プリント回路基板のEMC設計 京都大学大学院工学研究科 松嶋徹 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島 EMC(電磁的両立性): 環境電磁工学 EMC とは? 許容できないような電磁妨害波を, 如何なるものに対しても与えず, かつ,その電磁環境において 満足に機能するための, 機器・装置またはシステムの能力 高 Immunity イミュニティ(耐性) 低 低 EMI 電磁妨害 EMS 電磁感受性 電磁妨害波によって引き起こされる 機器・装置またはシステムの性能劣化 電磁妨害波による素子・機器または システムの 性能劣化の起きやすさ EMC: Electromagnetic Compatibility(電磁的両立性) EMI: Electromagnetic Interference(電磁妨害(電磁妨害波)) EMS: Electromagnetic Susceptibility(電磁感受性) 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島 寄生インダクタンスによる電位差の発生 Δ v (t)=L d i (t) dt 回路図に無いインダクタンス 電源(VCC)の電圧は場所により異なる Lline 2 CB LVPKG in VDD out CB GIC CDC Lvia 1 G PCB PCBグラウンド LGPKG ICグラウンド or チップグラウンド システムグラウンド ΔV = |jωLI| = 2πfLI ≒ 6×fLI 1GHz = 109 Hz, 1nH = 10-9 H, 100 mA = 0.1 A のとき, ΔV = 0.2π V ≒ 0.6 V 問題になるインダクタンスの大きさは?: 数nH 実装時の寄生インピーダンスの評価(抽出)が必須 2015/7/20-23 シミュレーション 第41回アナログRF研究会@屋久島 入力インピーダンスとパワーインテグリティ PCB LSI電源系の設計における問題点 ・ パワーインテグリティ ・ 不要電磁波(EMI)放出 package Zinput Vpb INS 従来のLSI電源系の設計方針 Δ Vpb=ZinputINS 入力インピーダンス [W] 1.バイパスコンデンサを配置 2.デバイスからみたインプットインピーダンス(Zinput)を ターゲットインピーダンス(Ztarget)以下に下げる パワーインテグリティ向上 2015/7/20-23 周波数 [Hz] 第41回アナログRF研究会@屋久島 回路基板設計時に許容できる寄生結合 1 10 10pF 1000 100 1000 1pF 寄生容量による結合 (高周波ノイズのもれ) を避けたい. 1000 500nH 100pF 100nH 1000pF 100 Impedance [ohm] 100 100MHz (<10pF) (<10nH) 10nH 0.01F 1GHz (<1pF) (<1nH) 10GHz (<0.1pF) (<0.1nH) 10 10 1 Ω< Z < 100 Ω の範囲に入る 寄生インピーダンスは 無視できない 1nH 0.1F 1 1 0.1nH 1F 0.1 1 2015/7/20-23 10 100 Frequency [MHz] 1000 0.1 100MHz (<1nH) 3000 第41回アナログRF研究会@屋久島 1GHz (<0.1nH) 10GHz (<0.01nH) パッケージ, PCBの個別設計 • パッケージ, プリント回路基板 – それぞれ個別にシミュレーション・設計 • LSI ⇨ SPICEモデル、IBISモデル、ICEMモデルなど • パッケージ、PCB ⇨ LCRの等価回路、伝送線路 • パッケージのモデル化 – PCBはある標準状態でモデル化 • 十分広いグランドプレーンを仮定 – クリアランスホールが多数 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島 パッケージ-PCB間容量による電界放射の増加 • パッケージ-PCB間に反共振が発生 – パッケージ-PCB両グラウンド間の寄生容量 – グラウンド配線のインダクタンス Measured(15nH+15nH) Calculated (Lin=1nH) Calculated (Lin=2nH) • 遠方電界放射が増加 60 (2, 1) IC PCB Package Lvdi ZIC (2, 0) E [dBV/m] 50 IIC Cpkg 2-port LGDI:33nH LVDI:33nH Lgdi 40 (1, 0) (1, 1) (0, 1) 30 20 Module 10 Iant PCB I2 Ccm I1 Ic GND Power 0 30 100 200 300 400 500 Frequency [MHz] 3m 遠方電界放射 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島 600 Chip-package-board 統合設計の必要性 • パッケージのPCBへの実装時には・・・ 1. 2. PCB上の金属によるパッケージ上の寄生結合の変化 パッケージ-PCB間寄生容量の発生 パッケージ-PCB共振の発生 パッケージコモンモード共振の発生 ⇒ LSI出力信号のジッタ増加, パッケージグラウンドバウンス チップ、パッケージ、PCBの 個別設計・解析 チップ、パッケージ、PCB 統合設計が必要 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島 パッケージ-PCB共振(構造&等価回路) • PDNの入力インピーダンス – 高インピーダンス⇒電源品質の悪化 – 十分低いことが必要 (目標: ターゲットインピーダンス) • 本検討では – 1電源、1GNDの場合(簡単化のため) – チップ、パッケージ、PCBの特性を表わす 回路素子を縦続接続 Chip 側 Battery側 PDNの入力インピーダンス PDN: Power Delivery Network, Power Distribution Network 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島 パッケージ-PCB共振(シミュレーション) • 直列共振 – パッケージやPCBの 個別解析である程度予測可能 – 主に配線のLとバイパスC • 並列共振 – パッケージやPCBの 複合的な共振 – 個別解析では予測不可能 統合設計が必要 Impedance [W] 100 10 1 Total impedance Only IC/LSI Package C and L Total C and L 0.1 0.01 1 10 100 1000 Frequency [MHz] LSI側から見た入力インピーダンス 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島 階層間結合による寄生共振(シミュレーション) • パッケージ-PCB間寄生容量CCMの考慮の有無による違い – PDNの入力インピーダンスはほぼ同じ LSIの電源-グラウンド間電圧には差がない – パッケージ-PCBグラウンド間電圧は大きく異なる LSIおよびパッケージの電源-グラウンド電位が同相に変動している 100 Impedance [W] w/ CCM w/o CCM 10 1 0.1 0.01 1 10 100 1000 Frequency [MHz] PDNの入力インピーダンス 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島 階層間結合による寄生共振(シミュレーション) • パッケージ-PCB間寄生容量CCMの考慮の有無による違い – PDNの入力インピーダンスはほぼ同じ LSIの電源-グラウンド間電圧には差がない – パッケージ-PCBグラウンド間電圧は大きく異なる LSIおよびパッケージの電源-グラウンド電位が同相に変動している 100 Voltage [V] 10 w/ CCM w/o CCM Package common-mode resonance 1A 1 0.1 1A 0.01 1 10 100 1000 Frequency [MHz] パッケージ-PCBグラウンド間電圧 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島 パッケージ・PCBに漏れ出す電源電流の低減 • IC/LSIの動作のためには、IC電源グラウンドからみた 入力インピーダンスを低くすることが重要 チップ-パッケージ、パッケージ-PCBの寄生結合による反共振に注意 Impedance [W] 100 10 1 Total impedance Only IC/LSI Package C and L Total C and L 0.1 0.01 1 10 100 1000 Frequency [MHz] • 電源系を低インピーダンスにすることで、電流量が増加 PCBや電源ケーブルに流れる高周波電流が大きくなり、不要放射が増加 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島 入力インピーダンスと不要電磁波放射 PCBに大きなバイパスコンデンサを実装 回路に高周波電流が流れるため 不要電磁波放射の増加の要因 不要電磁波放射 電流低減のため デカップリングインダクタを実装 Zinputが大きくなり 入力インピーダンス [W] パワーインテグリティが悪くなる 2015/7/20-23 decoupling inductor 周波数 [Hz] 第41回アナログRF研究会@屋久島 電流低減率 • 外部に漏れ出す電流の評価指標 – バイパスコンデンサのESL, ESR – デカップリングインダクタのL 電流低減率 K IVi Ki ( ) Ibci 漏れ出す電流 動作電流 Zbc1 ZV1 Zbc1 IV1 – バイパスコンデンサの自己共振以降 K 1( ) 2015/7/20-23 Lbc1 LV1 Lbc1 第41回アナログRF研究会@屋久島 IBC1 デカップリングインダクタの値と電流低減率 バイパスコンデンサの 自己共振周波数(約500 MHz)以上の 周波数帯で 500 MHz Lbc1 より K 1( ) LV1 Lbc1 1 20 dB Lbc1 : Lv1 1 : 9 ならば | K 1 | 1 9 同様に Lbc1 : Lv1 1 : 100 ならば | K 1 | 40 dB Lbc1 : Lv1 1 : 1000 ならば | K | 60 dB 1 L→ 大 ⇛ |Zinput|の増加 入力インピーダンス [W] チップ内キャパシタの例 2015/7/20-23 0.1 nH 50 mΩ 1.0 nF 周波数 [Hz] 第41回アナログRF研究会@屋久島 デカップリングの目標値 • チップ・パッケージ・PCBで 作成・実装できるCやLには制限がある – 各部分に配置するバイパスコンデンサで 目標の周波数以上の電流を-20 dB 低減させることを目標とする バイパスコンデンサの位置 2015/7/20-23 閉じ込める周波数帯(-20 dB) チップ上 600 MHz以上 パッケージ上 100 MHz以上 PCB上(パッケージ側近) 1 MHz以上 PCB上(直流電源直前) 1 MHz以上 第41回アナログRF研究会@屋久島 PCB部分の電流低減率 • 各部分において、電流低減率 を満たすようにLCを設計 – 入力インピーダンスの増加を 許容値以下にしたうえで 漏れだす電流の低減を実現 • 階層間容量による共振 に注意する必要がある 2015/7/20-23 点線:目標値 実線:シミュレーション値 106 107 第41回アナログRF研究会@屋久島 108 109 まとめ • EMCとは – 他のシステムに影響を与えず(エミッションの低減) – 他のシステムから影響を受けない(イミュニティの向上) • プリント回路基板において、自身の動作を確保しつつ 高周波電磁雑音の外部への漏れ出しを抑制する • 数nH、数pFの寄生結合が回路設計に影響を与える – チップ・パッケージ・PCB複合した寄生共振 – 階層間(チップ-パッケージ、パッケージ-PCB)間の寄生結合 • プリント回路基板上の(電源系の)EMC設計 – 寄生結合・共振を調整し、入力インピーダンスを管理する – 電流低減率により、PCBやケーブルへの電源系高周波電流の 流れだしを抑制する 2015/7/20-23 第41回アナログRF研究会@屋久島
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