入賞作品

平成27年度 リバティーキャリアプラン 「テーマ別課題研究」優秀作品
最 優 秀 賞
『現代日本の命名文化』
特進・文系5教科クラス 栗岡 優香里
“少子化”といわれる現代の日本で、毎年約100万人の赤ちゃんが生まれている。そのひとりひとりの
赤ちゃんに名付けられる名前。最近では、ゲームやアニメのキャラクターからとった名前、音の響きのみを
重視したために無理矢理な当て字の名前、漢字の意味と読み方を混同させ、間違った読みをする名前など、
あまりにも珍奇な名前の子どもが増えている。
「光宙(ぴかちゅう)
」
「希星(きらら)
」
「純(ぴゅあ)
」など
例をあげるときりがない。これらの名前に対して、一般的に2つの呼び方がされている。1つは“キラキラ
ネーム。
”
これは、
育児雑誌やメディアが子どもの名前について取り上げる際に多く用いられる呼び方である。
ドキュン
また、我が子にそういう名前をつけている親が呼んでいる。もう1つは“DQNネーム”という呼び方であ
る。まず、DQNというのはインターネット用語であり、常識を逸脱した人、非常識人を指す。DQNネー
ムはその派生語であり、常識では考えられないような奇抜な名前を揶揄する意味で使われる。主に奇抜な名
前に不快感、嫌悪感を持つ人たちからの呼び方である。キラキラネーム、DQNネームであるか否かは、名
前の持つ印象や好みが人それぞれ違うので、基準は決められていない。多くの場合、子どもに名付けをする
のは親であるが、では、なぜ現代の日本で珍奇な名前が増えているのか考えたい。
そもそも名前は、世相を反映するといわれている。その年に活躍したタレントの名前が名付けに影響する
という例は、一時的なものであるので、時代をあらわすとは言えない。大正時代から昭和時代初期にかけて、
女の子の名前は「久子」や「千代」という名前が多かった。末永く、という意味がこめられ、無病や長寿を
願う名前だといえる。この時代は医者が少なく、医療が普及していなかったため、子どもの死亡率が高かっ
た。また、昭和時代前半の男の子に多かった名前は、
「茂」
「実」
「豊」などである。日本は全体的に食料不足
であり、収穫をあらわすような名前が多くの子どもに名付けられた。そして、中国やアメリカと戦争を繰り
返していた時代には、男の子の名前に「勝」
「勇」
「武」
「勲」
「進」など戦いに関係する字を入れた名前が人
気であった。戦争に勝つという見通しが立たなくなるにつれて、さらに人気は高まっていった。ずっと時代
をさかのぼると、戦国武将には武田信玄、上杉謙信、織田信長など、
「信」の字を使った名前が多いことが分
かる。この時代は、謀略が渦を巻き、人間が最も信じられなかった。名前に「信」を入れることで、運命を
「信」の字に託したのかもしれない。つまり、名前は世相を反映するというよりは、日本人の欠乏感を反映
するといえるだろう。では、子どもに珍奇な名前をつける現代の親たちに欠乏しているものとは何であるだ
ろうか。
名付けは、親のセンスや個性を主張するためのチャンスである。親は、我が子に他の子どもとは違う“個
性的”な名前をつけることで子供に過大な期待をし、差別化を図っている。これは単なる親のエゴだといえ
る。珍奇な名前であれば、間違えられる度に訂正しなければならないし、特に子どものうちは名前をからか
われたり、いじめの対象になってしまう可能性もある。そして、子どもが成長したとき、受験や就職活動の
際の書類審査でも不利になるだろう。つまり、珍奇な名前をつける親たちに欠乏しているものは、こんな名
前をつけたら、子どもの将来はどうなるか、という想像力であると私は思う。
私の名前は母親が名付けてくれた。とにかく、
「優」の字を名前に使いたかったという。私は今まで自分の
名前をあまり気に入っていなかった。
「優」の字は画数も多く、2文字の名前がよかったと思ったことが何度
もある。
