OS リング 溶接施工マニュアル

OS リング工法:BCJ 評定-ST0135-08(平成 27年11月20日付)
OS リング
R
溶接施工マニュアル
岡部株式会社
1.はじめに
このマニュアルは OS リングの溶接施工の手順や注意点を示すものです。OS リングを溶接施工する際は必ずこのマニュアルをご一
読願います。このマニュアルに記載していない事項については以下の指針および仕様書により施工を行ってください。
・建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事(日本建築学会)、鉄骨工事技術指針(日本建築学会)
梁ウェブに国土交通大臣認定を取得した鋼材を用いる場合において、このマニュアルに記載していない事項については各鋼材の認
定における諸規定により施工を行ってください。尚、このマニュアルは予告なく変更する事がありますので、予めご了承ください。
2.施工および施工管理者
鉄骨製作業者に属する鉄骨製作管理技術者による施工管理のもと、溶接施工を行ってください。
3.施工手順
①けがき・孔あけ
②位置決め
③組立溶接
④本溶接
全周隅肉溶接
組立溶接
dw
+
− 2
2
OSリング
梁ウェブ
貫通孔位置
シャコ万力
OSリング
最外径側
となる面
孔あけ位置にけがきを行い、梁 厚肉面(最外径側となる面)を梁ウェ シャコ万力等により OS リングを
ウェブに貫通孔をあけます。
ブ面に合わせてください。貫通孔中 ウェブ面に密着させ、OS リング
心に OS リング中心を合わせます。
外周に組立溶接を行います。
図 1 施工手順
シャコ万力等を取り外し、本溶
接を行います。
4.施工時の注意事項
①けがき・孔あけ
貫通孔径 dw は表 1 に示す適用貫通孔径の範囲とすることができます。貫通孔径 dw の許容差は±2mm とします。
孔あけ後、貫通孔まわりの切断バリはグラインダー等で除去してください。
表 1 適用貫通孔径 dw の範囲
100S
125S
品名
100L
125L
適用貫通 φ75
φ101
孔径 dw
∼100
∼125
150S
150L
φ126
∼150
175S
175L
φ151
∼175
200S
200L
φ176
∼200
250S
250L
φ201
∼250
300S
300L
φ251
∼300
350S
350L
φ301
∼350
400S
400L
φ351
∼400
②溶接面の清掃
OS リングおよび梁ウェブ溶接面は溶接に先立ち、水分・スラグ・ごみ・さび・油・塗料・はがれや
すいスケール、およびその他溶接に支障となるものはあらかじめ適切な方法で除去してください。
450S
450L
φ401
∼450
梁ウェブ
溶接面
③位置決め
OS リングのタイプⅠは刻印面を上に向け、厚肉面(最外径側となる面)を梁ウェブ面に合わせて
ください(図 6 参照)。タイプⅡは、上下どちらの面でも溶接可能です。また、タイプⅠの上面のセ
ンターラインは位置合わせの目安としてお使いください。
e1
e2
dw=d の場合
d
e1
e2
OSリング
φ451
∼500
φ501
∼600
OSリング
溶接面
OSリング
e1
e2
e1+e2≦4
OS リングの重量は 500S 及び 300Lが約 23
kg、600S 及び 350L が約 35kg、400L は約 50
kg、450L は約 60kgと重量物となるため、移動
の際はクレーンを用いる等、取扱には十分に
注意して下さい。
600S
図 2 溶接面の清掃
OSリング
OS リングと貫通孔のずれは図 3、図 4 に示
す e1 および e2 を測定することで管理してくだ
さい。
500S
dw<d の場合
e1-e2≦4
e1
d
e2
OSリング
dw
dw
図 3 OS リングと貫通孔のずれ(dw=d の場合)
図 4 OS リングと貫通孔のずれ(dw<d の場合)
OSリング
図 5 に示す通り、OS リングと梁ウェブのすき間は 2mm 以下と
なるように密着させてください。梁ウェブが面外に変形し OS リン
グとのすき間が 2mm を超える場合は、適切な対処により梁ウェ
ブを矯正してください。
2mm以下
はりウェブ
図 5 梁ウェブと OS リングのすき間
④組立溶接
組立溶接は被覆アーク溶接あるいはガスシールドアーク溶接で行い、溶接棒・溶接ワイヤは本溶接と同等のものとしてください。
組立溶接箇所は等間隔に 3∼4 箇所、1 パスとし、ショートビードとならないように注意してください。組立溶接のビード長さ、脚長は
