阿部武司 Takeshi Abe Profile Message 1952 年東京都生まれ。兵庫県宝塚市在住。大阪 大阪は江戸時代初期に中心地に運河が張り巡ら 済史・経営史を専攻。日本の工業化の柱であっ 都となったが、その後も「八百八橋」の設置、 であった大阪と英国マンチェスターの比較経営 れ、明治期には、淀川の改修や新淀川の開削も 大学大学院経済学研究科長、同研究科教授。経 た綿工業史研究から出発し、ともに綿工業都市 史や、日本大企業史の考察に進んだ。関西電力 などの社史や豊中市などの地方史の執筆、大阪 企業家ミュージアム設立への協力などを基礎と して、近代大阪の経済史・経営史の研究も行っ ている。 磯辺行久 Yukihisa Isobe され、それらや大川に多数の船が行きかう水の 大和川の付け替え、安治川の浚渫などが進めら 実現し、また大阪築港が、国家主導の神戸、横 浜両港とは異なり、大阪市によって開始され、 のちに住友系企業等も加わって戦後まで続けら れた。水都の形成は数世紀にわたる先人の努力 の賜物であった。 Profile 1935 年東京都生まれ。59 年東京藝術大学絵画 科卒業。72 年米ペンシルベニア大学大学院修了 (エコロジカル・プランニング専攻) 。60 年代に活 躍した後、渡米して環境計画を学ぶ。74 年帰国、 (株)リジオナル・プランニング・チームを設 Message 水都大阪環境資源目録について 環境資源とは、地域に固有に賦存する地象、水 象、気象、生物などの自然物や水源涵養、環境 浄化、災害防止などの自然の作用や機能に加え、 人が築いてきた歴史や文化、土地利用等を指す 立代表。美術家/環境計画家としてより広い 言葉です。私たちの役に立つこともあれば、逆 06、09 年の越後妻有アート・トリエンナーレに い方によっては枯渇させたり、弊害をもたらす 仏ボルドウ市現代美術館(CAPC)にて個展、09 都市では、環境が大きく変化し、不都合な利用 でワークショップ、水都大阪環境資源目録作成。 惜しむだけでなく今、私たちに何が残されてい 自然環境を射程に据えた活動を展開。00、03、 参加、07 年東京都現代美術館にて個展、08 年 年水と土の芸術祭 2009 に参加、水都大阪 2009 に災害のような危険をもたらすこともあり、使 負の資産になりえます。東京や大阪のような大 がたびたび行われてきました。失われた資源を るかを知ることも大切なのです。 伊東信宏 Nobuhiro Ito Profile Message 1960 年京都府生まれ。奈良県生駒市在住。大阪 大阪が世界の文化の入り口になって、貪欲にそれ 大学文学部を経て、同大学院修了。リスト音楽院 (ハンガリー)客員研究員、大阪教育大学助教授等 を経て大阪大学大学院文学研究科准教授。著書に (中公新書、吉田秀和賞受賞) 『バルトーク』 、 『中東 欧音楽の回路:ロマ・クレズマー・20 世紀の前衛』 (岩波書店) 、編著に『ピアノはいつピアノになっ (阪大出版会)等。朝日新聞、NHK-FM な たか?』 どで音楽評論、音楽企画等にもたずさわる。 オウ・ニン Ou Ning いられるし、神戸はしゃれのめしていられるし、 奈良はおっとりしていられる。音楽について言う なら、大阪は世界の珍妙な音楽の受容基地になり 得る、と思います。 「西洋音楽」の場合も、中途半 端な大衆路線を捨てて(そんなのはヨソに任せておけ ば良い) 、思い切り凝った企画を。それに反応する 聴衆は大阪にはかなりいる、と私は見ています。 Profile 北京の邵忠基金会ディレクター、2009 年深圳& 香港二都市・都市建築ビエンナーレチーフキュ レーター。オウ・ニンの文化的な実践は多岐に わたる。活動家として、 映画映像組織 『U-thèque』 を創設、編集者・グラフィックデザイナーとし て『ニュー・サウンド・オブ・ペキン』を手がけ、 キュレーターとして、 『Get It Louder』展を指揮 し、音のプロジェクトを展開、アーティストと © Nie Zheng を取り込んでいてくれるので、京都は斜に構えて Message 水のダイナミズム 大阪同様、中国南部の都市・広州も水辺の街であ る。