「優」の字を使った「優しい」という語には、周囲や相手に気を使って控え目である、優美で風情が
ある、おだやかであるなどの意味を持つ(広辞苑より)
。母親は、誰に対しても思いやりがある人間に育って
ほしい、という願いを込めたそうだ。今となっては、そういった意味を持つ名前を私は気に入っている。そ
して、私に名前をつけてくれた母親に感謝し、名前通りの思いやりを持った人間になりたいと思う。
親が子どものために考え、さまざまな願いを込めて付けた名前を「名前でいじめられた」とか「改名した
い」と子どもに言われたら、親も子どもも悲しい気持ちになるだろう。親にとって、名前は子どもへの最初
のプレゼントであり、名付けは最初の責任である。親は子どもの将来を見据えたうえで、名付けをするべき
だと思う。その名前を一生背負っていくのは、他の誰でもない子ども自身なのだから。 (1902字)
優 秀 賞
『支持を集める高校教師について』
スーパー特進・文系クラス 前田 梨帆
学生時代、あなたには好きな先生はいただろうか。その先生はどんな人物だったか、思い出してみてほし
い。あなたは教師をどのような面で評価し、支持していたのか、ということがそこから分かってくるはずだ。
私の将来の夢は高校教師である。生徒から信頼され、生徒達の思い出に残ることができるような教師にな
りたいと思っているが、具体的にはどのような教師がそうなれるのか、甚だ疑問である。よって、どのよう
な高校教師が生徒からの支持を集めるのかということについて、考えていこうと思う。
心理学教室の豊田弘司氏の調査によると、小・中学生が挙げる好きな教師の条件の多くが「明るい」
「親し
みやすい」など教師の性格的特徴であったことに対し、高校生が挙げたものは「知識が豊富である」
「授業が
うまかった」など、学習指導面に関するものが多かったようである。このことから私は、小・中学生の教師
に対する見方と、高校生の教師の見方はまるで異なるのだということに気付いた。小・中学生にとっては学
校内限定の保護者である教師は、高校生にとっては、いわば人生の先輩、師匠のようなものなのではないだ
ろうか。
また、同資料の「嫌われる先生」に関しても見ていこうと思う。
まず、嫌われる原因として、どの年代からも共通して多く挙げられているのは「自己中心的である」こと
である。だがこれに関してはレポート内で豊田氏も言及しているが、教師に限ったことではないだろう。こ
こでもやはり興味深いのは、高校生特有の観点である。小・中学生の「思いやりがなかった」
「えこひいきし
た」という意見に対し、高校生は「授業が下手だった」
「話が面白くなかった」など、やはり、教師としての
技能に重きを置いていることが見てとれる。但し、高校生が教師と生徒間のコミュニケーションを全く気に
していないかというとそうではなく、
「生徒と遊ばなかった」という意見も多数見られるため、小・中学生よ
り学習指導面を重視するとはいえ、やはり高校生も、教師に対してある程度の明るさや親しみやすさを求め
てはいるようだ。
では反対に、教師側は生徒に求められているものを理解しているのだろうか。近年、
「理想の教師像」なら
びに「教師に求められる資質能力」が、教員養成や教員採用の様々な場面で論じられている。大分大学教育
福祉科学部の鈴木篤氏によると、各大学の教育学部内で「理想の教師像」の探求に関する授業が増加し、そ
れに伴って学生が制作した「理想の教師像」に関するレポート(一部は販売目的)がインターネット上に溢
れ返っているようだ。その内容も私が前述したものと何ら変わりがなく、教師としての技能のことも生徒と
のコミュニケーションに関することもしっかりと記述されている。つまり、教師志望の若者や教育学部の指
導者は、高校生の要望をきちんと把握し、それを踏まえたカリキュラムを組んでいるということだ。私はこ
こで、教育学部在籍の学生の熱心さを感じたと同時に、ほんの少しの不安を覚えた。
