住居だより jyukyo dayori 日本女子大学 住居学科のニュースを ご紹介します。 No.013 June 2015 ひと と 空 間 を 科 学 す る topic 1 JS×JWU UR 賃貸住宅リフォームコンペティション 「子育て世帯・共働き世帯が住みたくなるUR賃貸住宅の提案」 をテーマとし、日本総合住生活株式会社(JS)と日本女子大学の 共催で「UR賃貸住宅リフォームコンペティション」を開催し ました。全学年から計60作品の応募があり、11月7日の公 開審査会で、大学院修士課程2年生の鈴木あいねさんと、学部 3年生の高藤万葉さんが最優秀賞に選ばれました。最優秀賞に 選ばれた2作品については、光が丘団地内で実際に工事が行わ れます。2015年春の竣工に向けて、現在工事施工者を交え、 アイディアを実現するための検討が進められています。 かつては、近代的な住まいとしてあこがれだった「団地」。 建設が始まって半世紀が過ぎ、設備陳腐化や居住者の高齢化な ど、さまざまな課題を抱えています。対象住戸のある「光が丘 パークタウン」は、総面積186ha、道路、公園、鉄道等の基盤 整備と建物を一体的、総合的に計画された団地です。都立光が 丘公園を中心として大小の公園や緑地が計画され、人車分離も 実現した、大人も子供も安心して楽しみながら暮らせる街とし て注目のエリアと言われています。今回のコンペティションで は、現代社会に対応した室内空間や間取りの提案を通して、子 育て世帯や共働き世帯が「住みたい」と思う住戸の提案が求め られ、60作品の応募がありました。 環境・建築研究所代表)、大谷幸生氏(都市再生機構 東日本 賃貸住宅本部長)、藤原徹平氏(フジワラテッペイアーキテク ツラボ代表)、望月常弥氏(日本総合住生活株式会社 常務取 締役)を審査員として迎え、本学からも飯尾昭彦教授、篠原聡 子教授、宮晶子准教授が審査員として加わり、厳選な審査の結 果、最優秀賞2点、優秀賞2点、特別賞1点が選出され、表彰 が行われました。また、審査会場には1次審査は通過しなかっ たものの、アイディアが優れていた作品6点も掲示されました。 大学1年生から修士2年生まで、学年を超えてのコンペは、 プレゼンテーションの熟れ感の違いはありますが、設計内容 についての真っ向勝負が見られました。異なる学年の設計提 案やプレゼンテーション内容が一同に介す今回のコンペは、 下の学年が上の学年に、設計案について説明してもらったり、 プレゼンテーションの仕方について質問する良い機会となっ たようです。 11月7日に新泉山館で行われた公開審査会では、1次審査通 過者(12作品)が、プレゼンテーションをしました。東利恵氏(東 公開審査の様子 最優秀賞 修士1年生 鈴木 あいね さん 「溶けてゆく、暮らし。 」 学部3年生 高藤 万葉 さん 「いろんな壁といろんな居場所」 優秀賞 学部4年生 鈴木 多珠奈 さん 「ハコミンカ」 学部3年生 小川 理玖 さん、小黒 日香理 さん 「廊下に住む」 特別賞 学部1年生 下本地 真冬 さん、竹越 綾奈 さん 「DINKS のための SHARE 空間」 溶けていく暮らし 鈴木 あいね 最優秀賞 生活行為や外部環境がにじみ出し溶け合っていく関係を提案した。 土間からバルコニーまでの連続した空間を設えの変化や家具によって緩くゾーニングすること によって、生活における様々なシーンが連鎖的に重なっていくことを考えた。広い土間は仕事 場や趣味のスポーツ用品を置く等、居住者が自身のライフスタイルに合わせて機能を変化させ ることが可能である。 Memori 高藤 万葉 公開審査:審査員の先生方と一次審査通過者との記念撮影 最優秀賞 既存の間取りの東西方向に光と風が漂っていた。住人の声や匂いがこの漂いとともに流れる暮 らしが良いと思った。外と中が等価になるように、光と風の通り道を残しながら南北方向に壁 (Memori) を 入 れ る。光 と 風 の 均 質 さ に よ り 緑 が ど こ に で も 置 け る よ う に な る。ま た、壁 (Memori) により様々な居場所が でき、家族の変化とともに壁の間 の要素も変化していく。Memori は光と風にあふれたフレキシビリ ティをもった空間の提案。 追 悼 住居学科名誉教授 小谷部育子先生を偲んで 小谷部育子先生は、1985年から2012年まで住居学科で教 をとられました。 先生が取り組まれたコレクティブハウジングの研 究・実践は、まさしく、現代・未来を見据えたものであり、今を生きる学生に多くの知見を残してくださいました。 「好きなことに打ち込み続けよ」 小谷部育子先生が昨年10月5日に70歳でご逝去された。小谷 部先生が亡くなられて半年が経つが、先生の太陽のような暖かい 笑顔が今でもすぐに目に浮かぶ。