ブロックチェーンによる契約取引のイノベーション

BLOCKCHAIN SUMMIT 2015
ブロックチェーンによる
契約取引のイノベーション
December 18th, 2015
森・濱田松本法律事務所
弁護士 増 島 雅 和
[email protected]
©2015
©2013 Mori Hamada & Matsumoto all rights reserved
自己紹介
増 島 雅 和(ますじま まさかず)
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 (日本法・ニューヨーク州法)
2001
2006
2007
2010
2013
2015
弁護士登録
米国ウィルソン・ソンシーニ法律事務所(シリコンバレーオフィス)
ニューヨーク州弁護士登録
金融庁監督局保険課兼銀行第一課
経済産業省 新事業創出支援関係者会議 委員
IMF外部カウンセル(米国FSAP:金融破綻処理法制担当)
日本ベンチャーキャピタル協会顧問等
イニシアチブ: 金融の力で我が国産業構造のイノベーションを加速する“Startup Innovators”主催
http://startupinnovators.jp/
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本日のトピック
1.FinTechのなかのブロックチェーン技術の位置づけ
2.取引契約におけるブロックチェーン技術の意味
3.日本のブロックチェーン技術の現状
4.ブロックチェーンと契約実務
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1.FinTechのなかのブロックチェーン技術の位置づけ
ブロックチェーン技術がFinTechの中核と言われる理由
分散型コミュニケーションネットワーク : インターネット・モバイルにより実現する
コミュニケーション技術の革新
分散型輸送ネットワーク : IoTにより実現するモノ・施設の状況のリアルタイムな情報
共有+自動運転
= モノ・施設のシェアリング(情報化)
分散型エネルギーネットワーク : 自然エネルギーとスマートグリッドにより実現するエ
ネルギー需給状況のリアルタイムな情報共有
= エネルギーのシェアリング
各ネットワークのスマート化を支える技術: Artificial Intelligence
各ネットワークで生じる取引を支える技術: Blockchain Technology
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1.FinTechのなかのブロックチェーン技術の位置づけ
ブロックチェーン技術がFinTechの中核と言われる理由
FinTech
Zero Transaction Cost,
Distributed Payment
Network
block chain
aggregated accounts
-
-
Distributed Communication
Network
www
mobile device/sensor
social network
contents distribution
-
Distributed
Logistics/Transportation
Network
Internet of things
automated mobility
robotics
3D printer
factory/logistics sharing
superefficient trade
finance platform
superefficient capital
markets
superefficient lending
platform
Distributed Energy Network and
Alternative Human Resources
smart grid
clean energy (solar, wind
and geothermal heat)
robotics with artificial
intelligence
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2.契約取引におけるブロックチェーン技術の意味
取引費用ゼロの世界
 経済理論の建付け
 まずは「机上の空論」としての取引費用ゼロの世界を想定
 そのうえで、現実には不可避とされる取引費用を加味した場合の原則からの乖離について議論
- 考慮されるのは取引を成立させるための費用と成立後のモニタリング費用
 FinTechの背景にある技術的基盤による議論の前提の変更
 大量のデータへのアクセスによる情報非対称性の解消
- サーチコストの劇的低下
- リスク情報生産コストの劇的低下
コミュニケーションインターネット技術
- 決済コストの低下
コミュニケーションインターネット技術
+ブロックチェーン技術
⇒ 取引を成立させるための費用の低下
 モニタリング費用の低下
- 契約の自動執行
ブロックチェーン技術
「机上の空論」の世界の実現 = 超効率化した社会
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2.取引契約におけるブロックチェーン技術の意味
金融取引の前提を変更
 金融取引はリスクを取り扱う取引
 リスクとは将来に対する確率的情報