教師が生徒の理想に合わせる教育現場、即ち、生徒という顧客のニーズに教師という商品が応えていく、
近年の教員養成はそのような方向に向かっていっているように感じたのである。鈴木篤氏もこの問題に関し
て、
「教員養成の使命が『教師像』の体現や『資質能力』の付与にあると考えられるようになるとすれば、そ
こには大きな問題が潜んでいる。
」と提言しているが、まったくその通りである。
文部科学省が述べる教師の「いつの時代にも求められる資質能力」では、一般に、
「専門的職業である『教
職』に対する愛着、誇り、一体感に支えられた知識、技能の総体」が必要であると記されている。そう、先
程述べた「商品化」傾向にある教師志望者には、きっと『教職』に対する愛着や誇りが足りないのではない
のだろうか。生徒の理想に近付くことももちろん大事である。だがそれが全てである筈がなく、度が過ぎれ
ば生徒に対して媚びているようにも捉えられる。また、高校生はそういった大人を敏感に見抜いては、尊敬
の念を抱けなくなるのではないだろうか。
ここまでの様々な考察を経て私は、卓越した学習指導能力や、生徒とのコミュニケーション能力はもちろ
ん大事だが、それらを先行して磨いていくのではなく、まず『教師』という仕事に愛着や誇りを持ち、それ
を基盤として、必要な能力を身につけられた人こそが、本当に生徒からの支持を集められる教師になれるの
ではないかと感じた。私もその中の一人になりたいものだが、きっと楽なことではないだろう。この文章を
書いた経験を、私の将来に活かせる日が来ることを切に願う。
(1883文字)
優 秀 賞
『何故、女は恋をすると綺麗になるのか』
特進・文系3教科クラス 村田 彩
恋をすると女は綺麗になる、という話を聞いたことがあるだろうか。
「マイナビウーマン」によると、85%
の女性が恋をすると綺麗になると感じた経験があるそうだ。
一般的に、恋愛中の女性は肌や髪のケアをきちんとするようになったり、ダイエットをしたりするものだ
ろう。そして、それら肌のケアやダイエットなどが普段なら三日坊主で終わってしまうのに、恋愛中なら続
けられたりした経験がある人もいるのではないだろうか。また、学校に好きな人がいれば毎日学校に行くの
が楽しくなり、
日常の景色さえも今までとは違って見えるものだ。
そしてそれは気持ちの問題だけではなく、
恋をすることで身体に何らかのいい変化が起こっているのではないかと考えた。
そこで、今回の課題研究では、恋をすることで身体に与えられるプラスの変化について調べ、まとめるこ
とにした。
恋をしているときに分泌されるホルモンは主に、フェニルエチルアミン(PEA)
、エストロゲン、ドーパ
ミン、オキシトシンの4つがある。これらは恋愛ホルモンと呼ばれている。
PEAは、
鎮痛剤として知られるモルヒネにも含まれている成分で、
言わば軽い麻薬のような効果がある。
上向きな気持ちにさせ恋を盲目にすることから、
「恋の媚薬ホルモン」とも呼ばれている。好きな人と目が合
ったり、手が触れただけでドキドキするのもPEAの作用だ。ただ、許されない恋をしているときほど大量
に分泌してしまうため、注意が必要だ。
美人ホルモンと呼ばれるエストロゲンは、主に外見の変化に影響する。例えば、腹部の脂肪燃焼効果によ
りウエストがくびれる、乳線を発達させ胸が大きくなる、コラーゲンを増やし肌のキメが細かくなる、髪の
寿命が延びる、などの効果がある。女性アスリートが恋愛を禁止されることがあるのは、恋愛をすることで
このように女性らしい体つきになることが原因の1つと言われている。
恋をして1ヶ月ほどで効果が出るが、
ストレスで分泌が減るため、ストレスの多い恋をしている人には逆効果だ。また、このホルモンは一生のう
ちにティースプーン一杯分程度しか分泌しないと言われている。
ドーパミンは快楽ホルモンと呼ばれ、快楽や快感につながる行動を再現しようとする。つまり、
