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ホワイトペーパー
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顕微鏡検査に適したデジタルカメラを見つけるには
昨今の光学顕微鏡検査では、画像処理が幅広く利用されています。こうした例として、医学や生物学の研究、診断、医薬品の検
査、材料科学が挙げられます。
顕微鏡検査では、非常に多様な対象物の構造や機能を直接調べることができます。しかし、単一の方法だけを使用して必要な情
報をすべて得られることはまずないでしょう。このため、多くの表示形式に対応し、解像度を向上させるために様々な顕微鏡検
査技術が徐々に開発されてきました。
このホワイトペーパーでは、カメラを選択する際に考慮すべき様々なポイントについて説明します。
目次
1.モノクロカメラとカラーカメラの比較................. 01
2.センサーの種類(CCDとCMOSの比較)、
シャッターの選択肢、フレームレート................. 02
3.解像度、センサーサイズ、ピクセルサイズ............. 04
4.顕微鏡検査における冷却型CCD/CMOSセンサーと
非冷却型CCD/CMOSセンサーの比較.................... 07
5.インターフェース................................... 08
6.まとめ............................................ 08
顕微鏡検査で画像処理を行うには、顕微鏡検査に最適なコンポ
ーネントを選択することが極めて重要です。これには、顕微鏡
自体に加え、染料による観察またはコントラスト差による観察
のどちらの手法を使用するかに応じた適切なレンズ、照明、フ
ィルターセット、偏光板の選択が含まれます。最終的には、各
用途特有の要件によって、最適な顕微鏡検査用カメラおよび互
換性のある画像処理ソフトウェアが決まります。
デジタル顕微鏡検査用カメラでは、画像データを活用すること
で、顕微鏡画像を最適な方法で生成することができます。この
画像データは、記録、保存、印刷、文書への埋め込みが可能で
す。さらに、PCやモバイルデバイスを使用し、顕微鏡検査用カ
メラで生成した画像データのデジタル処理や特別なソフトウェ
アによる分析を行うこともできます。デジタル顕微鏡検査用カ
メラの画像は、簡単に大型モニターに表示でき、ライブデモや
観察用に使用できます。
しかし、顕微鏡検査に適したデジタルカメラを見つける際に
は、どのようなポイントを考慮すべきなのでしょうか。
双眼倒立顕微鏡(前)と直立顕微鏡(後ろ)を備えた定常実験用の標準
的な顕微鏡検査ワークステーション
1. モノクロカメラとカラーカメラの比較
カラーカメラは、各用途に合わせて非常に柔軟に使用すること
ができ、従来の光学顕微鏡検査における幅広い領域で必要不可
欠なものとなっています。生物医学や臨床における実験に加
え、産業や素材の研究で行われる定常的な顕微鏡検査の多く
は、多様な照明およびコントラスト法を用いる従来の光学顕微
鏡を使用して行われています。さらに、顕微鏡の検体に特別な
染色手法が用いられる場合も多くあります。例えば、病気の病
理組織学的診断や病気の経過観察の一環として、通常では不可
能なほどコントラストの低い構造の詳細な分析が可能となって
います。
このため、材料や生体サンプルの微細な構造を良好な再現性で
もって区別できるように、顕微鏡検査画像の色の忠実性や再現
性はできるかぎり正確でなければなりません。
顕微鏡カメラのデジタルカラーセンサーでは、色情報を記録す
るために、センサーチップに適した色の異なるフィルターが使
用されています。
一般的にカラーセンサーは、1つのピクセルに1色しか記録しま
せんが、ほとんどの場合、個々のピクセルではすべての色が放
出されています。これを実現するために、個々のピクセルでは
隣接するピクセルの情報が使われます。センサーのそれぞれの
1
場合があるため、繊細な蛍光サンプルの使用を考慮することも
あります。センサーの光感度が高いため、光信号が弱い環境下
でも低ノイズ画像のレンダリングが可能です。特別な種類の
