矢作川水系におけるカワゲラ類水生昆虫の分布と河川環境

137
愛知工業大学研究報告
第5
0号 平 成 2
7年
矢作川水系におけるカワゲラ類水生昆虫の分布と河川環境
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カワゲラ類の幼虫は、淡水中の主に流水に生息し、河
N
4十
1.はじめに
床の機関や際下の隙問、落葉の堆積や植物の根の間など
から見つかる。食性も他の水生昆虫などを捕食する肉食
性から落葉、付着藻類などを食べる植食性と様々である。
可)1
1の上流を好む種が多く、有機汚濁に弱い
水温の低い j
1
,2
)。カワゲラ類には世界で約
が記録されている
2
0
0
0種、日本で約 2
0
0種
3
)。
調査地域とした矢作川水系では、その本流の中流部で、
水生生物の異常が知られている。すなわち、カワシオグ
サの大繁茂
4
)、造網型トピケラ類の優占 5
)、オオカナダ
モの大繁茂 6)、外来生物カワヒバリガイの定着
η などが
起こっている。これら生物の異常は矢作ダムをはじめ複
数のダムによる流量の安定化や掃流土砂の減少がその主
な原因と考えられている
4
)
。これらのうち掃流土砂の減
少への対策のひとつとして、置き土実験が行われている
流域の墳
8
)
。また、矢作ダム上流からダム湖内に流入する土砂を土
'
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調査地点
す愛知工業大学大学院建設システム工学専攻(豊田市)
什愛知工業大学工学部都市環境学科(豊田市)
図1.調査地点
同 圃 幽 回 国 圏
、
.
•
138
愛知工業大学研究報告,第 5
0号,平成 2
7年
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0
1
5
表 I 矢作川水系における調査地点(豊田市内の 4
7地点を除く)と採集方法
1
4
2
6
霊知県岡崎市矢作町矢作 1
1
1 矢作橋河口から 2
3
.
2
山m
1
4
2
8
砂バイパストンネルによって矢作第二ダム下流に迂回さ
せ、連続した土砂移動の回復を目指す計画が検討されて
し
、
る 9)。
定性
(2010~2014 年)。
一方、 2004、2
008、2009年の定時間採集では、カワゲ
0分間 (
2
0
0
4,2009年)あるいは 3
0分
ラ類のみをのベ 6
との矢作川 l
水系におけるカワゲラ類については、断片
間 (
2
0
0
8年)採集した。図 3、図 5で個体数を図示する
的な報告はあるものの、広域に多数の地点で分布を調査
2
0分間の侶体数に換算せず 2008年については 6
0
際は 1
した研究はない。そこで、この研究では矢作川水系にお
分間の個体数に換算し、 2004、2009年については 6
0分
いて広域に多数の調査地点を設けてカワゲラ類の分布を
間採集の個体数のままで示した。
調べた。調査地点には愛知工業大学河川・環境研究室で
2000~2013 年に調査した地点、も含む。また、カワゲラ類
2
) では、各分類群につ
同一地点で 2回採集した柳川 I(
いて多かった回の個体数を示した。
を時間を決めて採集した定量的なデータがある多摩川水
系における分布
1
0
)
と比較した。
2 1• 2 定性採集
冒
両水系での分布から、まず自然状態の矢作川でのカワ
1~4 人で網目内径約 4mm のタモ網を使い、定時間採
ゲラ類の分布を推測した。それを現状の矢作川でのカワ
集と向様に様々な微生息、場所でカワゲラ類を含む底生動
ゲラ類の分布と比較することにより、人為的な影響の可
物を採集した。豊田市矢作川研究所と愛知士業大学河川・
能性を推定した。それによって、矢作川の生物の異常を
000年から継続している広域定点調査に
環境研究室が、 2
改善するための基礎資料を得ることをこの研究の目的と
伴う採集で、採集時聞は厳密には定めなかったが 2人で
した。
30分間程度採集したととが多い。そとで、図 3、図 5で
0分間と
個体数を図示する際は 1回の採集時間をのべ 6
2
.研究方法
みなして 1
2
0分間採集の個体数に換算して示した。定点
調査なので、 1 地点で複数回調査の個体数データが得ら
2 1 採集寓固定と同定の方法
圃
れているが図 3、図 5では最多の個体数を示したロ
カワゲラ類の分布を次の 2・1・1定時間採集、 2・1・
2 定性採集の 2方法で調査した。
採集したカワゲラ類はその場で 8
0 %のエタノーノレで
固定した。それを実験室に持ち帰り、双眼実体顕微鏡(ニ
2.2 調査地点
定性採集による 7 地点と 2004~2014 年の定時間採集
による 5
4地点の計 6
1地点(図 1、 表 1
) で調査した。
コン SMZ645) を用いて科、属、種までできる限り同定
これら調査地点のうち、豊田市内の 4
7地点については、
した。
別に新修豊田市史の
部に流域面積、標高、採集年月日、
採集者などの詳細が記載される予定である。
2• 1 1 定時間採集
圃
網目内径約 3mm のタモ網を使い、 2~7 人でのべ 120
分間、瀬や淵、落ち葉などが j
留まっている場所など様々
な微生息、場所でカワゲラ類を含む底生動物を採集した
2 3 多摩川水系との比較
圃
比較対象とした多摩川水系で、は、全 2
18調査地点、
1
0
)か
ら浅川流域を除き、さらに幼虫が定量的に採集された 1
9
8
139
矢作川水系におけるカワゲラ類水生昆虫の分布と河川環境
表 2 多摩川水系の調査地点、
河川規模
地点番号
(
涜
(
場
km
面
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)
積)
2
3
4
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7
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26
27
28
29
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1
32
33
34
35
36
37
38
39
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1
42
43
44
45
46
47
48
49
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河川規槙
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(流域面積) 地点番号 (流域面積) 地点番号 (流域面積) 地点番号 〔流域面積) 地点番号 〔流域面積) 地点番号 (流域面積) 地点番号 (流域面積)
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.
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0.
40
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0
.
0
9
8
1
3
7
.
9
7
107
5
3
.
2
6
134
0
.
2日目
2日 59
186
3
.
9
9
135
4
3
0
.
2日
1
6
1
10日
2
.
1
2
5
57
1
.
9
7
1
82
4
3
.
9
5
3
.
9
4
58
2
.
6
2
4
83
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0
2
4
109
0
.
0
3
9
136
0
.
6
5
5
162
4
1
.
8
6
187
0
.
4
6
7
0
.
1
1
5
59
0
.
0
2
7
84
1
5
.
3日
110
0
.
2
3
2
137
3
.
9
3
163
9
.
1
5
188
4
.
7
3
4
008
4
.
3
8
138
0
.
8
1
6
51
60
0
.
1
1
85
7
.
0
1
.65
189
0
.
5
3
1
1
1
1
164
0805
0
.
6自3
0088
0526
86
2
6
7
.
2
6
139
4
6
7
.
7
192
1
4
6
.
8
112
165
6
1
0
.
1
6
113
0
.
0
5
9
5
140
166
1
.293
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4
7
7
.
7
1
.
6
2
3
193
1
87
2
.
2
8
5
.
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0
.
0
1
9
2
.
7
6
114
0
.
2
1
9
482
63
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2
.
5
1
1
4
1
167
1
9
.
9
2
194
3
.
9
1
0
.
0
3
6
1
0
.
6
7
64
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2
8
4
.
4
5
1
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142
1
.27
168
0.934
195
0
.
1
9
5
115
1
.
1
9
65
4
.
5
8
5
90
116
4
.
9
5
143
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0
.
0
1
4
169
2
.
6
8
196
1
5
7
.
8
0日3
1
46
197
1
5
9
.
7
0
.
3
5
117
1
.
5
6
144
0
.
6
7
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170
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3
.
5
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9
1
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1
6
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.
2
118
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.
5
4
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.
2
2
.
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7
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2
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.
9
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1
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1
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199
1
7
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.
8
120
3
7
9
.
3
146
2
5
.
6
2
172
2.
5
.
1
6
2
1
0
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7
8
6
8
0
.
2
3
93
707日l
4
69
0.
47
94
44
1
2
1
0
.
1
1
9
147
3
6
.
2
8
2
.
5
5
200
1
8.
29.
173
6
7
.
5
70
0
.
5
9
95
0
.
3
7
122
5
.
9
8
148
0
.
2
5
1
0
0
.
8
3
2
0
1
174
7
1
7
.
4
1
.
1
1
3
0
.
9
6
1
.175
96
49
149
0
.
2
9
4
0
.
2
1
7
202
7
2
2
.
0
9
123
7.
7
1
175
且且自 7
.
8
6
3
2
0
1
1
.
0
7
4
43
150
0.
48日
124
8.
1
.
9
6
717.
176
4
72
97
21
.89
2.
42
0
.
3
7
3
202
7
2
2
.
0
9
1
0
.
6
0
8
3
3
.
8
8
73
98
126
3
.
9
9
1
5
1
1
7
7
2
3
.
5
4
0.
74
6
.
3
5
99
127
4
.
1
4
152
0
.
9
3
1
178
0
.
0
3
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405
7
.
1
3
8
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0
.
0
7
6
100
128
1
.
9
8
1
5
3
1
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1
8
5
179
0
.
6
9
1
.
7
0
3
,。
,
,
,
,
。
地点の結果を用いた(表 2
)。これらの地点について、こ
2・5 調査地点の河川規模(流域面積)と標高
の研究で下の 2・5の方法で流域面積を求めた。
この研究では、調査地点の環境を制約する 2つの特性、
1~
河川規模と標高に着目してカワゲラ類の分布との関係を
3 人でカワゲラ類のみをのべ 5~90 分間、網目内径1.5
検討した。河川規模を示す尺度としては、調査地点の上
mm の手綱を使って、あらかじめ多く採集されると予想
流側の分水界で、囲まれた流域の面積を使った。縦軸に標
多摩川水系での採集方法 10) はこの研究と異なる。
された場所で採集した。図 3で個体数を図示する際は 1
5
高を、横軸に流域面積(対数)を左り、各調査地点で採
分間採集に換算して示した。採集時間を定めずに定性的
集されたカワゲラ類の個体数を円の面積で示した(図 2、
に生息を確認した地点、は、図 3では別の記号で示した。
図3
)ロ流域面積と標高は、 1・
2
5,
0
0
0地形図など圃土地理
これら 1
9
8地点、の標高は原論文
院の地図(地理院地図ー電子国土 web) から求めた。
10)
に記されている。
2• 4 高時川との比較
2 6 ダム聞の流量の推定
皿
希少な種であるフライソンアミメカワゲラなどが生息
矢作川本流の矢作ダム下流に連なるダム聞の渇水流量
する、滋賀県の琵琶湖に注ぐ姉川支流高時川馬渡橋右岸
を次のように推定した。矢作ダムへの流入量の渇水流量
(長浜市湖北町馬渡、標高 95m、流域面積 209km2) で
、
と矢作ダム下流の各支流の渇水流量とが集水面積に比例
2014年 3月 7日に調査した。 5人でのべ 1
2
0分間の定時
すると仮定し、渇水流量を推定した。矢作ダムへの流入
間採集 (
2・1・1
) とフライソンアミメカワゲラが好む微
量の渇水流量は国土交通省水文水質データベース
1
1
)
の
生息場所(緩やかな流れの大きな礁の下)において 5人
2010~2013 年の流入量から求めた。また、ダムや水力発
でのべ約 60分間の採集を行った。
電所からの維持流量
12)
をこれらの渇水流量と合わせて
図示した(図 6
)。
標高 m
3
.結果と考察
1
5
0
0
3 1 採集結果の概要
圃
1
0
0
0
採集されたカワゲラ類は約 8
0
0
0個体で 4
5分類群に分
類された。そのうち種まで同定できたものは、 24種であ
500
)。採集結果の大部分である豊田市内の 47地
った(表 3
点での結果は、新修豊田市史の一部に記載される予定で
0
0
.
0
0
1
0
.
