市政への緊急提言 星降る街「長峰」のすばらしい環境を守ってください

平成 27 年 9 月 17 日
拝啓 稲城市長
高橋
勝浩
様
長峰連合会会長
市政への緊急提言
星降る街「長峰」のすばらしい環境を守ってください
現在、長峰地区住民の「長峰をすばらしいまちにしたい、守りたい」という切実な声や稲
城市都市計画マスタープランを無視して、住宅街の中心地、長峰2丁目1-1 (ファミリー
マート裏の空き地)にガス等の配管工事の拠点として100台の工事用車両の車両基地・「あ
すか創建稲城事務所(仮称)」の建設が強引に進められようとしています。
当該土地は、周囲には文教、公共施設と住宅が並び、閑静な住宅街として開発されてき
た長峰地区の中心地です。近くには、長峰小学校、もみの木保育園、総合体育館、長峰派出
所、長峰クリニック、コンビニのファミリーマートがあり、バス停留所、幼稚園送迎バス乗
降場所などもあります。稲城市の都市計画マスタープランには地域支援機能集積地として「日
用品を扱う商店や飲食店、健康・福祉など身近な生活サービスを提供する機能の誘致を目指す
土地利用」と規定され、住民利便施設をつくる為の用地として20年以上も一般の住宅建設な
どが厳しく規制されてきました。
この地は、いわば長峰地区住民の聖地であります。UR都市機構(旧都市基盤整備公団)
も長峰地区を「星降る街」として宣伝し開発してきました。今、長峰は自然環境には恵まれた
落ち着いた街になっています。しかし、コンビニが一軒あるだけで他には何もない離れ小島
のような不便な街でもあります。地区の住民は長い間、この地に、老人や子供の為の公共施
設や文化センターの建設、あるいはスーパーやクリーニング店、郵便局、銀行、市政の窓口、
災害時の緊急施設など生活利便の為の諸施設の設置、周辺には緑樹や花壇のある住民が憩う
公園が出来ることを期待し夢見てきました。マスタープランを実現するという夢の実現を願
って、住民は20年以上の間不便さをひたすら我慢してきたのです。
そこへ降って湧いたように持ち上がったのが「あすか創建稲城事務所(仮称)」 の建設問
題です。事務所とは一部だけで表向きの名称に過ぎず、実態は工事用の資材や工事で出る廃
材の倉庫を備えた100台の工事・営業車両の基地です。それに多数の出入り業者の車両を
含めて、朝夕、小中学生の登校下校時などに、10トン車を含む多くの車両が出入りして、
交通事故の危険が相当に増大することは明らかです。排気ガスで空気も汚染されます。あす
か創建東村山事業所の例を見ると、工事用物資や廃棄物の集積、多様な出入り業者の車両な
ど、見た目が汚く、長峰の美しい街並みにそぐわない面が多々あります。悪臭を危惧する声
もあります。資材廃材の積み降ろしなどの騒音が予想され、ガス管切断の際の騒音の恐れも
払拭されていません。マスタープランの趣旨に叶わないこのような建設計画が実行されれば、
緑多い静かな住宅環境にそぐわないだけでなく、悪化するのは避けられません。
まちづくりにはイメージが大切な要素となりますが、上記のような工事用車両の車両基
地ができると、長峰地区のイメージがダウンすることは必至です。長峰だけでなく、すぐ前
の中央公園や体育館を利用する人々がこの状況を見ると「稲城市は汚い、危ない」の風評が広
1
がるのではないでしょうか。婦人雑誌の暮らしやすい街アンケートで得た稲城市の「ナンバー
2」のポジションも危うくなります。
URから「あすか創建㈱」への当該土地の売却のいきさつには不審不明な点が多く、住民
から反対の声が上がったのは当然です。URは長峰を「星降るまち」の住宅街として開発を
進めてきたにも拘らす、近隣の住民に対して事前に何の説明もしないまま、都市計画マスタ
ープランにそぐわない建設計画を持つ会社への売却を決定し、さらに、住民の強い反対があ
ることを知っているにも拘らず、売買契約を結んでしまったのです。URに抗議すると、 「も
う売ってしまったから、問題があれば、 あすか創建㈱」に言ってくれ」と取り合いません。ま
ちづくりを担う公的組織にあるまじき無責任な態度で、怒りを禁じ得ません。
しかもURは当該土地購入の公募の条件の一つとなる「地域住民の利便に資する機能」
については、移動販売車用の駐車スペースを用意すれば適合するとしたのです。これには多
くの住民が驚きました、と言うより呆れました。これは小学生でも納得しない「まやかし」だ
と思いました。ここは稲城市の地区計画で「近隣利便施設地区」として指定された用地であ