NIR(近赤外線)センサーでは、近赤外線の範囲を含む感度の
範囲が改善されています。
モノクロセンサー(左)およびセンサーチップにベイヤーパターン形式の
カラーフィルターを使用したセンサー(右)。多くの場合、カラーセンサ
ーではピクセルサイズを落としてピクセル数を増やすことにより、「実
物」と同じ解像度を実現します。再現時に黒色の領域は点で表されます。
ピクセルに完全な色情報を割り当てるには、三原色の各色の補
間値でギャップを埋める必要があります(「ディベイヤリン
グ」)。特に照明条件が悪い場合では、ディベイヤリングによ
って補間アーティファクトが発生する可能性があり、カラーフ
ィルターの光吸収効率が低下します。
しかし、これに対応した高感度のカラーカメラを使用すること
により、標準的な蛍光顕微鏡検査など光量が低い多くの用途に
対応できます。カラーカメラは顕微鏡に最適で、明視野や暗視
野で使用できるほか、必要に応じてコントラスト法や蛍光法を
使用した観察にも使用可能です。マルチバンドフィルターを使
って、複数の蛍光色素分子の観察と記録を同時に行うことにも
適しています。
ヒトメラノーマの生体細胞の蛍光顕微鏡画像:蛍光染色により、特定の
細胞質成分が緑色、核が蛍光の青色になっています。
2. センサーの種類(CCDとCMOSの比較)、シャッタ
ーの選択肢、フレームレート
次に重要となるステップとしては、最適なセンサーの選択があ
ります。ここでは、CMOSセンサーとCCDセンサーを技術的な観
点から比較します。その上で最適なフレームレート、つまりカ
メラがタスクをシームレスに処理するために1秒間に生成しな
ければならない画像の数を選択する必要があります。
センサーの種類
市場には、顕微鏡検査用カメラの画像センサーに適した幅広い
CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)をベ
ースとしたセンサーがあります。これらのセンサーの技術設計
は種類によって根本的に異なるため、その特性も同じように異
なります。適切な種類のセンサーを選ぶためには、その使用用
途を考慮する必要があります。
腎組織の光学顕微鏡画像:細胞と組織の構造を区別するため、組織学的組
織の部分がヘマトキシリンとエオジンで染色されています(HE染色)。
モノクロカメラには色情報がありませんが、画像センサー上の
輝度値に関する完全な情報を得ることができます。これによ
り、さらなる計算をすることなく各ピクセルの情報を使用でき
ます。モノクロカメラでは、光量の損失はありませんが、カラ
ーカメラの場合は、カラーフィルターを通じて光エネルギーが
吸収されるため、光量の損失が発生します。しかし、モノクロ
センサーには多くの場合、センサーの前面に二次元のIRカット
フィルターが搭載されており、これが光源からの赤外線放射を
打ち消します。多くの用途において、このような赤外線放射は
画像情報に影響を与えることなく、画像コントラストのみを低
下させます。
このため、色情報が不要な場合は、感度と情報のデータが得ら
れます。結果として、精密な蛍光顕微鏡検査に最適なカメラは
モノクロカメラということになります。露光時間が短縮される
2
CCDセンサーとCMOSセンサーはいずれも光(フォトン)を電気
信号に変換します。ここで注目すべきなのはそれぞれの特性
と、さらなる技術開発によってセンサーがどのように変わった
かという点です。
CCDセンサーの注目すべき特性:
一般にCCDセンサーは、画像のノイズ指数の低さ、フィルファ
クターの高さ、優れたSN比(シグナル/ノイズ比)、色忠実性
といった面で際立っており、しかも非常に高い画質でこれらす
べてを実現しています。こうした特性があることから、低光量
で観察を行う場合はCCDセンサーを使用したカメラを選択する
のが良いでしょう。
現在では、CCDセンサーよりもCMOSセンサーのほうが優れている
ケースも:
近年、CMOSセンサーは開発面で新たに根本的な改善が見ら
れ、CCDセンサーに追いついてきました。CMOSセンサーは、そ
のスピードの速さ(フレームレート)や解像度(画素数)、消
費電力の低さ、そして最近ではその改良されたノイズ特性、ダ
イナミックレンジ、量子効率、カラーコンセプトにより、以前
