石油>OPEC総会

Evolution Japan Co., Ltd.
EVO Commodity Report
平成 27 年 06 月 08 日発行
OPEC、原油生産目標枠を据え置きへ
●OPEC、日量 3,000 万バレルの生産目標枠を据え置き
中東や南米、アフリカの 12 産油国で構成する石油輸出国機構(OPEC)は 6 月 5 日に、ウィーンの本部で開催し
た総会で、原油生産目標枠を現行の日量 3,000 万バレルで据え置くことを決定。昨年夏以降に加速した原油安は
ひとまず一服しており、当面は現行政策を維持して市場動向を見守るべきだと判断した様だ。
OPEC は声明で、「原油急落の勢いは弱まり、価格はわずかに上昇している」と現状維持を決定した背景を説
明。原油安が進む中で迎えた昨年 11 月の前回総会で減産による価格維持を見送り、シェア防衛を重視する姿勢を
鮮明にした。結果、今年 3 月には指標価格の WTI 原油価格が一時 1 バレル=42 ドル台と 6 年ぶりの安値まで下落。
生産コストが高いライバルのシェール・オイルは減産や投資抑制を強いられ、OPEC の戦略は一定の効果を上げた
形になった。ただ、足元の価格回復を受け、シェールの生産が再び活発化する兆しがある。このため、盟主サウジ
アラビアなどは積極的な供給を続けて価格抑制に努め、シェア確保を図る構えだ。
なお、OPEC のバドリ事務局長は、ウィーンでの記者会見で、
OPEC の生産量割合
原油価格が 1 バレル当たり「100 ドルになることはもはやない、こ
れは事実だ」とし、OPEC の生産目標は目安であり、生産枠では
ないと述べ、カタールのサダ・エネルギー・産業相は、OPEC 加
盟国は国別の生産枠を決めず、全会一致で生産目標を維持す
ることで合意したとし、加盟国は相場に満足しており、トレンドは
前向きとの見方を示している。
また、サウジアラビアのアルハヤト紙によると、同国のヌアイミ
石油鉱物資源相が現状の市場について 100%満足していると述
べた様だ。
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平成 27 年 06 月 08 日発行
OPEC の生産目標と WTI 原油価格の推移
サウジアラビアの原油生産量
市場では、年内の原油相場を 50-70 ドルで推移するとの見方が多くなっている様だ。依然として米国のシェールオ
イルの損益分岐点は 65-70 ドルと見られているだけに、サウジアラビアに代わり、シェールオイルが今後需給の調
整弁となって行くのであれば、現在よりのレンジが引き上がる様だと世界需給の緩和感が意識され易い。一方で、
50 ドルに近付くと採算コスト割れに伴い減産が意識され易そうだ。
なお、米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが 6 月 5 日に公
世界の石油生産シェア
表したデータによると、最新週の米石油掘削リグ稼働数は前週
比 4 基減の 642 基となり、26 週連続で減少。過去最長の長さを
更新するなど、2010 年 8 月 13 日の週(636 基)以来の低水準と
なったものの、テキサス州パーミアン盆地など主要シェール鉱区
4 ヶ所で、石油掘削リグの稼働数が増加。テキサス州西部とニュ
ーメキシコ州にまたがる最大のシェールオイル鉱区、パーミアン
盆地で 1 基増加するなど、足元の価格回復を受け、シェールの
生産が再び活発化する兆しが出始めている。
米エネルギー情報局(EIA)が 6 月 3 日に発表した週間石油在
米国の石油掘削リグ稼働数と米原油生産量
庫統計によると、米国の原油在庫は 5 週連続、WTI 原油の受け
渡し拠点であるオクラホマ州クッシングの原油在庫は 6 週連続
で減少となっている。
ただ、米国の産油量は 2 週連続で増加となり、過去最高を更
新しており、依然として減産の気配は見えず。
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●ヌアイミ・サウジ石油相「現在の市況に 100%満足」
6 月 5 日付のアラブ圏紙アルハヤトによると、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相は現在の石油市況に 100%満
足していることを明らかにした様だ。また、同相は、石油需要は拡大、世界経済は緩やかに回復しつつあり、OPEC 非加
