機能性食品研究会 食品の機能性表示制度に関する提言 ~国民の健康寿命の延伸と産業振興への貢献を目指して~ 2015 年 3 月 10 日(3.2) 日本バイオ産業人会議 (一財)バイオインダストリー協会機能性食品研究会 目次 Ⅰ.提言の背景 Ⅱ.提言 提言1; 日本再興戦略、健康・医療戦略、科学技術基本計画等の政府の戦略や計画に 食品の機能性表示制度の振興について記載すべきである。 提言2; 機能性表示制度の振興に関わる統合的な施策を推進するため、機能性データの 取得、データベース・分析法等整備、先行者利益保護、コミュニケーション推進、国 際貢献、人材育成等について、府省等が連携する仕組みを構築すべきである。 2-1; 「国民の健康寿命延伸」の観点から、健常人コホートや食品の機能性データ取得 を体系的かつ継続的に推進すべきである。 2-2; 産業振興の観点から、農林水産物の機能性研究を戦略的かつ継続的に推進すべ きである。 2-3; 機能性表示食品に関するデータベースを体系的に整備すべきである。 2-4; 機能性表示食品に関する分析法の整備を推進すべきである。 2-5; 機能性表示食品に関するデータを先行して取得する者に対して一定の利益保護を 検討すべきである。 2-6; 機能性表示食品に関するコミュニケーションを促進すべきである。 2-7; 機能性表示食品が国際貢献、特にアジアに貢献できる仕組みを構築すべきであ る。 2-8; 機能性表示食品の評価に関する人材育成を強化すべきである。 Ⅲ.日本バイオ産業人会議、バイオインダストリー協会機能性食品研究会の 取組み 本提言に関するお問合せ先 〒104-0032 東京都中央区八丁堀2-26-9 グランデビルディング8F 日本バイオ産業人会議 事務局 一般財団法人バイオインダストリー協会 機能性食品研究会事務局 坂元 雄二 TEL; (03) 5541-2731 FAX; (03) 5541-2737 メールアドレス;[email protected] JBA HP; http://www.jba.or.jp Ⅰ.提言の背景 ・本制度設立の趣旨や経緯※1を鑑み、食品の新たな機能性表示制度(以下本制度)と機能 性表示食品が国民の健康寿命の延伸と産業振興を推進するエンジンとなるべく、既に実施 されている施策と既存の組織間の連携により、本制度を推進し活用する戦略的な取組みに ついて提案したい。 ※1;本制度は日本再興戦略(2013 年 6 月 14 日) における「テーマ1;「国民の『健康寿命』の延伸」 における施策「食の有する健康増進機能の活用」 の中に記載され、「規制改革会議による規制改 革項目」として「食品の新たな機能性表示制度 に関する検討会」により本制度が設計された。 ・本制度は規制改革項目として位置付けられて いるため「企業等の責任において科学的根拠を 基に機能性を表示する」制度であり、本制度の 活用と責任は主に民間に委ねられている。 ・「日本再興戦略改訂 2014」(2014 年 6 月 24 日) において、機能性表示食品は「次世代ヘルスケ ア産業協議会」のように健康寿命延伸産業とし て位置付けられておらず、「公的保険外のサー ビス産業の活性化」の対象となるのか否かに関 する記載はなく、「健康・医療戦略 2014 年」 (2014 年 7 月 22 日)において、「健康・医療に関 する新産業の創出」の対象になるのか否かにつ いての記載がない。 ・科学技術イノベーション総合戦略 2014(2014 年 6 月 24 日)には、「地域資源を活用した新産業の 育成」の重点的取組として「競争力の源泉となる 高機能・高付加価値農林水産物の開発」が記載 されている。 ・本制度と関連すると思われる施策として、SIP「次世代農林水産業創造技術」や農林水産省「機能性を 持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」など農林水産業の振興に重点が置かれたプロジェクト研究、国 立健康・栄養研究所における研究や消費者庁による事前届出制度の実施に関する予算措置を除き、政 府として本制度の推進、特に健康寿命の延伸や医療費削減に関連する施策は少ない。 ・本制度の参考となったと米国の DSHEA(The Dietary Supplement Health and Education Act of 1994;栄 養補助食品健康教育法)では、NIH に Office of Dietary Supplements(以下 ODS)が設立され、National Center for Complementary and Alternative Medicine (以下 NCCAM)の CAM natural products プログラム と連携して、複数の業務を実施し DSHEA 制度を支援し、制度の振興に貢献しているのみならず、ビタミ ン D イニシアチブなど国民の健康と医療費削減を意図した戦略的な取組みも行われている。 ・本制度では、一定レベルのヒト試験の実施やシステマティックレビューが必要であるが、食品企業の過 半数を占める中小企業は資金的、技術的な課題がある一方、機能性に関するデータを先行的に取得し ようとする企業には投資に値する利益の確保や利益相反等への対応が課題となる。また、現行の特許・ 実用新案審査基準では、「公知の食品と区別できるような新たな用途を提供できない(新規性なし)」と判 断され、食品の機能性に関する特許は認められていない点も課題である。 一方で、企業の関心は低いものの、国民の健康寿命延伸、医療費削減や産業振興の観点では重要な 食品(素材)や農産物に対して、政府がどのように関わっていくかも検討されるべきである。 ・食品の機能性に関するデータベースは一部独法や財団から提供されているが、米国民間組織による Natural Medicines Comprehensive Database(以下 NMDB)等に比べて、国内における認知度、活用度は 十分とは言えず、また ODS が実施している The Scoop のような、国民の視点に立った情報提供サービス は本制度では想定されていない。 Ⅱ.提言 提言1;日本再興戦略、健康・医療戦略、科学技術基本計画等の政府の戦略 や計画に食品の機能性表示制度の振興について記載すべきである。 農産物を含む食品の機能性表示制度の普及は、公的保険外のヘルスケアサービスや その他の健康産業と同様に国民の健康寿命の延伸と産業振興に貢献しうる。本制度の振 興について、日本再興戦略、健康・医療戦略、第五期科学技術基本計画及び科学技術イノ ベーション総合戦略等の政府戦略に明示すべきである。 理由; 「国民の健康寿命の延伸」を推進において農産物を含む食品の役割が大きいことは自明 であり、農業・食品産業は約 90 兆円の国内生産額※2を有する重要な国内産業である。しか し、日本再興戦略や健康・医療戦略において、ヘルスヘアサービス等が明確に位置付けら れているのに比べ、規制改革項目として取り扱われた本制度の位置付けは不明確である※ 3 。機能性を表示する農産物や食品を取り扱おうとする事業者は、本制度が事業に大きな 影響を与えることを認識する一方、本制度を利用した商品を国民に提供することで、国民 の健康寿命の延伸や産業振興に貢献したいと願っている。本制度設立の趣旨や経緯を鑑 み、日本再興戦略、健康・医療戦略、第五期科学技術基本計画及び科学技術イノベーショ ン総合戦略等の重要な政府戦略の改訂時に、同制度の振興と官民や省庁の役割につい て明示すべきである。 ※2;農林水産省統計部 「平成 23 年度農業・食料関連産業の経済計算」 ※3;「日本再興戦略改訂 2014」において、「国民の健康寿命の延伸」の新たに講ずべき具体的施策「公的保 険外のサービス産業の活性化」の中に「健康・予防インセンティブの付与」、「ヘルスケア産業を担う民間事業 者等が創意工夫を発揮できる市場環境の整備」が記載されているが、これらの施策に本制度が関連するか の記載はない。一方、「健康・医療戦略 2014 年」(2014 年 7 月 22 日)では「健康・医療に関する新産業創出及 び国際展開の促進等に関する施策」において「健康・医療に関する新産業創出」に「次世代ヘルスケア産業協 議会」の活動とともに「地域ヘルスケア産業支援ファンド」、「データヘルス計画」、「インセンティブ付与」などが 記載される一方、機能性表示食品については、「その他健康長寿社会の形成に資する施策」の項目に位置付 けられ、「農林水産物の有する機能性成分」、「医福食農連携(介護食品等)」、「次世代機能性農林水産物・ 食品」とともに記載されている。