はCCDセンサーが使用されていた分野に進出してきています。
これは顕微鏡検査についても同様で、現在のCMOSセンサーは特
にそのスピードの速さや新しいカラーコンセプトを活かして、
優れたライブ画像を生成しています。
とローリングシャッターの2つがあります。シャッターは露出
の瞬間にだけ開き、入射光からカメラ内のセンサーを保護しま
す。選択したシャッターや露光時間により適切な「光量」が分
かり、シャッターが開いたままの時間が決まります。CMOSセン
サーは両方のシャッターに対応していますが、CCDセンサーで
は常にグローバルシャッターを使用します。
2つのシャッターの違いは、センサーが画像を露出する方法に
あります。
グローバルシャッターでは、センサー全体が同時に露出されま
す。つまり、センサーの表面全体に同時に光が当たることにな
ります。
一方、ローリングシャッターを備えたセンサーは、セルごとに
短い時間(数マイクロ秒以内)で徐々に露出されます。露光中
に対象物が動くと、選択した露光時間や対象物の実際の速度次
第で歪みが生じる場合があります。この効果は、ローリングシ
ャッター効果と呼ばれています。
CMOSエリアスキャンセンサー
ここ数年の進展を見れば、今後もCMOS技術において興味深い新
たな発展をさらに多く期待することができるでしょう。市場の
傾向としても、最新のCMOS技術が大半のCCD技術に取って代わ
ると見られます。
フレームレート
フレームレートは「フレーム/秒」または「fps」とも表記さ
れ、「センサーが1秒間に取得し伝送できる画像数」のことを
指します。
フレームレートが高ければ(つまりセンサーが速ければ)、
1秒間により多くの画像が取得できるため、より多くのデータ
量を伝送できます。実現可能な(または必要な)フレームレー
トは、カメラと併せて使用する顕微鏡装置の種類や顕微鏡のカ
メラで記録する対象によって決まります。
多くの顕微鏡装置は、待ち時間のないライブ画像を直接モニタ
ーで観察することを主な目的としており、これによりシームレ
スな検体のスクリーニングや素早いフォーカスが可能になって
います。人間の脳は、1秒間に約14~16個の画像を認識できます
(トレーニングを受けた人であれば、この数は大幅に増加しま
す)。一般的な映画のフレームレートは24fpsですが、最近の作
品には48fpsになるものもあります。理論上、標準的な顕微鏡カ
メラのフレームレートは、この範囲内に収まっています。
しかし、ライブ観察中の快適性は、スムーズな再生だけではなく画
質の良さや動画の鮮明さによっても左右されます。この点において
プログレッシブスキャン技術には決定的な優位性があります。
自動設定で観察を行う場合は、画質だけでなくスループットも
高い必要があり、極めて高いフレームレートが重要となる場合
があります。例えば、サンプル範囲の自動スキャン、完全なサ
ンプルをできるだけ短時間で再現するための自動フォーカスや
多重画像などが挙げられます。
シャッター
シャッター装置の選択もセンサーの選択に関係してきます。
ここで挙げられる主な選択肢としては、グローバルシャッター
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サンプル・サンプルテーブルが非常に高速で動いている場合や
極めて活発なプロセスを観察する場合など、顕微鏡検査にはこ
の効果が望ましくない状況もあります。しかし、ローリングシ
ャッターを備えたセンサーは、ほとんどの標準的な用途に適し
ており、グローバルシャッターを超えるメリットを有していま
す。また、読み出しノイズが低いため、極めて高いダイナミッ
クレンジを誇っています。ダイナミックレンジが高いので、非
常に高い画質で記録や詳細な構造情報の分析を行うことが可能
です。
さらに、露光時間を特定の範囲内に調整することでローリング
シャッター効果を防ぐことができます。科学的な用途で使用す
る高性能のCMOSセンサーカメラには、ローリングシャッターモ
ードで動作するものもあります。
3. 解像度、センサーサイズ、ピクセルサイズ
「倍率」というと、従来の顕微鏡検査ではレンズと接眼レンズ
の倍率のことを指していましたが、デジタル画像処理ではその
