Polaris - ロックタイト

ポラリス社
過酷な用途での信頼性と耐久性
スノーモービル、スノークロス、X ゲーム*の選手たちが注目するポラリス社のスノーモービル。レースやロング
ジャンプ、そして危険なバックフリップとエクステンションを伴うフリースタイルのような過酷な競技で優位に立ち
たいという時、このスノーモービルが大活躍します。その車体は、地面の特徴や極端な環境条件へ適合している
ことはもちろん、激しい操縦、高い負荷、時には衝突にも耐えるよう設計されています。
*米国で開催されるエクストリームスポーツの祭典
ポラリス社のエンジニアたちは、スノーモービルが確実に
機能しながら、気温の大幅な変動や叩きつけられる
ような着地、振動、激しい衝撃に耐えられるようにする
ため、ロックタイトの嫌気性接着剤を使用しています。
特に、車体の安全性を確保してアッセンブリーで発生
する欠陥のリスクを取り除くため、嫌気性のねじゆるみ
止め接着剤とはめ合い用接着剤に厚い信頼を寄せて
います。ねじゆるみ止め接着剤は車体の各所にある
全てのねじ部品に使用され、振動でゆるむ危険性を
取り除いています。エンジンマウントのような非常に
重 要 な接 合 部 分 では、エンジンとシャーシ部 分 の
ねじにこの接 着剤 を使 用することで、永 久 固定して
います。この箇 所 に欠 陥 があれば、大 惨 事 を引 き
起こす恐れがあるからです。
ポラリス社のオペレーターが、エンジンマウントのねじ穴に
ねじゆるみ止め接着剤ロックタイト 242 を塗布している
はめ合い用接着剤は基材を選ばず、強度向上
このスノーモービルは車体全体で「しまりばめ」を採用しています。しまりばめは、シャフト(軸)、ベアリング(軸受)、
ブッシュのような円筒部品を、より小さな歯車や筐体に接合するもので、非常に高い摩擦により大きなトルクでも
結合が分離しないよう部品同士を固定します。結合部の強度を最大にし、最適なパフォーマンスを実現するには、
結合部が極めて正確であることが求められます。しまりばめの内部部品は、外部部品の相手穴よりも見た目では
分からないほどわずかに大きく加工されます。この大きい部品を小さな部品に押し込むと、両方の部品がはまり
合うように若干変形し、結合して 1 つの部品として機能します。
しかし、摩擦を最大化するために、しまりばめ部品の適切な許容差を計算したとしても、欠陥が生じる可能性は
残ります。このような厳格なレベルの寸法精度を計算し実現 しようとすると、コンポーネントの製造に要する
費用と時間はどちらも大幅に増えてしまいます。
同社のエンジニアは、ロックタイトはめ合い用接着剤を採用することで、寸法精度の許容水準を下げ、強固かつ
軽量のしまりばめされた継ぎ手を、従来のしまりばめより少ないコストで短期間に設計することができるように
なりました。強度と信頼性をもたらすはめ合い用接着剤は、各産業においてしまりばめ部品の固定用として
ますます使用されるようになっています。
さらに、はめ合い用接着剤は、基材の選択肢を増やし、また、アッセンブリーをシーリングするため腐食を防ぐ
効果も備えています。継手部品には大きな応力がかかるため、はめ合い用接着剤がなければ、圧入はめ合いや
焼きばめ向けの信頼できる基材の選択の幅は限られてしまうかもしれません。2 つの部品を結合するのに必要と
される応力に耐えられるのはある限られた基材だけです。例えば、鋼は継ぎ手強度の要件を容易に満たして
いますが、粉 末 金属 やアルミニウムは満たすことができないかもしれません。はめ合 い用 接 着剤 によって
アッセンブリー全体が強化されるので、選択した基材の種類によらず部品の高いパフォーマンスを実現します。
はめ合い用接着剤で製造原価ダウン
ヘンケルは、はめ合 い用 接 着 剤 に関 するエンジ ニア の知 識 レベルと信 頼 度 を確 認 するた め、先 頃 、
Design World *と協力して設計エンジニア 400 人を対象に調査を実施しました。この調査によって、回答者の
約 42%がはめ合 い用 接 着 剤を使用しており、これまでの設 計 経験 により材 料の信頼 性 が確 保されるから
という理由ではめ合い用接着剤を選んでいることが分かりました。
*あらゆる産業・製品におけるデザイン・エンジニアリングの最新情報を提供する米国のメディア
また、回答したエンジニアの 20%以上が、アッセンブリーの総体的コストを下げるのにはめ合い用接着剤が役立つ
ことを認めています。回答者は、はめ合い用接着剤を使うことでアッセンブリーの信頼性が向上すること、この
