CAN DO(10月23日) NO.30

CAN
DO(10月23日)
NO.30
ラグビー日本代表・五郎丸歩選手は「日課の天才」だろう。球を二度回して置き、
…両手を合わせて力を体の中心に集中させ、助走に…と儀式のごとき動きで正確に蹴
り出す。世界一とも称されるような猛練習の末に立ったW杯の晴れ舞台。磨き上げた
所作の一つ一つに集中することで、とてつもない重圧やあふれ出そうになる感情と闘
い、楕円の球で美しい弧を何度も描いた。
連日、日刊紙がラグビー日本代表の活躍を讃えます。20年以上勝てなかった組織を数
年で変えたエディー・ジョーンズHCの手腕は、「試合終了後は封印していた涙をぽろぽ
ろ流した。感極まって言葉を失った姿が、重ねた日課がつくりあげた作品にも見えた」と、
世間を唸らせます。
ラグビーでは、選手の疲労蓄積等を考慮して、試合間隔を一週間程度空けるのが一般的
です。しかし、南ア戦から3日後、スコットランド戦が待っていました。前日の記者会見
でジョーンズHCは「明日は言い訳なしだ」と語ったそうです。ある日刊紙に次のような
記事が載っていました。
2012年春、代表の指揮を執ることになり、国内ラグビー関係者に聞いて回ったとい
う。「なぜ今まで、日本は勝てなかったのか」
様々な答えが返ってきた。「体が小さいから」「プロではないから」「農耕民族の精
神をもっているから」-。はびこる言い訳。その撲滅こそ、ジョーンズHCが目指し
た3年間だった。
「日本のラグビー界にはCan't doというカルチャーがある。確かに体は小さい。た
だ、強くはなれる。速くなれる。賢くなれる。これがCan doなのだ」
このチームで最も変わったのはどこなのか。そう問われた広瀬前主将が言った。
「一
番はマインドセット。心構えのところ」。勝てない理由を探すのではなく、不利な特
徴さえも強みに変える。ジョーンズHCの思想が選手たちに染み渡っていた。
「自分たちはできる」という心をつくる日常こそ、ジョーンズHCの改革の本質です。
子どもたちに問題解決力が育たないと嘆くのではなく、「問題解決力は育つ」と信じ、知
識伝達型授業からの脱却を道筋を立てて図る日常を確立しなければいけないのです。
10月15・16日、東海・北陸連合小学校校長会研究大会静岡大会が実施され、「子
どもが共に学び合う中で、自己のもつ能力を最大限に発揮し、自己実現を図っていくよう
にしなければならない。その中心的な営みが授業である」という大会趣旨のもと、分科会
に分かれ学校経営の在り方を協議しました。私の分科会のテーマは「連携・接続」でした。
校種間や家庭・地域との連携における問題を話し合う中で、私は「連携を推進する取り決
めを作れば、職員は実践する。しかし、それ以上のことはできない。ボトムアップがない
のは、根本理念の共通理解ができていないからだ。心構えの統一を図る。それがなければ、
一人一人の職員が発動機になれない」「中学進学後に不登校になるケースがある。故に、
スムーズな接続を図ろうとする。外的要因の解決も大事だが、子ども自身の問題解決力の
育ちという内的要因に目を向けなければ、問題の解決は難しい」と発言しました。問題の
本質を理解し、一人一人の教師が解決に向けて動くことができれば、方向性を保ち、マニ
ュアル以外の動きも期待できます。2学期に目指す、本校の授業改善も然りです。
研究大会前日、印象的な授業に出会いました。
譲らない教師
6年2組理科授業。小野内教諭の発問に挙手し、応える児童は僅か。そういう類いの質
問もある。反対に、ほぼ全員が応えられる質問もある。今回は後者。教師は現実を認めず、
児童の壁になった。5年1組社会科授業。本時の目標に照らしたとき、児童に言わせたい、
言わせねばならない言葉がある。色々な支援を繰り出し、それを引き出そうとする杉山教諭。
学ぶべき姿勢がここにある。(10月14日)
そこには本質を理解し、子どもの「Can do」を信じた教師の問題解決がありました。そ
の姿は同時に教師の「Can do」も期待させてくれます。