り、一方、販売車は施設ではありません、しかも4702平方メートルの敷地の中に、 「1台の移
動販売車用の駐車スペースを用意したから、『住民の利便に資する』」という条件は満たし
た」と言っても誰が納得するでしょうか。これには長峰住民を裏切る詐欺行為ではないかと
いう怒りの声があがっています。
このまま「あすか創建稲城事務所(仮称)」の建設計画が強行されれば、 これまで20年以上、
空き地のままの状態を我慢してきたことが全く無意味となるどころか、住民の期待は将来に
わたって断たれてしまうのです。長峰にはこの地より他に住民が利用する施設のための用地
はありません。この地が同計画に使われると、住民が利用する施設のための用地が無くなり
ます。このことの責任は誰が取るのでしょう。
稲城市や「公団」の約束を信じて、この長峰に住居を構えた住民の損害は多大です。住
民には環境権があります。まちづくりには時間がかかります。一度環境が悪化したら、一代
だけでなく、子々孫々まで負の資産として受け継いでいかなければならないのです。その損
害は誰が補償してくれるのでしょうか。私たちは、長峰の安全で緑多いすばらしい環境を子
どもたちへ引き継いでいきたいのです。
今でもURの賃貸住宅には空き室が目立ちます。長峰・杜の一番街では、UR賃貸住宅
400戸の中100戸以上が空き室になっている状態です。一戸の家賃が月10万円として、100戸で
は毎年1億2千万円、 10年になると12億円がURの損失となるのです。当面、土地を売って、
金が入ればすむ問題ではないのです。URは「あすか創建㈱」との売買契約を解除して、当該土
地に住民の生活や福祉などの為の利便施設を整備し、長峰をいっそう暮らしやすい街にする
ことこそ責務であり、急務ではないでしょうか。だからこそまちづくりは住民と手を携えて
取り組んで行かなければならないのです。URだけではありません。稲城市にとっても責任
は重大です。良く考えてください。今からでも遅くありません。
長峰の閑静さを生かしつつ、便利な街にしてください
長峰地区の住宅・文教の中心地に、近隣利便性を持たない「あすか創建稲城事務所(仮称)」
の建設計画は地区計画に不適合としてください。
2
もし、あすか創建㈱が長峰地区に拘るなら、マスタープランや地区計画の目標を充分に
満たすものになるよう指導してください。
あすか創建㈱が近隣利便性を提供できないのなら、別の地で事業展開を図るよう指導し
てください。
住民の声に耳を傾けて、当該土地を活用した次世代に向けた「まちづくり」、都市計画マ
スタープランを実行することを求めます。
更に、今後このような問題を繰り返さないよう、まちづくりのありかたを再検討し、必
要に応じて地区計画等を見直し修正してください。
みんなで知恵を出し合って稲城のまちづくりをしっかりと推し進めましょう。
敬具
<付言>現状の計画は「不適合」判断を
今回のような計画を認めてしまえば、他の土地でもマスタープランにそぐわない計画が
立案された場合、認めざるを得なくなります。それは稲城のまちづくりの崩壊に繋がります。
都市計画にそぐわない建設計画を、稲城市が「地区計画に不適合」と判定し、東京都が
「不許可」とすることは、現状でも合法です。ですから、当然、不適合と判定すべきです。
そうでなければ、都市計画法やそれに基づく都市計画は存在意義を失います。
市は、マスタープランに適合しない建設計画を、躊躇することなく「不適合」と判定し
てください。(これについては別紙「あすか問題と都市計画法」をご参照ください。)
3
別紙
あすか創建問題と都市計画法
(以下、下線太字は編者による)
-開発許可に関する問題点の整理
Ⅰ 都市計画法による「まちづくり」に関する文書
Ⅱ 開発許可の手順と問題点
1.開発に対する稲城市の同意
2.開発許可
3.開発許可の事務
4.開発許可の基準
4.1 許可基準;第 33 条第 1 項第1号について
4.2 許可基準;第 33 条第 1 項第5号について
4.3 あすか創建の建設計画は、許可基準を満足するか
5.私たちの主張と要求
6.地区計画の中の地区整備計画に関する法逸脱性の疑念
7.第5号の判断において地区整備計画のみで判断することの不適切性
8. 問題点のまとめ
Ⅰ
都市計画法による「まちづくり」に関する文書
①まず、都が都市計画区域を指定する。
(都市計画区域)
第5条
都道府県は、
・・・都市計画区域として指定するものとする。
②都市計画区域には用途地域が定められる。
(地域地区)
第8条
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。
① 第一種低層住居専用地域、
・・・、近隣商業地域、商業地域、
・・・又は工業専用地域(以下「用途地域」と総
称する。
)
以下略
③近隣商業地域は次のように定義されている。
第9条
・・・略
8 近隣商業地域は、近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務
の利便を増進するため定める地域とする。
以下略
④都市計画区域では、都市計画に地区計画を定めことができる。
(地区計画等)
第 12 条の 4 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる計画を定めることができる。
①
地区計画
以下略
⑤地区計画に規定する事項が決まっている。
(地区計画)
第 12 条の 5
略
2
地区計画については、
・・・掲げる事項を定めるよう努めるものとする。
① 地区整備計画
② 地区計画の目標
③ 整備、開発及び保全に関する方針
以下略
4
⑥地区整備計画に規定する事項が決まっている。
第 12 条の 5
略
7
地区整備計画においては、次に掲げる事項・・・を定めることができる。
①
略
②
建築物等の用途の制限、
・・・以下略
③
⑦上記文書を作成するときの基準が決まっている。
(都市計画基準)
第 13 条
略
⑭
地区計画は、公共施設の整備、建築物の建築その他の土地利用の現状及び将来の見通しを勘案し、当該区域
の各街区における防災、安全、衛生等に関する機能が確保され、かつ、その良好な環境の形成又は保持のためそ
の区域の特性に応じて合理的な土地利用が行われることを目途として、当該計画に従つて秩序ある開発行為、建
築又は施設の整備が行われることとなるように定めること。
・・・略
2
都市計画区域について定められる都市計画は、当該都市の住民が健康で文化的な都市生活を享受することが
できるように、住宅の建設及び居住環境の整備に関する計画を定めなければならない。
・・・以下略
⑧都市計画にはいろいろなものがあり、作成者が決まっている。
(都市計画を定める者)
第 15 条 次に掲げる都市計画は都道府県が、その他の都市計画は市町村が定める。
① 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に関する都市計画
② 区域区分に関する都市計画
・・・以下略
⑨市町村が作る都市計画
(市町村の都市計画に関する基本的な方針)
第 18 条の 2 市町村は、議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想並びに都市計画区域
の整備、開発及び保全の方針に即し、当該市町村の都市計画に関する基本的な方針(以下この条において「基本
方針」という。
)を定めるものとする。
2 市町村は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必
要な措置を講ずるものとする。
3 市町村は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、都道府県知事に通知しなければな
らない。
4 市町村が定める都市計画は、基本方針に即したものでなければならない。
⑩以上の規定に基づき、稲城市のまちづくりの「基本方針」は稲城市都市計画マスタープランと
して作られ、長峰地区の「都市計画」としては稲城中央公園周辺地区の地区計画が作られている。
また、あすか創建建設計画予定地は、マスタープランでは「近隣商業地域(稲城市都市計画図)
」
「地域支援機能集積地(全体構想、土地利用の基本方針)」として、また地区計画では、「近隣
利便施設地区」と指定されている。
関連する文書の概要は、以下のとおりである。
【稲城市都市計画マスタープラン】
地域支援機能集積地:
・日用品を扱う商店や飲食店、健康・福祉など身近な生活サービスを提供する機能の誘導を目指す土地利
用です。
・生活拠点を担う地区に主に配置します。
5
【稲城中央公園周辺地区地区計画】
地区計画の目標:
本地区は、緑豊かな環境を有する丘陵地である多摩ニュータウンの長峰地区の一部にあり、独立行政法人都
市再生機構が新住宅市街地開発事業による計画的な土地利用及び施設配置を行うことにより良好かつ利便性
の高い居住環境の形成を図っている。
本計画では、地区ごとの各々の良好な居住環境及び住区内の公共施設、利便施設等の機能の維持及び増進を
図り、快適で魅力のある住宅地の形成を図ると共に、利便性に富み、かつ、緑豊かな都市環境の形成を図る
ことを目標とする。
土地利用の方針:
近隣利便施設地区;
敷地の立地特性を活かした公益的施設、業務施設、商業施設等の導入を図り、快適で魅力ある生活環境を
形成する。
地区整備計画:
建築物等の用途の制限;
次の各号に掲げる建築物は、建築してはならない。
⑴ 自動車教習所
⑵ 自動車車庫(建築物に附属するものは除く。
)
⑶ 畜舎
⑷ 建築基準法別表第2(と)項第2号及び第3号に規定する工場
⑸ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項各号の規定に該当する営業に係る
もの
⑹ 倉庫業を営む倉庫
Ⅱ
開発許可の手順と問題点
1.開発に対する稲城市の事前の同意
開発に公共施設が関係する場合は、事前に施設管理者の同意が必要である。
(公共施設の管理者の同意等)
第 32 条
【都市計画法】
開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管
理者と協議し、その同意を得なければならない。
1) :以下「法」という。
2) この場合の公共施設には、稲城市が管理する下水道が該当する。
3) この許可申請を、あすか創建は稲城市に対して行い同意を得ている(7/3)
。
2.開発許可
開発を行うものは都市計画法第 29 条により都知事の許可を受けなければならない。
(開発行為の許可)
第 29 条
・・・開発行為をしようとする者は、
・・・、都道府県知事・・・の許可を受けなけれ
ばならない。
1) 都知事:東京都多摩建築指導事務所開発指導二課(府中市)が事務を担当している。
2) 開発:1m以上の切土・盛土等をいう。
3) あすか創建から聞いている建設計画(以下、「同計画」)では、土地を掘り下げてから建設予定。
4) この規定に従い、あすか創建は都(建築指導事務所)に開発許可の申請を行った(7/22)
。
6
3.開発許可の事務
許可事務は法第 33 条により行われ、4.に示す開発許可の基準に適合している場合、都は許可し
なければならない。
(開発許可の基準)
第 33 条
都道府県知事は、開発許可の申請があつた場合において、当該申請に係る開発行為が、
次に掲げる基準・・・に適合しており、かつ、
その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していない
と認めるときは、開発許可をしなければならない。
1) 開発許可権者:多摩建築指導事務所長。以下、
「都」という。
2) 許可権限は都にあるが、許可基準の一つである地区計画の内容への適合性については、地区
計画を市が策定している関係から、都が市へ照会し、その回答を都が採用する実態がある。
3) なお、この許可は市の「稲城市宅地開発指導要綱」の手続きとは別個に進められる。
4.開発許可の基準:
開発許可の基準は、第1号から第 14 号まである(第 33 条第 1 項)。
1) 基準の中で住民に関する重要事項は、第1号と第5号になる。
(開発許可の基準)
第 33 条
・・・略
1 次のイ又はロに掲げる場合には、
予定建築物等の用途が当該イ又はロに定める用途の制限に適合していること。
イ・・・用途地域等・・・が定められている場合
予定建築物等の用途が当該イ又はロに定める用途の制限に適合していること。
ロ・・以下略
5
・・・地区計画等*・・・が定められているときは、
予定建築物等の用途又は開発行為の設計が当該地区計画等に定められた内容に即して
定められていること。
・・・以下略
4.1 許可基準;第 33 条第 1 項第 1 号について
1) 第 1 号は用途地域に関して「用途の制限」への適合性を求める規定である。
2) 当該地区は用途地域として「近隣商業地域」に定められ、地区計画の中で地区整備計画に建
築物の用途制限が定められている。
(稲城市都市計画図、稲城中央公園周辺地区地区計画)
3) 従って、第 1 号イが該当し、
「予定建築物等の用途は用途の制限に適合していること」が許
可基準の一つになる。
4)「稲城中央公園周辺地区地区計画」には、以下が定められている。
(関連法令;法第 12 条の 5 第 2 項)
①地区計画の目標
②土地利用の方針
③地区整備計画
5) 稲城市の地区整備計画には、それぞれの用途地域ごとに以下が定められている。
(関連法令;法第 12 条の 5 第 7 項)
③-1 建築物等の用途の制限
