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「『見て 聞いて 感じて 目に見えない心の育み』を支える保育を目指して」
~ 保育者の専門性を向上させた『おはなしの会』の実践と、思いを伝える子どもの育ちを通して ~
社会福祉法人大曲保育会 はなだて保育園
発表者 田村 睦子
1.はじめに
本園は大仙市、旧大曲市の北西にある花館地区に位置している。花館地域は、伝統行事「川を
渡る梵天(2月)」で知られている。園舎の周囲は振興住宅地が増加し、小学校・公民館が隣接し
ている。本園では、それらの施設との交流を積極的に進めるとともに、地区の自然や行事と触れ
合うことで、ふるさと教育を進めている。
平成25年度は園児135名、115世帯で兄弟での入園が多い。3・4世代同居家族の他、
核家族も増え、両親共に就労し、長時間園で過ごす子どもが増えている。
2.研究テーマ設定の理由
私たちは「はっきり自分の気持ちを表現する子」等の保育目標に近付くため、保育の中で各年
齢の発達に応じた様々な体験を子ども達が主体的に積み重ねられるように環境を整え、個に応じ
た援助を心がけてきた。その過程で生まれる子ども達の「たのしい」
「おもしろい」
「うれしい」
といった様々な感情を、確かな育ちにつなげていけるような職員集団でありたいと願い、実践や
研修を積んできた。
平成24年度当初、前年度の自己評価結果を受け、これまでの保育の取り組みを振り返ったと
ころ、
「絵本の読み聞かせに対する姿勢は今のままでよいのか」
「子どもの確かな育ちにつながっ
ているのか」との問題に職員が気付いた。魅力あるお話が提供できていなかった、自分の思いを
相手に伝えようとする意欲を高める援助が不足していたという課題が明確になった。また、子ど
も達は夢中になって遊ぶことが多いものの、傍観したり、思いはあっても声に出して伝えようと
する意欲が低い子も多いといった課題が浮かび上がった。それをきっかけに、
「実践を通して職
員の専門性を高めたい」
「自分の気持ちを表現する子を育てたい」との声が職員から挙がった。
平成25年度は、前年度の内容の充実を図りつつ、この課題を解決するため、
『おはなしの会』
の多様な表現方法を工夫したり、PDCAサイクルに基づいて保育の改善を図り、職員の専門性
を高めるとともに、自分の思いを伝えようとする子どもを育成したりする研究を共通実践する本
主題を設定した。
ここで「『見て 聞いて 感じて 目に見えない心の育み』を支える保育」とは次のことを指す。
子ども達は環境に主体的に関わる時、五感で感じ取ったり、新鮮な目で物事を捉えたりしようと
する。その際、子どもの心情が揺れ動かされるため、自分の気付きや思いを言葉や身振りなど様々
な方法で伝えようとする。そういった過程を踏んだ保育を展開し、心の動きを読み取ることであ
る。「思いを伝える子どもの育成」とは次のことを指す。魅力ある環境に主体的に関わり、多様
な体験をした子ども達には、様々な思いが生まれる。しかし、個人差や発達によって伝える意欲
にも差が生じてしまう。保育士が子どもの思いを受け止め、安心して伝えられる雰囲気をつくっ
たり、伝え合いによって互いの思いを理解したりする援助を行うことで、自ら思いを伝えようと
する意欲を高めることである。
3.研究の仮説
①読み聞かせ等の活動において、全職員が魅力ある教材や伝え方等を工夫し、実践結果の
共有・分析を行うことで、職員の専門性が高まるのではないだろうか。
②言葉における指導において、発達段階に応じた「思いを伝える具体像」を設定する。そ
して、その意欲を高める手立てを明らかにして保育及び評価をすることで、自分の思い
を言葉で伝えようとする子どもが育つのではないだろうか。
4.仮説にせまる重点的取り組み
①職員の専門性の向上等
(ア) 個々の職員が子どもにとって魅力あるおはなしの伝え方を工夫し、読み聞かせをする。