パール川は南シナ海への長旅を経て、文明 を都市に運ぶ。広州は、中国の対外貿易に開かれ た最初の窓口であり、近代における政治革命発祥 の地でもある。流れ続ける水は腐敗しない。パー ル川は歴史的な機会をもたらすだけでなく、人々 の暮らしも支えている。 『三元里』という、私が して三元理(ヴェネツィア・ビエンナーレ招聘)や 2003 年に作ったドキュメンタリー映画は水と都 プロジェクトで知られている。 ものだ。パール川の場面に始まり、徐々に騷がし 大棚欄(ドイツ連邦文化財団に招聘)の都市調査 市のダイナミズムの神秘的な関係に焦点をあてた い都市生活の中心に入ってゆく。広州は中国の中 でも最も大衆的な都市である。映画で言及される 貧しい集落は、広州市民の自治による常任議会を 立ち上げた。彼らの高い意欲は都市にとって重要 な発展促進剤である。 Profile 1952 年 大 阪 府 生 ま れ。1991 ~ 2001 年 TORII HALL プロデューサー。1996 年にコンテンポラ リーダンスを中心とした公演・WS を企画制作 する DANCE BOX を立ち上げ、2002 年 NPO 法 人化。理事長に就任。2002 年に大阪市との公 設置民営劇場「Art Theater dB」を開設、2007 年閉館。2009 年 4 月、神戸市との協働により 新長田に「ArtTheater dB 神戸」を開設。アート によるまちづくりのプロジェクトも実施してい る。近畿大学、神戸大学非常勤講師。 Message アートイニシアティブと大阪を創造都市として 再生する試みについて 今、大阪が都市再生していく上で何が必要である のか。近代都市として欧米を追随することで市民 が享受してきたことが、グローバリズムという形 のなかでコミュニティの崩壊を生み出しているこ とを再考する時期がきていると思います。大阪と いうローカルに関わること、小さい範囲での人と 人のコミュニケーションを復活させることにおい てアートのもつ創造性を社会のなかで機能してい くことが現在、最も大切なことと考えています。 Profile 1941 年奈良県生まれ。建設省で、 河川管理に 「環 境」を加え、 「住民参加」を求める河川法改正 を主導。2003 年、淀川流域で開催された「第 3 回世界水フォーラム」の事務局長をボランティ アで務める。現在は「国連・水と衛生に関する Message 『水都大阪』という言葉に大阪人はどれだけの 香江) を干し上げて出来たのが「水上の楼閣」 大阪(難波)である。もちろん自然のままに干 川ルネッサンス」など幅広い活動を展開。その けられ創り出された土地なのである。 刊誌『河川』に連載中。 身をゆるがす」ことを願うのみである。 Profile 1946 年新潟県生まれ。東京芸術大学卒業。アート 茨田堤が築造され、以降も営々とした努力が続 水都大阪の再生。 「遊ぶ子どもの声が大阪人の Message 明治の近代化は、芸術を美術館で鑑賞し理解す ディレクター。水都大阪2009プロデューサー。 べき対象として、先祖から受け継ぎ楽しんでき 展」 、 「アパルトヘイト否!国際美術展」等。街づ ン)などの生活文化を、芸術の領域から除外し 主なプロデュースとして、 「アントニオ・ガウディ くりの実践では、 「ファーレ立川アート計画」 、 「越 後妻有アートネックレス整備構想」の総合ディレ クター等多数。 「大地の芸術祭 越後妻有アート てしまった。 「水都大阪2009」はそうして 除外されたモノやコトを再び芸術の概念にとり いれることで、生活実感から離れていた芸術感 覚を呼び覚まそうという試みだ。 選奨(芸術振興部門) 、 平成 19 年度国際交流奨励賞・ す格好の自然の舞台であり、水の都・大阪は、 文化芸術交流賞受賞。