③-2 建築物の敷地面積の最低限度
・・・近隣利便施設地区には制限なし
③-3 壁面の位置の制限
③-4 建築物等の高さの最高限度
・・・近隣利便施設地区には制限なし
7
③-5 建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限
③-6 垣又はさくの構造の制限
6) 地区整備計画による近隣利便施設地区の③-1「建築物等の用途の制限」は以下の通り。
次の各号に掲げる建築物は、建築してはならない。
【地区整備計画】
⑴ 自動車教習所
⑵ 自動車車庫(建築物に附属するものは除く。
)
⑶ 畜舎
⑷ 建築基準法別表第2(と)項第2号及び第3号に規定する工場
⑸ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項各号の規定に該当する
営業に係るもの
⑹ 倉庫業を営む倉庫
7) 基準への適合判断は、この「用途の制限」である建築物のみについて行われ、「事務所」や
「車庫でない駐車場」は、この制限に該当しない。
(注:この制限の妥当性については6参照)
4.2 許可基準;第 33 条第 1 項第5号について
1) 第5号は「地区計画の内容」への適合性を求める規定である。
2) 条文で「地区計画等」とは、以下を指す。
-東京都「都市計画法の規定に基づく開発行為の許可等に関する審査基準」より
地区計画等とは、
・ 地区計画
・ 幹線道路の沿道の整備に関する法律(昭和55 年法律第34 号)第9条第1項の規定による沿道地区計画
・ 集落地域整備法(昭和62 年法律第63 号)第5条第1項の規定による集落地区計画
・ 密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(平成9 年法律第49 号)第32 条第1 項の規定による
防災街区整備地区計画
をいう。
3) 当地区には上記の内「地区計画」が定められている。
4) また、第5号の「地区計画等」には以下の制限条項がついている。
地区計画等*
*次のイからホまでに掲げる地区計画等の区分に応じて、当該イからホまでに定める事項が定められているものに限る。
イ
地区計画 再開発等促進区若しくは開発整備促進区又は地区整備計画
ロ
以下略
5) 当地区の地区計画には、前記4.1-4のように地区整備計画が定められている。
6) 以上2)3)4)5)より、当地区には地区計画があり、その中に地区整備計画を規定しているの
で、第5号「地区計画等」の制限条件を満たす。したがって、当地区での開発では第5号
も許可基準の一つとなる。
7) 第5号の許可基準では、地区整備計画ではなく「地区計画に定められた内容」に即してい
ることが求められている。
8) ここで注目すべきことは、地区整備計画があることを前提としているにもかかわらず、許
可基準は地区整備計画ではなく地区計画の内容となっていることで、このことから第5号
の許可基準は用途地域・建築物の用途制限への適合性だけではなく、
「地区計画の内容」全体
への適合性と考えられる。
(注:この解釈には別の解釈があるという。7参照)
9) 地区計画では4.1-4)のように以下の①~③が記載されており、
「予定建築物等の用途又は
開発行為の設計は、これらの内容に即して」作成されていなければならない(第5号)。
8
①地区計画の目標
②土地利用の方針
③地区整備計画(この内容については4.1-5)6)参照)
10)許可基準となる「地区計画の内容」はこれら①②③全てを含む。
地区計画の目標:
【地区計画】
本地区は、緑豊かな環境を有する丘陵地である多摩ニュータウンの長峰地区の一部にあり、独立行
政法人都市再生機構が新住宅市街地開発事業による計画的な土地利用及び施設配置を行うことに
より良好かつ利便性の高い居住環境の形成を図っている。
本計画では、地区ごとの各々の良好な居住環境及び住区内の公共施設、利便施設等の機能の維持及
び増進を図り、快適で魅力のある住宅地の形成を図ると共に、利便性に富み、かつ、緑豊かな都市
環境の形成を図ることを目標とする。
土地利用の方針
近隣利便施設地区
敷地の立地特性を活かした公益的施設、業務施設、商業施設等の導入を図り、快適で魅力ある生活
環境を形成する。
4.3 あすか創建の建設計画は、許可基準を満足するか
1)同計画は、近隣利便性が無く、地区計画の目標、土地利用の方針に適合するところが無い。
2)近隣利便施設地区の「土地利用の方針」に、「業務施設」が規定されている。この業務施設
を利便性が無い業務施設の建設も含むとし、それらの施設は土地利用の方針に適合とする解
釈がある。
しかし、4.2-8)に述べた通り、許可基準は 「地区計画の内容」全体であり、「地区計画の目
標」も含まれなければならない。
「地区計画の目標」には、
「利便性に富み、かつ、緑豊かな都
市環境の形成を図ることを目標とする。」とあるので、この業務施設は、近隣利便性を持つ業
務施設と解釈しなければならない。
また、
「業務施設を利便性が無い業務施設の建設も含む」という解釈をとると、6に記すよう
に地区整備計画と同じ問題-土地利用の方針もマスタープランに即していない、法第18条
の2第4項に違反しているという新たな問題が生ずることになる。したがって、法第18条
の2第4項を勘案し、マスタープランとの整合性を考慮すれば、この業務施設は、やはり近
隣利便性を持つ業務施設と解釈しなければならない。
3)また、地区計画のうち地区整備計画-建築物の制限のみで判断することは、第1号の許可基
準により行うことと同じことであり、それでは第1号と別に第5号を規定している意義が無
くなることからも、その解釈は不適切であることが分かる。
5.私たちの主張と要求
1) あすか創建の開発計画を当該土地で行う場合は、稲城市の地区計画の内容に即しているべき
であること。具体的には4.2-9)に示した地区計画の目標、近隣利便施設地区の土地利用の方
針、地区整備計画に即しているべきであること。したがって近隣利便性がなければならない。
2) しかしながら、現在私たちが入手している計画(以下「同計画」)では、同計画には近隣利
便性がなく、地区計画の目標、近隣利便施設地区の土地利用の方針に適合しないので、適合
性の判断は、
「地区計画の内容に適合しているとは認められない」とすべきであること。
3) 同計画は、地区整備計画には適合しているように見えるが、これについては6に記す法逸脱
の疑いがあるので、この問題の解決抜きでは適合性の判断は不能であること。
9
4)地区整備計画の建築物の制限に関する規定は、マスタープランと整合性が無く近隣利便性地
区にも拘らす近隣利便性を持たない施設を排除できない惧れがあり、都市計画法第18条の2
第4項に違反している疑いがあるので、早急に修正すべきであること。
(後述6参照)
5)同計画が実行されると、長峰地区に近隣利便施設用の土地が無くなる。市やUR都市機構は
責任をとること。
6) 私たちは以下を求める。
①近隣利便性が無く都市計画に適合しない開発を許可しないこと
:対 稲城市、東京都
②近隣利便性を提供できない計画は他の地で事業展開を図ること
:対 あすか創建
③同地で計画を進める場合は、マスタープランに即した近隣利便性を提供すること
:対 あすか創建
6.地区計画の中の地区整備計画に関する法逸脱性の疑念
1) まちづくりに関しては、基本方針であるマスタープラン(上位規定)、それを地区毎に具体
化した地区計画、この中には法第12条の5第2項、第7項に基づいて、地区計画の目標、土地
利用の方針、地区整備計画(下位規定)が作成されている。
2) 当然のことであるが、下位規定は上位規定と整合が無ければならない。このことは法第18
条の2第4項に規定されている。
(市町村の都市計画に関する基本的な方針)
第18条の2 第1項~第3項 略
4 市町村が定める都市計画は、基本方針に即したものでなければならない。
(注;ここで「市町村が定める都市計画」は稲城市地区計画、
「基本方針」は稲城市都市計画マスタープランのことである。
)
3) ところが、現在の地区整備計画に規定されている「建築物等の用途の制限」を「これ以外の
ものは建築しても良い」と解釈すると、近隣利便性を持たない施設でも近隣利便施設地区に
建設可能ということになる。
4)制限を建築物に限定しているところから、建築物が無ければどのような施設でも良い、とい
うこと、たとえば、
「畜舎はだめだが、豚の放牧場は作っても良い」ということになる。
5) マスタープランで使われている用語は「機能」であり、また、地区計画の目標や土地利用の
方針でも使われている用語は「施設」である。
「建築物」ではない。それに対し地区整備計画
では「建築物」に変わっている。これは7に記すように建築基準法からの影響を受けている
ためである。まちづくりの問題は、都市計画法により処理すべきと考える。
地域支援機能集積地:
【都市計画マスタープラン】
・日用品を扱う商店や飲食店、健康・福祉など身近な生活サービスを提供する機能の誘導
を目指す土地利用です。
・生活拠点を担う地区に主に配置します。
6) 以上のように、このような規定の仕方では近隣利便施設地区にも拘らず近隣利便性に関する
規制が不十分であり、また施設の規制ができないという欠陥がある。
7) すなわち、地区計画―地区整備計画-「建築物等の用途の制限」は、マスタープランに即し
ているといえず、整合性が無い法逸脱状態(法第18条の2第4項違反)である疑念がある。
8)このような重大な疑念を解消せず放置したまま、適合性を判断すべきではない。
7.第5号の判断において地区整備計画のみで判断することの不適切性
1) 前記4~6で私たちの主張を記したが、それに反して法第33条第5号への適合を「地区計画
10
に定められた内容」すなわち「地区計画に書いてあること(全体)」ではなく、「地区整備計
画の中の建築物の制限」への適合性で判断しようという解釈がある。
なぜそのような解釈が出てくるのかを推測すると以下になる。
2) 建築基準法での建築物の規制は、建築基準法第3節建築物の用途、第48条(用途地域等)に
おいて行われている。用途地域における建築物の制限である。
第3節
建築物の用途
【建築基準法】
(用途地域等)
第 48 条
8
第 1 項~第 7 項
略
近隣商業地域内においては、別表第二(ち)項に掲げる建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁
が近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便及び当該
住宅地の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限
りでない。
3) さらに、この建築基準法の規制を地区計画によって規制強化・規制緩和できるとしている。
第7節
地区計画等の区域
【建築基準法】
(市町村の条例に基づく制限)
第68条の2
市町村は、地区計画等の区域内において、建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する事項で
当該地区計画等の内容として定められたものを、条例で、これらに関する制限として定めることができる。
4) この建築基準法の規定に従い、稲城市は建築制限条例をつくり建築規制を行っている。
(建築物の用途の制限)
【稲城市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例】
第3条 地区整備計画区域においては、それぞれ別表第2(あ)の項の計画地区の区分に応じ同表(い)の項に掲げる建
築物は、建築してはならない。
(地区整備計画に規定された「建築物等の用途の制限」の内容がこの条例となっている)
以上は、建築基準法における建築物の制限の規定である。
5) このような建築基準法による建築物の規制がある状況下で、都市計画法による規制を考えた
時、建築基準法の規制に影響される可能性がある。
すなわち、地区計画の中の地区整備計画の中に「建築物等の用途の制限*」があるのだから、
この規定により都市計画法の建築物に制限を掛け、これを開発の許可基準としよう、となった
ものと推測する。
(*ただし、これについては、6で述べた疑念がある。)
6) しかしながら、2)~4)の規制は建築物に限った建築基準法の規制の話である。それに対し、
現在、私たちが問題としているのは、まちづくりである都市計画法による規制、第33条の開発
許可基準の問題である。建築基準法・建築物の問題ではない。まちづくりの問題である。
都市計画法に関する地区整備計画の規制が、建築基準法に関する稲城市制限条例に建築基準法
第68条の2の規定によって関連付けられていることから、これらを混同する1)に書いた問題が
発生したものと考える。
しかし、この状態は開発・建築物について次の2つの別の規制があるということであり、これ
らを明確に区別し、認識することが必要である。
①「まちづくり」の観点からの規制 =都市計画法の開発規制:都市計画法第33条
②「建築物」の観点からの規制
=建築基準法の建築物規制:建築基準法第48条、
第68条の2、稲城市制限条例
7) 現在の建築基準法及びそれに関する稲城市制限条例に仮に適合であったとしても、それを根
拠として都市計画法でいう地区計画の内容に適合しているということにはならない。
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8) 今回のケースは、同計画に近隣利便性がなければ、都市計画法でいう地区計画の内容には適