(イ)外部の専門家を招き、絵本や読み聞かせの良さを研修し、専門性向上につなげる。
(ウ)絵本に興味を持つための環境づくりと保護者への発信。
(エ)実践結果を園内研修で共有・分析し、指導の改善につなげる。
(オ)聞く力に係る子どもの変容の評価(保護者アンケートなど)
。
②発達段階に応じた「思いを伝える子どもの具体像」等
(カ)0~5歳児の発達に応じ、
“思いを伝える”ための重点的項目と子どもの具体像を設定
する。
(キ)
「思いを伝える子どもの具体像」に応じ、子どもが伝えようとする意欲を高める手立て
を実践する。
(ク)
“思いを伝える”ことについて評価と結果の共有化や、指導の改善を図る。また、子ど
もの変容を記録する。
(ケ)全職員で組織的、計画的に研究を進める体制をつくって実践する。
5.実践 <資料>4.①(ア)
本園では『おはなしの会』を通して職員の話し方や魅力的な読み聞かせの環境構成等、職員の専
門性向上を目指し、園長や給食担当を含む全職員で週1回(水曜日)のペースで行った。前半の対象
は3歳以上児だったが、最終的には1歳児まで広げた。その実施内容の特徴は以下のとおりである。
(1)全職員で取り組んだおはなしの会の内容
H24 年度
H25 年度
・パネルシアター
12 回
・パネルシアター
12 回 ・プロジェクター
発表
・エプロンシアター 6 回
・エプロンシアター 6 回 ・コップシアター
方法
・ペープサート
4回
・ペープサート
4 回 ・素話
・絵本
9回
・3 歳以上児
19 回
・3 歳以上児
19 回
・全園児
・2~3 歳児クラス
4回
・2~3 歳児クラス
4回
対象
・1~3 歳以上児
6回
・1~3 歳以上児
6回
(2)行事を通しての実践研修
H24 年度
・七夕まつり (7 月)パネルシアター
・保育まつり (10 月)パネルシアター、劇
・保護者学習会(10 月)絵本、指人形など
秋田県読書支援センター 田丸美穂氏
・豆まきの会 (2 月)パネルシアター
・保護者会総会(2 月)素話
・ありがとうの会(3 月)劇
H24 年度
ありがとうの会
『三びきのこぶた』
4回
1回
4回
1回
H25 年度
・七夕まつり (7 月)プロジェクター
・フリー参観 (7 月)エプロンシアター・プロジェクター
・すいかわり・プール納め(8 月)プロジェクター
・保育まつり (10 月)劇
・保護者学習会(10 月)絵本、ギター演奏
大仙市男女共同参画交流推進課 高橋寛光氏
・クリスマス会(12 月)プロジェクター
H25 年度
保護者学習会
『絵本ライブ』
(3) 職員の専門性向上の具体
① 実践が研修への刺激に
②保育士同士の発表で切磋琢磨と学び合い
・子どもの喜んでいる姿を見て、嬉しく感じた。
・先輩の実践を見て、内容を覚えるだけでなく、子
どもの様子を見ながら演じる姿が刺激になった。
・普段は接することの少ない以上児の子ども達にも
名前を覚えてもらえる良い機会になった。(未満
児担任)
・同僚に見られるということの緊張感から、繰り返
し何度も練習して実践に臨むようになった。
・お話の引き出しが増えた。
・新たなジャンルのお話への興味が広がった。
③多様な表現方法の追求
④魅力ある環境の設定(場、もの等)
・エプロンシアター、パネルシアターのみではなく、
新しい試み(プロジェクター、コップシアターな
ど)にチャレンジできた。
・複数で取り組み、アイディアを出し合うことがで
きた。
・一人一人の持ち味を生かした導入と実践の工夫が
見られた。
・子どもの目線になり、工夫(演じる場所、舞台の
高さ、座る場所など)した。
・小道具や楽器(ピアノ、太鼓など)、効果音を使
用した聴覚の刺激により、子ども達の興味を引き
つけることができた。
歌いながら
絵本の読み聞
かせ♪
コップシアター
えいがえほん
『サンタさんから
きたてがみ』
わぁ!
ちょうちょだ!