本来の意味を失っています。デジタル画像は、印刷やディスプ
レイでの再現を様々なサイズで行うことができるからです。
しかし、主にレンズの開口数(NA)で決まるレンズの光学的解
像度が重要であることに変わりはありません。
解像度という用語は、デジタルカメラのセンサーを表す際にも
用いられ、多くの場合においてセンサーのピクセル数を示しま
す。例えば、解像度が8メガピクセルであるカメラでは、光学部
品によってセンサー上に投影される画像がセンサー上で800万ピ
クセルに解像されます。この意味で使用される場合、センサー
は1メガピクセル~32メガピクセルの「解像度」で表されます。
しかし、より重要なのはピクセル解像度を示すことです。光学
部品を通じてさかのぼることにより、1カメラピクセルの辺の
長さを対象物上の長さに当てはめると、ピクセル解像度
は、1カメラピクセルによって理論上カバーされる対象物上の
距離に相当する長さを示します。
顕微鏡カメラでは、顕微鏡で使用されるあらゆるレンズのピク
セル解像度は、レンズの光学的解像度より高くなければなりま
せん。実際のピクセル解像度は、レンズの光学的解像度の少な
くとも3倍であることが理想的です。
顕微鏡のレンズの開口数は、0.1(一般に4倍の拡大レンズ)
~1.3(一般に100倍)の範囲にあります。これは、光学的解像
度で言うと3.4µm~0.26µmに相当し、光学的に解像された最小
の構造によって、十分なピクセル数が得られます。
1台のカメラを使用し、ピクセル数を変えて記録した同じ画像。
解像度
顕微鏡検査における「解像度」という用語は、コントラストの
高い2つの対象物を画像内で1つの対象物に統合することなく、
顕微鏡上で2つの個別の対象物として認識可能な最短距離dminを
指します。
従来の光学顕微鏡では、最適な照明条件において、解像度は使
用される光の波長λ(計算のために、550nmが一般的に用いら
れます)と使用される顕微鏡のレンズの開口数NAによって決ま
ります。
レイリーの基準 dmin = 0.61·λ/NAが適用されます。
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例えば、必要としている倍率が低い場合、顕微鏡画像の詳細す
べてを最適な状態で記録・再現するためには、それに対応した
高解像度のカメラが必要です。ここでは、解像度が5メガピク
セルを超えると実用的であると言えるでしょう。しかし、倍率
が高い場合は、解像度がこれだけ高くても、光学系の制限によ
り追加の画像情報が得られないことがよくあります。用途にも
よりますが、多くの場合は3~5メガピクセルで十分です。
ピクセルサイズも重要になります。非常に小さなピクセルに対
して、光学部品で解像できる最小構造には制限があります。
モノクロセンサーではピクセルの幅が5µm以上、カラーセンサ
ーについてはピクセルの辺の長さが2.5µm以上のものを選択す
るのが合理的です。
センサーのサイズと視野角(FOV)
センサーは大きければ大きいほうが良いのでしょうか。大型セ
ンサーの利点は、表面が大きいため、より多くのピクセルを配
置でき、より高い解像度を得られる点にあります。個々のピク
セル自体が良好なSN比を得るのに十分な大きさであるというこ
とが、ここでは真のメリットとなります。利用できるスペース
が狭いため、小さなピクセルを使用せざるを得ない小型のセン
サーとは異なります(「ピクセルサイズと感度」セクションも
参照)。
レンズの画像は、接眼レンズで再度拡大されます。接眼レンズ
がはっきりと拡大できるエリアの最大直径は、接眼レンズの視
野角と呼ばれています。「アナログ」顕微鏡で最適な再現性を
実現できるようにするには、接眼レンズの視野角とレンズの視
野角の直径を互いに調整する必要があります。接眼レンズの視
野角(視野数)は、特定の顕微鏡のレンズの視野角の大きさを
表しています。接眼レンズの一般的な視野数
は、18mm、20mm、22mmなどです。しかし、実際には視野角の直
径が23mmや25mmを超えるものも一般的です。
しかし、実際のところセンサーにはどれぐらいの大きさが必要
なのでしょうか。ここでは、必要なピクセルサイズとピクセル
数に加えて、主に視野角の最適な再現が重要な役割を果たしま
す。