アートフロントギャラリー 主宰、地中美術館総合ディレクター、新潟市美術 北川フラム Fram Kitagawa たお祭りや大道芸、庭、食べ物、着物(ファッショ トリエンナーレ」は 2001 年の「ふるさとイベン ト大賞」のグランプリを受賞。平成 18 年度芸術 尾田栄章 Hieaki Oda 大阪はかつて海に沈んでいた。その河内潟(草 上がったのではない。仁徳天皇の時代に堀江と 一方、律令国家日本の創設と『水』について月 © Peggy Kaplan 愛着をお持ちなのか。 諮問委員会」委員など世界の水問題の解決に向 けて取り組むと共に「打ち水大作戦」や「渋谷 大谷 燠 Iku Otani 水辺はまさに私たちの身体性、生理を呼びおこ 実にアートにふさわしい都市なのだ。 館館長、女子美術大学教授等。 Profile Message 1956 年大阪府生まれ。兵庫県西宮市在住。大阪 小学校 1 年から高校卒業まで、大川のほとりで 学コミュニケーションデザイン・センター長。 神祭、そして高校の 3 年間は淀川河川敷でのク 長。専門は国語学・言語学。主な著書に『ヴァー の水辺で形成されました。2005 年に天神祭に阪 全学共通科目「地域コミュニケーションデザイ かさず乗船し、大川のエネルギーをもらってい 大学大学院文学研究科教授。2007 年より大阪大 2008 年より大阪大学 21 世紀懐徳堂企画会議議 チャル日本語 役割語の謎』(岩波書店、2003)。 ン・コーディネータ入門」を担当、地域と学生 をつなぐインターンシップ授業を試行している。 暮らしていました。春は桜の通り抜け、夏は天 ロスカントリーと、私の成長期の原風景は大阪 大船が出るようになってから、今年まで毎年欠 ます。今回のシンポジウムが、私の人生と、水 都としての大阪との関係を見つめ直すいい機会 になればと期待しています。 金水 敏 Satoshi Kinsui 小浦久子 Hisako Koura Profile 大阪府生まれ。都市計画・環境デザインが専門。 大阪大学人間科学部卒業後、民間建設コンサル Message 日本における都市の自由は、古代から近代初期 まで道と水の空間にありました。自由は創造を タント会社勤務などを経て、1992 年から大阪大 生むと同時に自由であるための規範を求めま 地利用や都市計画の観点から調査研究を進める 行き来するところでした。しかし今はそうした を通じて空間デザインと計画制度をつなぐ実践 え大阪では都市が消費され歴史と未来をつなぐ 景観デザイン』 、 『失われた風景を求めて』(共著) 状況に対抗する力を水空間に求めるならば、せ 学工学部へ。景観を都市空間の文化ととらえ土 とともに、自治体の計画づくりを支援すること 的取り組みを行っている。著書に『まとまりの 『高度情報化社会のガバナンス』(共著)他。 す。大坂の水空間も同様に日常と非日常の間を 水の気配が感じられなくなっています。そのう ことを放棄しそうな状況に見えます。こうした めて最後に残された都心の水空間である中之島 には高質の都市の自由を再生したい。 下條真司 Shinji Shimojo Profile 1958 年生まれ。1986 年 3 月大阪大学大学院基 礎工学研究科後期課程修了。1986 年 4 月大阪 大学基礎工学部助手、1989 年 2 月同大学大型計 算機センター講師、1991 年 4 月同センター助 教授、1998 年 4 月同センター教授、2000 年 4 月同大学サイバーメディアセンター教授、副セ ンター長。2005 年 8 月同・センター長、2006 Message 都市をかき混ぜる要素としてアートに加えて 「科学技術」を持ってきて、メディアアートと いう形が人々の生活や産業を潤していくことを 夢想しています。スーパーコンピュータや北 ヤードが出来上がるこれからが、正念場。関西 の元気パワーを集結していきましょう。 年 8 月同・副センター長を経て、2008 年4月 より情報通信研究機構 大手町ネットワー研究統 括センター センター長、大阪大学上席研究員。 