また、科学技術イノベーション総合戦略 2014 の詳細工程表には、主な取組と して「健康に寄与する農林⽔産物の機能性解明とテーラーメードシステム」、「次世代機能性農林⽔産物・⾷ 品の開発」が記載されている。 提言2;機能性表示制度の振興に関わる統合的な施策を推進するため、機能 性データの取得、データベース・分析法等整備、先行者利益保護、コミュニケ ーション推進、国際貢献、人材育成等について、府省等が連携する仕組みを 構築すべきである。 本制度の振興に関わる諸施策は既に各省庁やその関連組織で取組みが実施(又は検 討)されているものが多い。以下に示す項目に関して、既存組織(機能)や既存施策が連携 し成果が相乗的に制度の振興に貢献する仕組みを構築すべきである。連携の仕組みとし ては、ゆるやかな連携をおこなう協議会等の組織、例えば、健康・医療戦略における次世 代ヘルスケア産業協議会のような組織が例示される。 2-1; 「国民の健康寿命延伸」の観点から、健常人コホートや食品の機能性 データ取得を体系的かつ継続的に推進すべきである。 「国民の健康寿命の延伸」や医療経済などの観点※4で、健常人コホート研究が継続的に 実施され、特定の食品(素材)と生活習慣病との関連といった疫学研究が推進されるべきで ある。また、同観点から、国民の健康に及ぼす影響がおおきいと推定される食品(素材)を 対象とした大規模なヒト介入試験が体系的かつ継続的に推進されるべきである。 ※4;例;「糖尿病末期の腎臓透析患者の減少により医療費削減や健常者としての消費が増大」等の試算等。 理由; 農産物等の産業振興の観点 ※5 ではなく、国民の健康寿命延伸や医療費削減に主眼を 置いた食品の機能性に関するヒト介入試験やコホート研究の例は国内での実施例は一部 を除き少ない。一方、米国 NIH では、国民の健康増進と医療費の削減をめざして、ビタミン D(ODS)やω 3脂肪酸(NCCAM)等の大規模な試験研究を実施※6している。国民の健康寿 命延伸に有望な素材であっても、企業は費用対効果の観点から実施するとは限らず、利益 相反(Conflict of Interest:COI)への対応なども課題となる。一方、国や公的機関が実施し た試験データは中立的な立場として、消費者がより信頼できるものとなる。産学官からなる 協議会等が主導し、継続的かつ十分な調査と、多方面の専門家も交えた、費用対効果も 含めた幅広い議論に基づき、優先して実施すべき試験が決定されるべきである。 ※5;現在進行中の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「次世代農林水産業創造技術」における「次 世代機能性農林水産物・食品の開発」※2 や農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」※3 ※6; ODS Vitamin D Initiative: http://ods.od.nih.gov/Research/VitaminD.aspx Omega-3 Fatty Acids: http://nccam.nih.gov/health/omega3 2-2;産業振興の観点から、農林水産物の機能性研究を戦略的かつ継続的 に推進すべきである。 「産業振興」のために、研究対象となる食品(素材)が選定され、関連する産学官の組織が 連携し、データの取得・見直しが体系的かつ継続的に推進されるべきである。特に、和食や 伝承的に体に良いとされている伝統食品、海外に比べ国内での生産や消費が盛んな特産 農林水産物、品種・栽培・処理方法に特徴がある農林水産物の機能性研究については、 継続的に推進すべきである。 理由; 科学技術イノベーション総合戦略 2014 には、「Ⅳ.地域資源を活用した新産業の育成」 の重点的取組として「競争力の源泉となる高機能・高付加価値農林水産物の開発」が記載 されている。民間企業が、国内農産物の振興のために機能性に関するデータを取得するケ ースが多いとは想定されない。