マンションにお住まいの方のための・・・

大阪府分譲マンション管理・建替えサポートシステム推進協議会主催
平成27年度 第1回「分譲マンションセミナー」
開催日時
平成27年9月27日(日曜日)午後1時45分~5時10分
開催場所
枚方市立メセナひらかた会館 6階 大会議室
参加者数
84名
【講演テーマ】
(敬称略)
1.「マンション管理の基礎知識~マンション管理組合の新役員になって~」
公益財団法人 マンション管理センター 大阪支部 支部長
長田 康夫
2.「大阪府分譲マンション管理・建替えサポートシステムの紹介」
大阪府分譲マンション管理・建替えサポート推進協議会
総合窓口 大阪府住宅供給公社 マンション建替・相談グループ
上田 徳光
3.「大規模修繕工事のすすめ方と管理組合の心構え」
公益社団法人 大阪府建築士会
桑原 宏明
4.「実録、初めての大規模修繕工事~ポイントは何か~」
NPO法人 枚方マンション管理組合連合会 専門委員
片山 幸則
5.質疑応答
公益財団法人 マンション管理センター 大阪支部 支部長
長田 康夫
公益社団法人 大阪府建築士会
桑原 宏明
NPO法人
片山 幸則
枚方マンション管理組合連合会 専門委員
【開会 主催者挨拶】
はじめに、主催者を代表して大阪府住宅まちづくり部都市
居住課の南孝志課長補佐から開会の挨拶がありました。
大阪府内には多くの分譲マンションがあり、大阪の都市の
主要な構成要素になっています。一方、老朽化などの問題も
あり
マンション管理の健全化を図っていくことは、大阪の
「まち」の発展にも不可欠です。本日は、マンション管理に
実際に携わる講師の講演など、盛り沢山の内容になっていま
す。
今日の講演が皆様のマンションの管理に役立つものと考え
ていますと話されました。
【開催市挨拶】
次に、開催市である枚方市都市整備部都市整備推進室の
松下明弘課長より挨拶がありました。
枚方市内には、270 の管理組合と 27,000 戸のマンションが
あります。皆様もマンションの維持管理していくなかで、区
分所有の権利関係や形態の課題、また大規模修繕工事をする
時の技術的判断など、悩みが多い事と思います。今後、高経
年のマンションが増えていくことからも、益々適正な管理が
求められることになると考えられます。このようなことから、当市では「マンション管
理基礎セミナー」を行っています。今回のセミナーを通して、皆様のマンションライフが、
安心で安全で快適に長く住み続けられるようになるように願いますと話されました。
(1)「マンション管理の基礎知識~マンション管理組合の新役員になって~」
公益財団法人マンション管理センター大阪支部
の長田康夫支部長より、本日のテーマについてご
講演をいただきました。
まずは、
「一、マンション住まいの基本的考え方」
として、マンションに住む人全てが知っておかな
ければいけない事項について話されました。
分譲マンションに住むということは戸建住宅に住
むのとは全く違います。一つの建物に共有でない
複数の所有権(区分所有権)が存在する特殊な状
態です。そのために、区分所有法という法律があ
ります。
マンションに対する思い入れ・考え方は個人の財産管理の考え方であり間違いであると
指摘することはできません。間違いを指摘できるのは、手続き上の問題だけで、手続きを
決めて条文としたものが管理規約です。決める方法は、合意形成です。つまり手続きを間
違わずに管理規約を決めたのなら、この管理規約は最高自治規範となり、当該マンション
内では法律と同等といわれるようになると話され、その管理規約のもとマンションは区分
所有者全員で構成する管理組合が管理を行うと説明されました。
しかし、自分達が管理するには時間がないから、管理のプロである管理業者に頼むこと
もあります。管理業者は、管理委託契約書に書かれている以外のことは行ないません。逆
に管理組合は、管理委託契約書に書かれていることを確実に行なっているのかをチェック
して、管理業者とは緊張感を持った関係でいなくてはいけませんと話されました。
次に、管理組合の組織を説明され、大事なのは理事会のメンバーは理事だけで、監事は
入らないということで、監事は理事会の議決権は持ちませんと説明されました。
そして、実際に管理していくのに必要となり、特に新役員になった方に知っておいてほ
しい「二、マンション管理の基礎的事項」の説明に移られました。
