取消をCに主張することができる
登記
A
B
C
① AB間の売買
② Aによる取消
③ BC間の売買
最終的にAとCのいずれが所有権者となるか?
<Cの立場>
Cは登記を持つBと取引している
⇒Cを保護するべきなのでは?
⇓
登記があるからといって、権利があるとは限らない = 登記に公信力はない
⇒Cは保護されない
<Aの立場>
強迫取消により、所有権は自分のもとに戻ってくると考える
民法 121 条「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。」
=AB間の売買が遡及的に無効になる
⇓
Aが保護される?
<判例>
登記
A
B
C
所有権
(復帰的物権変動)
Bのもとに来た所有権が取消により、
「再び、Aのもとに戻っていく」と考える
= 復帰的物権変動
⇒Bを中心とした二重譲渡と考えることができる
⇒登記によって所有権者が決まる
・民法 94 条 2 項の類推適用
A
登記移転
売買
売買
B
C
(帰責性ある)
登記
D
(Dの信頼)
(虚偽の外観を作出)
(登記に公信力はないので、Dは権利取得できないのが原則)
Bに帰責性
94 条 2 項類推適用により、Dが保護される
虚偽の外観に対して、Dの信頼
⇒Dは、94 条 2 項の「善意の第三者」の類推適用として保護される
・Bの帰責性が少ない場合
売買
B
C
(少し帰責性ある) 仮登記
D
(Dの信頼)
(虚偽の外観を作出)
BはCに騙されたという事情はあるが、Cに仮登記させているので帰責性はある
ただ、さきほどの 94 条 2 項類推の場合よりは、Cから頼まれて仮登記しているの
で、帰責性は少ない
Cは仮登記を得る権限を与えられているが、その権限を逸脱して勝手に本登記
⇒表見代理における権限逸脱に似ている
民法 110 条「前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において第
三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについ
て準用する。」
⇒「正当な理由」とは善意無過失
判例においては、
「110 条の法意により」と表現されている
(レジュメここまで)