横浜医学,65,23-27(2014) 原 著 当院での生体腎移植における basiliximab 併用導入期免疫抑制療法の臨床効果の検討 1) 1) 2) 3) 寺 西 淳 一 ,服 部 裕 介 ,槙 山 和 秀 ,鈴 木 康太郎 , 4) 5) 1) 2) 齋 藤 和 男 ,増 田 光 伸 ,野 口 和 美 ,窪 田 吉 信 1) 公立大学法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科 2) 公立大学法人 横浜市立大学大学院医学研究科 泌尿器病態学 3) 横浜市南部病院 泌尿器科 4) 東神奈川駅ビル内科・泌尿器科 5) 増田泌尿器科 要 旨:今回,当院での生体腎移植における basiliximab(BLX)併用導入期免疫抑制療法の臨床効果 について後方視的に検討した. 術後 6 ヶ月以上経過した2000年 4 月以降の生体腎移植76例を対象とし, 導入期免疫抑制療法おける BLX 併用の有無により BLX +群と BLX -群に分け,急性拒絶反応及び 腎移植後 6 カ月以内のウイルス感染の頻度,腎移植術後入院期間,ステロイド使用量,移植腎の生着 率について比較検討した.急性拒絶反応は BLX -群では44.4%(4/9例),BLX +群では13.4%(9/67 例)で,症候性サイトメガロウイルス感染の頻度は BLX -群で高かった.移植後入院期間は BLX + 群が54日,BLX -群が83日で,ステロイド使用量は術後30日時点での 1 日投与量及び術後30日間の 累積投与量とも BLX +群は BLX -群の半量以下であった.また,移植腎の 5 年生着率は BLX -群 が88. 9%で,BLX +群は96. 5%であった.BLX +群では,ABO 式血液型不適合腎移植例等の免疫学 的ハイリスク腎移植例を有するにも関わらず,急性拒絶反応の発生率及びステロイド投与量の減少, 術後入院期間の短縮,そして移植腎生着率の改善などの利点が認められた.BLX 併用導入期免疫抑 制療法は,短期的には臨床的に有用な効果が得られたが,移植腎の長期生着率の改善への効果につい ては,今後さらなる長期経過観察に基づく検討が必要である. Key words: バシリキシマブ(basiliximab),生体腎移植(living donor kidney transplantation) , 免疫抑制療法(immunosuppression therapy) 緒 言 IL-2レセプター抗体である basiliximab(以下 BLX) 免疫抑制療法として BLX の併用を行ってきた.一般的 に BLX の併用により急性拒絶反応の発症率の減少やス テロイド投与量の減量などの利点が得られるとされてい は,早期の急性拒絶反応を抑制することから,腎移植に るが,その臨床効果について評価がなされていなかった おける導入期免疫抑制療法の併用薬剤の一つとして,保 ため,今回,当院での生体腎移植における BLX 併用導入 険収載され使用可能となった2002年以降,本邦でも広く 期免疫抑制療法の臨床効果について後方視的に検討した 用いられている.われわれは1996年 1 月より横浜市立大 ので報告する. 学附属病院にて腎移植を開始し2000年以降から横浜市立 大学附属市民総合医療センターにて腎移植を施行するに 対象および方法 至り,2013年12月末までに120例の腎移植手術を経験し 対象は2000年 4 月の当院開院より2013年12月末までに たが,当院においても2002年 6 月以降の全症例の導入期 横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移 寺西淳一,横浜市南区浦舟町 4 -50(〒232-0024) 横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科 (原稿受付 2014年 2 月 7 日/改訂原稿受付 2014年 3 月20日/受理 2014年 3 月28日) 23
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