 取引にはマクロなリスクとミクロなリスクが存在
 金融機関はリスク情報を生産(収集+分析)して裁定を実施
 マクロなリスクについての多少の情報優位
 ミクロなリスクについての情報非対称性を低減
コミュニケーションインターネットによる情報
非対称性の解消
 金融機関は取引後のモニタリングを通じたリスク管理を実施
 取引後の状態変化(モラルハザードを含む)のリスク
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ブロックチェーン技術による自動執行
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3.日本のブロックチェーン技術の現状
ビットコインフォークではない2つのテクノロジー企業がサービスをリリース
1.株式会社Orb
 ブロックチェーンを利用した独自認証技術のもと、分散型クラウドコンピューティングシステム「
Orb」を開発
- 第一弾として、仮想通貨の発行・運用プラットフォーム「SmartCoin」を提供開始
 スマートフォンのアプリのレベルでのブロックチェーン認証が可能なSDKを提供
 マルチブロックチェーン方式 - 経済圏ごとにブロックチェーンを分ける
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3.日本のブロックチェーン技術の現状
ビットコインフォークではない2つのテクノロジー企業がサービスをリリース
2.株式会社テックビューロ
 ユーザが管理するネットワーク上で、プライベート・ブロックチェーンを構築するためのプラットフォ
ーム「mijin」を提供
 トランザクション型用途を想定し、汎用性を高めたブロックチェーンプラットフォーム
• マルチアセットを管理可能
• ネイティブでマルチ・シグネチャに対応しており、複雑なトランザクションや権限管理に対応
• アセット管理のみでなく、複雑な契約を作成し自動執行できるスマートコントラクトに対応
 実務の用途として、決済、アセット管理、情報管理、契約執行等
• ポイント、オンラインゲーム内通貨、証券取引所、銀行におけるアセット管理
• 管理されたアセットの譲渡と計算処理を内部的に完結できることを活かした上記の決済
• 数値のほかに情報の管理と契約の執行を内部的に行うことができることを活かした社内稟
議システム、企業間決済、流通管理
• 情報管理に特化することで、政府の登記システム、社内のドキュメント管理、契約管理、メッ
セージングにも利用可能
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3.日本のブロックチェーン技術の現状
ビットコインフォークではない2つのテクノロジー企業がサービスをリリース
3.実証実験・実務への導入
(1) インフォテリアとの協業: ミドルウェア連携
・ 異なるコンピュータシステムのデータをノンプログラミングで連携できるミドルウェア(ASTERIA WARP)に
mijinを接続する「mijinアダプタ」を開発
(2) さくらインターネットとの協業: 実証実験環境の提供
・ さくらの運営する「さくらのクラウド」上で、ブロックチェーンの実証実験環境「mijinクラウドチェーンβ」を金融
機関や開発者向けに無償提供
⇒ 実用レベルのクラウドサービスとして、誰でもプライベート・ブロックチェーン環境を利用可能
(3) 住信SBIネット銀行による実証実験への採用: 銀行向け実証実験
・ブロックチェーン技術の銀行業務分野への応用に向けた実証実験を開始
・実証実験に用いるブロックチェーン技術としてmijinを採用
(4) アイリッジとの協業: ダウンタイムゼロのバックエンド環境
・ 位置連動型プッシュ通知によるO2Oソリューション「popinfo」にmijinを接続することで、アクセス集中や機材
障害によるサーバダウンが起こらない「ダウンタイムゼロ」のバックエンド環境を実現
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4.ブロックチェーンと契約実務
契約内容をブロックチェーンに記述
 特徴
・ Turing-completeなプログラミング言語を用いた計算処理の記述をブロックチェーン内部に行うことで、トランザク
ション(≒財物の所有権移動)を複雑な条件式のもとに実行
・ マルチアセットを同時に管理することで同時履行を確保
(例) ・条件Pが整った場合に、製品Xの所有権がAからBに移動(R): X引渡しのCondition Precedentに相当
・条件Qが整った場合に、Y円をBからAに移動(S): Y円支払いのCondition Precedentに相当
・RとSは同時履行(マルチシグネチャ): Closingに相当
 具体的な応用
・定型的な契約の自動執行
・企業間物流取引への応用
・シンジケートファイナンスへの応用
・ガバナンスへの応用
 財貨移転のための重要な技術的前提
・ RESTful な銀行APIの実装
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5.質疑応答
森・濱田松本法律事務所
増島 雅和
[email protected]
tel. 03.5220.1812
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