⑤活動後の相互評価
・良かった点、改善点を全職員で記入し、分析する
ことで、自分の実践を振り返ることができた。
・自信がついたり、新しい表現方法を得たりする良
いきっかけとなった。
⑥親子で楽しむ場の提供・・・・
家庭でもお話の継続
・フリー参観での“おはなしの会”(プロジェクター)
の実施。
・園文庫の工夫。
・おすすめ絵本コーナーの設置。
・畳とテーブルを用意して、
親子で楽しめる雰囲気作り。
(4)事例1.2歳児
子どもの思いが連続し、総合的な遊びが展開された実践
導入:絵本『おおきなかぶ』
(言葉)
・クラスで読み聞かせをする。
・
「うんとこしょ、どっこいしょ」のかけ声
が楽しく、繰り返し楽しんでいた。
《つぶやき》
保「かぶがこんなに大きくなったら、どうする?」
子「
“うんとこしょ、どっこいしょ”ってぬけばい
いんじゃない?!」
遊びの展開・広がり:運動会(健康・人間関係)
♡手立て♡ 収穫を喜んでいる姿があり、運動
会の競技内容に取り入れ、親子で楽しめるよ
うにした。
遊びの展開・広がり:お楽しみ会(発表会)
(表現・人間関係)
・劇ごっこ『おおきなかぶ』をする。
・役になりきって楽しむ。
♡手立て♡
・お面を製作する。
・繰り返し楽しんできたお話を一緒にやること
で、楽しさを共有していった。(担任がおじ
いさん役になり参加)
主な活動:野菜を育ててみよう!
(環境)
・プランターに野菜(ラディッシュ、トマト、枝豆、
かぶ)の種を植える。
・プリンカップで水やりをしたり、草むしりをする。
♡手立て♡玄関先に置くことで、
登降園時、親子で生長する様子を
見て楽しめるようにした。
遊びの展開・広がり:収穫
(環境)
・保育士や友達と一緒に、野菜の収穫をする。
・収穫した野菜を食べる。
♡手立て♡ 野菜の生長や収穫する
喜びを感じられるように
関わっていった。
遊びの展開・広がり:おはなしの会 (言葉・表現)
保育士が演じた『おおきなかぶ』を見て…
・劇中の歌が印象的で口ずさんで楽しむ姿があった。
♡手立て♡
・おおきなかぶごっこを楽しめる環境を整えた。
*かぶ役になった保育士を子どもが
引っ張り、雰囲気を楽しむ。
*手作りの“大きなかぶ”を
用意する。
◆成果
・子どもの興味を基に、遊びが連続し発展していったので様々な気付きや疑問が生まれた。それらを保育
士や友達に伝えたいという思いが芽生え、多くの言葉を獲得することができた。
・導入の工夫により、野菜についての子どもの興味を高めることができた。さらに遊びの広がり・発展に
より教育5領域の総合的な指導ができた。
事例2.5歳児
読み聞かせで経験したことを遊びに生かした実践
・「おはなしの会みたいにやってみたい!」と子どもからの声がある。『おはなしの会』では、聞き手とし
て楽しんできていたが、
“保育士のように演じる側になってみたい”という子どもの願いに気付かされ
た。保育士は、子どもが主体となれる環境をつくっていった。それが、
「小さい子に見せてあげたい!」
という発表意欲の向上につながった。
【子どもの願いを受け止めた環境づくり…劇ごっこ『十二支のはじまり』
】
① 話し合い
・どのように演じて
みたい?
・何のおはなしが
いいかな?
・どんな材料で作る?
② ペープサート作り
③ 劇の練習
・おはなし(十二支の
はじまり)の動物の
絵を描く。
・ハサミで切り取る。
・描いた絵にストロー
を付ける。
④劇場ごっこ
・椅子を並べ、テーブルクロス
をかける。
・チケットを作る。
⑤劇ごっこ
・小さい組の子を招待して演じ
てみせる
・十二支の歌を歌う。
・絵本のストーリーをイ
メージしてセリフを
話す。
・ナレーター役になって
絵本を読む。
⑥ お楽しみ会
・自分でやって
みたい役を演じ
てみる。
・セリフを自分
なりの言葉で
話す。
◆成果(〇)と課題(▲)
〇『おはなしの会』等を繰り返してきたことで、子どもに「自分もやってみたい」
「遊びをしたい
(再現したい)
」という意欲が高まった。子ども達が自分達で遊びを進めようとする主体的な関
わりが見られたため、様々な気付きや工夫、問題解決等心の動きが見られた。その過程で、自分
の思いを友達や保育士に知ってほしいため言葉の伝え合いが生まれた。
▲『おはなしの会』の教材研究は良くできた。しかし、事後に子どもの感想や想像したことを保育