対応する三眼鏡筒(主にCマウントで接続)または接眼レンズ
ホルダーを使用して顕微鏡カメラを顕微鏡に取り付ければ、接
眼レンズの光学部品を介すことなく、レンズの中間画像をカメ
ラで直接観察できます。
このように、レンズの視野角の直径は顕微鏡カメラに対して重
要な値となります。これは、顕微鏡のレンズを通して生成され
た画像が顕微鏡カメラのセンサー上に直接再現されるためで
す。結果として、円形の視野角を四角形のセンサー上で最大限
に再現し、視野角の端周辺の再現エラーを防ぐためには、顕微
鏡カメラのセンサーサイズと視野角の直径とを最適な状態にな
るように一致させる必要があります。つまり、センサー画像の
すべてのエリアを最適な鮮明度で再現するためには、センサー
の画像対角線をレンズの視野角の直径より少し短くしなければ
ならないのです。
顕微鏡にデジタル顕微鏡カメラを使用する方法
結像レンズ
顕微鏡のレンズ
8.8 mm
6.4 mm
4.4 mm
3.3 mm
接眼レンズの焦点
三眼鏡筒
12.8 mm
4.8 mm
内蔵型拡大レン
ズを備えたカメ
ラアダプター
6.6 mm
拡大なしの
中間画像
9.6 mm
カメラの焦点
光学顕微鏡にデジタル顕微
鏡カメラを使用する場合に
ついて大幅に簡略化した図。
視野角の正確なサイズだけ
でなく、画像レベルの正確
な位置なども対象物を完全
に再現する上で重要になり
ます。顕微鏡の種類やカメ
ラに応じて、市場には多種
多様なカメラアダプターが
あります。例えば、接眼レ
ンズのシャフトにプラグを
差し込む場合や、ここで示
すように三眼鏡筒に取り付
ける場合には一般的にCマウ
ントタイプが使用されます
が、CSマウントやバヨネッ
トフィッティングを使用す
ることもあります。デジタ
ル顕微鏡カメラのセンサー
サイズは、一般に1/3"~1"
です。多くの場合、最適な
画像部分を伝送するために
は、カメラアダプターに内
蔵する縮小用または拡大用
の中間光学部品がさらに必
要になります。
1/3" (5.5 mm)
1/2" (8 mm)
2/3" (11 mm)
1" (16 mm)
対象物のレベル
光源
顕微鏡を使用する場合は、画像が2段階で生成されます。ま
ず、顕微鏡のレンズで(必要に応じて顕微鏡の結像レンズを用
いて)中間画像が生成されます。接眼レンズを通じて見えてい
るのは、このような中間画像です。全体の倍率は、レンズの倍
率と接眼レンズの倍率から求められます。物理的・技術的な制
限により、レンズが画像の鮮明度を完全に保った中間画像を生
成できるのは限られた範囲内のみになります。この範囲内にあ
る円形のレンズの画像の直径は、レンズの視野角と呼ばれてい
ます。
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市場では、様々な画像対角線を有する多くのセンサーが入手可
能です。上記の図は、最も一般的なセンサーサイズを示したも
のです。センサーサイズの指標がインチ単位なのは、初期の画
像記録用鏡筒の直径をインチで表記していた慣習によるもので
す。この慣習に従うと、1インチは25.4mmではなく、約16mmに
なります。
多くの標準的な顕微鏡の光学部品では、2/3"のサイズのCCDセ
ンサーとCMOSセンサーを使用することで、顕微鏡の視野角の画
像部分の倍率や解像度、サイズをうまく調整することができま
す。
センサーサイズと視野
指定したセンサーサイズに合うように調整されたデジタルカ
メラを使用して記録した画像部分と接眼レンズから見える画
像との比較。
•
•
•
•
この条件下では、1/3"のセンサーによって伝送される中間画
像の可視部分は7%に過ぎませんが、1"のものでは視野角の約
50%が再現されています。
レンズの倍率10倍
接眼レンズの倍率10倍
接眼レンズの視野数18
Cマウントアダプターの倍率ファクター1
1/3"
1/2"
2/3"
極めて小型または大型のセンサーを選択した場合は、中間光学
部品に内蔵されたアダプターが使用して、レンズの視野角をセ
ンサーに合うように調整(センサーに応じて縮小または拡大)
する必要があります。
1"
昨今では映画やテレビの標準になりつつあるHD(高精細度)や
フルHD形式は、顕微鏡検査に対して多少課題が残っているもの
の、ライブ画像を大型モニターに投影して会議を行う場合など
には最適です。映像技術とデジタル画像処理を組み合わせれ
ば、極めて活発なプロセスを簡単に観察・検査・分析すること
ができます。
センサーサイズと視野角の調整方法
センサーのフォーマット
(アスペクト比)
対
角
内蔵型の中間光学部品を備えたCマ
ウントアダプターを使用したセン
サーサイズと視野角の最適化およ
び調整。
•レンズの倍率10倍
•接眼レンズの倍率10倍
•接眼レンズの視野数18
•センサーサイズのサイズ1/2"(
画像内側部分)、4/3"(画像外
側部分)
水平
4:3
3:2
16:9
1:1
ピクセルサイズと感度
前述のとおり、ピクセル数、より厳密に言えば画像センサーの
解像度が情報の内容や顕微鏡画像の品質において重要な役割を
果たします。一般的に解像度を最大限高めようとする傾向があ
ることは明らかですが、解像度が高くなるとその分ピクセルが
小さくなります。小さなピクセルよりも大きなピクセルのほう
が通常は感度が高くなります。最終的には、各用途に応じて最
適な画像のノイズ、SN比、飽和容量、関連ダイナミックレンジ
の組み合わせを選択する必要があります。
1/2"のセンサーで伝送される中間画像の可視部分の割合は、
調整しない場合で約12%(画像内側部分)です。これに対し
て、内蔵型の縮小用光学部品(0.65倍または今回のように
0.5倍のもの)を備えたCマウントアダプターを使用すると、
画像部分を最適化できます(画像中間部分)。センサーが1
インチ(画像外側部分)より著しく大きく、視野角の端を超
える場合は、内蔵型の拡大用光学部品(例えば1.2倍または
1.6倍のもの)に対応するアダプターを使用することで、視
野角に合わせた調整が可能です。
顕微鏡検査で最も一般的かつ最適なのは、アスペクト比4:3の
センサーです。アスペクト比が1:1のセンサーでは、目視で観
察できるレンズの中間画像を最大限の範囲で再現することがで
きます。3:2や16:9といった形式のその他のセンサーが使用さ
れることもありますが、ピクセル数が同じ場合は4:3のセンサ
ーより画像の高さが低くなるため、再現される視野角は狭くな
ります。
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画像のノイズ:ダークノイズ、光ノイズ、デジタル化ノイズな
ど様々なノイズ効果は信号の重複につながってしまうため、デ
ジタル画像に対して悪影響を及ぼします。高感度センサーで
は、低光量下で測定信号が非常に弱い場合に画像のノイズが特
に目立ちます。検出限界は、熱的効果、つまりセンサーの発熱
によって発生するダークノイズによって決まります。このよう
な熱的効果は、気流、水、ペルチェ素子などを使ってセンサー
を能動的または受動的に冷却することにより、大幅に低減でき
ます(「冷却型センサーと非冷却型センサーの比較」のセクシ
ョンも参照)。
飽和容量:飽和容量またはフルウェル容量とは、1ピクセルが
吸収できる最大電子数を表します。センサーに光が当たること
によって電子が生成されます。
SN比:ピクセルが大きいほど、飽和容量は大きくなります。つ
まり、光によってピクセルで発生する電子の容量のほうが大き
いことになり、これによってより多くの光を処理できます。
飽和容量が高いということは、SN比が良好であることを意味し
ています。つまり、ピクセル面積が大きいほどSN比が良くなり
ます。SN比とは、カメラデータの実際の画像コンテンツに対す
る不要なノイズ信号の比率です。SN比が高くなれば、画像の品
質も向上します。
簡単に言うと、ある特定のピクセルサイズに対して、使用する
カメラのセンサーのピクセルが多いほど、SN比は悪化、つまり
小さくなります。
ダイナミックレンジ:センサーの光に対する反応の下限と上限
が分かったところで、最後に残りの用語「ダイナミックレン
ジ」(DR)について説明します。これは、検出限界に対する飽
和容量(フルウェル容量)の比率によって決まります。別の言
葉に言い換えると、ダイナミックレンジとは、ピクセルが入射
光の実応答として検出できる最も明るい値と最も暗い値の比率
を指します。高いダイナミックレンジが必要な用途の場合は、
それに対応した大きなピクセルを備えたセンサーを使用するこ