まず、管理組合の成立と構成を法律(区分所有法)と標準管理規約から説明されました。
次に、管理の範囲(共用部分と専有部分)の考え方を説明され、別表に文字だけで表現す
るだけでなくわかりやすい絵で表現するなどの工夫も提案されました。
共用部分の管理の説明では、修繕積立金の取り崩しは総会の議決事項であり、予算案や
事業計画が総会で承認されているだけでは実行できないことを強く言われました。
次に、管理規約について、規約は法律と同等なので違反をした場合に裁判所に訴えるこ
とができるという事と、効力の及ぶ範囲や衡平性を確保することが必要という事や、改正
は区分所有者数及び議決権総数の3/4以上の特別決議で、この3/4以上というのは強行規
定で絶対に守らなければならないと話されました。管理組合の業務は、管理規約に従い管
理していくことです。そして役員になったら誠実にその業務を執行しなければならず、役
員だけでなく区分所有者は、マンションを適正に管理するように努めなければならないと
話されました。
また、総会については、区分所有法で色々な事項を規定しています。これは、総会の手
続きに間違いがあっては、理事会の業務執行も行うことができなくなるからですと、法条
文に別段の定めができると書かれていなければ、管理規約で区分所有法と違うことを規定
できないことを条文と照らし合わせながら説明されました。
最後に決議事項の制限に触れ、皆様のマンションの規約で別段の制限の定めがある場合
の取り扱いには十分に慎重にしてくださいと講義を終わられました。
(2)「大阪府分譲マンション管理・建替えサポートシステムの紹介」
総合窓口である大阪府住宅供給公社マンション建
替・相談グループの上田徳光技師より、当サポート
システム推進協議会の設立目的や構成団体などの概
要と、サポートシステムの業務である管理組合から
の相談対応、アドバイザー派遣、普及啓発について
説明を行いました。相談アドバイザー派遣では多く
の区分所有者に参加してもらうことで、情報や知識
の共有ができ管理組合の適正な管理運営に役立つこ
とと、有料にはなるが管理組合の状況に応じた業務
を委託できる実務アドバイザー派遣のシステムもあることを説明されました。
また、各種相談やアドバイザー派遣についての質問は、総合窓口である公社に問合せて
いただくのと、公社の中にあるマンション建替・相談グループのホームページからも活動
内容がわかりやすく説明していますのでご覧下さいと説明を終わられました。
(3)「大規模修繕工事のすすめ方と管理組合の心構え」
公益社団法人大阪府建築士会の桑原宏明氏より、本日のテーマについてご講演をいただ
きました。
大規模修繕工事に向けて管理組合の皆さんに頭に入れておいてほしいポイントを5つに分
けて説明をされました。
① 「自分の体(マンション)を知る」
建物を人の体に例え、健康管理(建物管理)において
カルテ(修繕履歴)は非常に重要と説明されました。
② 「大規模修繕全体の流れを知る」
劣化診断から始まり修繕設計、施工会社の選定、工事
までの一連の流れを把握することが重要としています。
「劣化診断」…人間ドッグ(劣化診断)を受け診断、
治療と進むのと同じように、現在の健康状態を詳しく調べ治療(修繕)すべき内容と治療
方針(修繕方法)を考える機会となります。診断では問診にあたるアンケートも実施しま
すが、アンケートや診断後の結果報告会には区分所有者の積極的な参加が必要です。工事
に対する住民意識の向上を促す役割は管理組合にとって重要な役割とされています。
「長期修繕計画の見直し」…大規模修繕工事は修繕計画の見直しに適したタイミングで
す。多くのマンションは分譲時に低く設定されおり、修繕工事にあたり修繕積立金の見直
しが必要な場合もみられます。
「修繕設計」…診断結果をもとに修繕項目の洗い出しを行います。限られた予算で修繕
工事を効果的に行うために工事内容の優先順位の検討が重要としています。優先項目の検
討においては専門家のアドバイスを受けながら管理組合で検討していくことが必要となり
ます。修繕の方針をもとに工事費を算出し、施工を行うための修繕設計が行われます。適
切な工事費と工事が実施されるために修繕設計書が非常に重要です。修繕設計書をもとに
施工者選定に入ります。
「施工者選定」…施工会社者募集方法は大きくは2つに分かれます。数社を直接指名し
競争させる指名方式と専門の新聞やインターネットを利用した公募方式があり、最近では