その間米国カリフォルニア大学アーバイン校 客員研究員、 工学博士。専門は、 マルチメディア、 グリッド、新世代ネットワークテストベッド。 ハーヴィ・シャピロ Harvey A. Shapiro Profile Message 1965 年 デ ト ロ イ ト 市 立 大 学 建 築 学 部 卒 業、 海との関係は、敵対ではなく適応にすべきや 日。1971 年から現在まで大阪芸術大学環境計画 野を見ると、3 つの自然作用があり、1. 地体変動 ナル・プランニングチーム顧問、1986 年からは、 地震は大阪平野に大打撃を与える、2. 浸食・沈殿 1970 年ペンシルベニア大学芸術大学院卒業、来 学科教授として教鞭をとる。1974 年からリジオ 奈良大学地理学科の非常勤講師も務める。国際 地理学会、世界未来学会、太平洋科学学会、ア メリカ沿岸学会、アメリカ・シェーラクラブ、 世界環境保護連合環境計画委員、日本地理学会、 日本環境学会、日本ランドスケープ生態学会、 日本沿岸域学会、日本造営学会、IFLA(国際造 園学会)他に所属。 ジェフリー・E ヘインズ Jeffrey E. Hanes 作用は、自身に弱く、例えば、上町断層での巨大 作用も、地震に軟弱な土砂を深く堆積し、3. 大気 循環作用では氷期と間氷期が、繰り返され、その (昔、 度大阪平野は海底に沈んだ。 人々は営々と大阪 なにわ)を築いたが、自然、つまり気候変動や巨 大地震等が積み重ねられ、いつか大阪を海底都市 にしかねない。その時、 デザイン・ウイズ・ネーチャ は海都難波の再生キーになれるや。 Profile オレゴン大学教授で、日本近代史を教える。同 大学アジア太平洋研究所ディレクター。カリ フォルニア大学バークリー校にて歴史学の博士 号を取得し、イリオイ大学とスタンフォード大 学などで教鞭をとる。国際交流基金、フルブラ イト奨学金の助成を受け、社会科学研究評議会 特別研究員として、大阪市立大学と立命館大学 に赴任、客員研究員。現在は、 「水の都、煙の都」 と題する本の執筆に取り組み、大阪の都市部に おける生産と消費について調査している。著書 に『主体としての都市:関一と近代大阪の再構 築』(勁草書房、2007)がある。 自然が作り上げた地形(Given Form)として大阪平 Message 水の都、煙の都 大阪は、その歴史を通じて、水と水路が都市の地 理を規定し、そこにアイデンティティをもってき た。しかし近代化によって水と人々との関係は複 雑化し、川や運河と商業活動が密接だった近世の 水の都は、新しい国際港から産業エネルギーを供 給される近代の煙の都へと継承された。戦後の高 度経済成長に続き、都市の運河はコンクリートの 下に埋められ、港や川は汚染されてしまった。水 都大阪 2009 は、自然と共生する大都市として、大 阪の人々を再び水を基盤とした歴史につなげる歴 史的な機会である。いかにして大阪を水の都にす るか——それは、このイベントの間、私たち皆が 問い、答え始めなければならない問題なのである。 Profile 1953 年京都府生まれ、兵庫県西宮市在住。現代 美術家、京都造形芸術大学教授。1993 年、ヴェ Message 近年、アートを使った街づくりを安易に取り入 れる自治体は多いのですが、持続可能な市民参 ネツィア・ビエンナーレ・アペルト。2001 年、 加型のアウトリーチプログラムを作ることは容 2004 年パレスチナ「アルカサバシアター」舞 シミュレーションプロジェクトは、大阪の歴史 横浜トリエンナーレ。2003 年水戸芸術館個展。 易なことではありません。今回の実践モデルの 台美術担当。2009 年京都国立近代美術館個展。 や伝統に根差しつつ、未来に向って何を更新 ロイヤルフェスティバルホールでの滞在製作な テーマに、小学生から市民まで参加できる魅力 2006 年のマサチューセッツ工科大学や 2009 年 どレジデンス活動も多く手がける。 