「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された機会を好機と 捉え、例えば、「どのような和食(素材)や特産農林水産物の価値向上が、国内外での売上 増にどれ程貢献するか」といった試算に基づき、有望な食品(素材)等のヒト介入試験等を 国家戦略として実施すべきではないか。SIP「次世代機能性農林水産物・食品の開発」※7や 農林水産省「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」※8などの国家プロジェクトの 成果については大いに期待されるが、何れも時限的なプロジェクトである。本制度の発展 のためには、これらのプロジェクトの後継となる継続的な R&D の取組みが必要である。 ※7;戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)次世代農林水産業創造技術 テーマ③新たな機能の開拓に よる未来需要創出技術 次世代機能性農林水産物・食品の開発 ※8;機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト:http://www.s.affrc.go.jp/docs/kinousei_pro/ 2-3;機能性表示食品に関するデータベースを体系的に整備すべきである。 国民からみて信頼できるデータベースとして、複数機関が構築しているデータベースをも とに、サプリメント(成分)と農産物に関するレビューや研究成果が集約又は相互にリンクさ れたデータベースが構築・整備され国民に提供されるべきである。 理由; 本制度では、商品に関する必要事項は販売日の 60 日前までに届け出る必要があり、商品 発売時に公開されるが、ラベル表示など情報は一部に限られる。機能性表示食品をより深 く理解しようとする消費者や医療関係者の立場からすれば、当該商品に含まれる機能性成 分について、中立的な立場のデータベースから情報を得たいと考えるのは当然である※9。 日本では、現(独)国立健康・栄養研究所や一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉 協会によるデータベース※10、※11が存在するほか、農水省は「農産物の有する機能性やそ の関与成分に関する知見の収集・評価」を開始し、機能性プロジェクトでもデータベースを 構築予定である。農産物とサプリメントをあえて区別すると混乱を招く恐れがあり、ワンスト ップで閲覧できるサイト又は相互のデータベースがリンクした仕組みの構築が必要である。 ※9;米国では、ODS と NCCAM のような相互にリンクしたデータベースや NMDB※12のような中立的な立場で あることを宣言したデータベースが存在し広く利用されている。農産物も対象とする今回の制度の特徴から、 米国のようなサプリメントだけを対象としたデータベースは難しいとする意見もあるが、米国デザイナーフーズ ※13 では野菜や果物の摂取を推奨しており、世界最大の機能性素材に関するデータベースである NMDB では サプリメントと農産物を区別していない。 ※10;健康食品の安全性・有効性情報(素材情報データベース):(独)国立健康・栄養研究所 ※11;健康食品素材の科学的実証データベース:(一財)医療経済研究・社会保険福祉協会 ※12;Natural Medicines Comprehensive Database:民間の Therapeutic Research Faculty が運営し、約 1,400 の素材・成分を収載。研究者約 100 名全員が健康食品・サプリメント企業の株を保有していない。 ※13;デザイナーフーズプロジェクト(designer foods project):米国立癌研究所(NCI)が 2,000 万ドルで実施し たフィトケミカルを用いた癌予防食品のリスト化、NCI が消費者教育財団、ベターヘルス財団(better health foundation)などと連携して推進した the five a day 運動などで、米国の野菜の摂取量が大幅に増大した点は 評価されている。 2-4;機能性表示食品に関する分析法の整備を推進すべきである。 機能性表示食品のうち、市場流通の多いもの等を優先して、機能性成分の分析法や標 準物質の確立を国家として推進すべきである。 