0
1
01
目
0:矢作川水系
1
1
0
1
0
0
流域面積 k
m
'
.:多摩川水系
. 矢作川水系・多摩川水系における調査地点の
図2
河川規模(流域面積)と標高の関係
ある。表 3には豊田市外の 1
4地点での結果のみを記し
た
。
種まで同定できた 24種のうち、フライソンアミメカ
ワゲラは国のレッドデータブックに準絶滅危慎 (NT) の
カテゴリーで掲載されている
。矢作川では、 2
000、2003、
13)
140
愛知工業大学研究報告,第 5
0号,平成 2
7年
, V
o
l
.
5
0,M
a
r, 2
0
1
5
2
0
0
4年に葵大橋 (
5
9
)、矢作橋 (
6
1
)で個体数が少ないも
表3
.採集されたカワゲラ類
のの採集されたが、その後は採集されなくなった。
(豊田市内の 4
7調査地点の結果を除く)
6
1
1
6
0
1
1
2
1
1
1
1
1
0
191817161514131211
地点番号
上 平
;
;
1
:
>
採矢愛村新
阿飯 A
日谷
口榔柳
集作議川弁白岳田川
合堰柳;尺 ヤ 川 川
地橋 合合天沢本官流堤平合 沢合源
点ム
ロ計流橋
谷 )
1
1点 上
流 上計涜
計 点
流 点 流
和名
このフライソンアミメカワゲラと同じ傾向が見られる
のがコウノヒメカワゲラ属の一種である。この種も 2
0
0
0
~2005 年に葵大橋 (59) で採集されたが、その後は 20 日
年に愛知環状鉄道橋 (
6
0
) で採集された I個体を除き採
集されなくなった。
21 111 151
1
6
1
1
8
1
1
5
ミヤマノギカワゲラ
Yo国 車 r
h
2u'
"
'
101
211
ノギ力ワゲラ
CfV
p
t
of
Je
Haao",0a
4
オオアミメ力ワゲラ
M'
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E
a
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cvsochraoea
1
1
191
1
4
1
ヒロパネアミメカワゲラ
尺seudome
Hr
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Sja
ρ
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n
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o
a
~ツコウアミメカワゲラ
Sopka
何
, 回ma
品。
ミスジアミメ力ワゲラ
S'
kw
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フライ、ノンアミメ力ワゲフ
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均o
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3・
2 語査地点の河川規模(流域面積).標高とカワゲ
419
1
ラ類各分類群の個体数との関係
2
1
1
1
9
151111181
1
1
1
1
1
18
高を表 1
、表 2に示した。これらを用いて、採集された
6
7
1
2
4
カワゲラ類のうち、個体数が多い、あるいは分布が特徴
S""so
/
'
us soA
ヒメ力ワゲラ属の 穫 (8) 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 13
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:
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L
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so
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'
usE12
ヒメ力ワゲラ属の 種 (C)
S包 v
s
o
bssoC
コゲサヒメ力ワゲラ属
3
Os
t
mνus
アサ力ワヒメカワゲラ属
1
的な 3
3分類群(多摩川水系は 28分類群)について、調
査地点の河川規模(流域面積)、標高と各分類群の個体数
との関係を図 3
1~3-3 に示した。この関係を、河川規模
(流域面積)と標高のそれぞれについて、僧体数の多少
kom企r
s
ヒメカワゲラ亜科の
矢作川水系と多摩川水系の河川規模(流域面積)と標
l
種(
A
) 1 1 1 15141 10
ヒメ力ワゲラ属の
可能性がある。
1
2
14
コウノヒメカワゲラ
7a拍 muskch円on危
コウノヒメカワゲラ属の 本
重
T
a曲
ヒメ力ワゲフ
11111412
これらのことから、この区間の矢作川本流では 2
0
0
0年
代にそれら 2種にとって何らかの環境要因が悪くなった
種
を無視して各分類群の分布範囲を示したのが図 4である。
,
[o
ee「1
i
r
l
a
eGe0.'
ホソヴサカワゲラ
。
この結果は、カワゲラ類の各分類群がそれぞれ特有の河
I
s oe
.
