白 鳥 と 湖 赤 1 羽 正 春 白鳥の故郷 ※北 極 圏( 北 緯 67 度 以 北) で 子育 てす る コハ クチ ョ ウ。 北 緯 50 度 以 北の シ ベリ アで 子 育て する オオ ハ クチ ョウ 。 ①シ ベ リア 西部 、 ロシ アの 北 極圏 に近 い ハン ティ ・ マン シ自 治 管区 ベロ ヤ ロス キー 地 区に ある カ ジム 村 (北 緯 63 度 、 東 経 67 度 )で の 調査 (2013 年 9 月 4~6 日)。 ・ハ ン ティ 族は 熊 送り の芸 能 を保 持し 、 現在 も続 け てい るこ と で有 名。 白 鳥は この 民 族に とっ ては 、「 女神 カ ルタ シ の 化身 」 とな って お り、 模様 や 紋章 とし て 使う のは お ろか 、決 し て捕 って は なら ない も のと され て いる 。 女神 = 太陽 の精 → 古代 日 本「 延喜 式 」に 太陽 の 精 ↓ ギリ シ ャ神 話に ア ポロ ン( 太 陽神 )の 鳥 シル ク ロー ドの 要 衝キ ジル の 洞窟 にあ る 太陽 の周 り を舞 う白 鳥 ②中 央 シベ リア 、 ロシ アの 東 部、 イル ク ーツ ク州 。 モン ゴル 国 境に 近い 森 林ス テッ プ 地帯 に騎 馬 民族 の 本流 とな っ たブ リヤ ー ト族( ロ シア で 最 も強 大 な先 住民 族 で 44 万人 が ステ ップ 地 帯に い ると さ れて いる ) のア リャ テ ィ村 (北 緯 53 度 、東 経 103 度) で の調 査( 2011 年 7 月)。 ・ブ リ ヤー ト人 は バイ カル 湖 を聖 地と し 、神 のい る 天を 見晴 る かす 場所 に 布を 巻い て 祀る 。 〇先 史 、細 石刃 文 化が バイ カ ル湖 周辺 か ら日 本に 流 れて きた と する 。 23000 年 前の マ リタ 遺 跡か ら はマ ンモ ス ハン ター の 跡が 検出 さ れ、 子供 の 墓の 下か ら 白鳥 の骨 偶 が出 土。 〇血 液 型遺 伝子 の 研究 。免 疫 グロ ブリ ン の決 定遺 伝 子の 頻度 か ら、 バイ カ ル湖 周辺 の ブリ ヤ ート 族 から 北方 系 モン ゴロ イ ドが 大陸 や 日本 に広 が って いっ た 筋道 が指 摘 され てい る 。 〇バ イ カル 湖を 中 心に 東側 は ホリ 族・ エ ヒィ リッ ト 族・ ブラ ガ ット 族、 南 から 西側 に ホン ゴ ドル 族 が生 活し て いる 。こ の 人々 はチ ン ギス ・カ ン の主 力部 隊 であ った 。 ◎ブ リ ヤー ト族 は 白鳥 を民 族 の始 祖( ト ーテ ム) と して いる 。 小羊 の 供犠 の場 で 女性 シャ ー マン が語 っ た「 白鳥 処 女説 話」 昔 、男が 水 浴び に 行 った 。海岸 に 来る と 白 鳥の 一 群が 空か ら 降り てき て 泳い でい た が翼 と 羽を 取 ると きれ い な女 性に な った 。男は 恋 に 落ち 着 物を そっ と 隠し た 。し ばら く 泳い で い た 娘た ち は白 鳥に 戻 って 帰っ て いく 。し か し、 服の な い娘 は男 に、「 一 緒に な って 下さ い 。奥 さん に なり ます 。」 と 言 った 。 息 子 と娘 がで き て家 族は 幸 せに 暮ら し たが 、し ば らく して 妻 は「 帰ら な けれ ばな ら ない 」 こと を 夫に 告げ た 。だ んだ ん 高い とこ ろ へ昇 って い き、 屋根 の 上で 歌を う たっ た。「着 物 を くだ さ い。ど こへ も行 きま せ んか ら。」男が 隠 して お いた 着物 を 渡す と、 「さ よ うな ら 」を 言 って 帰 って いっ た 。帰 る前 に、「私 の 子供 を よ く育 て てく ださ い。」 と 、伝 え た。 息 子 の名 前は ブ リヤ ート と 言っ た。 こ こか ら住 ん でい た村 の 名前 がブ リ ヤー トに な った 。 ホ ン ゴド ル族 が 白鳥 を守 っ てい る 。白 鳥 は 神と 同 じで 決し て 殺し ては な らな い 。殺 す と 呪 いが 懸 る。 2 白鳥の渡り ① 白 鳥が 故郷 シ ベリ アを 立 って 南の 地 に渡 るの は 9 月 中旬 ・子育 てし て きた 仔ど も が飛 べる よ うに なる 。まだ 羽 の 黒 い仔 ども を 連れ て渡 来 する 。10 月 中 旬か ら 越冬 地に 展 開。 親鳥 が 先導 する 。 各所 に停 留 しな がら 来 る。 日本 で はク ッチ ャ ロ湖 に 一旦 入 ると いう 。 ここ から 日 本の 渡来 地 に渡 って い く。 ② 渡 来地 で は 10 月 か ら 3 月 まで 滞在 。 ひし めく 白 鳥は 渡来 地 の特 徴。 ③ 帰 北は 若い 白 鳥に とっ て 、子 離れ と 新し い家 庭 を築 く契 機 。 若 い白 鳥は 渡 来地 で伴 侶 を見 つけ 、 シベ リア に 向か って ハ ネム ーン 旅 行を 行う 。 ◎伴 侶 が見 つか る と、 湖水 で お互 いの 嘴 を対 向し て 近づ ける 。 互い の首 が 作る 輪郭 が ハー ト型 に なり 、ハ ッ ピー リン グ と名 づけ ら れて いる 。 バー ジ ンド レス は 白鳥 から ヒ ント を得 た もの では な いか と私 は 考え てい る 。 3 憩いと希望の猪苗代湖 ◎ 10 月か ら 3 月 まで 単独 で 滞在 でき る 白鳥 の理 想 郷 中 央の 湖は サ ンク チュ ア リで あり 、 周辺 の水 田 から は餌 が 豊富 に摂 れ る。 シベ リ アで はレ ッ ドデ ータ ブ ック に載 せ られ 、絶 滅 が心 配さ れ てい るが 、 渡来 し た猪 苗代 湖 で確 実に カ ップ ルを 誕 生さ せ、 次 の世 代を 育 てる 役割 を 果た して い る。 講演会当日には、赤羽先生より 「白鳥」を 10 冊寄贈して頂きました。 先生、ありがとうございました。 《 その他の著書 》 『採集-ブナ林の恵み』 『鮭・鱒』Ⅰ・Ⅱ 『熊』 『樹海の民-舟・熊・鮭と生存のミニマム』 (以上,法政大学出版局) 『日本海漁業と漁船の系譜』 (慶友社) 『越後荒川をめぐる民俗誌』 (アペックス) 《 編 著 》 『ブナ林の民族』 (高志書院)
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