「これは気
持ちいいからもう一回しよう。
」と訴える作用がある。交感神経を刺激することで、瞳孔を大きくして目力を
UPしたり、頬をピンクにする効果もある。また、ドーパミンなどの脳内物質が満腹中枢を刺激することで
食欲を低下させ、ダイエットにも効果がある。加齢とともに分泌が低下してしまうが、逆に言えば年を重ね
ても恋愛をすることは、ドーパミンの分泌低下をストップする有効な手段になる。
オキシトシンは母性ホルモンと呼ばれ、愛情・信頼を決定づける作用がある。母が子を思うように無条件
で相手を守りたいと思うようになり、心地よい安心感を感じさせる。幸せホルモンとも呼ばれ、ハグするこ
とで分泌量が増えると言われている。そのため、ストレスが溜まっているときに恋人はもちろん親子や友達
同士でハグすることは、ストレス解消にとても効果的だといえる。
そうは言っても、恋をしていなければ綺麗になれないというわけではない。これらの成分は外側から摂る
こともできるのだ。PEAは、チョコレートやチーズに含まれる香り成分と同じ。チョコレートがやめられ
なくなるのは、この成分の作用である。大豆食品はエストロゲンと同じ効果をもたらす。大豆に含まれるイ
ソフラボンが、エストロゲンと同じ構造をしているからだ。これで女性らしい体つきになることができる。
恋愛をしていない人も、恋愛をしている人と同じように綺麗になることができるのだ。
今回調査したことによって、恋をすることは毎日が楽しくなったりする以外にも、いい効果がたくさんあ
ることがわかった。恋は楽しいことばかりではないというのもその通りだと思うが、だからといって奥手に
なってしまうのはもったいないと思う。恋をすることは、それ以上に自分のためになる変化を与えてくれる
のだ。これは自分にも言えることだが、たくさんの人に恋をして綺麗になってほしいと思う。
また、この課題研究を通して、人間の身体は意外なことから影響を受けることがわかった。これからも、
気になったことは積極的に調べ、新しいことを知っていきたい。
(1764字)
審 査 員 特 別 賞
『風邪をひいたらプリン』
特進・文系5教科クラス 門田 明穂
「風邪をひいたときに何を食べたいですか?」と知人にアンケートを取った。上位には、
「うどん」や「お
かゆ」など、体を温めてかつ主食になるものが多数あげられた。そんな中、今回私がオススメするのは「風
邪をひいたらプリン」である。このアンケートでもおよそ5%の人が「プリンを食べたい。
」と答えていた。
私がこの研究を始めた動機は、単純に私がプリンを好きだからである。プリンのことを書くために、隠れた
効果について調べていた時、
「風邪の特効薬といえばプリン」
という言葉が出てきたのだ。
この卒業論文では、
なぜプリンが「風邪の特効薬」と言われるようになったのかについて、プリンの歴史とともに明らかにした
い。
プリンは、5世紀以前から「プディング」という名で作られていた。ただし、現在のような甘いお菓子の
ことではない。パン屑や小麦粉にラード、レーズン、卵などのありあわせの材料を混ぜ、塩とスパイスで味
付けしたものをナプキンで包み、蒸しあげたものを指していた。16 世紀後半のフランスで、具を入れず、卵
液のみを用いて固めたものが作られるようにあり、いわゆる「カスタードプリン」が完成した。日本への伝
来は諸説多々あるが、江戸時代であるとするものが多いようである。当然、卵を用いているため、大変高価
で庶民に手の届くものではなかった。アンケートで「プリンといえば?」と尋ねると必ず答えられる「プッ
チンプリン」の発売は 1942 年の事である。一般家庭に普及するようになったのは、1964 年にハウス食品か
ら「プリンミックス」が発売されてからだ。普及するようになってからおよそ 50 年。なお衰えず、現在も
愛され続けているプリンの発明はすばらしいものだと言える。