接着剤としまりばめ・すきまばめを組み合わせると、機械的なはめ合い方式だけに頼るよりも確実であると認識して
おり、回答者の 60%以上が、許容差の精度を下げることでアッセンブリーの製造原価も下がることを認めています。
調査参加者の過半数はフレッティング・コロージョンの問題を経験しており、この問題を解決するのにはめ合い用
接着剤を使用することができると述べています。
しかし、その一方で、回答したエンジニアの約 58%は、はめ合い用接着剤に具体的に言及しておらず、この
接着 剤 の便 益 に関してまだ知識 が乏しい可 能性 があります。そこで、はめ合 い用接 着 剤に関する簡 潔な
チュートリアルを提供することが大切だと考えられます。
はめ合い用接着剤チュートリアル
はめ合い用接着剤は、接合される金属面の間で
空気が遮断された時に重合硬化する液状嫌気性
構造用接着剤です。この接着剤は、製品の強度を
高めると同時に軽量化を図るため、エンジニアリング
プラスチックで作られています。しまりばめやすきま
ばめの際に、このエンジニアリングプラスチック製
接着剤を用いることで、従来のしまりばめよりも高
強度・軽量で低コストの継ぎ手を製作することが
可能になりました。
はめ合い用接着剤は、特に円筒部品とねじのない
金属部品の接合用に開発されています。この接着
剤はかみ合うしまりばめ部品の隙間に充填されて
硬 化 し、アッセンブリーを化 学 的 に結 合 します。
はめ合い用接着剤は、かみ合うしまりばめ部品の
隙間に充填され硬化し、アッセンブリーを化学的に結合する
(Kgf)
軸
方
向
の
力
はめ合い用接着剤を
使用したしまりばめ
通常のしまりばめ
左図が示す通り、しまりばめにはめ合い用接着剤を組み
合 わせると、しまりばめだけの場 合 より結 合 強 度 が
大幅に増すため、エンジニアは許容差の計算に時間を
かける必要がありません。
硬 化 したはめ合 い用 接 着 剤 は、コンポーネント間 の
隙間を塞いでフレッティング、酸化、電解腐食を止める
物 理 的 ・化 学 的 バリアを形 成 します。また、継 ぎ手 を
シーリングすることで漏れを防ぎます。
しまりばめにはめ合い用接着剤を組み合わせると、
しまりばめだけの場合よりも結合強度が大幅に増し、
許容差を計算する必要性が低減される
直径 (mm)
はめ合い用接着剤のメリット
• はめ合い強度と信頼性の向上
• 従来の精密な機械加工を不要にすると同時に、より軽量で小型化されたアッセンブリーの実現
•すきまばめにはめ合い用接着剤を使用することで、厳しい精度を確保するための機械加工を必要とせず、しまり
ばめと同程度の信頼性と効果を得られる
従来の焼きばめは、接合面積のわずか 15%にあたる表面ピークの金属接触によって強度を発現しています。
液状はめ合い用接着剤は表面の凹凸と金属部品間の隙間を埋め、硬化することにより、継ぎ手の強度を高め、
荷重伝達を最大化する高密度・高強度の接着結合を形成します。硬化した樹脂は接触面積を 100%に増やす
ため、応力分散と継ぎ手の信頼性が改善され、それにより部品の寿命が延びます。
はめ合い用接着剤で接着されたコンポーネントは、細かい表面仕上げを必要としないだけでなく、異種金属の
接合に適したレベルまで許容差を広げることができます。接着剤で接着されたアッセンブリーの場合、継ぎ手
部分の応力が低減され、熱膨脹が生じた際の強度が向上します。つまり、アルミニウムのような相対的に
柔らかい基材でも力や熱膨張による損傷を受けず、また、しめしろを失うことがありません。
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接着されたすきまばめ
接着された圧入ばめ
接着された焼きばめ
はめ合い用接着剤は、圧入ばめ、すきまばめ、焼きばめの強度を向上させる
はめ合い用接着剤はしまりばめにおけるフレッティング・コロージョンを防ぎます。ベアリングとシャフト/筐体
との間に微細な動きが生じる場合にフレッティング・コロージョンが発生し、それによってアッセンブリーの断面に
小さな塊が生じます。次にアッセンブリーが動くとこの小さな塊が剥がれ落ちて表面がクレーター状になります。
しまりばめ部品の隙間に充填されることで、はめ合い用接着剤はフレッティング・コロージョンの根本原因である
微細な動きを防止します。
はめ合い用接着剤は、従来のろう付けや溶接と異なり、特殊装置や熟練したテクニック、消耗部品、装置の
メンテナンスを必要としない簡単で迅速なプロセスを実現します。また、すぐに硬化させることができるため、