士が受け止めきれていなかった。それを拾い上げ、子どもの主体性を遊びに引き出す工夫が必要
と思われる。
<資料>4.①(イ)
年
月
平成24・25年度自主研修
講
師
研修内容
H24. 6
福音館書店 相談役
松居 直氏
H24. 7
大曲朗読の会 主宰
奥田 敦夫氏
H25. 1
福音館書店絵本研究室 瀬川 洋二氏
秋田県子ども読書支援センター
田丸 美穂氏
福音館書店絵本研究室 瀬川 洋二氏
H25. 4
H25.12
絵本講演会 『ことばのちから』
自主研修
『絵本について』
『文章の書き方について』
自主研修
『絵本について』
絵本講演会
『豊かな育ちを支える子どもと絵本の関わり』
自主研修
『絵本について』
◆自主研修を受けて、保育士が学んだこと…
・絵本の奥深さを知り、もっと様々なジャンルの絵本を子ども達に読んであげたいと思った。
・様々な読み聞かせの仕方があることを学び、保育に取り入れていくことで、自分の引き出しを増
やすことにつながった。
・文章を書くにあたって、
「通りの良い文章(相手に的確に用件や気持ちを伝える)奥田氏談」とは
何かを頭に入れながら意識して取り組めるようになってきた。
<資料>4.①(ウ)
環境づくり
1歳児の絵本棚(取り出しやすい位置)
≪保護者への発信≫
・
『園文庫だより』発行
・園だよりやクラスだよりに記載
絵本コーナー(貸出)季節の絵本の入れ替え
おすすめ絵本の紹介
≪実践記録の掲示(一部)≫
冊子
<資料>
4.①(エ) ワークショップによる保育士や子どもについての実態を分析
◆成 果
〈子ども〉
・『おはなしの会』を繰り返すことで、姿勢が良くなったり、集中して話を聞くようになった
りした。
・お話への興味や関心が高まり、期待を持って参加していた。
・想像力が育まれ、表情豊かにお話を聞いていた。
・知っているお話でも様々な表現方法に出会ったことで、新鮮な思いで聞こうとするように
なった。
〈保育士〉
・職員同士で保育内容を評価し合うことは、自分の保育を振り返る機会ともなった。
・様々なジャンルのお話にも興味が広がった。
・今まで以上に子どもの興味、関心を引き出す魅力的な環境構成等を工夫するようになった。
・お話を選ぶ際、子どもの興味や発達、経験についても深く考えるようになった。
◆課題・改善策
〈子ども〉
課題
・話の内容を理解しているか。
・お話は喜んで聞いているが、絵本
を大切にしようという気持ちにつな
がっていない。
改善策
・話の内容を演じ手や担任が判断して、年齢に応じた
参加の仕方を考える。
・子どもが絵本を読みたいと思える環境を整える中で
一緒に整頓したり、修繕したりしながら、保育士が
絵本を大切に扱うことを常に意識する。
〈保育士〉
課題
改善策
・『おはなしの会』で使用した教材を、 ・教材を職員間で貸し借りしたり、子どもが自由に触
日々の保育に活用できていないので
れたりして、遊べるようにする。
はないか。
・見やすさを考えると、エプロンシア ・演じ手の人数を個人から複数にし、参加する子ども
ターやパネルシアター等、似たよう
の人数を変えたりする。また、演じる場所や表現方
な表現方法になってしまう。
法も変えていく。
・
『おはなしの会』に対する取り組み方 ・『おはなしの会』に対する思いや子どものイメージ
への共通理解が職員間でできていた
を壊さないような表現方法、環境設定等について職
か。
員間で研修し、再確認する。
◆課題解決へ向けた方向性
・知識を深めることも大切だが、まずは実践して子どもの表情や反応をよく観察することから、
自分達の課題に対する答えが出ることもあるのではないかということを意識し、取り組んでい
く。
・様々な視点があり迷うこともあるが、一人一人の保育士の個性を生かせるようにするためにも
相互評価により、互いの良さを見つけ合い、認め合うようにする。
・子どもにお話の楽しさを感じてもらうためにも、まずは保育士が心からお話を楽しみ、その気
持ちを表現できるようにしていく。
<資料>
4.①(オ)
保護者アンケートより
《目的》園で実施している『おはなしの会』等の取り組みへの保護者の意識把握とニーズ理解に
より、子どもへの思いの共有を図る。
(1)アンケート結果(平成25年度10月実施 一部抜粋:回答率80%)
◆『おはなしの会』を知っていますか?
◆読み聞かせをしていますか?