理由; 「食品表示基準(案)」では“一日当たりの摂取目安量当たりの機能性関与成分の含有量” が“義務表示事項”となっているが、機能性成分の分析法や標準物質の標準化は一企業だ けでは難しい※8。市場流通の多いもの等を優先して、当該成分の分析法や標準物質の確 立には、米国ODSのように公的機関もより積極的に関与すべきである。 ※8;平成 20 年度新たな健康の維持増進に関わる食品成分等に対するニーズ調査(文科省): http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/shiryo/attach/1287304.htm 2-5;機能性表示食品に関するデータを先行して取得する者に対して一定 の利益保護を検討すべきである。 制度振興の観点から、多大な先行投資をおこなう先行者に対して、なんらかの利益保護の 仕組みを検討すべきである。 理由; 現行の特許制度では、公知の食品と区別できるような新たな用途を提供できない(新規性 なし)と判断され、食品の機能性に関する特許は認められていない ※14。本制度では、機能 性データを取得しようとする先行事業者には、費用・期間ともに多大な先行投資が要求され る一方、科学的根拠に乏しい評論等も含め、不当な風評被害を一手に受けるなどのリスク が想定される。一方、本制度では、後発者は費用とリスクをかけずに先行者が得たデータ を利用できる。本制度が企業による積極的に活用され、本来の目的を達成するためには、 先行者利益の保護に関する何らかの施策の検討が必要である。 ※14;特許・実用新案審査基準第Ⅱ部 第 2 章 1.5.2 2-6;機能性表示食品に関するコミュニケーションを促進すべきである。 消費者視点に立ち、「機能性表示食品」に対する消費者の理解を促進する諸施策を定量的 な指標を持って推進すべきである。また、医師・薬剤師・栄養士などの関係者に対しても 「機能性表示食品」に対するインナーコミュニケーションを推進すべきである。 理由; 「機能性表示食品」は、既存の「特定保健用食品」、「栄養機能食品」との区別が難しい のではないかとの懸念が一部にある。消費者庁は、「機能性表示食品」に関する消費者の 理解増進に向けた取組を継続的に実施することになっているが、ODS の「The Scoop」のよ うな、国民(利用者)の視点に立った情報提供サービスは本制度では想定されていない。 「機能性表示食品」の認知度・理解度などの具体的指標をマイルストーンとし、“健幸ポイン トプロジェクト実証(ICT 健康モデル)”、“Smart Life Project(健康寿命延伸)”、“食育(食育 基本法)”、“FOOD ACTION NIPPON(食料自給率)”、 “和食振興”等の既存の施策と連動 し、府省が連携した継続的で包括的な取組みが必要ではないか。例えば、消費者向けのセ ミナーや展示に加え、Web サイト(データベース)、メールマガジン、スマートフォン用のアプ リなどにより継続的に情報発信する機能を設けるとともに、アドバイザリースタッフ制度等を 活用した制度の普及をおこなうべきである。特に、本制度発足後前後には、消費者庁が中 心となり、消費者や企業に十分に説明する機会を設けるべきである。まち・ひと・しごと創生 総合戦略(2014 年 12 月)には新たな食品表示制度の普及啓発について、2020 年までの間 に、年平均 120 回の講師派遣・説明会を実施するとの記載がある点は高く評価できる。同 時に、医師・薬剤師・栄養士・アドバイザリースタッフ・企業関係者・業界団体・アカデミア等 に対しても(相互の)インナーコミュニケーションを推進すべきである。 2-7;機能性表示食品が国際貢献、特にアジアに貢献できる仕組みを構築 すべきである。 SIP や農水プロジェクトなども含め、今後、「機能性表示食品」に関する膨大なデータの蓄積 が想定される。国際貢献の観点で、海外、特に食習慣等が類似した国民が多いアジア諸 国とこれらのデータや情報を共有すべきである。 理由; 日本で取得されたヒト試験などのデータや分析法の提供や相互利用は、海外、特にアジア 圏の諸国の人々の健康寿命の延伸にとっても有益であり、国際貢献に繋がる。得られたデ ータについては英訳され海外で利用できる形にすべきである。英訳されることで、和食や日 本製農林水産物の認知度の向上や輸出の振興にも繋がる。 2-8;機能性表示食品の評価に関する人材育成を強化すべきである。 アカデミアにおいて栄養学の専門家の計画的な育成や健康表示食品に関する学習プログ ラムを実施するとともに、企業においてシステマティクレビューを行う人材を育成するための プログラムを整備すべきである。 理由; 日本には人間栄養学(human nutrition)の学部が少なく、日本発のヒト試験論文が非常に 少ないとの指摘があり、保険制度に依らないで国民の健康寿命の延伸を目指すためには 栄養学に関する学部やそこで研究する研究者や学生を増やすべきである。また、一部の大 学での先行的な取組み※10 を参考に、医師・薬剤師・栄養士などの教育課程に「機能性表示 食品」に関するプログラムを導入すべきである。また、今後、食品企業や研究開発機関が 自らシステマティックレビューをおこなう人材を育成するための何らかの仕組みを整備する ことが望ましい。 ※10;例えば星薬科大学では、薬剤師を目指す学生に対して機能性食品に対する見方を教え、 鈴鹿医療科学大学では栄養士に対して機能性食品と医薬品についての情報提供をしている。 Ⅲ.日本バイオ産業人会議(JABEX)、バイオインダストリー協会(JBA)機能 性食品研究会の取組み 1.日本バイオ産業人会議(JABEX)の取組み 食品・農業・国民理解に関する政策提言に取組むワーキンググループの活動として、「食品 の新たな機能性表示制度」が国民や企業に与える重要性を認識し、同制度に関するパブコ メへの意見を提出した。また、JBA 機能性食品研究会と連携して政策動向調査や有識者に よる講演を企画するとともに、会員や有識者※15へのヒアリングを実施し本提言を作成した。 今後も本制度のよりよい発展に向けて意見を発信していきたい。 2.バイオインダストリー協会(JBA)機能性食品研究会の取組み 2013 年に立ち上げた本研究会では、会員相互の意見交換や勉強会の実施などを経て意 見を集約し「健康食品の機能性表示制度改革への提言」(2014 年 4 月)やパブコメへの意 見提出をおこなうとともに、会合(講演会 ※15)等を通じて課題等を共有し、今回、JABEX と 連携して提言書を作成した。今後、科学的な機能性評価システムの実証・実用化や新規プ ロジェクト立案などイノベーション創出に向けたより具体的な活動を目指していきたい。 ※15;特に株式会社グローバルニュートリショングループ武田猛社長に数回にわたり講演いただき、 グローバルな観点で本制度への理解を深めるとともに、ご紹介いただいた米国における ODS の役 割を本提言の参考とさせていただいた。 以上 <参考>米国 NIH Office of Dietary Supplements(ODS)の組織と活動の概要 組織 ダイエタリーサプリメント健康教育法(DSHEA) に基づき国立衛生研究所(NIH)に設立(1995 年)。 米国民の生命と健康の質向上を促進するために、科学的な情報を評価し、研究を促進・支援し、研究成果を普及させ、公衆を教育 することで、ダイエタリーサプリメントについての知識と理解を強化することを使命とする。年間予算は 2,600~2,700 万ドル程度。 主な活動 1.研究支援;700 以上の案件に共同で 1.25 億ドル以上、年間数百件の会議等も支援。 2.植物研究センター;植物由来素材の研究、成分同定から臨床試験まで実施。 3.分析法と標準物質の開発 4.エビデンスに基づくレビュー;マオウ、オメガ-3 脂肪酸、大豆、ベリー類、ビタミン B 群、マルチビタミン等。 5.人材育成とキャリア開発 ;政府機関所属者、大学のポスドク、学生が対象。 6.集団研究;ビタミン D イニシアチブでは標準物質、エビデンスレビュー、会議等を実施。 7.DS の成分とラベルのデータベース;定量分析の支援、Web ベースのデータベース作成を検討中。 8.国際活動:下痢性疾患、幼児の鉄と亜鉛欠乏、プロバイオティクスの効果等。 9.コミュニケーション;Web サイト、アプリ(MYDS)、ファクトシート、ニュースレター(Scoop)、展示、口頭発表等。
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