JCGRコーポレート・ガバナンス原則 2015 <前文> <本 文>

JCGR コーポレート・ガバナンス原則 2015
2015/08/01
日本コーポレート・ガバナンス研究所
JCGRコーポレート・ガバナンス原則 2015
<前文>
会社法のもと、株式会社は、営利を目的とする株主の出資によって設立されるが、会社の
経営は、株主総会において株主によって選任される取締役に委ねられる。取締役会は営利と
いう業務を遂行するための基本的な意思決定を行い、その執行は取締役会が選ぶ執行役員に
委ねる。ここにおいて、取締役も執行役員も株主であることが要件とされていない。
株主は出資し事業のリスクを負担するが、自らは経営しない。このことから、出資者であ
る株主と実際に経営を行う執行役員との利害の不一致が問題となる。これを解決する仕組み
がコーポレート・ガバナンスである。
コーポレート・ガバナンスにおける現代のベスト・プラクティスは、独立取締役を中心に取
締役会を形成し、取締役とは別人の執行役員に経営を委ねるという体制である。ここでは、
執行役員は経営に専念し取締役会は執行役員の監督に専念するという分業が行われており、
ガバナンスとマネジメントの分離が行われている。
この体制の下で、執行役員のトップである最高経営責任者(以下CEO)をして営利に最
適な執行体制-経営システム-を構築させるとともに、CEOを営利に向けて動機付けるこ
とを取締役会の監督ガバナンスという。
このような体制のもとでの、取締役、取締役会およびCEOの行動規範を示すのがJCG
Rコーポレート・ガバナンス原則である。
なお、本原則において、最高経営責任者すなわちCEOとは、委員会設置会社の代表執行
役および監査役会設置会社の代表取締役のことをいう。また、マネジメント、経営および業
務執行は同義語である。
<本
文>
【企業の業績目標と最高経営責任者の経営体制】
1.取締役会は、優秀な人材をCEOとして選任するとともに、CEOが営利を目指して最善
の経営を行うように、業績連動報酬に業績を埋め込んだインセンティブ報酬を活用する。
2.CEOは、法律や社内規則、社会倫理等を遵守―コンプライアンス-するとともに、市場
原理を遵守し株主以外のステークホルダーに対して公平を期す。
3.CEOは自らの進退をかけて最善の経営を目指す。
【取締役の選任】
4.取締役の過半数は東京証券取引所の独立役員(以下独立取締役)とする。
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5.独立取締役は業務執行役員を兼ねない。
6.株主総会に提出する取締役候補者の選任にあたっては、経験、性別、国籍および年齢等の
観点から多様性を重視する。
7.取締役候補者の選任に際しては、個々の候補者に対して取締役会が期待する役割を明示す
る。
8.取締役の任期は1年とし、再任を妨げない。ただし、再任にあたっては、その可否を取締
役の選任基準に照らして厳しく判断する。また、自社における経験を反故にしないために
再任の回数については制限を設けない。
9.取締役は、①期待されている役割を果たせなくなったと自ら判断する時、あるいは②一定
の年齢(例えば 75 歳)に達した時、自ら辞表を提出し取締役会に進退の判断を委ねる。
10. 取締役候補者は、取締役会が定めた自社株式数を就任前に保有する。
11. 新任の取締役は権威のある機関でコーポレート・ガバナンスおよびファイナンスに関
する研修を受ける。
【取締役の職務】
12. 取締役は、取締役会で行われる業務の意思決定に参加する。
13. 取締役は、監督の一環として、株主の出資および債権者の債権が資産として適切に保
全されていることを確認する。また、それを担保する財務統制システムおよび内部統
制システムが健全に機能していることを確認する。これらが確認できないときには、
最高経営責任者に是正措置をとるよう促す。
14. 監督の機能を果たすために、取締役は必要に応じて、上級執行役員、外部専門家ある
いは会計監査役等の助言をあおぐ。そのためにも、執行役員の選任および外部専門家
の選任においては慎重を期す。
15. 取締役は、取締役会および業務執行に関する重要な会議に出席し、助言等を行う。そ
の責務を全うするためには、相応の準備等が必要であるが、その時間と努力を惜しま
ない。同時に、会社は、取締役が必要とする情報を適宜・適切に提供する。
16. 取締役は、自らの判断により取締役会の議題を事前あるいは取締役会の場で提案する。
17. 独立取締役および社外取締役は取締役会の承認を得て社外取締役会を構成し、取締役