椿 昇 Noboru Tsubaki できるのかを問うものです。伝統ある天神祭を 的なワークショップを通じ、将来大きな祝祭に 育ててゆくためのシステム提案も行います。 Profile Message 1957 年三重県生まれ。大阪府吹田市在住。大阪 ちょうどこの場所のすぐそばでは今や世界屈指 学会理事。近年はアジア諸都市の演劇研究者と が公演をしています。綱渡りや宙づりという、 大学文学研究科教授。演劇学者。IFTR 国際演劇 出会い対話することをテーマに、アジア演劇研 究ワーキンググループを主宰、研究教育のネッ の夢のサーカス劇団「シルク・ドュ・ソレイユ」 危険で真似することのできない芸がふんだんに 披露されています。逆にいえば、危うさを持た トワークを構築中。西欧演劇一辺倒の演劇の概 ない遊びはあまり興奮させないのでしょう。危 2011 年 IFTR 国際演劇学会大阪大会を開催予定、 え方に対する危険もあるでしょう。大阪をそん 念に、アジア演劇の柔軟さと拡がりを繋ぎたい。 現在その準備に奔走中。テーマは「伝統、革新、 コミュニティ」 。 Profile 1958 年大阪府生まれ。島之内に育つ。大阪市内 うさは身体的なものに限らず、人々の意識や考 な危うさと夢見心地の共存する演劇やアートで 一杯にしたい、そう思います。 Message 大阪の文化芸術が、東京、京都と異なる個性豊 中央区在住。専攻は日本美術史。平成 2 年、東 かな展開をしてきたことは、いまさら言うまで 館建設準備室に移り、平成 20 年から大阪大学 以降の大阪で文化芸術に生きた人たちには、 「朗 京藝術大学美術学部助手から大阪市立近代美術 総合学術博物館教授(大学院文学研究科兼任)。編 著書に『モダン心斎橋コレクション』 『モダン 道頓堀探検』 『大大阪イメージ』 『映画「大大阪」 観光の世界』など。木村蒹葭堂、北野恒富、佐 伯祐三など大阪の画家の展覧会を企画する。 永田 靖 Yasushi Nagata 橋爪節也 Setsuya Hashizume もないが、それを支えた知識人たち、特に近代 笑するニヒリズム」とでも呼びたい気分が存在 し、案外、現代にも広がっている。大阪の文化 芸術を当の大阪の人が知らないのは話にならな いし、 “ 水都 ” が “ 粹都 ” となって “ 酸ぃ都 ” や “ 衰 都 ” にならないためには、このニヒリズムに気 づいてよい時期かもしれない。 Profile 1964 年東京都生まれ。 京都市在住。大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター(CSCD) 准教授。国際基督教大学大学院比較文化研究科 博士後期課程・博士候補資格取得後退学(2000 年) 、博士(学術)。元は物理学専攻だったが大 学院の途中から哲学に転向。現在の専門は科学 技術社会論(科学技術ガバナンス論、市民参加論) で、CSCD では、市民や NPO からの相談・依 頼に応えて共同で研究調査を行う「サイエンス ショップ」を運営している。 Message 「知は力なり」ともいいますが、研究という営 みは、社会の発展の大きな力であるとともに、 生活の中に驚きや感動、発見や出会いを生み出 す「遊び」の力でもあります。そしてそれは研 究者だけでなく、誰もが共有できる力、楽しみ だと思います。豊かな町人文化が息づく大阪に ある大学の組織として、大阪大学サイエンス ショップでは、市民と大学が協働して取り組む 研究を通じて、市民社会と文化の発展に寄与し たいと考えています。 平川秀幸 Hideyuki Hirakawa 平田オリザ Oriza Hirata Profile 1962 年東京都生まれ、東京都在住。劇作家・演 出家、大阪大学コミュニケーションデザイン・ センター教授、劇団「青年団」主宰、こまばア ゴラ劇場芸術監督、東京芸術文化評議会評議員 Message 文化による都市の再生、と大上段に構えなくと も、大阪で、面白いことを少しずつ、少しずつ やっていければと思っています。 