熱を加える必要がなく、熱傷やガスの危険がありません。
塗布と除去
はめ合い用接着剤は液体の状態で、マニュアル、セミオートマチック
の塗布機、フルオートマチックの塗布機を使用して塗布することが
できます。
高 精 度 のフルオートマチックの塗 布 機 の例 として、特 別 に
設計されたロートスプレー式の塗布装置があります。これは部品の
内 径 の所 定 の場 所 に定 量 の接 着 剤 を 360°ビード状 または
バンド状に塗布する装置です。ロートスプレー式塗布装置は、正確に
繰り返し塗布することができ、また、あらゆる軸を中心に位置合わせ
することが可 能で、セミオートマチックモード、フルオートマチック
モードのどちらでも操 作 することができます。 ハンドポンプは、
毎 回 定 量 の接 着 剤 を吐 出 する手 動 型 の塗 布 機 です。
はめ合い用接着剤で接着された部品は、圧入ばめや焼きばめされた
コンポーネントの標準的な分解方法により分解することができます。
具体的には、ギヤプーラ、作動油注入、油圧プレスなど、様々な分解
方 法 があります。部 品 を取 り外 すのに特 別 な処 理 工 程 は必 要
ありません。エンジニアは中度・高度の分解能を持つ処方から選択
することができます。定期的な分解や点検を前提として設計された
接合部には、中強度のはめ合い用接着剤が望ましいと考えられます。
特別に設計されたロートスプレー式塗布
装置は、所定の場所に定量の接着剤を
360°ビード状またはバンド状に塗布
はめ合い用接着剤の進歩
はめ合い用接着剤の進歩は基材の強度を高めました。最新のはめ合い用接着剤は、簡単な処理で済むように
開発されているため、硬化速度を速めたり結合を強化したりするのにクリーナーやプライマー、アクチベーターの
使用を最低限にしています。また、耐熱性においても進化しています。
接合面がきれいであるとアッセンブリーにおいて最良の結果を得られますが、最新の優れた耐油性を持つ
はめ合い用接着剤は、表面の油や混入物の影響が少ないように考案されています。この接着剤を使用した
結果、洗浄工程にばらつきがあるにもかかわらず、結合強度は一定でした。
これまで、非鉄部品ではめ合い用嫌気性接着剤を硬化させるには、非鉄部品にアクチベーターやプライマーを
塗布しなければなりませんでした。最新のプライマー不要のはめ合い用接着剤は、非鉄の表面に対しても鉄の
表面と同様の硬化性を示します。重合にプライマーがもはや必要とされなくなることで、工程短縮が実現します。
最新のしまりばめ設計やすきまばめ設計において、アッセンブリーが高温に対応するためには大きさ、重量、
効率性が主要なパラメータとなります。最新の耐熱性はめ合い用接着剤は、連続動作温度がマイナス 55℃~
230℃に拡張されています。高温性能が要求されていない場合でも、この処方によりアッセンブリーの設計の
安全性と強度が向上します。
金メダルに値するはめ合い用接着剤
プロのスノークロスレーサー兼フリースタイルのライダーである Levi LaVallee 選手と、金メダルを勝ち取った
彼のスノークロスチームは、ポラリス社製の競技車両を使っています。Levi 選手は 6 個の金メダルを含む
合計 9 個の冬季 X ゲームのメダルを獲 得し、2010 年 には自身 のスノーモービルでジャンプの世界 記 録
412.5 フィート(約 126m)を更新しています。彼は、こうした数多くの成功の大部分がポラリス社製スノーモービルの
信頼性と性能によるものだと述べています。
「ジャンプやダブルバックフリップのような危 険なことをしても安 心していられるのは、ひとつには ポラリスが
スノーモービルのアッセンブリーにロックタイトを使っているからだ。ここ数年、競技車両として Polaris IQR600 を
使っているが、X ゲームで金メダルを獲得したり、世界ジャンプ大会やスノークロス選手権でも優勝したりなど、
本当に素晴らしい結果を出すことができた。とにかくすごいマシンだ。このマシンは、ポラリスの製品がいかに
強靭であり、同社がどれほど優れたマシン製作能力を備えているかを示している。」と、Levi 選手は語ります。
ポラリス社のエンジニアは、製造工程全体でロックタイト製品を指定しています。ポラリス社は、車体のあらゆる
アッセンブリーにねじゆるみ止め用接着剤を使用しているほか、スノーモービルの多くの箇所にはめ合い用
接着剤を塗布しています。
これらの接 着 剤 はベアリングの接 合 部 において重 要 な働 きをします。スノードライブ・クラッチカバー の
