平成 27 年度春期 プロジェクトマネージャ試験分析速報

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平成 27 年度春期
プロジェクトマネージャ試験分析速報
2015,4,20 (株)アイテック
IT 人材教育研究部
1.試験全体講評
今回のプロジェクトマネージャ試験の全体的な難易度は,午前問題と午後問題を総合的
に勘案し,「中」と判断します。
午前Ⅰは,従来どおりの出題内容でしたが,新傾向問題が少し増えており,全体として
は少し難しく感じられた内容だったといえます。
午前Ⅱも従来に比べ大勢に変化はないのですが,新たな用語に注意が必要です。ただ
し,相変わらず過去問題の再出題が問題構成の中心であり,知識を問う出題が顕著である
ことを考慮し難易度は「やや低」と判断します。
午後Ⅰは,オーソドックスな問題で解答数が多めの従来の傾向を踏襲しています。問 1
が特徴的で,人によって取り組みにくかったかも知れません。ただし,問題そのものの難
易度は「中」と判断します。
午後Ⅱは,プロジェクト調達マネジメントとプロジェクト品質マネジメント分野の出題
でした。取り組みやすいテーマですが,問題文や設問文の制約による解答のしにくさを考
慮し,難易度は「やや高」と判断します。
2.午前Ⅰ(共通知識)試験講評
共通知識として出題範囲の全分野から 30 問が出題される午前Ⅰ試験ですが,出題分野の
内訳はテクノロジ分野が 17 問,マネジメント分野が 5 問,ストラテジ分野が 8 問で,出題
数は同じです。
今回の試験は平成 25 年の 10 月に発表された“セキュリティ分野の出題強化”の方針で
行われた 3 回目の試験で,午前試験でのセキュリティ問題の出題数は 4 問で前々回及び前
回と同じでした。
従来どおり,問題は 30 問全てが同時期に実施された応用情報技術者試験 80 問からの抜
粋になっています。今回は用語問題と考察問題が減り,計算問題と文章問題が増えました。
出題内容としては基礎理論の計算問題がやや難しく,その他の分野もあまり出題されない
内容が幾つかあり,全体としては少し難しく感じられた問題だったといえます。
今回の試験で新傾向問題といえるものとしては次の問題で,前回よりも増えています。
問 5 物理サーバのスケールアウト
問 8 拡張現実の例
問 13 JIS Q 31000 における残留リスクの定義
問 14 NIST 定義によるクラウドサービスモデル
問 25 IT 投資ポートフォリオの目的
問 26 コモディティ化の説明
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3.午前Ⅱ(専門知識)試験講評
従来からの傾向どおり,25 問中半分程度が試験区分の専門分野であるプロジェクトマネ
ジメント分野からの出題でした。6 割以上は他の試験区分も含め過去出題問題の再出題
(類題・改題含む)でした。H25 年の同試験区分からの再出題は 2 問程度と少なめでし
た。
新傾向の問題は,プロジェクトマネジメントの分野に集中しています。あまりなじみの
ない用語については知識がないと解答が困難ですが,数としてはそれほど多くなく,大勢
としては過去問の履修具合が得点率に大きく影響します。しかし,高得点を上げるには新
たな用語をサーチして理解しておく必要がありました。
今回の試験でも,やはり過去問題の再出題や改題・類題の出題が半分以上を占めていま
す。専門分野を中心に地道に過去問題を学習してきた受験生は,確実に合格点をクリアで
きると思います。計算問題が 3 問と少なめであったことを考慮し,難易度は「やや低」で
あると判断します。
(新傾向問題)
問1
ISO21500 におけるプロジェクトガバナンス維持の責任者
問 3 PMBOK で組織プロセス資産に分類されるもの
問 6 ブルックスの法則
問 10 EVM で CPI が下がった際の対処法
問 17 リーンソフトウェア開発
問 23 特定電子メール法
4.午後Ⅰ試験講評(記述式問題)
今回も従来どおり 3 問の出題から 2 問解答する方式でした。問 1 はステークホルダマネ
ジメント,問 2 はソフトウェアパッケージの導入,問 3 は金融機関でのシステムの再構築
に関する内容です。従来,問題文が 4-5 ページでコンパクトにまとめられていますが,問
1 は若干分量が多めでした。今回も,問題間での難易度格差はそれほど大きくないと思わ
れますが,問題によってプロジェクトマネジメントの内容や観点の様相が異なっています
ので,人によって解きにくさは異なるでしょう。特に問 1 のステークホルダマネジメント
