東北復興 企業・NPO等の参加による 「海岸防災林再生活動」説明会2015 海岸防災林再生の考え方、 事業の現状と今後の見通しについて 平成27年10月26日 林野庁 (説明者:林野庁森林整備部治山課 海岸林復旧指導官 水野 明) 人々の暮らしを守る海岸防災林 ○四方を海に囲まれた我が国では、飛砂、風害、潮害など海岸特有の災害から暮らしを守るため、古くか ら先人の努力により海岸沿いの森林を海岸防災林として保全。 ○また、海岸防災林は、白砂青松の美しい景観を提供するなど憩いの場としても貴重な空間。 海岸防災林の例(日本三大松原) 三保の松原(静岡県静岡市) 気比の松原(福井県敦賀市) 面積は約198ヘクタール、約5万4千本の松が生育。 平成25年6月には世界文化遺産「富士山-信仰の 対象と芸術の源泉」の構成資産の一つとして登録。 面積は約40ヘクタール、約1万7千本 の松が生育。若狭湾国定公園の一 部。 虹の松原(佐賀県唐津市) 日本の白砂青松100選、日本の渚百選、 かおり風景100選、日本の道100選にも 選定。 海 岸 防 災 林 の 再 生 事 例 襟裳岬は天然性のカシワ林が、明治初期から 昭和初期にかけて漁業の燃料等として伐りつく され、草が1本も生えない砂漠(「えりも砂漠」 と呼ばれていた)と化していた。海には赤土が 流れ込み、コンブ漁をはじめ漁業への影響は深 刻なものであった。この荒廃した海岸を復旧を するため、昭和28年、営林局・署と住民の協力に よる緑化事業が開始。強風が吹き荒れる地にお いて試行錯誤を繰り返しながら、浜に打ち上げ られた雑海藻(ゴタ)を敷く「えりも式緑化工 法」を開発し、事業開始から約15年後の昭和42 年頃には約150ha以上の緑を取り戻しました。 乾燥を防ぐため雑海藻で表土を覆い植栽 森林が回復した襟裳の海岸防災林 東日本大震災における海岸防災林の津波に対する効果と被害状況 ○津波エネルギーの減衰や到達時間の遅延、漂流物の捕捉に一定の効果。 林帯が残った海岸防災林では、船舶やコンクリート片等の漂流物を捕捉し、林帯の背後に存する人家等の被害 を軽減した事例が報告。 数値シミュレーション結果では、津波エネルギーの減衰効果として、林帯幅の広さに応じてその効果が発揮され、 林帯幅が200mの海岸防災林が存在した場合には、流体力が3割程度減少することが確認。 ○一方、地震に伴う大規模な津波により、青森県~千葉県にわたる海岸防災林で約140kmに被害が発生。 地盤高が低く地下水位が高い箇所では、樹木の根が地中深くに伸びず、根の緊縛力が弱かったことから根返り し流木化したものが多数存在していることが確認。 海岸防災林被災箇所の現地調査結果では、十分な樹高を有し被害を受けずに残った樹木は、地下水位より上 位の土層深さが3m程度の箇所で生育していることが確認。 海岸防災林の被災状況事例 海岸防災林の津波被害軽減効果事例 被災前(平成18年撮影) 岩手県野田村 船舶や鋼管などを捕捉(青森県八戸市) 被災後(平成23年撮影) 車などを捕捉(福島県いわき市) (宮城県岩沼市沿岸) 宮城県仙台市 宮城県名取市 海岸防災林再生のイメージ図(望ましい将来像) 「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関 する検討会」報告書(平成24年2月)より抜粋 防風効果の高い十分な樹高を持つ樹種 大径木化した陸側の林帯 飛砂・潮風害・寒風害に十分耐える樹種 高密で樹高が低い海側の林帯 (例) 上層木 クロマツ 下層木 トベラ カシワ シャリンバイ 大径木による流木や漂流物の捕捉 津波エネルギーの減衰 津波被災後の残存木による防風機能等の維持 津波エネルギーの減衰 陸 側 海 側 管理道 防潮堤 防潮堤 人工盛土 生育基盤盛土 背後の林帯の保護に 必要な場合に設置 風や飛砂等の軽減 津波エネルギーの減衰 根系の健全な成長 樹木の根返り防止 