ベアリングと可動シーブのベアリングとの接合で、クラッチは、温度がマイナス 40℃~93℃までの環境下で
確実に作動する必要があります。ポラリス社は、ベアリングが完全に固定されて車体の寿命が続く限りその
位置を保つようにするためロックタイト 648 を指定しています。高強度のはめ合い用接着剤ロックタイト 648 は、
動的 荷 重、アキシアル(軸 方向)荷 重、ラジアル(半径 方向)荷 重に対して優れた性能 を発 揮します。この
接着 剤 は、アクチベーターがなくても金 属 上で硬 化し、油 や切 削 屑、腐 食防 止 液などの混 入物 の影 響 を
ほとんど受 けることなく硬化するため、部品の洗浄に要する時間を最小化します。
スノークラッチドライブでは、ロックタイト 648 を可動
シーブの内径に手で塗布し、ベアリングを所定の
位 置 に圧 入 します。はめ合 い用 接 着 剤 は、
コンポーネン トの信 頼 性 を高 め、ベア リングが
早期 に機能しなくなることを防ぎます。2 番目 の
クラッチへの塗 布 において、ロックタイト 620 を
使用しスパイダーアッセンブリーを固定シャフトに固定
します。重量と固定シャフトの反作用でクラッチが
予定通りに機能するため、ここはクラッチアッセン
ブリーの最も重要な部分になると考えられます。
使用温度が 200℃を超えるエンジンでは、耐熱・
高 強 度 はめ合 い用 接 着 剤 ロックタイト 620 が
ポラリス社のオペレーターが、ドライブクラッチ・アッセンブリー上の
使 われています。クラウンシャフトベアリングの
可動シーブの内径にはめ合い用接着剤ロックタイト 648 を
はめ合 いのようなエンジンの塗 布 において、
塗布している。この後、ベアリングが部品の中に圧入される。
ロックタイト 620 は、エンジンの想定最高温度より
高い温度でも耐えうるように開発されています。アッセンブリー時の硬化時間を短縮するには、接着剤を塗布
する前に、スプレーを使用していないスティックタイプのプライマー、ロックタイト 7088 を塗布します。
Levi LaVallee 選手とロックタイト
Levi LaVallee 選手が 2012 年の大晦日に自身のジャンプ世界記録に
挑んだとき、彼は時速 100 マイル(約 161km)でテイクオフランプから
飛び出し、サンディエゴ湾上空を横切り、400 フィート(約 122m)以上
離れた場所に力強く着地しました。最高高度約 70 フィート(約 21m)
から降下し、時速 111 マイル(約 179km)で金属と木で作られた着地
板に叩き付けられるように着地したにもかかわらず、スノーモービルは
無事でした。Levi 選手は祝福を受けた後、スノーモービルに急いで
戻ってエンジンを掛けてみたところ、何の問題もない最高の状態で
あったということです。Levi 選手はロックタイトのねじゆるみ止め剤と
はめ合い用接着剤のお蔭で車体が無事だったと考えています。
また、Levi 選手は、彼がフリースタイル競技での安全に欠かせないと
考えているロックタイトはめ合い用接着剤の個人的な用途についても
話しました。Levi 選手は重力をものともせず、500 ポンド(約 227kg)の
スノーモービルを空中に高く投げ上げ、信じがたいジャンプを行います。
金メダルを勝ち取った 2013 年のパフォーマンスでは、手放しの後方
宙返り、足を放したジャンプ、手を操作レバーに置いたまま足を放し
後ろのバンパーまで完全に伸ばした状態での後方宙返りと、75 秒の
間に 9 回ジャンプと、大きなエクステンションの固定、完ぺきな着地を
決めました。宙返りしている間、スノーモービルを制御し、エクステンションを
開始するため、Levi 選手は、操作レバーの握りをしっかり固定します。
Levi 選手は次のように語っています。「操作レバーをしっかりと固定した後に少しでも前後に動いてしまうようなら、
大きな事故に巻き込まれかねない。競技会の前、僕はヘンケルに操作レバーが動くのを止められないか聞いて
みた。すると、彼らは操作レバーを所定の位置に固定するのにはめ合い用接着剤を使うとよいと提案してくれた。
それ以来操作レバーが動く問題は起こっていない。ロックタイトは金メダルに負けないくらい素晴らしいね。」
■2013 年冬季 X ゲームの Levi 選手によるフリースタイル映像はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=dcK_uzF_EHg