とが理想的です。
以前は10µmピクセル必要だった出力が、現在では3.5µm~6µmの
ピクセルサイズで利用できます。光感度と解像度の高さのバラン
スが取れるのがこの値です。ピクセルサイズが2.2µm~1.4µm以下
のセンサーでは、解像度の高さが重視されます。このサイズで
はピクセル解像度が高くなりますが、表面積が小さいため光感
度は低くなります。
センサーの感度は、例えば蛍光顕微鏡検査など、光量が低い条件
で観察を行う場合は特に重要です。このように照明条件が悪い場
合は、カメラが非常に弱い光信号でも検出でき、かつ優れた画質
を保証できるように、良好なSN比を確保する必要があります。
4. 顕微鏡検査における冷却型CCD/CMOSセンサーと
非冷却型CCD/CMOSセンサーの比較
ダークノイズまたは暗電流と呼ばれる効果は、あらゆるセンサ
ーで発生します。熱によってセンサーチップ上のピクセルに電
子が発生し、光が乱れを引き起こすことで発生した電子と混ざ
り合って、必要な画像情報を重ね合わせたり、画像コンテンツ
を歪めたりするのです。さらに、暗電流やノイズは、非冷却型
センサーやセンサーの温度によって異なります。このため、セ
ンサー周囲の温度と動作温度が動作中に上昇することに応じ
て、変動が引き起こされます。露出時間が長い場合は、センサ
ーの電圧と温度も上昇し、これがピクセルとして解釈され、ノ
イズとなって現れます。
暗電流は、センサーを冷却することで減少させることができま
す。画像信号が変わらないと仮定すると、センサーの温度を周
囲より7℃下げた場合、センサーの暗電流は約半分まで減少し
ます。
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この点において、新世代のCMOSセンサーなどの新しいセンサー
技術には大きなメリットがあります。電力消費が低く、最適化
された電子機器では、このようなセンサーのノイズ特性が大幅
に改善されているためです。
非冷却型センサーを備えたデジタルカメラは高い画質を実現で
きるだけでなく、画像処理や分析に関するすべての要件を満た
しているため、多くの標準的な顕微鏡検査に最適です。
照明条件が悪く、露光時間を特に長くする必要がある場合、ま
たは画像分析やさらなる処理のために極めて一定かつ再現可能
な結果を出すことが必要な場合には、冷却型センサーを選ぶと
良いでしょう。最新の高度な蛍光顕微鏡検査、生体内での生物
発光の観察、天文観察などでは、一般的にこのような要件が求
められます。
5.インターフェース
„„記録、画像処理、分析のための画質と色忠実性の高さ、コン
トラスト範囲の広さ
カメラのユーザーは通常、複数ある選択肢の中からインターフ
ェースを選びます。最も重要で最適なインターフェースに
は、USB 2.0、USB 3.0、FireWire、Gigabit Ethernet、Camera
Linkがあります。
„„光量の低い条件における感度の高さ
„„用途の特性によって、候補となるセンサーの種類が決まりま
す。例:CCD、CMOS、NIR(近赤外)に最適なバリエーション
USB 3.0は、シンプルで標準的な新しいインターフェースとし
て、ますます多くの用途で使用されています。Super Speed
USBとも呼ばれるUSB 3.0は、一般に普及している「プラグアン
ドプレイ」対応のUSBに代わる次世代テクノロジーとして、USB
2.0の短所を改善するとともに、長所を受け継いでいます。USB
3.0は、現在すでに標準的なインターフェースとして、標準的
なPCでハードウェアを追加することなく利用できます。近い将
来、FireWireやUSB 2.0はUSB 3.0に取って代わられることにな
るでしょう。FireWireについては、すでに標準サポートを終了
しているオペレーティングシステムもあります。しかし、USB
3.0カメラであれば、今後もインターフェースハードウェアを
追加することなく、市販のPC上で利用することができます。
„„視野角を最適に再現するために必要なピクセルサイズと解
像度(必要なセンサーサイズに影響します)
„„既存のシステムや意図する汎用性に応じたサイズ、重量、
ユーザーの快適性、DirectShow、TWAIN、USB3