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包 deb
,
H
i
s
トワダウサ力ワゲラ
booer
由t
ow
.
a白
色ns
h
アイズウサカワゲラ
111
川│規模(流域面積)と標高の範囲に限って生息している
4
4
1
8
1
J
S
O
D
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治 a
l
.
Kuana
こと、また、その範囲は多摩川水系と矢作川水系とでお
39118122171 151911919
フタスジヴサカワゲラ
"
'
0
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n
l
C
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so
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おむね一致していることを示している。前者の各分類群
51211
オニヴサカワゲラ
I
sop
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amot
on
i
s
ウサ力ワゲラ属の 種
J
s
o
o
e
n匂 '
0A
が特有の河川規模と標高の範囲に限って生息することは、
3 19
613121111121311511811013115
キカワゲラ属
Xa
nthDrmuHa
トビケラ類についても多摩川水系で認められている
14
,
1
1
1 12
1 114131 1
4
4
16
モンカワゲラ属
Ca
l
l
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u
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11 1112
ヤマトカワゲラ
N,
.
!
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Ioni
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昆/h
a
1
エゲオ力ワゲラ属
3.3 流程分布
C"
a
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お
ナガカワゲラ属
ki
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コナガカワゲラ鼠
11 1 1 14
Gi
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.
首 相'
al
u
.
a;bris
ヨ
。
た1
6地点について、 7分類群を選んで図 5に別の形で示
1
オオヤマ力ワゲフ
ヒメオ才ヤマカワゲラ
した。まず、図示した地点はこれらのカワゲラ類の幼虫
1
2
18
m'
a5enwη1m
1
トウゴウ力ワゲラ麗
To
e
:
OJer
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.
2
力ミムラカワゲラ
Ka
.
r
由n
u
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a出 u
'
a
l
i
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ヲロヒゲカワゲラ
h mimuriao
l
J
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!
ョ包
ヒトホシウラ力ケカワゲラ
P'
a
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l
f
f
1e
thaョ
oonma
スズキクラ力ケカワゲラ
Pa
開 閉e
垣間 su
四 k
l
i
その期間に採集された個体数を示した。ただし、クラカ
51717
ケカワゲラ属は生活史が異なり夏に羽化するので、
11121 111 121213132
1
51214161131112114
オオヲラカケカワゲラ
,
O
h
t
o
r
o
D
e
r
l
i
de
112133181 12515155127140124
11
3
6
ミネトワダ力ワザラ
S'
o
o!Ju
r
amo
n包 na
シ空力ワゲラ科
,
TBeoiopterY
;
,de
オナシカワゲラ属
Ne
m ou
周
フサオナシ力ワゲラ属
Amohinem
.
u
r
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ユピオナシ力ワゲラ属
P'
r
ot
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,
nemu
閉
ウロカワゲラ科
C
'
0
0
i
i
d
a
e
示した。河 )11 の水生昆虫の多くの属では、近縁な 2~3 種
が河川の流程に沿って連続的に分布し、上流と下流で異
1
6
1213
NEo e
r
合
ミドリカワゲラ科
1~6
月に採集された個体数を示した。
まず、同じ属の近縁な 2~3 種 4 組の分布を図 5 上に
1
5
1
1
0
Pg
a
e
:
n
e
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iηabηct
i
o
enn
l
s
フタツメカワゲラ属
が大きく成長している 12~4 月に調査したものを選び、
81 1
1
7
1
1
6
ウエノ力ワゲラ
kamlmUrlau
'
e
n
o
f
図 3に示したカワゲラ類の分布を、矢作川本流に沿っ
1121
1219
1
1
7
1 171
1
8
12
7111 121114141815
なった種が分布する流程置換、あるいは大すみわけと呼
ばれる現象が知られており
1
0,
1
6
1旬、それが自然状態での
分布と考えられる。
矢作川本流では、クラカケカワゲラ属とカミムラカワ
1
1
1 181312151 12
1111 111 1
1
ゲラ属は上流から下流まで連続的に分布し、上流から下
流へクラカケカワゲラ属ではオオクラカケカワゲラ、ス
141
矢作川水系におけるカワゲラ類水生昆虫の分布と河川環境
霊山吐
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図3
-1.矢作川水系(左より I列目, 3列目)ど多摩川水系(左より 2ヂ
I
j
目
, 4列目)における
調査地点、の何川規模(流域面積) ・標高とカワゲラ類各分類群の個体数との関係
142
愛知工業大学研究報告,第 50号,平成 27年
, Vol.50,Mar,2015
0
.
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0 k
m
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TamaR
i
v
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r
図3
2
.矢作川水系(左より 1列目, 3列目)と多摩川水系(左より 2列目, 4列目)における
調査地点、の河川規模(流域面積) ・標高とカワゲラ類各分類群の個体数との関係
ズキクラカケカワゲラ、ヒトホシクラカケカワゲラの)1慎
現象が見られる
1
6,
1
7
) のに、矢作川本流では上流側にオ
で種が置き換わり、カミムラカワゲラ属ではウエノカワ
オヤマカワゲラが少なく、矢作ダム下流で両種ともに採
)
僚で種が置き換わっていた。
ゲラ、カミムラカワゲラの 1
集されなかった地点、下切 (
2
5
)、百月 (
2
9
)があるので、
しかし、オオヤマカワゲラ属については、例えば多摩川
分布が不連続である。また、クサカワゲラ属についても、
水系秋川では上流から下流へ連続的に分布し、オオヤマ
大局的にはフタスジクサカワゲラ、アイズクサカワゲラ
カワゲラ、ヒメオオヤマカワゲラの順で種が置き換わる
の順で種が置き換わっているように見えるものの、矢作
ダム下流の下切 (
2
5
) ではどちらも採集されず、分布が
不連続で、ある。
矢作ダム付近のこれらの地点では図 3
1からオオヤマ
カワゲラ、ヒメオオヤマカワゲラともに生息可能、また、
フタスジクサカワゲラが生息可能と推定されるので、自
然状態では両属ともに連続的に分布していたと考えられ
る。そこで、その付近では両属にとって何らかの人為的
影響が考えられるが、その可能性の 1つが矢作ダムによ
る悪影響である。
0
.
1
1
1
0
1
0
0
k
m
'
次に矢作ダムの直上流まで連続的に多産し、矢作ダム
下流には生息していないキカワゲラ属、巴川合流点より
Y
a
h
a
g
iR
i
v
e
r
下流にのみ生息するフライソンアミメカワゲラ、コウノ
ヒメカワゲラ属の一種の分布を図 5下に示した。
0
.
0
1
0
.
1
1
1
0
1
0
0
1
0
0
0
キカワゲラ属は多摩川水系での分布(図 3
1左下)か
図 3ふ矢作川水系における調査地点の
ら矢作ダム下流でも生息可能と推定されるので、やはり
河川規模(流域面積) 圃標高と
矢作ダムによる何らかの悪影響を受けている可能性があ
カワゲラ類各分類群の俗体数との関係
る
。
143
矢作川水系におけるカワゲラ類水生昆虫の分布と河川環境
。
和名
学名
500
15日o m
1000
ミネトワダカワゲラ
Scopuramontana
i和名
学名
.
.
.
.
.
掴
掴
瞳
.
.
ヨ
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圃
.
.
凶
圃
.
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圃
掴
.
トワダウサ力ワゲラ
I
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トワダヴサカワゲラ
ho
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オオアミメ力ワゲラ
MegarcysDCh
.
厄 c
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ツコウアミメ力ワゲラ
SO
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ayamadae
10
ニッコウアミメカワゲラ
S
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ayamadae
コウノヒメカワゲラ
T
a血 musk
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ヒメカワゲラ属の一種(日)
S恒 v
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B
ヒロバ才、アミメカワゲフ
Pseudomegarcysj
a
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I
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ナ芳力ワザラ罷
桁'
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i
n
a
コグサヒメカワゲラ属
O
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ヤマトカワゲラ
N
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コウノヒメ力ワゲラ
Tadamusk
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•
•
コナガ力ワゲラ属
G
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キカワゲフ属
X
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ウロヒゲカワゲラ
kg明 !muna q
阻 止a白
トウゴウカワゲラ属
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唱
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・
圃
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圃・
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掴
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虚
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軍
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園
開
聞
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・
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圃
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圃
圃
且
z
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オオヤマカワゲラ
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エダオカワゲラ属
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コウノヒメカワゲラ属の一種
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図 4 調査地点、の標高(左)・河川規模(流域面積,右)とカワゲラ類各分類群の分布との関係
(
上
,
多摩川水系;下,
矢作川水系)
ー
“
一
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•
144
愛知工業大学研究報告,第 50号,平成 27年
, Vol.50,Mar,2015
霊童:自然宕説困I
昌三ヨ=自然お垣間 E
E三ヨ=平副聞
1
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:潟 水 間
28
29
30
図5
. 矢作川本流におけるカワゲラ類の流程分布と流況の関係
145
矢作川!水系におけるカワゲラ類水生昆虫の分布と河川環境
皿旧
平滑化区間
減水区間
e
E
田 園 田 E
などへ取水され流量が減る減水区間、水力発電所からの
放水でフkが戻る平滑化区間に分けることにする。図 5に
示した流況とカワゲラ類の分布の関係を見ると、クサカ
輔所
園 田 '
、‘
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ワゲラ属、オオヤマカワゲラ属、キカワゲラ属が採集で
きなかった区間は主に減水区間に位置している。フライ
ソンアミメカワゲラ、コウノヒメカワゲラ属の一種は本
流下流の自然流況区間に分布するが、 3・3で述べた生息
可能と考えられるその上流の平滑化区間には分布してい
ない。このことから、ダムは減水区間だけではなく平滑
化区間でもカワゲラ類の生息に影響を与えている可能性
がある。
4
. 要約
矢作川水系の 61 地点において 2000~2014 年にカワゲ
ラ類を調査した結果、 4
5分類群が得られ、そのうち種ま
4種であった。このうち、フライソン
で同定できたのは 2
予二二1↓
アミメカワゲラは国のレッドデータブックに準絶滅危倶
(
N
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)のカテゴリーで掲載されており矢作川本流の葵大
橋などで 2000~2004 年に少数が採集された。しかし、
2
0
0
5年から採集されなくなり、この区間で何らかの環境
要因が悪くなった可能性がある。
調査地点の河川規模(流域面積)・標高とカワゲラ類の
各分類群の個体数との関係を多摩川水系、滋賀県高時川
での結果と比較検討した結果、各分類群がそれぞれ特有
の河川規模(流域面積)・標高に限り生息していた。
カワゲラ類の自然状態の分布では、河川の上流から下
流へ同属の近縁種が置き換わりつつ連続的に生息すると
考えられるが、矢作川本流の矢作ダム下流ではオオヤマ
‘
ー
連続となっていた。これは、矢作ダムによって一部のカ
図6
. 本流における利水系統と流況
ワゲラ類の生怠にとって何らかの悪影響が及んで、いる可
巴川
(数字は推定された渇水流量)
フライソンアミメカワゲラとコウノヒメカワゲラ属の
一種は、滋賀県の高時川では葵大橋 (
5
9
) より標高が高
2) が小さい地点に
く (
9
5m) 河川規模(流域面積 209km
生息していた。このことから、両種は矢作川!でも、自然
状態ではもっと上流まで広く分布していた可能性がある
と考えられる。
3.4
カワゲラ属、クサカワゲラ属、キカワゲラ属の分布が不
ダム聞の流量とカワゲラ類の分布
矢作川の水利用と渇水流量の推定の結果を図 6に示す。
矢作ダム下流から巴川合流点までの区間においては水力
発電所などによる取水の影響が大きい。その影響を示す
ため、この上下流の自然流況区聞に対して、水力発電所
能性を示唆する。
また、滋賀県高時川での調査結果と比較すると、フラ
イソンアミメカワゲラとコウノヒメカワゲラ属の一種は
矢作川の本流で、かつてはもっと上流まで分布していた可
能性があることがわかった。
謝辞
この研究をまとめるにあたって、愛知工業大学都市環
境学科土木土学専攻河川・環境研究室の木村勝行教授、
八木明彦教授、赤堀良介准教授から指導と助言をいただ
いた。同じく河川・環境研究室の卒研生早瀬大貴君には、
作園、データ整理などを補助していただいた。また、豊
田市矢作川研究所の白金品子氏には、流域面積や流量を
求める際に多くの助言をいただいた。これらの方々のご
146
愛知工業大学研究報告,第 5
0号,平成 2
7年
, Vol.50,Mar, 2
0
1
5
好意に厚くお礼申し上げる。
との研究には新修豊田市史編さん事業の一部として豊
田市教育委員会から調査費の一部に補助を受けた。
1
0
) 内田臣一:多摩川水系におけるカワゲラの分布石
川良輔・山崎柄根・小島純一・内田臣-多摩川水系お
よびその流域における低移動性動物群の分布状態の解
析
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p
.2
3
7
8,とうきゅう環境浄化財団,東京, 1
9
8
7
引用文献
11)国土交通省・水文水質データベース.
1)津田松苗・森下郁子:生物による水質調査法.山海堂,
p
.ヲ1
9
7
4
.
東京, 238p
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川 ww
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p(
2
0
1
5年 3月 1
9日)
1
2
) 国土交通省豊橋河川事務所:ダム、頭首工の分布と
2
)清水高男:カワゲラ目の環境指標性.谷田一三(編)
主な取水量.矢作川の環境を考える懇談会,第 4 回懇
河川環境の指標生物学, p
p
.4
5
5
3,北隆館ヲ東京ヲ 2010
談会資料♂,矢作川の環境の現状河川の環境に与え
3
)清水高男・稲田和久・内田臣一ーカワゲラ目(横麹目)
川合禎次・谷田一三(編) ,日本産水生昆虫一科・属・
種への検索, p
p
.237・
287,東海大学出版会,秦里子, 2
0
0
5
.
2年のあ
4
) 豊田市矢作川研究所・豊田市矢作川研究所 1
ゆみ矢作川研究ヲ 1
2,
pp 下 7
1,2
0
0
8
.
5
)小川弘子・内田匡一・白金晶子.東海豪雨後の矢作川!
p
p
.
2
5
の瀬における底生動物の現存量.矢作川研究ヲ 7ラ
2
0
0
3
.
3
1,
るインパクトとレスポンス, p
.
1
2ラ2002
1
3
) 谷幸三:フライソンアミメカワゲラ.環境省(編)
改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物ーレッドデ
ータブック, p
.1
6
9ラ自然環境研究センターヲ東京ヲ 2
0
0
6
.
1
4
)加賀谷隆.多摩川の水生昆虫ートビケラ類の流程分
布.海洋左生物ラ 1
0
7,p
p
.447-452,1996
1
5
) 加賀谷隆・野崎隆夫・倉西良一:多摩川水系のトビ
ケラ相とその分布.とうきゅう環境浄化財団ヲ東京ラ
6
) 内田朝子.水草の外来生物オオカナダモ、再び大繁茂.
矢作川研究所月報則0,142,
p
.4
ラ2010
7
) 白金晶子・内田朝子・内田臣一:矢作川流域における
外来二枚貝カワヒバリガイの発見から現在までの経過.
陸の水, 54,p
p
.4
35
2,2
0
1
2
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開
8
)小 野 秀 樹 矢 作 ダ ム か ら の 実 施 報 告 土 木 学 会 置 き 土
シンポジウム資料ラ 8pp 2
0
0
8
.
吋
9
)深谷害久・九津見生哲・辻本哲郎 矢作ダム土砂管理
の課題と対策案の検討.河川技術論文集ラ 1
1,p
p
.2
6
7
-
266p
p
.,1
9
9
8
.
1
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) Uchida
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ヲ
1
7
) 内田庄一.多摩川水系におけるカワゲラ類の微生息
場所,流程分布,垂直分布.海洋と生物, 1
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.1
9
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すみわけ」と種分化ョ歴史生態学の枠組
1
8
) 谷田一三: I
みへ.海洋と生物, 1
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(受理平成 2
7年 3月 1
9日)