そんなプリンが、風邪をひいたときに医者も勧める「手に入れやすい特効薬である。
」ということはご存知
だろうか。プリンといえば、普通、カスタードプリンを思い浮かべる。カスタードプリンは主に卵と牛乳、
砂糖で作られている。なかでも卵は発熱によく効く食材と言われている。栄養価も高く、良質なタンパク質
や鉄分、ミネラル、ビタミンが豊富に含まれている。そんな卵の効能からプリンは、少量で栄養を補え、発
熱により奪われた水分を簡単に補給できる食品なのである。風邪をひくと、喉の炎症が原因で食欲があって
も食事が取れないこともある。そのような時に、柔らかく、喉への刺激が少ないプリンであれば、喉の炎症
を抑えて、栄養を効率的に補給できる。小さいころ風邪をひくと、母親から「今日はプリンを 2 個食べても
いいよ。
」と言われて嬉しくなった人も少なくはないはず。こんな心温まるストーリーも、プリンであれば作
り出すことが可能なのだ。
風邪にはインフルエンザのような特効薬がないことは周知の事実である。風邪の対処法といえば、有名な
のは手洗いうがいである。それでも罹ってしまった時には、安静にして睡眠をとることが一番だと言われて
いる。風邪薬は、一時的に風邪の症状を抑えることはできる。しかし、完全に治すことを目的とはしていな
い。風の治療方法は、基本的には自然治癒があげられる。そのため、風邪のピーク時には食欲不振になるこ
とが多い。これは、
「風邪のウイルスをやっつけることが忙しいから、食べ物を消化する余裕がないよー。
」
という本能による防衛反応である。食欲不振の時に多量の食事を一度に取ることは、消化不良など、さらに
体調を崩すことになるため勧めることはできない。風邪により食欲不振になったときにも、少量で胃の消化
に費やすエネルギーが少なく、栄養満点のプリンがオススメなのである。プリンを風邪のピークが過ぎたこ
ろに食べれば、回復を促進する効果が期待できる。もし、友人が風邪をひいてしまった時には、ピークを過
ぎたころを見計らって、お見舞いにプリンを届けてみてはどうだろうか。たとえ相手が「風邪をひいたらプ
リン」を知らなくても、喜ぶに違いない。
今回研究した「風邪をひいたらプリン」ということは、医者も勧めることがあるが、医学的な根拠はない。
しかし、
「医学的根拠がない」事を理由に、プリンを試さないことは非常に残念である。今回、この卒業論文
では、栄養価とプリンの性質の面から考察を行ったが、別の観点からも証明される時が来るかもしれない。
まずは、睡眠と通常の食事で栄養を摂ることが一番である。それでも不安な時や食事が充分に取れない時に
は、この研究を思い出して、
「風邪をひいたらプリン」を試してもらいたい。
(1824字)
審 査 員 特 別 賞
『熱帯魚が人間に与える影響』
スーパー特進・文系クラス 円城寺 湧介
最近、受験勉強をしていて悩むことがよくある。そんな時、飼っている犬と遊んだり、熱帯魚を何気なく
見ているだけで気持ちがスッキリして、また机に向かう気力が湧いてくる。
そこで、アニマル・セラピーということについて調べてみた。
アニマル・セラピーとは、動物により治療をアシストすることである。日本語では「動物介護療法」と訳
され、医療の一部であり、医師の指導により病気治療や心身の回復を目的としている。動物との関わりが人
間の健康の質を向上させる場合、全てをアニマル・セラピーと呼ぶことができるそうだ。
例えば、日本の「さくら苑」という老人ホームでラブラドル・レトリバーを2匹飼ったところ、それまで
開設当時には4割いた寝たきりの患者がゼロになったり、アメリカでは犯罪歴のある精神障害を持った患者
に動物の個人飼育を許したところ、自殺の試みが減ったり、信頼関係が改善されたり、薬物治療の請求率が
低くなる、といった報告がされていた。私はアニマル・セラピーの一種である熱帯魚について詳しく述べた
い。