Vision、GenICamなどのソフトウェア標準への準拠
カメラを選択する際のヒント:
„„カラーカメラは、幅広い用途で使用できます。カラーカメ
ラを使用する場合は、カメラがカラープロファイリングに
対応していることを確認してください。
„„高度な蛍光観察では、ノイズの発生が少ないモノクロカメ
ラの使用を考慮してください。
USB 3.0は簡単に使える上に、リアルタイムの互換性を有して
います。さらに、USB 3.0インターフェースの技術的な導入に
より、画像データをメインメモリへ直接伝送することで、プロ
セッサのリソースを節約できます。これによって確保できるプ
ロセッサの空き容量を画像処理に使用することで、より複雑な
処理ステップやより迅速な結果表示が可能となります。
Gigabit Ethernetインターフェースは、長いケーブルが必要な
場合に威力を発揮します。
6.まとめ
„„画像を記録や保存に使用する場合など、サンプルの大きな
部分を低倍率で再現したい時は、解像度が高いものを選ん
でください。
„„視野角を最大限活用するために、最適なカメラ顕微鏡用ア
ダプターを選んでください。
„„サンプルを画面で観察することが主な目的である場合は、
ライブ画像の画質とカメラのスピードが重要となります。
„„標準的な顕微鏡検査では、多くの場合、低いフレームレー
トのカメラで十分です。
顕微鏡検査用カメラには、センサー技術、センサーサイズ、解像
度、フレームレートが異なるカラーモデルとモノクロモデルがあ
り、具体的な用途に応じて幅広い製品から選択ができます。
将来的には、さらなる開発やパフォーマンスの大幅な向上によ
って、CMOSセンサーを搭載したカメラが顕微鏡検査において重
要な役割を果たすようになるでしょう。コストパフォーマンス
が良く、コンパクトで多機能なCMOSセンサーは、半導体センサ
ーとして、ブルーミングやスミアが生じないというメリットも
あります。さらに、新しいCMOSセンサーでは、ノイズの発生が
より少なくなっています。CMOSセンサーは多くの領域におい
て、デジタルカメラのCCDセンサーに取って代わることが予想
されます。
最適な顕微鏡カメラを選択するためには、以下のような点が重
要となります。
„„サンプルをスムーズに移動でき、フォーカスが簡単になる
リアルなライブ画像
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„„多くの場合、適切なソフトウェアを使用することで画質を
大幅に向上できます。お使いのカメラソフトウェアの最新
バージョンを常に使用してください。
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お問い合わせ先
Dr. Kristina Lotz
医療マーケットマネージャー
Dr. Kristina Lotz – 医療マーケットマネージャー
Tel. +49 4102 463 624
電子メール:[email protected]
Basler AGの医療マーケットマネージャー。
分子生物学部を卒業後、2013年3月に
Baslerでマーケット管理業務を開始。
Basler AG
An der Strusbek 60-62
22926 Ahrensburg
Germany
現在は、多様な用途や特殊な要件を有す
る医療・ライフサイエンスの垂直市場の開拓や同市場の顧客対応
のほか、既存の用途における幅広いカメラポートフォリオの活用と
新しい分野への拡大を担当。
Baslerについて
Baslerは、世界をリードする高品質デジタルカメラメーカー。そのカ
メラはファクトリーオートメーション、医療機器、交通監視システム
等の幅広い用途で使用されています。業界のニーズに応える製品を
生み出し続け、容易な組み込み、コンパクトな寸法、優れた画質、突
出したコストパフォーマンスで知られます。画像処理においても25
年以上の実績を誇り、アーレンスブルクの本社のほか、米国、シンガ
ポール、台湾、中国、日本、韓国の各拠点に約500名の従業員が勤務
しています。
© Basler AG, 06/2015
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