H25 年度講義ノート 9 無機化学 類似最密充填構造:C60(フラーレン)、希ガス、ナノ粒子(PS, シリカ) ➠金属は剛体球として、大雑把には最密充填するものとして扱える。 (元素ごとのエネルギーや電気陽性などの違いは、hcp, ccp の違いや温度による多形として現われる) 原子核の位置と自由電子、電子相関などにより元素ごとに計算される。 P.112-14 3.3 最密充填構造の間隙(hole: 穴) 要点:最密充填時の球・八面体・四面体間隙数の比=1:1:2(図.3.15-3.16) ・hcp では、八面体間隙は、図 3.16(b)から 1 単位格子あたり 2 個、球の数は 1/66+1=2、正四面体間隙は、図 3.18b から 1/34+1/64+2=4/3+2/3+2=4 (120 度の角のところは 3 個の格子で共有、60 度は 6 個なので) ・ccp では、八面体間隙は図 3.16c から 1/412+1=4,球の数は 1/88+1/26=4,四面体間隙数は、図 3.17c より 8 個。A-B-C のうち A-B,B-C が四面体間隙のとき、C-A は八面体間隙。B-C、C-A が四面体のとき A-B が八面体。 C-A、A-B が四面体のとき B-C が八面体間隙。 例題 3.3 (2r)2=2×(r+rh)2, rh=(2-1)r, rh=0.414r(最大値) 問題 3.3 図 3.17 の正四面体中の小さい直角三角形について 2r r+rh r+rh (r+rh)2={(2/3)6r-(r+rh)}2+(3r×2/3)2 (2/3)6r を計算して、rh=(3-6)r/6=0.2247r0.225r 3r×2/3 P.115 金属と合金の構造 体対角線 4r=3a a (格子長) 2a(底面の対角線) 3.4 ポリタイプ(多型):2 次元は同じで 3 次元で異なる 要点:最密充填構造体間の相転移 3.5 最密充填でない構造 要点:体心立方(配位数 8)=空隙 32%(26%最密充填)。すべてのアルカリ金属と 5,6 属金属 例題 3.4 右上図より、a=4r/3, V(格子)=(4r/3)3、 球の体積(z=1/8x8+1=2)=2x(4r3/3), 2x(4r3/3)/ (4r/3)3=0.68 問題 3.4 右図から、より小さな間隔を満たすような rh を求める。2(r+rh)= 2a なので、 2{r+rh}42r/3=46r/3, rh=(26r/3-1)r=0.633r 単純立方:ポロニウム()のみ。固体の-Hg も似ている。 ゆがんだ八面体隙間 a (格子定数) 3.6 金属の多形(polymorphism) 要点:一般に、金属は低温での最密充填から高温で体心立方(bcc)に、熱運動(原子の動き)のために変わる。 3.7 金属の原子半径 要点:最密充填(12 配位)のときの金属半径で比較する(配位数:際近接原子数とともに半径は増大)。 3.8 合金 2 種類(図 3.24) ・置換型:格子点が異種金属原子で置換されたもの ・侵入型:格子内(格子点間)に別の原子が侵入したもの。ランダムまたは複合格子。WC:hcc の四面体間隙第 1 層に W,第 2 層に C。水素吸蔵合金(チタン、マンガンなどの合金ベース型、希土類+ニッケルコバルト型) 1 (a)置換型:原子半径が 15%以内で一致、結晶構造が同じ、電気的陽性が同じ。Cu と Ni、Cu と Zn(黄銅、真ちゅ う。Cu:Zn=60:40) 固溶体:異なる物質が互いに溶け合った状態。合金以外にもケイ酸塩(P.521 ゼオライト)、ハロゲン化アルカリ (NaCl-KCl-NaBr)、分子性有機物等。 P.120-121 (b)非金属元素との侵入型固溶体:小さい原子が付加される。Fe, Ni, Cu(遷移金属半径 150-300pm)への B, C, N(半径 74-88pm)。金属の最密充填構造の間隙(少し広げる場合が多い)に小さい非金属原子が入る。 炭素鋼:鉄+炭素で硬い(刃金+軟鉄で刃物)、 合金鋼:鉄+炭素+金属 ・ステンレスでは Cr(10%)+他金属: 耐食性。stainless steel(さびにくい鋼):オーステナイトは高温(>723℃)での み安定な耐食性の高い相で(マンガン、ニッケルを加えると低温でも安定)、低温ではフェライト相(-Fe(bcc)+炭 素(<0.1%)、フェライト系ステンレス:Cr(10%)+Mo, Al, W)は耐食性・強磁性、マルテンサイト系ステンレス: Cr(11.5-18%)+C(1-2%) 正方晶、形状記憶合金の一種) P.122 (c)金属間化合物 要点:合金の構造が、構成する金属と異なるとき、金属間化合物 例:CuZn(黄銅、Zn>20%のもの。真ちゅう:5 円玉)は、Cu(ccp、面心立方)であり、Zn<35%では面心立方(-黄 銅:置換型固溶体)、Zn=45%で体心立方(-黄銅:金属間化合物) ジントル相(発見したドイツ人の名前):電気的な陽性が異なる(>1)金属間化合物で、イオン性を含む(イオン結 晶と金属結晶の中間)。