公募方式が増えています。次に選定方法も、入札方式と見積り合わせ方式があります。施
工においては金額だけでなく住民との対応が重要です。施工者との面談も行い、総合的に
判断する見積もり合わせ方式を薦めておられました。施工者選定では、専門家は管理組合
が判断するための資料つくりが役割であり、管理組合主導で施工会社選定を行うよう強調
されています。
「工事」…工事を進めるにあたり管理組合および住人の協力が必要です。工事説明会は
工事が円滑に進むために住民と施工者が確認を行うための重要な機会です。管理組合はよ
り多くの住人が参加するよう努めてください。
「引き渡しとアフター」…引渡しの際の検査では気が付いたことや心配なことは遠慮せ
ずに聞くようにして下さい。工事完了時に引き渡される書類は、マンションの貴重な資料
(宝物)です。利用しやすい状態で保管するようしてください。工事の保証期間内のチェ
ックは重要です。総会資料などに記載することでチェック漏れを防止する工夫が必要です。
③ 「体制づくり」
修繕工事では年度を越えた対応が必要であること、管理組合の理事だけでは対応が難し
いことから、専門の委員会を設けることが望ましいとされています。委員会の設立につい
ては管理規約に定めがあるかの確認もしてください。
④ 「専門家(パートナー)選び」
専門家の種類には、①専門の設計事務所②管理会社③施工会社があげられます。②、
③を選択する場合は、お任せになりがちのため管理組合として専門的にチェックする機能
が必要です。区分所有者の中に建築の専門家もいる場合に依頼するケースもありますが、
責任を一人の区分所有者だけにかかることがないように気をつけてください。
専門家を探す方法としては、推進協議会の実務アドバイザー派遣もありますが、管理組
合同士の情報交換などで探す方法もあります。選定時に気をつけいただきたいこととして、
名医が全ての人に合う訳でないように、専門家と自分達の管理組合、マンションとの相性
を見極めることが重要です。評判だけで決めず、治療方針(修繕の考え方)を決めるよう
に、面談をして工事のすすめ方や提案などを確認し納得のいく選定をしてください。
⑤ 定期的なケア(メンテナンス)
工事が完了し引き渡し時に、各工事の保証期間の確認をしてください。保証期間内に、
きちんと点検や調査が実施されるような仕組み作りが必要です。工事完了に伴い、長期修
繕計画の修正と積立金の確認をして次回の工事への準備をはじめることが大切です。
「賢い発注者」
管理組合は、かならずしも専門家になる必要はなく、信頼できる良い専門家(パートナ
ー)を探して賢い発注者になって下さいと話されました。技術的な専門知識をつけること
も重要ですが、大規模修繕工事の流れの中で、管理組合としてすべき役割を果たすための
支えとなってくれる専門家を探すことに力を注いで下さいと講義を終わられました。
(4)「実録、初めての大規模修繕工事~ポイントは何か~」
NPO 法人枚方マンション管理組合連合会
専門委員の片山幸則氏より、本日のテーマに
ついてご講演をいただきました。
はじめに、大規模修繕工事のやり方にも
色々なパターンがあり、マンションそれぞれ
にふさわしい体制と準備が必要ですと話され、
初めての大規模修繕工事に取り組んだご自分
の経験を基に「何がポイントなのか」を説明
されました。
1.工事に対する勘違いとして、工事を必要以上に難しいと思わないことです。1 回目の工
事は「お化粧直し」が中心ですので、少し勉強すれば理解できます。また、コンサルに
丸投げするのは危険です。良いコンサルを選ぶのは非常に難しいことです。
2.自らの資産は自らの手で守るという心構えが必要です。基本的な用語など基礎知識は
必要です。知識を得ることで、管理者や業者に質問もでき優先順位を明確にして不要な
工事を排除できます。
3.修繕委員会に理事長をはじめ理事会のメンバーが入り、修繕委員会の決定が理事会で
承認しやすくしておくとスムーズに進めやすいです。そして基本方針を明確にし、タイ
ムスケジュールを設定しましょう。また工事は修繕委員会だけでなく入居者全体で取組
むために、広報活動をしっかりとします。
4.工事の発注方法は、色々ありますが一長一短があり、内容を理解した上でそれぞれの
マンションに応じて選択します。
5.1 回目の工事の対象部位の多くは目視検査で劣化状況が判断できます。それは、自主点
検でも十分可能です。業者による劣化診断は必要に応じてすればよいと思います。自主