表 2 の値としてください。
組立溶接の予熱は本溶接と同様に適正な管理を
表 2 組立溶接ビード長さ、脚長
行ってください。予熱温度目安を表 4 に示します。
梁ウェブの鋼種
ビード長さ
脚長
SA440 以外の鋼種
40mm 以上
4mm 以上
SA440
50mm 以上
6mm 以上
⑤本溶接
表 3 に示すように、OS リングは製品仕様毎に必要隅肉溶
接サイズ S を規定しています。OS リングには図 6・図 7 の赤
丸で示すように、上面の刻印もしくは内面のシールにより、
必要隅肉溶接サイズ S を表示しています。隅肉溶接サイズ
は必ず S 以上としてください。ただし、梁ウェブの鋼種が
SA440 の場合は、刻印およびシールに記載の S の値によら
ず 100S・125S・150S の隅肉溶接サイズ S を必ず 6mm 以上
としてください。
岡部株式会社
OSリング
ロットNo. :
100S
必要隅肉
溶接サイ ズ
A3J17
5
厚肉面をウェブ面と合わせて下さい
図 6 OS リング上面刻印例
表 3 必要隅肉溶接サイズ
品名
100S
100L
125S
125L
150S
S(mm)
5(6※1)
9
5(6※1)
9
5(6※1)
品名
250L
300S
300L
350S
350L
S(mm)
9
7
12
7
12
※1
赤字の( )内の数値は、梁ウェブの鋼種が SA440 の場合
図 7 OS リング内面のシール例
※刻印およびシールのデザインは予告なく変更することがあります。
150L
9
400S
7
175S
6
400L
13
175L
9
450S
7
200S
6
450L
13
200L
9
500S
8
250S
6
600S
8
本溶接の予熱温度の目安を表 4 に示します。
気温が 5℃以下になる恐れがある場合、表 4 の数値よりも 25℃高い予熱温度を適用し、表 4 に「予熱無し」とあるときは 40℃まで加熱
を行ってください。予熱温度は 200℃以下で行うものとし、予熱の範囲は溶接線の両側 100mm の範囲を行うものとします。
表 4 予熱温度の目安
梁ウェブの鋼種
SN400,SM400,
SN490,SM490,
TMCP385
SA440※4
SS400
SM520,TMCP325,TMCP355
低水素系被覆アーク溶接
予熱なし※3
予熱なし
50℃以上
125℃以上
※2
CO2 ガスシールドアーク溶接
予熱なし
予熱なし
予熱なし
85℃以上
※2
フラックス入りワイヤによる CO2 ガスシールドアーク溶接の予熱温度は低水素系被覆アーク溶接に準じる
※3
SN400B,C でウェブ板厚 25mm を超え 32mm 以下の場合は 50℃以上
※4
建築構造用高性能 590N/mm2(SA440)設計・溶接施工指針 抜粋(社団法人日本鉄鋼連盟高性能鋼利用技術小委員会)
溶接方法
4.溶接材料
溶接材料は表 5 に示す規格を満たし、かつ 490N/mm2 級高張力鋼に適用可能なものを使用してください。
表 5 溶接材料
溶接方法
被覆アーク溶接
ガスシールドアーク溶接
種類
軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒
軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用マグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ
軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ
規格
JIS Z 3211
JIS Z 3312
JIS Z 3313
5.溶接方法
溶接は OS リング外周の全周隅肉溶接とし、溶接姿勢は水平隅肉溶接とします。
必ず鉄骨ウェブ面を上面に向け、溶接条件(溶接姿勢・環境 etc)を確保してください。
OSリング
s
2mm以下
6.検査
図 8 に示す通り、本溶接の隅肉溶接サイズは必ず所定の必要隅肉溶接サイズ S
以上としてください。また、OS リングと梁ウェブのすき間は 2mm 以下としてください。
OS リングと貫通孔のずれは図 9, 図 10 に示す e1
および e2 を測定することで管理してください。
ただし、図 10 に示す dw<d の場合は、e1-e2 が
4mm を超えても、OS リング内円の中にウェブ貫通
孔が全て含まれていれば構造性能上は問題ありま
