ギ酸メチル同位体(HCOO13CH3)のねじれ振動第二励起状態のマイクロ波分光 電波物理学研究室 桑原拓郎 ギ酸メチルは 1975 年に SgrB2 で初めて存在が確認された星間分子である。その後、OrionKL や SgrB2 等 の星形成領域に存在することが確認された。近年では中小質量星形成領域の初期の段階でも存在する事がわか り、様々な星形成領域で観測される事が期待される。星間分子のスペクトルから分子密度や温度といった情報 を知ることができ、そのような領域の物理状態を知る手掛かりになる。ギ酸メチル同位体(HCOO13CH3)はノ ーマル(HCOOCH3)との存在比が約 1/50 となっており、電波望遠鏡の性能の向上に伴い発見された。今後同位 体の高い振動励起状態も観測される可能性があり、未だ帰属のついていなかった第二励起状態の帰属を行った。 この分子はメチル基の水素以外を同一平面上に持つ prolate 型の非対称こま分子であり、星間空間で存在が 確認されている分子のなかでは比較的複雑な構造をしている。またメチル基の水素のスピン角運動量の向きに より回転準位が A 対称種と E 対称種に分裂する。また我々が扱うねじれ振動はギ酸メチルの振動のモードと しては最もエネルギーが低いため、室温でもねじれ振動の励起状態が観測できる。以上のことからギ酸メチル の低い周波数帯でのスペクトル密度が高くなり解析が 25 難しくなる。 20 態に関する報告はなかった為、帰属の手掛かりとして ノーマル種とのスペクトルの類推から帰属を行った。 図 1 に示すのがノーマル種 Vt=2 の R-branch の遷移の シリーズをプロットしたものである。赤くプロットし たものが a-type, 黒くプロットしたものが b-type の遷 移に対応している。図中のプロットが示唆するように 回転量子数 J が高くなるにつれ、図の 4 本の組が隣接 した周波数帯に現れる事が分かる。ギ酸メチルは a 軸 方向に 1.63 D, b 軸方向に 0.68 D の電気双極子モーメ 回転量子数 J 今回我々が同定した同位体のねじれ振動第二励起状 15 10 5 0 5000 5300 5600 5900 6200 (Frequency)/[2(J+1)] (MHz) 図1 Reduced Fortrat diagram トをもつため a-type の強いスペクトルと b-type の比 的弱いスペクトルが観測されると期待される。この 4 組が近い周波数に現れるであろう高い J の遷移を狙っ て測定した。 測定の結果、図 2 のようなスペクトルが得られ、 diagram から示唆される 4 本組の帰属を行う事が出来 た。同様の方法で帰属をつけたデータをもとに、現在 分子定数の改善、帰属の拡張を行っているところであ る。発表にはさらに改善された帰属と解析について報 告する予定である。 図2 Vt=2 A 対称種のスペクトル例
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