盛土材として安全性が確認された 災害廃棄物由来の再生資材を活用 (例) 上層木 クロマツ タブノキ コナラ 下層木 トベラ カシワ シャリンバイ 地下水位から2~3mの高さを確保 広い林帯幅 復旧・再生にあたってのポイント ■植栽木の生育基盤■ 樹木の根系の健全な成長の確保を図り津波に対して根返りしにくい林帯を形成するため、地下水位 から2~3m以上の地盤高さとする ■植栽樹種■ 地域の自然条件やニーズを踏まえ、 ・海岸の最前線には、潮風等に耐性のあるマツ類の植栽 ・潮風等の影響が少なくなる陸側はマツ類のほか十分な樹高となる広葉樹の植栽 を検討 ■人工盛土■ 津波に対する「多重防御」の一つとして、津波からの被害軽減効果を考慮した人工盛土の設置を検討 海岸防災林造成における植栽樹種について 「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する 検討会」報告書(平成24年2月)より抜粋 〇海岸防災林には、潮害の防備、飛砂、風害の防備等の災害防止機能や地域の生活環境の保全に重要な役割 ○海岸防災林の造成地は環境条件が著しく悪いことから、飛砂、潮風及び寒風等の害によく耐えうるなどの条件を 有する樹種を選定 海岸防災林に使用される一般的な樹種 ◇ 海岸防災林造成で一般的に用いられる樹種は次のとおり。 ・針葉樹:クロマツ、アカマツ等 ・広葉樹:カシワ、トベラ、タブノキ、コナラ、エゾイタヤ等 海岸防災林に使用される海側、陸側に植栽する樹種の条件 ◇ 海岸防災林造成地の海側、陸側に植栽する樹種の条件としては、 海側:飛砂、潮、風等を直接受けることから、飛砂、潮風及び寒風等の害に十分耐えうるもの 陸側:防風効果を高めるため、保全対象に対し十分な樹高をもつもの ■ 区域区分による植栽樹種例 海側 上層木 中間 下層木 針 葉 クロマツ 樹 アカマツ 広 葉 樹 上層木 陸側 下層木 クロマツ アカマツ アキグミ カシワ ハマナス トベラ シャリンバイ タブノキ エノキ シロダモ ハンノキ 上層木 下層木 クロマツ アカマツ アキグミ トベラ カシワ ハマナス シャリンバイ ヤブツバキ ネズミモチ タブノキ エノキ シロダモ ケヤキ コナラ エゾイタヤ アキグミ トベラ カシワ ハマナス シャリンバイ ヤブツバキ ネズミモチ 海岸防災林の復旧・再生の状況 ○青森県~千葉県にわたる海岸防災林(延長計約140km)が被災。林帯やその地盤のほか防潮堤も被災。 ○被災各県において帰還困難区域等を除く箇所について、早期に復旧・再生に着手。復旧・再生に当たっては、① 安 全性が確認された災害廃棄物由来の再生資材(津波堆積物、コンクリートくず等)を活用して林帯地盤を整備 ② 海 岸防災林に対する様々な取組事例・提言を踏まえて植栽樹種・方法に関する実証試験に着手 ③ 樹木の植栽等は 地域住民、NPO、企業等の協力も得ながら実施。 ■海岸防災林の復旧・再生の進捗状況等について 0 被災延長 20 40 60 80 100 約140km 120 140 帰還困難区域等 ■復旧・再生の状況 岩手県(宮古市) 再生資材を活用して植生基盤の 復旧を完了。平成26年5月に植 (青森県 ~ 千葉県) 栽を実施。 工事着手 完了 約38km 宮城県(仙台市) 着手 約114km 平成27年6月末時点の延長 仙台市~山元町の海岸防災林の 今後着手予定 ※1 現時点での復旧方針による見込み。今後、変動があり得るもの。 ※2 平成24年度末の工事着手延長は約54km、平成25年度末の累計 工事着手延長は約92km。 ○被災した海岸防災林については、土地利用に関する地 元の合意形成の状況を踏まえつつ、帰還困難区域等 を除く箇所について、早期に復旧工事に着手すること を目指す。 ○津波により被災した林帯を保護する防潮堤(被災延長 約18km)については、地域のニーズを尊重し、海岸防 災林の機能が発揮されるよう復旧に努める。 