せん。
e1-e2 が 4mm を超えるとずれが大きくなりますの
で、隣り合う OS リングやガセットプレートなどの他部
材との納まりに注意してください。その他、外観・表
面欠陥検査の合否判定は「鉄骨精度検査基準(日
本建築学会)」に依ります。不合格となった欠陥箇
所は適切な処置を行ってください。
はりウェブ
図 8 梁ウェブと OS リングのすき間
OSリング
OSリング
dw<d の場合
dw=d の場合
e1
e1
e2
e2
e1-e2≦4
e1+e2≦4
d
e1
e2
e1
OSリング
d
e2
OSリング
dw
dw
図 9 OS リングと貫通孔のずれ
(dw=d の場合)
図 10 OS リングと貫通孔のずれ
(dw<d の場合)
7.その他
(1)熱ひずみ
OS リングを溶接すると、梁が熱ひずみにより変形することがあります。ひずみが発生した場合は必要に応じて適切な矯正を行ってくだ
さい。特にウェブ片側に連続して溶接する際はご注意ください。
(2)防錆剤の除去
OS リングは防錆処理のため、全面に防錆剤【タセトシルバー※5 銀灰色:(株)タセト製】を塗布しています。タセトシルバーは、溶接の
際、塗膜除去の必要はありません※6 が、溶接環境(温度・湿度等)や溶接条件(電流・電圧等)により溶接欠陥(ピット等)が発生する恐
れがあります。溶接欠陥が発生した場合は「鉄骨工事技術指針・工場製作編(日本建築学会)」に準じ、適切な処置を施してください。
前もって OS リングの溶接箇所(側面および下面のメッシュ部)
のタセトシルバー(図 11 参照)を除去する場合は、下記の例を参
考に除去願います。
除去部分
●ブラスト処理。
●ガスバーナー(酸素とアセチレン混合)等で塗膜を焼却後、
ワイヤブラシ等による除去。
●グラインダー等による塗膜剥離。
●塗料剥がし剤(ペイントリムーバー等)による除去。
※5 タセトシルバーは(株)神戸製鋼所の登録商標です。
※6 タセトシルバー製品カタログを参照願います。
除去部分
溶接面
溶接面
OS リング タイプⅠ
OS リング タイプⅡ
図 11 タセトシルバーの除去部分
(3)溶融亜鉛メッキ
OS リングに溶融亜鉛メッキをする場合は下記連絡先にお問い合わせ願います。
全面に塗布しているタセトシルバーは溶融亜鉛メッキ工程(脱脂処理等)で完全に除去できない可能性があります。残存したままメッ
キをすると不メッキとなるため、ブラスト処理等により除去する必要があります。
メッキ工程中においては、通常の施工方法を行うと溶接をしていない OS リングの内側から酸が侵入し、不メッキや錆の発生原因とな
ります。酸が侵入しないように OS リングの内側も隅肉溶接をしてください。
(4)OS リング内径の寸法許容差
OS リングの内径は仕様上、タイプⅠで最大 4mm、タイプⅡで最大 11mm 小さくなることがありますので配管の納まりなどに注意してく
ださい。OS リングの内径が小さくても構造性能上は問題ありません。
上記事項にご留意くださいますよう、お願い申し上げます。
なお、ご不明な点は右記連絡先までお問い合わせ願います。
連絡先:岡部株式会社 TEL 03-3624-6201
tr
標準
貫通孔径
do
br
d1
d
d2
br
d1
d
tr
付図1.OSリング形状寸法
※1
適用
貫通孔径
dw
タイプ
φ125 φ101∼φ125
タイプⅡ
鋼材の種類および製造方法
φ150 φ126∼φ150
タイプⅠ 建築基準法第37条二号 国土交通大臣認定材
認定番号:MSTL−0352、0475
(SNR490B相当)ローリング鍛造加工
φ200
タイプⅡ STKN490B 鋼管切断加工 または
SN490B 厚板切断加工
Ⅰ
φ175 φ151∼φ175
φ176∼φ200
φ250 φ201∼φ250
※1:原則、梁ウェブ貫通孔径は標準貫通孔径とする。
ただし、OSリングの内径(d)の75%まで小さく φ300
することができる。
※2:300L、350L、400S、400L、450S、
φ350
450Lおよび500Sにおいて、梁ウェブ貫通孔径
をOSリング内径(d)まで拡げたい場合は、必ず事
前に岡部(株)に問い合わせること。
φ400
※3:内径(d)は仕様上、表数値よりタイプⅠで最大4mm、
タイプⅡで最大11mm小さくなる事があるので納ま
φ450
りに注意する。
※4:括弧内の数値は、梁鋼種がSA440の場合の必要隅 φ500
肉溶接サイズを示す。
φ251∼φ300※2