盟国の供給は減少したと指摘。1 バレル=100 ドルへの回帰は不可能かとの質問に対しては「世界に対し、あまり相場に
とらわれないようアドバイスしている」と回答。「それらは市場で決まるものだ。投機家は多く、市場には幾つかの要素が
あり、相場は日々上下している」としている。
●イラン石油相「大半の OPEC 加盟国、1 バレル=75 ドルを原油適正価格と認識」
イランのザンガネ石油相は 6 月 5 日に、大半の OPEC 加盟国が 1 バレル=75 ドルが適正な原油価格だとの見方で一
致していると述べている。また、現在の原油相場に「満足していない」とした。
●UAE エネルギー相「原油市場の需給均衡回復には時間要する」
アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相は 6 月 5 日に、原油市場の需給均衡回復には時間が掛かるとの
見方を示した。また、昨年 11 月の原油生産目標の据え置き決定は適切だったと述べている。
●イラク石油相「原油価格と需要は増加へ」
OPEC 総会前に、イラクのアブドゥルマハディ石油相は 6 月 5 日に、原油の価格と需要が増加すると予想した一方、同
日の OPEC 総会ではあらゆる選択肢が協議されると述べた。また、原油価格は今年末までに、1 バレル=75 ドルに向け
て上昇するとしている。
●OPEC 加盟のペルシャ湾岸諸国、太陽光発電でも競争?
OPEC 加盟国では、ペルシャ湾岸諸国間の大規模太陽光発電所の開発競争が、現在進行中の石油市場シェア争いと
ほぼ同様に重視され始めている。サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相は 6 月 3 日に、同国が太陽光発電を育成す
るなら「面積や晴れの日が続く点で相対的に強みがある」と指摘。「2040 年まで、あるいはその前まで化石燃料を輸出す
る代わりに、ギガワット規模の電力を輸出できるようになる」との見通しを示した。
また、クウェートのオメール石油相は、同国が 2030 年までに電力需要の 15%を再生可能エネルギーで賄う計画を明ら
かにし、2017 年までに太陽光発電で 100%電気を調達するガソリンスタンドを 100 ヶ所設置する考えを示した。
●IEA 事務局長「石油市場のシェア争いは続いている」
国際エネルギー機関(IEA)のファンデルフーフェン事務局長は 6 月 4 日に、サウジアラビアが主導する OPEC と、米シ
ェールオイル業者が繰り広げている国際石油市場におけるシェア争いは終わっていないとの認識を明らかにした。
同事務局長は、「サウジにはなお生産余力があるが、米国が軽質タイトオイル(LTO、シェールオイル)を生産している」
と指摘。OPEC 加盟国は市場シェア防衛に専念しているものの、技術革新が米国で操業する多数の小規模シェールオイ
ル業者の生産コスト削減を後押ししているとした。
また「(OPEC 加盟諸国は)市場シェアの維持を望んでいることは確かだ。しかし、同様に彼らに伝えたのは、シェア争
いが終わったとは考えるなということだ」と付け加えている。
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平成 27 年 06 月 08 日発行
●インドネシア、年内の OPEC 再加盟に意欲
インドネシアのサイド・エネルギー鉱物相は 6 月 4 日に、約半年後に開かれる OPEC 総会で再加盟を果たすことに期待
を表明している。インドネシアは 6 年前に OPEC を脱退したものの、先月同相はジョコ・ウィドド大統領が再加盟案に同意
したと発言している。
●5 月ロシア原油生産量、旧ソ連後の最高を更新
ロシア・エネルギー省が 6 月 2 日公表した統計によると、5 月の原油生産量は日量 1,071 万バレルとなり、旧ソ連崩壊
後の最高水準を維持した模様。5 月の原油生産量はトン換算で 4,528 万 8,000 トンとなり、4 月(4,383 万トン)から増加。
一方、ガス生産量は 482 億 8,000 万立方メートル(日量 15 億 6,000 万立方メートル)となり、4 月(526 億 4,000 万立方
メートル)から減少している。
(6 月 08 日 ERI 大湖 一樹 記)
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