これが先輩たちのワザ! まずは質問を「意識」しよう

私が考える質問力
越部恵美 さん
これが先輩たちのワザ!
まずは質問を「 意識 」しよう
まずは、ケアマネジメント業務の経験豊かな先輩たちに「 私が考える質問力 」についてうかが
いました。意外や意外、皆さん饒舌!その理由は、いくら経験を積んでも日々これ一発勝負の
難しさがあるから。逆に言えば、経験ある人はそれだけ意識して日々質問をしているともいえま
す。答えで共通していたのが、何のために質問をするのか意識するということ。まずはそこから
トライしてみましょう。 ( 編集部 )
◉ ほっと ・ はぁとステーションてのひら 所長 ( 広島県 )
(プロフィール) ケアマネ兼訪問看護師。昨年、県が認定する
「ケアマネマイスター広島」に
質
問する上で大事なのは、まず相手に「 関心を
こにあるか分からないことも多い。ここで注意して聞いている
持ってますよ」と分かってもらうこと。 相談援
と、体調のことやお金の問題や家族の心配など、繰り返し
助職である前に一人の人間として、あなたを助
出てくるフレーズが必ずあります。たとえうまく話せなくても、
けたい、一緒に考えたいという姿勢を見せなくては、相手も
心を開いてくれません。
相手に関心を持つのが大前提
繰り返し出てくる言葉をキャッチ
なので質問するとき
は、相手に威圧感を
与えないよう細心の注
と思います。私の経験
ではそこにニーズが隠
れていることも多いで
す。
とはいえ以前は、自
意を払うようにしていま
す。目線を本人と同じ高さに合わせて、ゆっくりと話しかけ
分が確認したいことだけを急いで聞いてしまったために、何と
る。時間がないなど自分の都合に左右されないよう、本人
なく関係性がギクシャクしてしまい、ラポールの形成をするの
のペースに合わせながら傾聴し、キーワードを探します。
にかなりの時間を要したことがありました。以降、多少時間
初回は特にそうですが、本人は何から話していいか、整
中村 雅 彦 さん
頭の中で伝えたいことは分かっている。だから繰り返すのだ
理がついていない場合が多いです。話が前後し、主旨がど
はかかっても、対人援助職が自分本位で仕事を進めてはな
らないと肝に銘じています。
◉ 介護サービスほっと 管理者 ( 長野県 )
(プロフィール) ケアマネ歴 15 年。実務のかたわら講師活動で全国を
飛び回る日々。県ケアマネ協会役員も兼任
ま
ず、自分が何を知りたくて聞くのか、事前に認識
す。それをしっかりキャッチできれば「 本当にそうかな? 」と
しておくことが大前提だと思います。そこを固め
疑問が湧き、次の質問につながります。
ずに、自分の興味や関心だけで聞いていくと、相
もう一つ、これはテクニックですが、オープンクエスチョン
手の話に押し流され、重要な話を聞きそびれたり、後でどこ
とクローズドクエスチョンの性質と用途を理解し、場面に応
がポイントか分からなくなったりします。ニーズを把握するた
じて使い分けています。オープンクエスチョンは、相手に考
めの質問なのか、新人の相談をはっきりするための質問なの
えさせる質問です。
「そのときどう感じましたか」と、感情を自
か、ゴールが違えば質問が異
なるのは自然なことです。
また相談援助職として心が
けたいのは、相手がそのとき
何を話したかだけに着目しない
何を知りたいのかを明確に
質問は「 五感 」で
由に表現できるよう働きかけ
る質問です。一方、クローズ
ドクエスチョンは、回答をある
程度こちらで推理し本人の反
応を確かめるために使います。
こと。 実務研修で新人ケアマネの聞き方をチェックすると、
「 家族に相手にされない 」と言われたら、「 私にはとても切
アセスメントシートに沿って聞くことを第一に考えたり、メモを
ないことのように感じますが、合っていますか?」と、相手の
取ることに一生懸命になっている人を見かけます。
イエス・ノーの回答を待ちます。
私はアセスメントでメモは最小限しか取りません。それより
この技術は、人とコミュニケーションを取るためのスキルな
も本人の表情や声のトーン、仕草などをよく観察します。ど
のでどんな場面でも使えます。私は研修で講義を行った後、
のように感じてその発言が出たのか、非言語的な部分に表
参加者から質問を受ける際にも活用しています。オープンク
われるメッセージが大事です。例えば、ある利用者に家族の
エスチョンで考えを整理して、それでもまとまらないときは、ク
ことを聞くと「とてもよくしてもらっている。世話になっている」
ローズドクエスチョンを重ねる。質問の主旨をまとめきれてい
と言う。でも本人を見ると、曇った表情で淡々と話していま
ない人にも有効ですよ。
徳山勝 さん
◉ 半田市障がい者相談支援センター 副所長 ( 愛知県 )
(プロフィール) 精神科病院の PSW をへて相談支援専門員に。
病院と地域の両方に精通する
根
拠のある質問とは、言い換えれば、狙いをつ
問調になるし、相手も疲れてしまいます。そこで、私はまず
けた質問ということです。質問にある程度見通
趣味や好きなこと、やってみたいと思うことなど、一番ニーズ
しを立て、知りたいと思ったことに近づけるよう
に近い部分を聞き、そこを取っかかりに掘り下げていくように
心がけています。逆にこの「 見通し」や「 見立て」がしっか
しています。本人が「 仕事がしたいなあ」と言ったら、どん
りできていれば、質問で悩むことは少なくなるはずです。
な仕事をしたいのか、以前はどんな仕事をしていたのか、と
聞くという行為は一見すると受け身のようですが、会話
のキャッチボールの中では投
げる側にあたります。 ボール
( 質問 )を投げかけないと返
事が返ってこないし、一方的
に投げ続けても相手が混乱
質問は狙いが大事
「 働きかけ」で深めていく
は、相手からの答えそのまま
をニーズとして捉えてしまうこ
ともありました。知的障害の
ある男性が「 毎日家にいる
とたいくつだなあ」と言ったのをそのままニーズとして受け止
ールし、相手に負担をかけないようにする。気持ちよくキャッ
め、日中活動につなげてしまったり。案の定、結果はドタキ
チボールが続けば、相手をよりよく知ることができるし、自分
ャン続き。
「目の前のことを何とかしなくては」という、表面
を知ってもらうことにつながります。
的な事象に捉われて行動してしまった結果です。以来、まず
ろなことが聞きたい。しかし、あれもこれもとぶつけては、尋
月刊ケアマネジメント 2015.10
とはいえ、私も若いころ
する。質問の量やタイミング、面談の時間をこちらでコントロ
例えば初回のアセスメントでは、こちらもできるだけいろい
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つなげていきます。
は関係を作ること、隠れたニーズに気づくまで何回も面接す
ることを心がけるようになりました。
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