科学史 第八講

科学史 第八講
1. ニュートン主義
科学史 第八講
啓蒙主義
• ニュートンの科学体系:
自然の中から理性的に法を見出す.
→のちのイギリスとフランスに異なる影響
を残す.
ニュートンの力学は1720年代までは一般
には受け入れられなかった.
イギリスでの影響
フランスでの影響
• ニュートンの思想が理神論(宗教を理性の
光の下で捉える)に大きな影響
• ニュートン主義的世界観が名誉革命のあ
と,イギリス国教会の広教会派の政治的
議論に用いられる.
→この政治的動機から,広教会派がニュー
トン科学そのものを称揚.
• 理性に根ざし,神を排除する方向へ向かう.
• フランスで初めてニュートンの力学の立場
の『天体形状論』(1732,モーペルテュイ)
が発表.
• ニュートン主義をフランスで熱烈に推進し
たのはヴォルテール.
• 数学的科学が発展→力学原理の一般化
ヴォルテール(1694-1778)
ヴォルテール以降
• パリを追放されてイギリスに亡命.そのと
きニュートンの力学に触れる.
『哲学書簡』(1734)の内容:
• 自然科学的知識の最高の具象化として
ニュートンの力学の賞賛
• フランスの旧体制への批判
• フランスのフィロゾーフたち:理性によって
過去の過ちを正せると考える
→理性に根ざす新しい知識を無学な一般
民衆に「啓蒙」することで,世の中の変革を
意図する.理性(科学)が信仰(宗教)に優
先
• 科学の目的:人間の幸福,社会の進歩
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百科全書
ディドロとダランベール
• ディドロ,ダランベール編
『百科全書ー学問・芸術・工芸の理性的に
考究された事典』(1751-1772):
啓蒙主義思潮のマニュフェスト.技術のた
めの科学.ベーコン主義.唯物論的で技術
的な,現代に近い科学観.
• ただし,宗教を無価値なものとみなすベー
コン主義(ベーコン自身ものと異なる)
• ディドロ:観察と実験に基づく帰納的方法
の意義を強調.数学的方法の限界を主張.
実用主義.
進歩主義
2.科学への関心の広がり
• 啓蒙主義者たち:人類の過去を,野蛮な時
代から輝かしい近代への発展の歴史とし
て描く.科学の拡大と理性の解放が未来
への絶え間ない「進歩」を推進する,と考え
る.→あらゆるところで同じ関心・知識・考
え方・同じ言葉
※コンドルセ『人間精神の進歩の史的展開
素描』(1794)
• プロイセン,スウェーデン,ロシアにアカデ
ミーの誕生
イギリスにおける大衆化
地方都市の科学協会
• 科学愛好家の存在:公開講座・家庭で実
験に興じるなど.
• チェンバース『百科事典』(1728),『エンサ
イクロピーディア・ブリタニカ』(1771初版)
など.
• 化学実験装置のセット販売
• 富裕層が余暇に科学を楽しむ
• 新興の産業資本家たちがスポンサーとなっ
て地方の科学協会:月光協会(バーミンガ
ム)など.→科学と技術の結合
• とくにスコットランドでは18世紀にイングラ
ンドより進んだ科学が大学で教えられる:
• ダランベール:ニュートン主義的(とくに科
学).数学的学問を基礎におく.
• 科学の大衆化
• 電気・植物学への関心の広まり
グラスゴー大学など・・・市民との関係,自
由な雰囲気,ライデン大学との交流など
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3. 科学を支えるもの
フランスにおける大衆化
• 革命(1789)前夜の10年間:科学ブームの
誕生.
• 科学の啓蒙団体:科学の公開講座.裕福
な上流層向け.
• 一方では中産階級の,世の中(体制)に対
する不満の捌け口
• 英国:国家単位ではなく,個人による寄付
で成立.
• フランス:科学アカデミーと技術者養成学
校(土木学校,王立工兵隊学校)を政府が
援助.→19世紀以降のフランス科学・工学
• プロイセン・ロシア・スウェーデンは王の保
護のもとで研究
科学コミュニケーションの進歩
• 大英博物館の設立(1753):ハンス・スロー
ンの蒐集が起源
• 学術雑誌の専門化
• 専門書誌作成の進展
→ 情報・コレクションなどの共有
専門用語
• 種々の理論のもとで様々な用語・命名
↓
混沌と混乱のもと
↓
科学における命名法の進展
• 特に生物学と化学(リンネ,ラヴォアジェ)
まとめ
• 啓蒙主義の広がりによって,科学が大衆
に普及した.
• ニュートンの科学はイギリスと大陸に異な
る影響を与えた.
• フランスではニュートンの科学的業績が数
学的に発展した.
• 科学の普及・発展を支える組織・概念の発
展があった.
参考文献
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広重徹『物理学史』
古川安『科学の社会史』
村上陽一郎『近代科学と聖俗革命』
マイケル・ハンター『イギリス科学革命』
その他
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