シラバス

(科目名) 数学基礎論史入門
(英 訳) Introduction to History of the Foundations of
Mathematics
(所 属 部 局)(職 名) (氏 名)
文学研究科
教授
林 晋
( 群 )A・B群
( 単 位 数 )2単位
( 開 講 期 )後期
(週コマ数)1コマ
(授業形態)講義
(対象回生)全回生
(対象学生)全学向
( 曜 時 限 )月5
(授業のテーマと目的)
数学基礎論は19世紀後半から1930年ころまでに隆盛を極めた、数学の安全な基礎付け
の方法を論じる学問であり、そのハイライトが1931年に発表されたK. ゲーデルの「
不完全性定理」である。この極めて近代ヨーロッパ的な学問には、哲学者 ラッセル、
フレーゲ、数学者 ヒルベルト、フォン・ノイマン、チューリング、など、20世紀を
代表する多くの知性が関わり、自然科学のみならず、人文・社会科学にも大きな影響
を与えた。この講義ではゲーデルにいたる数学基礎論発展史を、最新の科学史研究の
成果に基づいて概説する。また、それに基づき数学基礎論の思想史的意義について説
明する。
(授業計画と内容)
ゲーデル、不完全性定理は、ポストモダン思想系の人々が好んで使う用語であるが、
その実像を十分理解して使っているとは言いがたい。その一因は、最近まで、数学基
礎論の歴史が解明されていなかったことにある。本講義では、1990年代後半以後、目
覚しく進みつつある数学基礎論史研究の成果を基に、担当教員の最近のヒルベルト研
究の成果も織り交ぜて、数学基礎論の実像を概説し、その思想史的意味について論じ
る。科学史・思想史の講義であり、数学の講義ではないので注意して欲しい。
1.「数学基礎論」とは何か?
1.1.数学を基礎付けるということ
1.2.数学と哲学の関係
1.3.数を「作った」数学者たち
1.4.ラッセル:「数学再創造」と、その「原罪」
2.ヒルベルト
2.1.ヒルベルトという人
2.2.人工数学計画
3.ゲーデル
3.1.ゲーデルという人
3.2.不完全性定理:人工数学計画の「破綻」
4.不完全性定理と思想
4.1.ポストモダン思想とゲーデル
4.2.ゲーデルと不完全性定理の実像
4.3.ゲーデルの近代史観
5.数学と数学基礎論の現在
5.1.ブルバキ:「無基礎」という基礎
5.2.ギデンス社会学の視点から
数学基礎論史入門(2)へ続く↓↓↓
数学基礎論史入門(2)
(成績評価の方法)
レポート提出による。
(コメント)
教科書は岩波文庫の1冊として出版予定のゲーデルの著名な数学論文の訳と解説だが、
本講義では主に解説の歴史部分を講義する。本文の数学論文は読まないし数学的解説
も歴史を理解するための必要最低限しかしないので、理系的な講義を期待して受講す
ると失望するだろう。主に文系の学生をターゲットとした講義である。しかし、科学
の人文・社会科学的側面に興味を持つ理系の学生にも勧める。
(関連URL)
http://www.shayashi.jp
(履修要件)
なし
(教 科 書)
K. ゲーデル著、林晋・八杉満利子訳解説 『「不完全性定理」(仮題)』(岩波書店
より出版予定)
(参考書等)
未定