ほか。1995 年『東京ノート』で第 39 回岸田國 士戯曲賞受賞。2003 年『その河をこえて、 五月』 で第 2 回朝日舞台芸術賞グランプリ受賞。フラ ンスを中心に世界各国で作品が上演・出版され ている。その演劇ワークショップの方法論は、 © T. Aoki 平松邦夫 Kunio Hiramatsu 2002 年より中学国語教科書にも採用された。 Profile Message 1948 年兵庫県生まれ。同志社大学卒業。毎日放 「水都大阪2009」は、これからの大阪のま 局長を歴任。2007 年、大阪市長に初当選。2 年 り上げてくれるアーティストの方々と、市民の 送アナウンサーを経て、役員室長、人事局専任 目となる今年は、 「大都市、そしていちばん住 みたいまちへ」を掲げ、放置自転車台数ワース ト1の返上などに取り組む。 ちづくりのスタートとなるものです。催しを盛 皆さんや地域コミュニティの間に生まれる交流 の中から、 「自分たちのまちを自分たちでつく ろう」という機運や人材が育ってくれることも 期待しています。本日ご出演いただきます、大 阪の歴史・都市・文化の研究者、河川や環境の 専門家、大阪を拠点に世界的に活躍するアー ティストの方々には、多様な角度から、 「水都 大阪2009」の開催を支えていただきました し、 「水都大阪」再生、大阪の都市力の向上に 向け、大変心強く、感謝しています。 福田知弘 Tomohiro Fukuda Profile Message 1971 年兵庫県生まれ。現在大阪大学大学院工学 大阪は、21 世紀型の水都再生に向けて、ハード 学) 。環境設計情報学が専門。高松市 4 町パティ うなソフト面を充実させる必要がある。先んじ Next Gene20 など、国内外のプロジェクトに関 組みを作ろうとしている。 型制作メンバー、NPO 法人もうひとつの旅クラ 数の一般市民には再生の動きが見えていないの うべ」照明デザイン設計競技最優秀賞受賞。著 化していく努力と、街で議論する場の整備が今 研究科環境・エネルギー工学専攻准教授、 博士(工 オデザイン、近江八幡市のまちづくり、台湾 わる。安藤忠雄建築展 2009 水都大阪 1/300 模 ブ理事、大阪旅めがねエリアクルー。 「光都・こ 書「VR プレゼンテーションと新しい街づくり」 。 ふくだぶろーぐは、http://y-f-lab.jp/fukudablog/ 松本雄吉 Yukichi Matsumoto 面のみならず、市民や観光客が水に親しめるよ て、北浜テラスや大阪旅めがねでは永続的な仕 しかしながら、個々の動きはまだ小さく、大多 が現状ではないだろうか。これらの動きを可視 後もっと必要だと考える。 Profile 1946 年熊本県天草生まれ。劇団維新派主宰。大 Message オオサカはその昔、難波八十島と呼ばれていた 阪を拠点に活動。1991 年の「少年街」より、独 そうです。福島、酉島、歌島、柴島、池島、桜 代表作に奈良・室生の野球場を全面使用した「さ 中ノ島、島之内……、地名だけを聞いていると 自のスタイル「ヂャンヂャン☆オペラ」を確立。 かしま」や、岡山の離島・犬島の銅精錬所跡地 での「カンカラ」 、滋賀・長浜での<びわ湖水 島、四貫島、都島、御幣島、恩加島、岡島、堂島、 まさに難波八十島です。 私は九州の天草の出身ですが、遥か南の島伝い 上舞台>が話題となった「呼吸機械」など。近 の海の道の北上のすえの漂泊地オオサカという 賞・アーティスト賞、平成 20 年度芸術選奨文 た風景を現在のオオサカの街に幻視するような 年は海外公演も多数行う。第 8 回朝日舞台芸術 部科学大臣賞などを受賞。 イメージと、古代難波八十島のイメージを重ね 舞台を試みています。 Profile 1956 年和歌山県生まれ。京都市、 福岡市、 富山市、 堺市を経て岸和田市に在住。 大阪市立大学都市研究プラザ教授。都市社会地 Message 拙著『モダン都市の系譜』を裏大阪論(裏三都論) と紹介したように、部落、日雇、在日、沖縄、ホー ムレス等という、東京論を突き抜けたグローバ 理学。もともとは近代都市史・地域史、都市問 ル性を有する問題の所在を歴史的かつ現代まで 態調査に関わってから、ホームレス、生活困窮 政策の「最先端」をゆく Modern 都市大阪を、 ネットワークづくり、あるいは地域の社会資源 即せば、水辺、河川敷を生活の争闘の空間とし 題研究からスタートし、1998 年のホームレス実 者支援の研究・調査や、NPO などの後方支援、 の発見とまちづくりに関わる人材育成が、都市 研究プラザを軸にメインの仕事となっている。 Profile 明らかにした。都市問題の深さ、対応する都市 どのようなプライドで発信するか、本シンポに て長らく有してきた都市大阪の懐の深さをどの ように意味づけるかを議論してみたい。 Message 1965 年大阪府生まれ。大阪府在住。京都造形芸 水都大阪 2009 で実現したアート船「ラッキー わのトらやん」をキャラクターにした作品など 泳ぐ巨大龍が生まれるまでの格闘的プロセスを 術大学教授。大型機械彫刻や腹話術人形「なに を制作し、国内外の展覧会への出品や、美術館 所蔵作品も多数。一見するとキャッチーな作品 水内俊雄 Toshio Mizuuchi ヤノベケンジ Yanobe Kenji ドラゴン」プロジェクト。火を噴きながら川を 報告します。 世界に潜む真摯なテーマを、卓越した妄想力と 技術によって表現する日本を代表する美術家。 また、ファッションデザイナーや舞台演出家と いった異分野のクリエイターとのコラボレー ションも手がける。 Profile 1957 年、東京都生まれ。東京大学相関社会科学 © Miwa Ohba Message 水都大阪は瀬戸内海に開かれている。瀬戸内海 分科卒業。同大学院社会学研究科博士課程単位 は、玄界灘を越えて東シナ海に開かれ、アジア 究所助教授、同社会情報研究所助教授、教授を 古より数知れない人々が大陸から渡来した。中 年度、同大学院情報学環長。人々の集まりの場 はこの海路が大阪の富を支えた。そして 1920 ら出発しながら、近代化のなかでのポピュラー 際都市となった。 だから大阪は、東京との関係 テーマに研究を展開。著書多数。 性、多文化性を、21 世紀の水都としての最大の 取得退学。社会学・文化研究専攻。東大新聞研 経て、現在、同大学院情報学環教授。2006-08 におけるドラマの形成について考えるところか 文化と日常生活、そこで作動する権力の問題を 吉見俊哉 Shunya Yoshimi の諸地域をつないでいる。この海を通って、太 世には、海の民がアジア各地で活躍し、近世に 年代、大阪は東京をも凌駕するアジア最大の国 ではなく、海を媒介にアジアを結びついた国際 武器にしていくことができる。 Profile Message 1949 年京都府生まれ。哲学者・大阪大学総長。 大阪というまちは、知れば知るほどすごいと 科教授、同研究科長、理事・副学長を経て、現 もったまちだとおもう。が、いまでは多くのひ ら、身体、他者、規範、所有、モード、国家な ことだ。 「大事なことはお上に任せない」とい 関西大学文学部教授、大阪大学大学院文学研究 職。日本倫理学会会長。これまで哲学の視点か どを論じるとともに、さまざまな批評活動をお こなってきた。近年は哲学の思考を社会の問題 発生の現場につなげる「臨床哲学」のプロジェ クトに取り組んでいる。主著に、 「聴く」こと の力』(桑原武夫学芸賞)、 『モードの迷宮』(サン トリー学芸賞) 、 『メルロ=ポンティ』 、 『顔の現象 学』など。 唸ってしまう。まちづくりと学芸の長い歴史を とがその歴史を知らないでいる。もったいない う近世・近代の大阪町民の気概を、21 世紀にふ さわしいかたちで取り戻すために、市民自身が そろそろ本気で運動を起こさないといけない季 節(とき)だとおもう。 鷲田清一 Kiyokazu Washida 水都大阪2009記念シンポジウム 「遊びをせんとや生まれむ——水都大阪の再生」 プログラム 10:00-10:15 開会あいさつ 平松邦夫(大阪市長 / 水都大阪 2009 実行委員会会長) 10:15-10:45 基調講演 I 鷲田清一(大阪大学総長) 10:45-11:00 問題提起 吉見俊哉(東京大学大学院情報学環教授) 11:00-12:30 ◉セッション I 「河港・大阪と市民社会」 人・モノ・情報の集結地として発展してきた水都・大阪の 歴史と現在を、市民社会・アジアへ繋がる港湾都市・環境 都市、といった様々な視点から紐解き、大阪の地政学的ポ テンシャルと水都再生への道筋を探る。 第 1 部:大阪を歴史的視点から考える *プレゼンテーション[1] (オレゴン大学アジア太平洋研究センター長) *プレゼンテーション[2] 橋爪節也(大阪大学総合学術博物館教授) *プレゼンテーション[3] 水内俊雄(大阪市立大学都市研究プラザ教授) *ディスカッション ——コーディネーター:金水敏 (大阪大学コミュニケーションデザイン・センター長) 第 2 部 : 大阪を水・環境の視点から考える *プレゼンテーション[1] ハーヴィ・シャピロ(大阪芸術大学環境計画学科教授) *プレゼンテーション[2] かける。 *プレゼンテーション[1] 椿昇(アーティスト) *プレゼンテーション[2] ヤノベケンジ(アーティスト) *プレゼンテーション[3] *プレゼンテーション[4] オウ・ニン(邵忠基金会ディレクター、編集者、 アートディレクター) *ディスカッション ——コーディネーター:平田オリザ(劇作家 / 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授 ) 17:15-17:25 総括講演 鷲田清一 17:45-18:15 パフォーマンス Dance Box 企画 「GUYS・水都大阪編」 シンポジウム風ダンス 出演:ヤザキタケシ、村上和司、垣尾優、竹ち代毬也、 尾田栄章(国連・水と衛生に関する諮問委員会委員) NPO 法人 DANCE BOX を国内外から迎え、大阪の市民力・文化力アップにアー トが果たす役割を討議。水都大阪2009の意義を問い ~踊れ!熱い男の水掛け論~ 磯辺行久(アーティスト) ——コーディネーター:金水敏 文化、アートの現場で活躍する実践者(アーティスト) 北川フラム(水都大阪プロデューサー) 13:30-15:00 「大阪の市民力・文化力―アートが都市をかきまぜる!」 17:25-17:30 閉会あいさつ 12:30-13:30 昼食休憩 *ディスカッション 15:15-17:15 ◉セッションⅡ 松本雄吉(劇団維新派主宰) ジェフリー・ヘインズ *プレゼンテーション[3] 15:00-15:15 コーヒーブレーク 吾妻琳、中西朔、阿比留修一、内山大、高見智征、 中村一規、藤井雅、石田陽介、塚原悠也 18:30-19:30 交流会 Profile Message 1996 年より多数のコンテンポラリーダンス公 2005 年大阪現代演劇祭において、DANCE BOX (2007 年閉館)を、 阪・新世界にて「Art Theater dB」 24 人が集結して上演された、男だらけのダンス dB 神戸」を運営。アーティストの育成支援事 ンポジウムに登場! 水の都大阪の文化や、経 などの国際交流事業や「コンテンポラリーダン フォーマンスを行う。 演・ワークショップをプロデュース。2002 年大 2009 年 4 月より神戸市・新長田にて「ArtTheater 業を軸に、 「Asia Contemporary Dance Festival」 © Kaori Ito スツアー in 新長田」等の地域活性化事業も行う。 特別企画として、関西で活躍する男性ダンサー パフォーマンス「GUYS Ⅲ」が水都大阪記念シ 済について幅広く関係なく、シンポジウム風パ
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