復旧・再生は、民有林・国有林 を一体的に国直轄事業により実 施。再生資材を活用し、順次植 栽を実施中。 福島県(いわき市) 植栽や下刈り等の手入れを含め た協定を企業と協定を締結し、 平成26年11月に植栽を実施。 【海岸防災林の復旧・再生スケジュール】 林帯地盤等の復旧が完了した箇所から順次、植栽を実施。全体の復旧は平成23年から概ね10年で完了(復興工程表)。 民間団体等との連携による植栽活動 ○海岸防災林の復旧・再生は、治山事業によるもののほか、民間団体等との連携が重要。 ○防災意識の向上や地域の復興のシンボル的な活動となるよう、地域住民等の参画による植栽活動の 仕組みづくりを支援。(海岸防災林再生等復興支援事業) ○海岸防災林再生に高い関心を示すNPOや企業等と国または地方公共団体が植栽やその後の保育な どの活動について定める協定を締結。 海岸防災林再生等復興支援事業 (林野庁補助事業) 地元住民やNPO・企業への意向調査、これらの者と地元自治体との協議 会の開催等、地元住民、NPO、企業等が海岸防災林再生を参画していく ための仕組みづくりを支援 平成27年度事業実施主体; 国土緑化推進機構、宮城県緑化推進委員会、 福島県森林・林業・緑化協会 民間団体等との協定による継続的な活動 団体数 面積(ha) 東北森林管理局 36 15.14 関東森林管理局 1 青森県 (協定実績) 植栽箇所 ポータルサイト(情報収集・発信) 企業等対象の説明会(平成26年11月、都内) (平成26年度末現在) 主な樹種 仙台市、名取市、東松島市 クロマツ、広葉樹 0.45 相馬市 クロマツ、広葉樹 2 0.41 八戸市、三沢市 クロマツ 宮城県 6 100.45 名取市、岩沼市、東松島市、 亘理町 クロマツ 福島県 6 1.84 いわき市、相馬市 クロマツ 茨城県 1 0.21 鉾田市 クロマツ、広葉樹 千葉県 10 10.89 山武市、匝瑳市、一宮町 クロマツ、広葉樹 合 計 62 129.39 注) 東日本大震災以降に国もしくは県と締結し、期間が1年以上の協定を対象 に集計。なお、期間1年未満の協定により活動を行う団体も数多く存在する。団 体数は延べ。面積は植栽予定面積を含んでいる。 写真の説明:宮城県が制定した「みやぎ海岸林再生みんなの森林づくり活動」により、県、名取市、民間団体等が協定を締結して実施。名取市内 の海岸林全域を対象に「海岸林再生プロジェクト10カ年計画」として平成32年まで行われる。 (上):地元住民を中心に,全国のボランティア約350名が参加して植栽祭を開催 (下):地元住民が抵抗性クロマツを植栽 http://kaiganrin.jp/ 海 岸 防 災 林 復 旧 状 況 ① 【岩手県山田町浦の浜地区】 【青森県三沢市字四川目地区】 青森 三沢市字四川目で行った地域ふれあい事 業。三沢地区JUMPチーム防災林植栽支 援活動に小中高生、約100名が参加。 H23年4月 被災後の状況 岩手 H26年12月 生育基盤造成後の状況 H25年10月 生育基盤盛土の一部に再生資材を活用 海 岸 防 災 林 復 旧 状 況 ② 【宮城県名取市下増田地区】 岩手 宮城県名取市における 昭和初期の海岸防災林 地元住民を中心に、全国のボランティ ア約350名が参加して植栽祭を開催 宮城 【宮城県岩沼市下之郷地区】 福島 平成26年5月植栽(平成27年9月2日撮影) 【宮城県仙台市上空から名取市方向を望む】 海 岸 防 災 林 復 旧 状 況 ③ 【福島県南相馬市北海老地区】 H23年3月 福島 被災後の状況 H25年5月 H26年8月 生育基盤盛土の一部に再生資材を活用 生育基盤盛土完成状況 【茨城県神栖市豊ヶ浜地区】 茨城 H27年2月 【千葉県旭市三川地区】 小中学生による植樹の様子 千葉 H26年10月
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