は目新しく,取り組みにくかったかもしれません。全体の難易度としては,「中」と判断し
ます。各問題について出題内容を見ていきます。
問 1 生産管理システム導入プロジェクトのステークホルダマネジメント
製薬企業の生産管理システムの導入プロジェクトを題材としたステークホルダマネジメ
ントに関する問題でした。体系的にステークホルダマネジメントを取り上げた目新しい問
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題と言えます。この問題のように,フォーマルな形でステークホルダマネジメントに携わ
った経験のある受験生は多くないと考えられ,取り組みにくいと感じて選択しなかった人
が少なからずいたものと思われます。問題文の分量も 6 ページと多く,分野としてのなじ
みのなさがありますが,問題文の状況を理解できさえすれば解答は難しいものではないの
で,難易度は「中」と判断します。
問 2 ソフトウェアパッケージの導入
衣料品メーカの倉庫管理用のソフトウェアパッケージ導入を題材にしたプロジェクト計
画の問題です。プロトタイプを活用した計画の内容をキーとした構成で,取り組みやすい
問題と考えられます。問題文の分量は 5 ページ,解答数は 8 と標準的で解答しやすく,総
合的に難易度は「中」と判断します。
問 3 システムの再構築
金融機関の業務センタでのシステム再構築を題材とした,プロジェクト運営に関する問
題です。内部設計時点で要件の追加対応に関する施策について問われています。問題の作
りとしてオーソドックスで,問題文が 4 ページとコンパクトで解答数も 8 と標準的です。
これまでもよく出題されていたシステム開発プロジェクトの管理を対象としていて,多く
の受験生にとっては馴染みのある問題文の流れだと思われ,難易度は「やや低」と判断し
ます。
5.午後Ⅱ試験講評(論述式問題)
出題数が 2 問であり,それぞれオーソドックスで,今までの本試験でよく取り上げてい
た内容が扱われている感じです。しかし,問題文の表現には,これまでと異なった記述が
盛り込まれているので注意して取り組む必要があります。プロジェクトマネジメントに関
して,必然的に経験するプロセスや活動を取り上げていますが,しかるべき経験がない
と,事例の内容詳細を説明できなくなることが考えられます。
問 1 はプロジェクト調達マネジメント,問 2 はプロジェクト品質マネジメントをテーマ
としています。ただし,問題文の記述や設問文の要求事項が細かいので,これらにきちん
と対応することが合格評価を得るためには重要です。どちらも問題の要求に沿って論述し
ていくのは決してたやすいとはいえないと考えます。そのような趣旨から,全体的な難易
度は「やや高」と考えられます。
問 1 情報システム開発プロジェクトにおけるサプライヤの管理について
分野としてはプロジェクト調達マネジメントのテーマですが,請負契約での外部委託先
管理という典型的な観点の問題です。「プロジェクト調達マネジメント」のフレームワー
クでの表現になっているので,分かりにくいと感じる人がいるかもしれません。しかし,
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請負契約の制約を踏まえた外部委託先管理の工夫をしっかりとまとめればうまく展開でき
ます。キーワードとして「発注者」
,「サプライヤ」といった表現を明示的に用いる必要が
あります。問 2 と比較して制約が少なく取り組みやすいのですが,外部業者の管理経験が
ないと表面的な記述になりがちになるので,論述には注意が必要です。
問 2 情報システム開発プロジェクトにおける品質の評価,分析について
プロジェクト品質マネジメントの問題です。品質の評価,分析とそれに基づくアクショ
ンという観点はオーソドックスなものといえます。ただし,問題文の記述や設問要求は限
定的で細かく,解答に困難さがともないます。例えば,評価,分析を受けて,対応策と改
善策を書き分けて表現するなど,書き進めるのが悩ましい状況です。要求事項を確実に網
羅することが重要です。
今回の問題は,2 問とも「計画」と「実践」の両面で説明する必要があります。表面的な
観念だけでは対応が難しく,内容の具体性や詳細さを引き出そうとする出題側の意図を感
じます。したがって,できるだけ様々な題材を準備して具体的に棚卸しておき,問題に対応
できるよう備える必要があります。
以上
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