点検をすることで、現場を知り専門用語の基礎を理解する事ができます。
6.長期修繕計画はあくまで目安にすぎません。チェックリストとして使って下さい。
7.コンサルの選定では、実績などの他に専門用語を素人にわかりやすく説明できること
が非常に重要です。そして、管理組合目線で対応してくれるかという事もポイントです。
8.工事施工業者の選定では、高すぎる公募条件を設定する必要はありませんが、選定の
基準を明確にしておくことが重要です。また現場代理人は、選定の重要要素で人柄や知
識等からマンションと相性が合う人を選定します。
9.大規模修繕工事には様々な誘惑がありますから、施工業者、監理者、管理組合関係者
が誓約書などを書く事で、入居者への説明責任にもつながります。
10.工事費の相場を知るのは、同規模のマンションの見積りを見せてもらうことが非常に
参考になります。なかなか難しいことですが、枚管連に入れば可能です。
11.現場会議は管理組合が主体的に運営をして、疑問点は徹底的に確認して下さい。また
本来はコンサルの仕事ですが、管理組合も数回は足場に上がり工事内容の確認をして下
さい。この場合、保険にはしっかりと入っておいて下さい。
12.工事報告は丁寧にして下さい。工事の資料は次回の工事のための大事な財産です。完
璧な工事はありませんので、反省点を次回に活かす事ができます。最後に、自らの資産
価値は自らの手で守ることを意識し、入居者みんなで大規模修繕工事に取り組んで下さ
いと講義を終わられました。
【質疑応答】
質問1.管理規約の中の別表の改正についてですが、別表は管理規約の一部なのですか?
答え1.その通りです。ですから改正するには特別決議が必要です。
(長田氏)
質問1-2 自分のマンションでは、普通決議で改
正したので現在の物は無効なのか?
答え1-2 その判断は、訴訟を起こして裁判をす
る以外にはわかりません。それをするまで
もなく不具合、不都合を感じるなら手続きを踏
んで改正することを考えるのが良いと思います。
(長田氏)
※別表の内容が修繕積立金の金額ということに対して
答え1-2 区分所有者の負担が増大する修繕積立金の引き上げなどの決議は、過半数や 3/4
以上でなく、少なくとも 90%~95%の賛同が得られることが望ましく、そのための丁寧な
説明が重要です。
(片山氏)
質問2.マンションの管理規約が原始規約のままなので、大規模修繕工事の承認が特別決
議になっている。規約改正をしなければならないと思うが、承認されなかった場合は、今
の規約のまま特別決議でしか大規模修繕工事はできないのか?
答え2.これは、法律が変わって普通決議になった事項です。訴えられても、普通の大規
模修繕工事なら裁判では普通決議で進めてよいという判決になります。
(長田氏)
質問3-1 コンサルが作成した設計書、積算書、仕様書など、どうチェックすればよいのか。
答え3-1 出来上がった時点でチェックするというのではなく、それまでの過程で何度も打
合せをし、確認して理解することで共通認識を持つようにする。設計から仕様を決めるま
でに 1 年かかることもある。
(桑原氏)
質問3-2 以前の経験で、修繕積立金から出せない工事が含まれていたことがあり困った事
がある。
答え3-2 共用部と専有部についてや、工事対象部などをコンサルは修繕委員会と一緒にひ
とつずつ確かめていくことをします。(桑原)
答え3-2 大手の事務所などは、ひな型を使い仕様書を作成するので間違っていることがあ
ります。本来ならコンサルがきっちりとチェックするべきところですが、修繕委員会がチ
ェックして下さい。
(片山氏)
質問4.築 37 年目のマンションですが、管理組合の理事のなり手がなく輪番制になって 3
年目に入り、理事の発言が強く管理運営が上手くいかない。どうすればよいか。
答え4.なぜ理事のなり手がないかというと、理事の仕事がわからないという事があると
思います。一年間、どんな事をやるのかというマニュアルを作ることでその思いから開放
されます。
(長田氏)
答え4.顧問やアドバイザーという立場で発言するのはいいとして、決定権は現理事にあ
るということを明確にすることが大事です。コミュニティを壊すような管理運営は全く意
味がありません。
(片山氏)
以上、会場からの質疑への回答も含めて、長時間に亘るセミナーでしたが参加された皆
様方は、最後まで熱心に受講されていました。