音楽教育研究会 部 長 梶 田 敏 文 研究主任 日 沖 亜里沙 部 員 数 1 研究主題 39名 自己・教材・仲間とかかわり、まなび合う音楽科の授業 2 はじめに 本研究会では、子どもたちが授業の主役となり、「自己」「教材」「仲間」との関わ りを大切にしながら学び合える授業を目指して研究を進めている。ペアやグループ活動 はいろいろな場面で実践され、音楽科の「まなび合い」の基本となってきている。 本年度は、昨年度に引き続き「自己」「教材」「仲間」とかかわり、音楽を形づくっ ている要素を聴き取り、音楽のよさ、おもしろさ、美しさを感じ、思いや意図をもって 表現することができる子を目指し、実践することとした。 3 研究の方法 小学校低学年部会、小学校中学年部会、小学校高学年部会、中学校部会の4つの分科 会に分かれて、実践報告・協議を行った。実践報告は交代制で、毎月、各分科会の中で 3名程度が、レポートや授業実践例をもとに発表を行った。レポート等は、分科会の部 員だけでなく、全部員に配布し、他分科会で行われた実践についても互いに知ることが できるようにした。実践報告では、写真や動画、録音した音源なども用いてより具体的 に報告し合う場面も見られた。また、少人数での協議のため、リラックスした雰囲気で 積極的に意見を交わすことができ、レポート等の内容以外にも、日々の授業の悩みなど を気軽に相談し合い、情報交換をすることができた。 12月には愛知教育大学の新山王正和教授を招き、小学校6年の歌唱領域での授業研 究を行った。音楽を形づくっている要素に着目させ、楽譜とかかわることや仲間とかか わることを通して表現を高めていく研究を深めることができた。 7月、9月、10月、11月には、合唱の実技講習も行った。「ふるさと」と「時の 旅人」の2曲を練習し、11月に行われた小中学校音楽会で演奏を披露した。 4 研究の概要 各分科会では、それぞれの学年の実態に合った、「学び合い」を取り入れたさまざま な実践報告が行われた。音楽表現の意欲を高めたいと考え、実践を行った。 (1) 実践例1 表現(器楽)『ラバースコンチェルト』<高学年(5年)> 子ども同士が関わり合いながら「自分の考えや意図」をもって表現活動に取り 組もうとする児童をめざした実践を行った。 まず、組曲「王宮の花火の音楽」から「歓喜」を聴かせ、楽器カードを用いて 使われている楽器をグループで協力して探す活動をした。楽器の音色の違いで曲 音-1 想が変わることに気づかせ、それをもとに器楽表現の工夫につなげた。次に、グ ループで話し合い、表現したい「ラバースコンチェルト」のイメージを共有した。 「きれいな曲だから優しい感じにしたい『夜空のラバースコンチェルト』」「楽 器が苦手な人が多いからゆっくり演奏したい『ぞうのラバースコンチェルト』」 などと決め、そのイメージに合う楽器を選んで練習に取り組んだ。その後、IC レ コーダーを用いて客観的に演奏を聴き、グループで意見を交流しながら、さらに 表現を高めた。 (2) 実践例2 創作『リズムアンサンブル』<小学校高学年> 音符の意味や長さが習熟できていないため、「リズムがわからない」「リズム が苦手」という児童が多い。そこで、音符の長さや拍、名前などを確認しながら 楽しく学べるよう「リズムアンサンブル」を実践した。 リズムカードを提示し、好きなカードを組み合わせて4拍子のリズムを創作す る。それを練習し、グループで演奏した。 この実践を通し、児童の理解と表現の結びつきが弱いことがわかり、リズムの 反復練習等を時間を見つけて行っていくことが必要だと感じた。 (3) 実践例2 表現(歌唱)『夢の世界を』<中学校(2年)> 音楽の指示書である「楽譜」とのかかわりを深め、表現力の向上に努めた。 グループで歌い方について話し合う時間を設け、楽譜から読み取ったことをも とにどのような歌い方がよいか考えを出し合った。また、それを全体で共有した。 その際、音楽を形づくっている要素や要素同士の関連を意識させた。その発表を 全体の拡大楽譜に記入し、各自の楽譜にもメモさせた。 その後、パートで練習をする際に IC レコーダーを用いて、生徒が意図した音楽 となっているか客観的な視点で聴かせた。また、パート内で聴き役を設け、アド バイスし合うことで楽譜に記入された表現が聴き手に伝わっているかを確認し、 表現力を高めた。 音楽の学びを高めていくためには「楽譜」の存在は絶対である。今後も「楽譜」 とのかかわりを大切にしていきたい。また、IC レコーダーを用いることで「聴く 視点」が養われていると感じる。これからも積極的に使用していきたい。 5 今後の課題 今年度は、ペアやグループで仲間とかかわりながらまなび合う授業の実践に多く取り 組んできた。子どもたちの意欲が高まり、思いや意図をもって表現する力が育ってきた ことが多くの先生から報告された。 今年度も昨年度に引き続き、IC レコーダーを効果的に用いた実践が報告された。自分 たちの演奏を客観的に聴き、音楽を形づくっている要素や音楽の仕組みに着目できるよ うになってきているが、聴き取ったことや感じ取ったことを表現する技能の向上には、 なかなか至っていない。今後も、表現や鑑賞の活動の中で、さらに質の高い学びを目指 して研究を続けていきたい。 音-2
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