私が熱帯魚と出会ったのは友達の家に遊びに行った時だ。私は熱帯魚のグッピーという魚の鮮やかな尾び
れに魅力を感じた。
それから私は病院やレストランなどで熱帯魚を見ると時間を忘れてしまうぐらい見入ってしまうようにな
った。そして私は家で熱帯魚を飼育するようにした。初めは温度や照明などわからないことだらけだった。
熱帯魚の飼育は思った以上に大変なものであった。私はある日、水槽を眺めていると自分がリラックスして
いることに気がついた。熱帯魚は知らず知らずのうちに、私を癒し、大きな影響を与えてくれていると思っ
た。私は、今日熱帯魚が私たちに与える効果を調べてみた。ここで、一つの実験を例に挙げる。まず、水槽
の前にホワイトボードを置き、それを 10 分間眺めてもらう。ホワイトボードを撤去した後、15 分間水槽を
眺めてもらう。この実験から水槽を眺めることで、人間の意志・思考に重要な働きがあるとされる前頭葉に
1~4Hz の周波数で、眠気を帯びていたり、脳が休んでいる状態のときに現れるデルタ波が強い被験者が
確認された。これは脳が眠りについているのと同じ状態といえる。しかし、目は水槽を見ていて、水生生物
の飼育設備をさすアクアリウムを眺めることで日常のストレスから開放されて脳が穏やかな状態になってい
ることがわかった。つまり、病院に置いてある水槽は患者さんたちを穏やかな気持ちにするために置かれて
いるということがわかった。他にもいくつかの実験をあげてみたいと思う。まず、多数の被験者にパソコン
作業を行ってもらい、その後、熱帯魚がいる空間といない空間で体の変化を計測したところ、高周波の略語
で、3秒から4秒程度の周期を持つ呼吸を信号源とする変動波の HF と低周波の略語で、メイヤー波と呼ば
れる約10秒周期の血圧変化を信号源とする変動波であるLFの値が熱帯魚を眺める時間が7分以内の人は高
く、7分以上の人は低いという結果が出た。これは LF・HF の値が高いほどストレスを感じているというこ
とを示し、値が低いほどリラックスしていることを示している。よって熱帯魚を7分以上眺めることで心拍
変動にリラックス効果が表れるということがわかっている。実際に私も勉強や部活で疲れて帰宅したときに
飼っている熱帯魚を何となく見ているとリラックスした気持ちになる。飼っている熱帯魚はグッピーだけで
なく、体の上半分が青で下半分が赤の「ネオンテトラ」や「エンゼルフィッシュ」などもあり、見ていてお
もしろい動きをするので、水槽にひきつけられ、やらないといけないことも忘れてしまうぐらいずっと見て
しまう。もう一つ気になる実験を挙げたいと思う。高齢者施設に本物の水槽とモニターに映した疑似水槽を
交互に設置し、その間の施設利用者の行動をビデオにより観察した結果、擬似水槽を設置した期間より本物
の水槽を設置した期間のほうが高齢者が水槽を眺めている時間が倍以上であることがわかった。熱帯魚は高
齢者の好奇心を高めるとともに趣味として最適で生きがいにもつながっているということがわかった。しか
し、熱帯魚を飼うことは良いことばかりではない。熱帯魚は手入れをするのがとても大変である。水槽の水
換えをするのに何時間とかかってしまう時もある。そのため、私は何度も飼育するのをやめようと思ったこ
ともあった。でも、熱帯魚に癒され、今でも熱帯魚を飼っている。
以上から、私は熱帯魚は人間に癒しを与え、くつろがせてくれると思う。私は現代のストレス社会に熱帯
魚の飼育をもっと活用させていくべきだと思う。
(1881字)
審 査 員 特 別 賞
『父親はなぜ娘に嫌われるのか。
』
特進・文系3教科クラス 篠原 あかり
「大きくなったらパパのお嫁さんになる」娘を持つ父親なら一度は言われたことがあるのではないだろ
うか。ところが、成長とともにいつの間にか娘と距離が出来てしまい、今では仲が良かったあの頃を懐か
しく感じている父親は少なくないはずだ。幼い頃は懐いていた娘が、ある日突然「お父さんの洗濯物と一