いいえ
11%
したいが
時間が持
てない
6%
はい
89%
時々
63%
【分 析】
ほとんどの保護者が知っているものの、知らな
い保護者も1割いた。新入園児もしくは、3歳
未満児の保護者に多いのだろうか?
【改善策】
毎週行っている『おはなしの会』をたくさんの
保護者に知ってもらうために、玄関先のお知ら
せボードを利用して、会の様子を貼り出してい
く。
◆園文庫の利用は、どのくらいですか?
2~3ヵ
月に1回
8%
ない 週3回
13%
10%
月2回
14%
月3回
10%
【分 析】
ほとんどの家庭で、読み聞かせをしている。し
かし、仕事で帰りが遅くなってしまうなどの理
由で、なかなか時間が持てない家庭があるよう
だ。
【改善策】
園で読んでいる絵本を紹介したり、絵本棚など
の環境をさらに充実させたりしていくように
する。
◆絵本やお話について園からの発信に共感していますか?
週2回
11%
月1回
17%
毎日
31%
分から
ない
13%
週1回
17%
【分 析】
頻度は様々であるが、90%の家庭が利用して
いる。利用のない10%の家庭の中には、借り
ずにお迎えの際に絵本コーナーで楽しんでい
る親子もいるようだ。
【改善策】
・貸し出しの仕方を大きく貼り出し、園文庫の
借り方を分かりやすく伝えていく。
・
“季節のおすすめの絵本”のコーナーを作り、
興味を広げていけるようにする。
未記入
3%
して
いる
84%
【分 析】
ほとんどの保護者が共感してくれていた。しか
し、子どもの具体的なエピソードをもっと知り
たいようである。
【改善策】
園での取り組みをさらに家庭へと発信してい
く必要がある。
・エピソードを知らせていく。
・おすすめの絵本や今日読んだ絵本を紹介して
いく。
(2)保護者の声
《0 歳児》
担任からおすすめ絵本を
教えて頂き、購入の参考
にしている。
《1 歳児》
「月刊絵本」を一緒に見ると、ペー
ジをめくるだけでお話をしてくれ
るのでびっくり!!
《5 歳児》
ゲーム、DVD の時間が増えてしまい
反省…。触れ合える絵本を活用して
いきたい。
<資料>
クラス
4歳児
項目
聞く力
伝える力
5歳児
H25 年度作成
4.②(カ)
聞く力
伝える力
子どもの具体像
興味・関心を高めるための手立て
○様々な言葉に興味や関心 ○子ども達の話によく耳を傾け、十分に聞くようにしてい
を持ち、保育士や友達の
く。また、子ども達の気持ちを汲み取り、丁寧に対応し
話を聞くことを楽しむ。
ていく。
●感じたこと、思ったこと、 ●話したいという気持ちに共感し、自分の思いや考えを伝
想像したことなどを様々
えられるよう、代弁したり仲立ちしたりしていく。
な方法で表現する。
○相手の話の内容を理解し ○友達の話す内容に興味が持てるよう意図的にクラスで
ようとする。
の話し合いを作り、友達の伝えたいことを想像させた
り、理解できない子には仲立ちしたりしていく。
○話の内容から物事や様子 ○導入の仕方や話し方、静かな空間など、子どもが主体的
をイメージしようとす
に話を聞こうとする環境づくりを工夫する。
る。
○クラスでの話し合いを通し、みんなでイメージを共有で
きるようにする。
●感じたことや考えたこと ●子どもの話にじっくりと耳を傾け、共感しながら会話を
を自分なりに言葉で表現
楽しむ中で、相手に伝わりやすいような話し方や言葉を
しようとする。
知らせていく。
●経験を通して得た知識を ●自分の伝えたいことが相手に伝わる喜びを味わえるよ
創意工夫して表現する。
うに、人前で話す機会や場面をつくっていく。
●その子なりの工夫や表現をする意欲を認め、伝えようと
する意欲を高める。
(紙面の都合上、0~3歳児クラスは割愛)
<資料> 4.②(キ・ク)
◆4月当初のクラスの実態
PDCAサイクルを意識した実践事例 4歳児
・保育士2名(男女各1名)の担任。男児17名、女児10名、計27名。
・快活な子が多い。言葉で思いを十分に伝えられず、すぐ手が出してしまい、トラ
ブルにつながっていた。
・A男及びB男とも月齢が高く、体が大きく、目立つ存在である。A男は、大人と
の一対一の関わりを求め、保育士の気を引こうとする行動が多い。B男は力があ
り、言葉よりも先に力任せの行動に出てしまう。おんぶや抱っこでのスキンシッ
プは難しいが、保育士が父母の役割を果たすべきと考えた。
◆平成25年度の取り組み
今年度作成した発達段階に応じた「思いを伝える子どもの具体像」にせまる手立てに基づいて、
指導計画を具体化し、実践・評価した。また、その結果を定期的に「園内研究委員会」でも共有化
し、PDCAサイクルを生かし、指導の改善を図ってきた。以下は、その様子である。
◆事例1.6~7月頃 遊びの様子について
様 子
手 立 て
価
・一人一人の思いを十分に受け
止め、やり取りに必要な言葉
を知らせる。
♡保育士や仲の良い友達の話を進ん
で聞こうとする子が増えた。
♠集団の中では話を最後まで聞く力
が弱い。
・好きな遊びがあればじっく ・一緒に遊びを楽しむ中で、気
りと楽しむこともある。
持ちを受け止めながら遊び
・前に座っている友達を足で
に必要な言葉を知らせてい
A
押したり、友達に言われた
く。
男
ことに腹をたてて叩いたり ・居場所や遊びを把握し、保育
する。
士の配置に配慮しながら、危
険な行動は未然に防ぐ。
♡人の話に耳を傾けようとする姿も
出てきた。
♠友達や保育士と一緒に遊びを楽し
む姿も増えてきたが、気に入らな
いことがあると怒ったり、部屋か
ら出て行ったりすることも多い。
全体
・興味のあることにはよく耳
を傾けるようになってきた
が、集団活動では話を聞こ
うとする意欲が低い子もい
た。
評
・自分の思い通りにならない ・言葉にならない気持ちを汲み
と言葉よりも先に友達を叩
取って代弁していく。
いたり、蹴ったりする。
・気持ちを伝えようとしている
B
時には、じっくりと話を聞
男
き、共感していく。
♡友達のブロックを壊した後、相手
の気持ちに気付き、「ぼく、謝り
たい」と自分から謝りに行く姿が
見られた。
♠気持ちが落ち着かない日もあり、
乱暴な行動も見られる。
◆園内研究委員会の話し合いによって保育方針を決定
全体
・話を聞く態度や姿勢を繰り返し伝えていく。
・自分なりの言葉で伝えようとする気持ちを受け止め、必要な言葉を補っていく。
・一人一人の姿をしっかりと把握し、気持ちに寄り添っていく。
・周りの友達に興味や関心を持ち、一緒に遊びを展開していく楽しさを味わえるようにしていく。
個別 A男・B男
・友達との関わり方などを伝える際に、保育士が大きな声で話しかけると、子どもの感情が高ぶり、保
育士の声が耳に入らなくなるので、優しくささやくような言葉かけをしていく。
・抱っこなどのスキンシップの重要性を再度感じ、積極的に触れ合っていく。
・友達の遊びに興味を持ったり、遊ぶ楽しさを感じたりできるようにしていく。
◆事例2.10月頃~12月上旬 11月おたのしみ会(発表会) 『ウサギとカメの劇ごっこ』
様 子
改善を図った手立て
評 価
・お話の内容を理解して友達 ・一人一人の良さを認めたり、頑
♡一人一人の子どもの良さを認め
と一緒に楽しむが、中には
張りをほめたりして、関心や意
たことで、保育士や友達の話に
興味を持てず参加しない
欲が高まるようにする。
耳を傾ける姿が増え、劇ごっこ
全
子もいる。
を十分に楽しめた。
体
♠友達の様子を否定的に捉える子
もおり、遊びが中断してしまう
場面が見られた。
・気に入らないことがあると ・目立つ場所で踊れるように誘い ♡保育士からほめられることを喜
「もうやらない」と機嫌を損
かける。
び、自分から進んで劇ごっこに
A
ね、その場から離れるが、 ・
「〇〇がよかったよ!!」と頑張り
参加する姿が増えた。
男
担任を気にする姿も見ら
を繰り返しほめる。
♠友達にちょっかいを出してしま
れる。
う姿も見られた。
・喜んで参加し、歌や踊りを ・
「よし、じゃあやろう!!」と張り
する。
切っている気持ちを受け止め、
B ・違うことに興味が向いた
意欲が高まるようにしていく。
り、
友達とふざけたりして
・友達とのセリフのやり取りや、
