資料1「はじめに」 - 名古屋大学 物性理論研究室

基礎セミナー「物理学の不思議」資料 (1)
はじめに
名古屋大学大学院理学研究科物理学教室
上 羽 牧 夫1
要旨
最初は自己紹介と授業の進め方の確認をする.
本授業の目的およびねらい
1
科学を進める上で出発点になるのは,ものごとを「不思議」だと感じること
です.不思議だと思う気持ちが種となって,謎を解き明かす真摯な営みが科学
となります.このセミナーでは,物理学の歴史の中で解き明かされてきた「不
思議」を学びます.そこで身に付けた知識は,これから皆さんが物理学を体系
的に学習するときの鳥瞰図となるでしょう.またセミナーを進める過程で,議
論のやり方,調査の手段,発表の技術などを学んでください.
以上がシラバスに書いたことですが,もう少し具体的に言うなら,この授業
の目的は
1. 自分で,特定のテーマについて調べ,考え,発表することを体験する.ま
た,そのための「読む」,
「書く」,
「話す」能力と技術を身に付ける.
2. 物理を専門にする人は,これから勉強する物理学の内容を概観し,心の準
備をする.専門にしない人も,世界の現代的な理解の基礎となる考え方を
知る.
3. 現代の科学は技術的に高度なものが多く,そこに眼を奪われがちだが,学
んでいる内容の意味を考える姿勢を身に付ける.
1. は基礎セミナーという科目の本来の趣旨.2. の目的で素材として用意した
資料は,私が物理を学んできて,その基礎となる考えとしてぜひみんなに伝え
たいと思った事柄です.3. は専門分野にかかわらず,科学を進めるために一番
大切なことです.
1
Makio Uwaha.
E-mail:[email protected]
http://www.slab.phys.nagoya-u.ac.jp/uwaha/
1
図 1: 朝永振一郎 (ウィキペディアより)
h 私の好きな言葉 i
ふしぎだと思うこと これが科学の芽です.
よく観察してたしかめ そして考えること これが科学の茎です.
そうして最後になぞがとける.これが科学の花です.
朝永振一郎1
1
ともなが しんいちろう.1906 年 3 月 31 日–1979 年 7 月 8 日 くりこみ理論の手法
を発明して量子電磁力学の発展に寄与した功績によってノーベル物理学賞を受賞した.
2
授業内容
次のような問題を解説したプリントにしたがって,現代物理学の最も基本的
な考え方を概観します.教材を補う研究テーマについて各自がレポートを発表
し,参加者で討論をします.この資料の内容は,高校物理 II でやることの内容
とそれほど変わらないと思いますが,その意味を深く考えようという立場で書
かれています.
• 絶対空間と絶対時間
• 途方もなく大きな数「偶然から必然へ」
• 自然の階層構造と超階層的な構造
• 量子の世界「世界は不連続」
• 量子の世界「世界は不確定」
• 量子の世界「似たもの同士は同じもの」
2
• 量子の世界「実在性の否定」
上の多くは,かなり高級な考え方で,これから具体的な物理学を一生懸命学
んではじめて理解できる概念です.ものによっては,いくら勉強しても理解で
きないものもあります (あなただけではなく,誰にも).こんなことはあまり考
えなくても試験に通って物理も使える,というようなテーマもあります.しか
し,物理学の醍醐味は,自然の根本的な仕組みを不思議だと感じて,そのなぞ
に挑戦することにあると私は思います.
成績評価の方法
3
成績はめんどうですが厳格につけることにします.出席 30%,分担課題の発
表 (とレポート)30%,司会 (とレポート)10%,日常の質問と議論への寄与 30%
(つまり全部出席しても,黙っていたらこの部分の点数は零点ということ).
具体的な進め方
4
次に書くのは当初計画であり,実際に進めてみてから必要に応じやり方を修
正します.
4.1
全体の進行
1. あらかじめ資料を授業のウェブページに掲載するので,参加者全員がそれ
を読んで,疑問点,自分の意見などを考えておく.
2. 一回の授業には原則として,司会者と発表者を割り当てる.
(a) 司会者は全体進行をつかさどり,議論を導く.
(b) 発表者は資料の内容を要約し,自分の言葉で解説する.さらに,そ
の範囲に関係した課題を研究し,その成果を発表する.また,発表
のあとに,討論のテーマを提起し,それについてみんなで討論する.
(c) 参加者はそれらに対し疑問点などを質問し討論する.
教員は時々茶々をいれ,随時,発表準備の相談にのる.
4.2
発表者のやること
1. 発表の際は,1) パワーポイントなどのスライドを使う,2) レジュメのプ
リントを用意する,3) 黒板 (白板?) をつかう,など必ず視覚に訴える要素
を加えること.
2. 発表の持ち時間は原則 30 分 (質問と討論の時間を除く) とする.
3
3. 発表の内容は,討論の成果も加え,次の日曜日までにレポートとして提出
する.パワーポイントなどのプレゼンテーションをした場合はそのファイ
ルも提出する.A4 版用紙 2 枚以内で電子ファイル2 を電子メールで提出す
ること.不可能な人は紙版を理学館 611 のポストに入れる3 .
4.3
司会者のやること
1. 全体の進行をつかさどり,討論が活発に進むよう工夫する.事前に何を議
論したらよいかを考えておく.質問や意見がないときは,自分で質問する
か指名する.
2. 授業,討論の概要を,次の日曜日までにレポートとして提出する.A4 版
用紙 1 枚程度で電子ファイル4 を電子メールで提出すること.不可能な人
は紙版を理学館 611 のポストに入れる5 .
4.4
その他の注意
1. 発表,司会予定者となった場合には欠席してはいけない.万一,止むを得
ず欠席する場合には,必ず事前に電子メールで連絡すること.正当な理由
なく欠席した場合には原則として単位を出さない.
2. 全員が皆出席であることを期待する.発表者,司会者でなくても遅刻,欠
席をしないこと.
3. 発表やレポートは自分の言葉と責任で表現すること.
4.5
授業のウェブページについて
アドレスは
http://www.slab.phys.nagoya-u.ac.jp/uwaha/kisosemi 12.html
ここに,資料と授業日誌,連絡事項がある.提出されたレポート,分担予定表,
写真,などは
「レポートなど (関係者のみアクセス可)」
のところにある.
login 名は「
」,
password は「
」
2
Pdf ファイルが望ましい.ファイル名は「姓-名-発表日付.pdf (例 uwaha-makio-110413.pdf)
などとする.
3
それも困難なときはメールで連絡した上で,789-2928 へファックス.
4
Pdf ファイルが望ましい.ファイル名は「姓-名-発表日付.pdf (例 uwaha-makio-110413.pdf)
などとする.
5
それも困難なときはメールで連絡した上で,789-2928 へファックス.
4
5
初回の進行予定
1. 自己紹介 (出身,好きなこと,得意なこと,大学で何をやりたいか,この
基礎セミナーを選んだ理由など).
2. 進め方の説明.
3. 学習環境や条件の調査,名簿の作成,写真撮影.
4. 分担の割り当て.
5