合と認められないケースである。
9) 今回の問題は、都市計画法に基づくまちづくりの問題であり、あくまでも都市計画法によっ
て判断することを求める。
10)なお、建築基準法第68条の2の規定があるので、稲城市制限条例の改正は建築基準法を逸脱す
るという考え方がある。しかし、それは建築基準法だけで考える結果、
「まちづくり」の観点を見
失っているからそうなるのであって、都市計画法に基づく地区計画を改正すれば、条例改正は建
築基準法に適法に行える。2つの規制を区別すること、まちづくりの観点で考えることが重要で
ある所以である。
11)更に、
「利便性」という言葉は人により解釈が違ってくることがあり規定に使用することには
なじまない、という考え方がある。しかし、それを言えば「内容」
「適合」
「合理的」などの言葉に
も同様な問題がある。言葉によって意図することを規定することに限界があるのは当たり前のこと
であって、そのことを理解したうえで、運用を図るべきなのである。
8.以上のように問題点は次の6つである。
1)開発許可基準である「地区計画の内容」は何か、解釈の問題(上記 4.2)
2)土地利用の方針の「業務施設」を「利便性を持たない施設を含む」と解釈することの妥当性
の問題。
(上記 4.2-11)
3)マスタープランと地区計画(地区整備計画)の整合性の問題(上記 6)
4)開発・建設制限を建築物に限定していることの妥当性の問題(上記 6-4))
5)4)に関連して、都市計画法と建築基準法の2つの規制の混同の問題(上記 7)
6)近隣利便性が無いまま同計画が実施された時、長峰地区に近隣利便施設用地が無くなること
に対する UR と市の責任の問題。
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9.その他
1) 監督処分等;法第 81 条
(監督処分等)
第 81 条
国土交通大臣、都道府県知事又は市長は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、都市計画上必
要な限度において、この法律の規定によってした許可、認可若しくは承認を取り消し、変更し、その効力を停止
し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限
を定めて、建築物その他の工作物若しくは物件(以下この条において「工作物等」という。
)の改築、移転若しく
は除却その他違反を是正するため必要な措置をとることを命ずることができる。
1
この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこれらの規定に基づく処分に違反した者
又は
当該違反の事実を知って、当該違反に係る土地若しくは工作物等を譲り受け、若しくは賃貸借その他により当
該違反に係る土地若しくは工作物等を使用する権利を取得した者
2
この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこれらの規定に基づく処分に違反した工事の注文
主若しくは請負人(請負工事の下請人を含む。
)
又は
請負契約によらないで自らその工事をしている者若しくはした者
3
この法律の規定による許可、認可又は承認に付した条件に違反している者
4
詐欺その他不正な手段により、この法律の規定による許可、認可又は承認を受けた者
2) 罰則;法第 89 条~97 条
第 91 条
第 81 条第 1 項の規定による国土交通大臣、都道府県知事又は市長の命令に違反した者は、
一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第 92 条
次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
1
第 25 条第 5 項の規定に違反して、同条第 1 項の規定による土地の立入りを拒み、又は妨げた者
2
第 26 条第 1 項に規定する場合において、市町村長の許可を受けないで障害物を伐除した者又は都道府県知
3
第 29 条第 1 項若しくは第 2 項又は第 35 条の 2 第 1 項の規定に違反して、開発行為をした者
事等の許可を受けないで土地に試掘等を行った者
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