Ⅱ
Ⅰ
φ301∼φ350※2
φ351∼φ400※2
Ⅱ
φ401∼φ450※2
φ451∼φ500※2
φ600 φ501∼φ600
※3
d1
d2
br
100S
100L
125S
125L
150S
150L
175S
175L
100
100
125
125
150
150
175
175
122
144
151
177
178
208
207
241
120
140
149
171
176
202
203
233
20
33
24
39
27
44
30
50
11
22
13
26
14
29
16
33
200S
200L
250S
250L
300S
300L
350S
350L
400S
400L
450S
450L
500S
200
200
250
250
300
313
350
363
413
413
463
463
513
234
270
290
332
346
391
400
448
461
508
525
568
575
230
262
286
322
340
32
53
39
63
43
64
47
73
48
84
44
88
51
17
35
20
41
23
39
25
42.5
24
47.5
31
52.5
31
600S
613
683
57
35
d
φ100 φ75∼φ100
タイプⅠ
寸 法 (mm)
品 名
−
394
−
−
−
−
−
−
−
tr
必要隅肉
溶接サイズ
S ※4
5(6)
9
5(6)
9
5(6)
9
6
9
6
9
6
9
7
12
7
12
7
13
7
13
8
8
付図2.設計
OSリングの採用を検討の際は、「OSリング工法設計ハンドブック」を必ず確認すること。
■検討および使用の決定
貫通孔無しで構造設計を行った結果から得られる貫通孔部分の存在応力が、OSリング工法を用いた貫通孔部分の耐力を上回ら
ないことを確認する必要があるので、OSリングの使用の決定は構造設計者により行う。
■適用範囲
※14
※14
L2
L1
L2
L2
■適用範囲の梁
断面形状
H形断面
梁せい
1500mm以下
フランジ幅
600mm以下
L2
■貫通孔の規定
※5:梁がSS,SM材又はSN400Aの場合は25mm以下とする。
※6:SN400Aは塑性化部に適用不可とする。
※7:部材種別がFC・FDランクの場合は塑性化部に適用不可とする。
※10
貫通孔の 1/2・D−(1/3・Deー1/2・dw)以上、
※8:ただし、ウェブ幅厚比は96 235/F以下とする。
※10
偏心量e’1/2・D+(1/3・De−1/2・dw)以下、
(F:梁の許容応力度の基準強度)
かつ、tf+a+tr+1/2・dw以上、
※9:F>385の場合は1/2D以下とする。
dw
※9
2/3・D以下 、かつ
D−2(tf+a+tr)以下
ウェブ厚
32mm以下 ※5
鋼種
SS400,SM400
※6
SN400 ,SM490
L1
SN490,SM520
L2
F≦440の大臣認定
建築構造用鋼材
梁の ※7
部材種別
D
d
dw
e'
e'
L2
※8
FA、FB、FC、FD
D−(tf+a+tr+1/2・dw)以下
※10:F>385の場合は
1/2・D−(1/4・Deー1/2・dw)以上、
1/2・D+(1/4・Deー1/2・dw)以下とする。
70mm以上 ※14
※11:梁に軸力が作用する場合は適用不可とする。
D:梁せい、dw:貫通孔径、tf:フランジ厚、tr:OSリング肉厚
※12:梁せい方向に連続して設けた貫通孔は適用不可とする。
a=max(30,r+1.8S)、
※13:OSリングを両面に取り付ける場合は、同じOSリングを
ただし、B>400の場合、a=max(40,r+1.8S)
取り付ける。
B:梁幅 、S:OSリングの隅肉溶接サイズ
※14:梁端部近くは応力が大きくなり、設置不可となる場合が
r:H形鋼のフィレット寸法またはビルトH鋼の溶接サイズ
あるので注意する。
De=D、ただしD>1200の場合は、De=1200
1.5dw以上(dwは大きい方)
免責事項
万一 OS リング工法に問題が発生した場合は、下記の免責事項をふまえた上で対応させていただきます。
●本マニュアルに記載した注意事項が行われずに発生した不具合。
●本マニュアルに記載した事項に反した施工による不具合。
●不可抗力(天災、地変、地盤沈下、火災、爆発、騒乱など)により発生した不具合。
●瑕疵(かし)を発見後、すみやかに届けがされなかった場合。
2015.1124_1