いつお会いしてもその笑顔で出 迎えてくれ、私たちを励まし前向きな気持ちにさせてくれる、そ んな先生であった。 小谷部先生は大学での教 だけでなく、建築設計やまちづくり など多岐にわたる場面で活躍された。その中でも先生のライフ ワークはコレクティブハウジングの実践研究であった。人々が既 成の住概念から抜け出し、いかに豊かに楽しく暮らすか、その答 えの一つとして小谷部先生が可能性を見出したのがコレクティブ ハウジングである。 1988年にスウェーデンのコレクティブハウスに出会った小谷 部先生は、大都市東京で生活する私たちにも共有できる暮らしで あり、日本型のコレクティブハウジングの開発、取り組みが必要 だと、1992年スウェーデン・ストックホルムの王立工科大学に 留学された。日本に戻られると、研究活動グループALLCを立 ち上げ、2000年には多くの仲間とともにNPO法人コレクティ ブハウジング社をつくり初代理事長を務められ、2003年日本で 初めての居住者自主運営型コレクティブハウス、「コレクティブ ハウスかんかん森」を創り上げた。 先生はコレクティブハウジングを「共に住む・共に生きる・共 に創る、新しい住まいのかたち」と繰り返し述べられた。コレク ティブハウジングは、個人や家族のプライバシーを大切にしなが らも血縁にはこだわらず、少しずつ自分の時間やスペースや知恵 を皆で出し合うことで、より豊かに合理的に経済的に暮らすこと ができる住まいのかたちである。 「コレクティブハウスかんかん森」には、170㎡のコモンスペー スがある。そのコモンスペースの中心である共有のリビングや キッチンでは、コモンミール(共同の食事運営)が12年間、途 切れることなく続いている。一度調理すれば10日間くらいは食 事の準備をする必要がない。ほかの家事をしたり、趣味をしたり、 子どもと遊んだり、仕事をする時間が生まれる。居住者の移り変 わりにより、少しずつ運営方法は変化するものの、毎日、生き生 きとした暮らしが繰り広げられている。 この自由で自立した暮らし方は小谷部先生の生き方そのもので あったと思う。誰にでも公平で、人と人を比較しない先生であっ た。これだ、というものに情熱をもって取り組まれる先生の姿勢 に多くの人が魅了され、先生の周りには常にたくさんの仲間がい た。それを象徴するかのように、小谷部先生の最終講義には教室 に入りきらないくらいたくさんの人が集まった。 大学を定年退職されてからは、鎌倉・材木座の築80年の古民 家を改修し、「座やまのべ」と名づけ、その一部を地域に開いた 暮らしを実践された。ご病気が判明してから3年が経過していた が、心地のよい暮らしのおかげか、お元気な日々を送られていた。 朝早く起きては、気持ちのいい散歩コースを歩くことが毎日の日 課だったそうだ。鎌倉でも、すぐに地元のコミュニティにとけ込 まれ、新しい仲間を作られた。そして、社団法人鎌倉・湘南景観 フォーラムを立ち上げ鎌倉湘南の景観を住民自らが守り育てる活 動を始められた。先生が体調を崩されたのはその矢先であった。 今もネット上に残る小谷部研究室のHPには、小谷部先生から 学生へのメッセージとして「居住環境形成に携わるあなたたちが 学ぶ事は沢山あるが、大切な言葉は コミットメント 。関心の あること、好きなことに思い切り打ち込む事で道が開ける。」と 記されている。先生自らが、最後まで好きなことに打ち込まれ、 私たちに道の開き方を見せてくださった。先生は鎌倉材木座の光 明寺の合祀墓に眠られている。 「共に住む・共に生きる・共に創る」 を実践されてきた先生らしい選択だと思う。 一般財団法人住総研 岡崎 愛子(大学院 住居学専攻 2003年 修了) 小谷部先生の著書 第 3 の住まい −コレクティブハウジングのすべて−( 住総研住まい読本 ) 著:小谷部 育子 , 住総研コレクティブハウジング研究委員会 出版:エクスナレッジ 小谷部先生 ( 研究室にて ) 住居学科 居住環境デザイン専攻 建築デザイン専攻 〒112 - 8681 東京都文京区目白台 2-8-1 TEL:03-5981-3452(住居学科中央研究室) URL:http://mcm-www.jwu.ac.jp/ jyu-ishi/jyu/ui/course0104a.htm 住居学科ルポルタージュ:http://project-j.jwu.ac.jp/ We are with you 東日本 住居学科 バックナンバーをご希望の方はオープンキャンパスでお声掛けいただくか、 左記の住居学科中央研究室にお問合せください。HPでも公開しています。
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