アルカリ金属、アルカリ土金属と第 13 属、15 属の組み合わせ。NaTl:Na+Tl-で Tl-は C と 同じ電子配置でダイヤモンド型(Na+はその空隙に)、CaGa2:Ca2+Ga22-で Ga-が C と同じグラファイト型(Ca2+はそ の層間に)、NaPb:Na+Pb-で Pb は孤立四面体。 例題 3.5 Cu と Zn が体心立方格子の体心と頂点に無秩序に配列 問題 3.5 Cu は単純立方格子(格子定数 a)、Zn も単純立方格子(格子定数 a)、それらがそれぞれ体心と頂点を 別々に占めている(cf. CsCl)。 2r++2r- 8 配位 r+/r-=0.732 1 (2r-) P.123-132 イオン固体 2 要点: イオンも方向性の無い(p 軌道のように特定の方向に向いていない、イオン間をつなぐ方向に働く)クーロン 力で相互作用。アニオンの剛体球の最密充填が構造の基本。 3.9 イオン固体の特徴的構造:融点が高く(NaCl 860℃)、極性溶媒(水など)によく溶ける。(例外:CaF2 高融点固 体(フッ化物イオンが小さく水和が弱い), NH4NO3170℃で融解、水にはたくさん溶ける(200g/100g 水) ・大きなアニオンが ccp か hcp に並び、その八面体間隙か四面体間隙に小さいカチオンが入ったもの(格子を広げ、 最 密 で は なく な る ) 。 イオ ン 半 径 比 ( r+/r- ) との関 係 ( ポ ー リ ン グ の 規 則 ): 3 配 位 >0.16, 4 配 位 ( 四 面 体 間 隙)>0.23(P.113 問題), 6 配位(八面体間隙)>0.41, 8 配位(塩化セシウム型)>0.732(P.113 例題) (a) 二元系 AXn(組成式、その他の示性式、構造式、化学式(分子式)との区別) 単位格子中のイオンの数え方:P.126 の規則。隣接格子で共有分を分数で表し、足し合わせる(必ず整数)。 (ア)立方晶をベースにするもの 塩化ナトリウム(NaCl)型(カチオン 6 配位なので 0.73>r+/r->0.414):Cl-の ccp の八面体間隙すべてに Na+(逆に Na+:赤球の fcc の八面体間隙に Cl-(緑球) 図 3.28), NaCl (r+/r-=102/167=0.61), KBr (138/196=0.70), RbI 2 (149/206=0.72), AgCl (115/167=0.69), AgBr (115/196=0.58), MgO (72/140=0.51), CaO (100/140=0.71), TiO (86/140=0.61) ・各イオンの配位数 6 なので、(6,6)配位という(カチオン、アニオンの配位数)。 ・複雑な化合物:[Co(NH3)6][TlCl6]や非対称化合物:CaC2, CsO2, KCN, FeS2 もこの構造。 塩化セシウム(CsCl)型(カチオン 8 配位なので r+/r->0.73):最密充填でない。アニオンが立方体頂点を、カチオンが 体心を占める。CsCl(167/167=1), CsBr(167/196=0.85), CsI(167/206=0.81)等に限られる。(8,8)配位。NH4Cl, AlFe, CuZn(図 3.30) 蛍石(CaF2)型(カチオン 8 配位なので r+/r->0.73):Ca2+(イオン半径 112pm)の ccp を広げて、すべての四面体間 隙に小さな F- (131pm)を入れた構造(図 3.33, 半径比=0.85)。逆蛍石 Li2O(76/140=0.54)。組成が 1:2 (P.112 末尾参照)。 閃亜鉛(ZnS)鉱型(カチオン 4 配位なので 0.414> r+/r->0.225):アニオンの ccp を広げて、四面体間隙の半分にカ チオンを置いたもの。(4,4)配位(図 3.32, 半径比 59/184=0.32)。CuCl(60/181=0.33), CdS(78/184=0.42) (イ)六方晶をベースにするもの ウルツ鉱(ZnS)型(同 0.414> r+/r->0.225):ZnS の多形(図 3.34)。アニオンの hcp を広げた配列で、四面体間隙の 一方をカチオンが占める。(4,4)配位。ZnO(59/138=0.42), AgI(100/206=0.48), SiC の多形の一つ。 ヒ化ニッケル(NiAs)型(6 配位+ゆがみ):(図 3.35)アニオンの広がってゆがんだ hcp の八面滞間隙に Ni(半径比 69/222=0.35)。NiS(69/184=0.38), FeS(61/184=0.33)。 ルチル(TiO2)型(カチオン 6 配位なので 0.73>r+/r->0.414):アニオンの hcp の八面体間隙の 1/2 をカチオンが占 有(6,3)配位。(図 3.37, 半径比 61/136=0.44)。 