緒にしないで」と口にするようになる。なぜ父親に対してこんなにも感情に変化が生じてしまうのか、父
親の立場になって考えていきたい。
近年よく耳にするようになった「イクメン」という言葉。これは2010年に労働大臣が、少子化打開
の一助として社会に浸透させた言葉である。単に育児中の男性を指すだけでなく、進んで育児休暇を取得
するなど育児を積極的に行う男性や、育児を楽しみ自らも成長しようとする男性、または将来的にそうあ
りたいと思っている男性も含まれている。そして、この「イクメン」に父親と娘の良好な関係を保つヒン
トが匿されているのだ。
子供が大人になっても忘れないことは、どこまで親が自分のために体を動かしてくれたかである。その
中で最も重要なことは、特に幼児期から小学校低学年までの間にどれだけ子供と一緒に遊んだかというこ
とだ。ライフメディアリサーチバンクが行った調査によると、10 代の女の子は「父親が好きか」という質
問に 54.8%が「好き」と答えている。それに対し「母親が好きか」という質問には 78.2%が「好き」と答
えているのだ。この約 23%の差はどこで生じるのか。それが、どれだけ子供と一緒に遊んだかということ
に繋がると私は考える。
父親は家の外に働きに出掛け、家族のためにお金を稼ぐことに徹する。だいたいの父親が、何不自由な
い暮らしをさせてあげることが娘にとって一番の幸せであると思いがちだ。確かに、それは間違ったこと
ではない。しかし、娘にとっての一番の幸せは父親と話しをしたり、笑い合ったり、そんな些細なことで
時間を共有することなのだ。父親は娘が幼児期の頃から朝から晩まで働くため、一緒に時間を過ごすこと
は極めて難しい。保育園や幼稚園に入園すると、ますます父親が関わる機会は減るだろう。娘は成長し徐々
に父親との時間が減っていくうちに、父親に対する感情が薄れていくのだ。では、父親にとって娘と関わ
る時間が少ないということがどれほど心の距離をつくってしまうのか。このことを裏付けるために、ここ
では母親と娘の関係を例に挙げる。
娘が父親を嫌う話はよくあるが、娘が母親を嫌う話は意外と少ないように感じる。それはやはり、母親
と娘が一緒に過ごす時間の長さが大きく関わっていると思う。今では専業主婦は年々減少傾向にあるが、
私が幼い頃は母親が専業主婦であることが大半であった。母親と娘は家の中で常に時間を共有し、娘が保
育園や幼稚園に入園しても、行事を通して母親との時間は一定に保たれていた。父親ほど娘との距離が開
かないのは、どの時期を切り取っても母親との時間は変わらずに存在するからだろう。
私自身、最近「イクメン」が増えていると常々感じるようになったのは、私が幼い頃の父親像と今の父
親像では随分差があるからかもしれない。スーパーマーケットには家族連れが増え、娘と手を繋いで歩く
父親の姿をよく見かけるようになった。こうした、父親が娘との時間を大切にしようとする思いはこの何
十年の間に強くなり、育児に参加するという形で行動に表れるようになった。
「イクメン」の父親を持つ
娘は、父親が自分のために体を動かしてくれたことを記憶する。そして父親と共有した時間の記憶は、娘
の成長過程の中で生き続けるだろう。父親と娘の間にその記憶さえあれば、良好に関係を保つことができ
るのである。
今の日本に「イクメン」を増やすことは、これからの父親と娘の関係に大きな変化をもたらすだろう。
父親は娘が幼児期の頃からの育児を通して、娘から信頼を得ることができる。このことが大きく影響し、
父親は娘が成長してからも心の距離に対して不安を感じることはないはずだ。これは今までの、娘が成長
すれば父親に対して接触を拒否したり、不快感を表したりすることは当然であるという概念を打ち破るこ
とになる。そして、父親が近い将来、娘に「パパみたいな人と結婚したい」と言わせることができる日も、
そう遠くはないかもしれない。
(1751字)