男
しまう。
役になりきった遊びを楽しんで
いけるようにする。
♡劇ごっこの中で友達をリードし
ていくような姿が見られた。
♡友達とやり取りする楽しさを味
わったことで、劇ごっこに集中
し、ふざける姿が少なくなった。
全体
◆成果(〇)と課題(▲)
○PDCAサイクルを生かし、保育士間での情報の共有や、園内研究委員会で
保育方針を明確にし、具体的な手立てや子どもの姿を評価・改善することで、
子どもの望ましい変容が見られるとともに、保育士の指導の幅も広がった。
▲手立てを具体化・見出すことが難しい。
○保育士や友達の話に興味を持ち、聞こうとする態度が身に付いた。
▲保育士にもっと認められたい、ほめられたいという気持ちがある。意欲を高
めつつもその時々の状況に合った様々な援助の方法を工夫していきたい。
○友達との遊びに深まりが見られつつある。
▲気持ちの切り替えがうまくできなかったり、言葉で気持ちを伝えられなかっ
たりする姿が見られる。保育士が遊びや生活の中で言葉を補ったり、友達と
の関わりを楽しむことができる環境を工夫したりしていく。
A男
B男
<資料>4.②(ケ)
◆研修計画
月
H24
H25
6
目
内
容
・全体計画研修
実践
・自己評価
7
研究テーマについて
研究の方向性と取組
みについて
実践
9
実践
10
11
実践
実践
12
研究のまとめ
・園目標の分析
・伝える力についての子どもの具体像
・研究主題・仮説・重点の検討
・『4歳児の遊び』
・『おはなしの会』についての
ワークショップ研修会
・『絵本・おはなし』についての保護者アンケート
・『おたのしみ会』
・保護者アンケートの結果まとめ
・研究の振り返り
し
の
会
具体像にせまる実践
な
◆研究組織
全体指導
は
6
お
実践
6
H25
項
実 践 と カ ン フ ァ レ ン ス
年
園長
研究委員会
園長補佐 主任 保育士7名(各クラスリーダー等)
実践(おはなしの会)
全職員(保育士 給食担当)
実践(4歳児の事例)
保育士(前担任 現担任)
実践(保護者アンケート)
アンケート項目:園長 保育士
用紙作成、集計、分析、情報発信:園長 園長補佐
保育士
6.研究のまとめ
(1)成果
○読み聞かせの実践が研修への刺激となり、全職員で多様な表現方法を追求し、魅力ある環境
の設定ができた。その過程で職員同士が切磋琢磨し合い、学び合うとともに相互評価により
互いの良さを認め合ったり、改善策を見出したりしたことで職員の専門性が著しく向上した。
○職員全体で振り返り、課題を共通理解したことで、専門性を向上させたいという思いが強く
なった。
『おはなしの会』や思いを伝える子どもの育ち等、職員が研修、共通実践した。クラ
スの枠を超え、互いに高め合うとともに職員一人一人の子どもに関わろうとするチームワー
クが強まり、協同性が確保できた。そのため、園全体の雰囲気がより良くなった。
○『おはなしの会』や読み聞かせなど子どもの興味を高める工夫を図ったことで、子どもが環
境に主体的に関わり、遊びの広がりや発展につながった。そして、子どもの様々な発見や驚
き、疑問が生まれ、保育士や友達に伝えたいという心の動きが見られた。また、友達の話を
聞いたり、伝え合ったりして、思いを理解しようとする意欲も高まった。
○全職員が年齢に合った子どもの発達段階を意識し、具体的な子ども像を掲げ、指導計画に反
映させた。そして見通しを持った保育を展開したことで、評価しやすくなり、改善点を見出
し、より良い保育へとつなげていくことができた。
(2)課題
▲新年度、職員の定期異動に伴いメンバーが変わるため、職員の人数が多いと全員が同じ方向
に向かって研修を進めることが難しい。取り組みを継続的に評価し、結果をみんなで共有す
ることを早い段階でしていく工夫が必要と思われる。
▲保育士は子どもの思いを傾聴できるようになったが、内面的な思いを探る力が不足している。
子どもがどんなことを感じているのか、どんな願いを持っているのかを更に拾い上げて遊び
や生活につなげていけるよう双方向的な心のつながりを深めていきたい。