[成果情報名]大吟醸酒醸造に適した酒造好適米「山形酒 104 号」の育成

[成果情報名]大吟醸酒醸造に適した酒造好適米「山形酒 104 号」の育成
[要
約]
「山形酒 104 号」は、熟期が「出羽燦々」並の“中生”で、心白発現率が高く、かつ心
白がやや小さい酒造好適米である。
「出羽燦々」と比較して、収量性が高く、玄米千粒
重が約 1g 重く、玄米品質は優る。醸造特性は、「山田錦」並に良好で、大吟醸酒醸造
に適する。
[部
[連
署]山形県農業総合研究センター水田農業試験場・水稲部
絡
先]TEL 0235-64-2100
[成 果 区 分]普
[キーワード]水稲、新品種、酒米、心白、大吟醸酒
-----------------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい]
“米どころやまがた”として地位を高めていくため、多様化、高度化する生産者、実需者、消費
者ニーズを先取りした、オリジナル性が高く地域適応性の優れている品種を育成する。
酒米については、県オリジナル清酒銘柄を確立するため、高度搗精に向き「山田錦」の醸造特性
を有する大吟醸酒用品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
1.
「山形酒 104 号」は、大吟醸酒用酒造好適米を目標に、
「庄酒 2560,出羽の里」を母に、
「蔵の華」
を父として、平成 13 年に交配を行い、その後代から選抜・育成した系統である。
2.出穂期、成熟期が「出羽燦々」より 1 日程度早い“中生”に属する。稈長は「出羽燦々」
「美山錦」
より短い“中稈”で、草型は“偏穂重型”、耐倒伏性は「出羽燦々」並の“中”である(表1)。
3.いもち病真性抵抗性遺伝子型は、
“Pia”と推定され、圃場抵抗性は葉いもちが“やや弱”、穂いも
ちが“やや強”である。耐冷性は“中”、穂発芽性は“やや難”である(表1)。
4.
「出羽燦々」と比較して、収量は優り、玄米千粒重が 1g程度重く、玄米品質は優り、玄米粗タン
パク質含有率は低い(表1)。奨励品種決定調査においても、収量は並~やや優り、玄米千粒重が 1
g程度重い(表2)。
5.心白発現率は、「出羽燦々」よりやや高いが、心白の大きさが小さいため、心白率は「出羽燦々」
並である。搗精歩合 40%、60%の場合の砕米率は「出羽燦々」並に低い(表1)。
6.原料米分析よると、初期洗米吸水は、「山田錦」より緩やかで、吸水率の調整がしやすく、粗蛋白は
「山田錦」並に低い系統である(表3)。
7.試験醸造による生成酒は、「山田錦」と比較しても遜色のない、きれいな酒質である(表4)。
[成果の活用面・留意点]
1.適応地帯は山形県中山間地域で、普及見込み面積は 100ha である。
2.醸造適性を低下させないため、また葉いもち圃場抵抗性が“やや弱”、耐冷性が“中”であるた
め、極端な多肥栽培は避け、適正管理に努める。
3.原料米分析、試験醸造に用いた玄米は、「山形酒 104 号」は水田農業試験場産、「山田錦」は兵庫
県産である。
[具体的なデータ]
表1 「山形酒104号」の特性一覧表
系統名
山形酒104号
組合せ
長所:
庄酒2560,出羽の里/蔵の華
短所:
1.玄米千粒重が大きい
2.玄米粗蛋白が低い
3.大吟醸酒としての
醸造適性が良好である
特性
調査地
調査年次
品 種 名
早 晩 性
草 型
出穂期(月.日)
成熟期(月.日)
稈 長(cm)
穂 長(cm)
穂 数(本/㎡)
倒 伏
いもち真性遺伝子型
葉いもち
穂いもち
白葉枯病
耐倒伏性
耐冷性(障害型)
穂発芽性
精玄米重(kg/10a)
標肥
同上比較比率(%)
玄米千粒重(g)
玄米品質(良1~9劣)
1.葉いもち圃場抵抗性が
“やや弱”である
2.耐冷性が“中”である
山形県農業総合研究センター 水田農業試験場
平成17~25年
山形酒104号
出羽燦々
美山錦
中生
中生
中生
偏穂重型
穂重型
穂重型
8.03
8.04
8.02
9.14
9.15
9.14
77
82
89
19.6
18.8
19.9
427
337
348
0.2
0.4
1.6
Pia
Pia
Pia,i
やや弱
中
やや弱
やや強
やや強
やや強
やや強
やや弱
中
中
中
やや弱
中
強
やや強
やや難
やや難
難
583
109
26.9
4.1
玄米粗タンパク質含有率(%)
6.7
心白発現率(%)
71.0
心白率(%)
43.9
砕米率(%) 60%搗精
11.1
40%搗精
14.9
※精玄米重:選別網目2.0mm以上
534
100
25.8
4.6
7.0
65.3
44.0
9.9
15.2
568
106
25.7
5.4
6.8
70.7
50.0
15.7
25.8
表2 奨励品種決定調査(平成19~25年、標肥 農研セ、水田農試)
供試品種
成熟期
出穂期
稈長
穂長
穂数
(月.日)
(月.日)
(cm)
(cm)
(本/㎡)
山形酒104号
8.02
9.11
79.0
20.4
434
出羽燦々
8.03
9.11
84.6
19.2
332
美山錦
7.31
9.09
91.5
20.5
350
表3 原料米分析(工業技術センター、平成22~24年)
品種名
砕米率 20分吸水率
消化性
粗蛋白
(%)
(%)
Brix
F-N (d.b.%)
山形酒104号 8.7
26.9
8.2
0.7
4.2
山田錦
8.5
28.7
9.4
0.8
4.3
倒伏
程度
0.4
0.4
1.3
精玄米重
(kg/10a)
567
554
517
同左比
102
100
93
玄米千粒重 検査等級
(g)
26.7
25.9
24.8
(1~12)
6.9
5.9
6.2
表4 試験醸造(工業技術センター 平成24年,600kg仕込み)
品種名
醪日数 アルコール 日本
酸度 アミノ酸度 粕歩合
(%)
酒度
(ml)
(ml)
(%)
山形酒104号
29日
18.0
+5
1.2
1.0
54
山田錦
28日
17.5
+1
1.2
1.0
59
[その他]
研究課題名:第Ⅱ期地域特産型水稲品種の育成
予算区分
:県単
研究期間 :平成 25 年度(平成 22~26 年度)
研究担当者:齋藤寛、中場勝、本間猛俊、後藤元、阿部洋平、結城和博、佐野智義、佐藤久実、
西村真紀子、渡部幸一郎、水戸部昌之、齋藤信弥、櫻田博、宮野斉、齋藤久美
発表論文等: