2014 年度「地域再生プロジェクト」活動報告 <地方の知の系譜>の評価と発信―鳥取が輩出した文化人― 鳥取大学地域学部地域文化学科 岸本覚 久保堅一 田中仁 鳥取県立博物館学芸員 来見田博基 参加学生 地域文化学科 3・4 年生 1,2014 年度の事業概要 昨年度は、鷲見家文書、原田家文書の撮影を中心に作業を行ったが、今年度は、その収集したものからとく に興味深い史料を選択して学生の作業にあてるとともに、飯田家の史料翻刻を進め刊行した。 (1)鷲見家と原田家の調査活動 まず、昨年度来撮影してきた鷲見家の文書の確認作業を行い つつ、学生には、週一回午後に地域文化学科第二演習室で、鳥 取市青谷町原田家の「来訪賓客簿」の筆耕・データ化作業をし てもらった。これは、原田帯霞(気多郡山根村)が鳥取城下町 の本町四丁目に居住していた時代の来客を記したものである (安政六年~慶応三年) 。原田は、神主・国学者であるとともに 津山や江戸に洋学のネットワークを有し、さらに医師(主に眼 科・種痘普及医師)として、あるいは書家として著明な人物で ある。そのため、この来客簿には、当時の鳥取城下や藩内の神 写真:学生の作業風景 職・儒者・医師・書家・絵師等々多彩な顔ぶれが記録されてい る。例えば、飯田年平・中島宜門などの国学者、児玉玉立などの書家、正墻適処などの儒学者、根本幽峨など の絵師が全体にわたって名を連ねている。ここまで幕末鳥取城下の知識人の動きを記した資料は稀有なものと 言っていいだろう。非常に貴重な資料で、この作業を通じて、人のつながり、知識人のネットワークなどが明 らかになり、鳥取の歴史・文化の豊かさを再発見することができると考えている。学生には、このデータ化を 今年度は進めてもらったが、次年度にはとりまとめも行ってもらうことも考えている。 鷲見家資料とこの来客簿の 写真:原田澄子家文書 384「来訪賓客簿」 調査活動で、学生は、次第に 登場してくる人々に親近感を もって読み進めており、その 効果もあって読解力も大いに あがってきている。来年度に 向けての課題は、文字だけで なく文章を読み取る能力もあ げていくことである。 (2) 『加知弥神社飯田家資料稿』の刊行 さて、今年度も飯田家文書を継続して翻刻し『加知弥神社飯田家資料稿』第六巻、第七巻の二冊を出版した。 担当したのは、鳥取大学名誉教授田中仁、岸本覚である。また、今までの資料集に基づき、論文を一本寄稿し た。成果は以下の通りである。 ①『加知弥神社飯田家資料稿6神道関係論考・国学論・歌論』 (2015 年 3 月) ②『加知弥神社飯田家資料稿7七神主一件関係資料・神仏分離と梵鐘』 (2015 年 3 月) ③岸本覚「幕末期における海防と神職―因幡国神職集団の活動を中心に―」 ( 『錦織勤先生ご退職記念文集』2015 年)
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