会の前後に会を開催し、さまざまな事項について議論する。必要があれば取締役会あ
るいはCEOに報告ないし助言を行う。
【取締役会の職務】
18. 取締役会は、会社法の定めにもとづき、株主の利益に重大な影響を及ぼす業務に関す
る意思決定を行う。
19. 取締役会は独立取締役が議長として主宰する。最高経営責任者等が取締役会議長を兼
ねる場合は取締役会の議を経る。
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20. 取締役会は、自社の取締役に要求される資質を定義し、取締役の選任および解任基準
を定める。必要な資質とは、判断力、経験、独立性、自社および業界についての理解
度、および取締役会が必要と判断するその他の能力・知識等である。
21. 取締役会の開催は年に6回以上とする。開催に先立ち、取締役会議長は取締役に議題
を通知するとともに、議題に関連する情報を提供する。
22. 取締役会は、少なくとも年に1回、経営戦略、財務戦略およびリスク・マネジメント
の基本方針について議論する。
23. 現代の複雑な経営環境のもとでCEOの負担は飛躍的に増大している。本来は業務執
行に関するものでCEOの責任事項であっても、株主価値に重要な影響を与える事柄
については、取締役会がその基本方針の決定あるいは確認に関わる。たとえば、内部
統制システム、ITシステム、企業年金制度、CSR(企業の社会的責任)
、環境対
策等々である。
【取締役会の経営監督機能】
24. 取締役会は、監督機能を果たすために、指名、報酬および監査の機能を確保する。そ
のために取締役会のもとに、独立取締役を構成員とする指名委員会、報酬委員会およ
び監査委員会を設置する。
25. 指名委員会は、株主総会に提出する取締役候補者を決定する。取締役のもっとも重要
な職務は執行役員の業務執行に対する監督であるから、取締役の特性として独立性を
重視する。
26. 報酬委員会は、CEOを始めとする執行役員を営利に向けて動機付けるために、業績
連動報酬を中心とするインセンティブ報酬制度を定める。
27. 監査委員会は、経営システムの一部としての内部統制システムの機能を監査する内部
監査の独立性を判断する。会計報告に関する外部監査に関してもその独立性を判断す
る。
28. 指名、報酬、監査の各委員会は、各委員会の目的および責任を委員会規則として規定
するとともに、年度末に委員会活動を総括するとともに、目的および自ら課した使命
に照らして委員会活動を自己評価し、取締役会に報告する。
29. 取締役会は各委員会の報告に基づき、最高経営責任者に適切な行動をとるように促す。
【最高経営責任者の経営体制】
30. 健全な業績目標の実現を目指す経営がCEOの個人的な資質のみに依存しないように
するために、CEOは合理的なマネジメント・システムを構築し維持する。
31. CEOは、リスク・マネジメントの一環として内部統制を重視し、最善の内部統制シ
ステムの設計および維持管理に努める。
32. CEOは、内部統制の有効性をチェックする機能である内部監査に関しては自らが責
任者になるとともに、部下の内部監査人が独立性を確保するよう務める。
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33. 高位の役職者が共謀すれば不正の隠蔽は必ずしも困難ではない。不正に関する情報は
共謀者以外も必ず保有するものである。内部監査人は内部通報制度を効果的に利用す
る。
34. CEOは会社全体の業績目標を事業部門・子会社に分解し、それらの業績目標によっ
て事業部門長・子会社CEO等を監督する。つまり業績目標によって業績評価を行い、
かつその業績評価に基づくインセンティブ報酬制度を実施する。
35. CEOは、株主の信頼を確保するために、IR、株主総会等を通じて株主と密接なコ
ミュニケーションを図ることによりアカウンタビリティを果たす。
36. CEOは、株主以外のステークホルダーと公平・公正な取引を行うために、法律を遵
守するとともに、資本主義経済の前提である市場原理を遵守する。
37. CEOは内部統制の一部として、内部監査とは別にコンプライアンスを監視する機能
を確保する。
38. それらの遵守状況に関して全ステークホルダーに適切な情報提供―ディスクロージャ
-を行う。
過去の改訂:2014/11/24 2013/04/15 2012/08/20 2007/07/01 2003/04/01
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