P.130 (b)三元系 AaBbXn 要点:化学量論的化合物 ABO3 はペロブスカイト型、AB2O4 はスピネル型 ペロブスカイト(灰チタン石):CaTiO3(ABX3)は、12 個の X アニオンで囲まれた A カチオン(ccp:同じ面内に 6 個、 上下に正三角形 2 個)と 6 個の X アニオンで囲まれた B カチオン(八面体)を持つ立方体(図 3.38、手前右の頂点 B から、体対角線を引いて反対側の B を見ると金属の ccp)。格子内に A1 個、B1/88=1 個、X1/412=3 個。A カチオンは電荷が低く(2 価)大きなイオン(r>110pm, Ba2+, La3+など)で、B カチオンは電荷が高く小さいカチオン (r<100pm, Ti4+, Nb5+, Fe3+)。 0.73<rA+/rX-, 0.414<rB+/rX-<0.73 例題 3.7 省略 問題 3.7 Ti2+は六配位、O2-は 3 配位(図 3.37 より)。 頂点の原子の配位数は、隣の格子を書いて見るとわ かりやすい。 A B O P.132 ペロブスカイト構造 スピネル構造 スピネル:AB2O4。O2-の ccp 配置で、A カチオンが四面体間隙の 1/2、B カチオンが八面体間隙の 1/2 を占める。 3 0.225<rA+/rO2-<0.414, 0.414<rB-/rO2-<0.73 ZnFe2O4:化学量論的 3 元系酸化物、Fe3O4(Fe(II)Fe2(III)O4), Co3O4, Mn3O4:二元系 d ブロック酸化物。 逆スピネル構造:B[AB]O4 で多いほうのカチオンが「四面体間隙と八面体間隙の両方を占めている。 例題 3.8:Ti4+, Zn2+, In3+, Pb2+ rTi3+/rO2-=67/140=0.49, rTi4+/rO2-=60.5/140=0.43, rZn2+/rO2-=60(4 配位)/140=0.43, 75(6 配位)/140=0.54, rIn3+/rO2-=80/140=0.57, rPb2+/rO2-= 118(6 配位)/140=0.84, 149(12 配位)/140=1.06 ペロブスカイト(A2+, 3+>110pm, B3+,4+<100pm):ZnTiO3 は Zn が小さすぎる。PbTiO3。In3+, Zn2+,は小さすぎる。 スピネル():TiZn2O4, ZnIn2O4, Pb2+が大きすぎるので、PbTi2O4, PbIn2O4 はスピネル構造をとらない。 問題 3.8:rLa3+=105(6 配位), 116(8 配位)、rLa3+/rO2-=105/140=0.75(6 配位)、116/140=0.83(8 配位)なので LaTiO3, LaInO3 がペロブスカイト型結晶を作る。 P.133-136 3.10 構造の理論的説明 イオン結晶モデルの仮定 (1)イオンは電荷を帯びた剛体球、(2)イオンの周りには反対符号のイオンが取り巻く。反対符号すべてのイオンと 接触する時に安定。(3)配位数は可能な限り大きなものを取る。(4)配位イオン間静電斥力が最小になるように配 位する。 (a)イオン半径 要点:周期表の下ほど大きく(外側軌道)、右ほど小さい(有効核電荷)。配位数とともに増え(図 3.41)、電荷ととも に減少(有効核電荷増大)。 (b)イオンの半径比:すでに 3.9 で示したとおり、カチオンとアニオンが有効に接触し、アニオン同士の静電反発を抑 えるため(例題 3.3、問題 3.3、問題 3.4 参照。カチオンがどういう間隙に入っているかで決まる)。 例題 3.9 TlCl(塩化タリウムTh:トリウム)。rTl+=164pm, rCl-=167pm から r+/r-=0.98>0.73 なので塩化セシウム 型。 問題 3.9 r(U4+)=114pm, UO2, r+/r-=114/140=0.81: AB2 型なので、CaF2(蛍石型)構造 (c)構造マップ:電気陰性度の差が大きいほど(イオン性が大きいほど)4 配位よりは 6 配位、主量子数の平均値が 大きいほど(大きなイオンなので分極が大きいほど)6 配位になりやすい。 イオン半径比での構造予測は、アルカリハライドなどのイオン性の高い固体でよく成立するが、多価イオンの固 体等では分極・共有結合性増加のために外れることも多い(p.141 ボルン・マイヤー式の適用限界)。このことを表 したのが構造マップ(図 3.43) 例題 3.10 MgS:=1.3-2.6=1.3, n(av.)=3 なので 6 配位。 問題 3.10 RbCl:=0.82-3.16=2.32, n(av.)=4 なので 6 配位(NaCl 型構造)。 P.137 イオン結合のエネルギー論:ギブスの自由エネルギーがより負な構造が安定に存在する。 格子エンタルピーはきわめて大きいので、エントロピー項は無視してよい。 P.138-140 3.11 格子エンタルピーとボルン・ハーバー(B-H)サイクル ・格子エンタルピー:固体が解離して、気体のイオンになる反応の標準モルエンタルピー変化 ・ボルン・ハーバーサイクル:反応エンタルピーの総和は経路によらず不変なので(ヘスの法則)、途中の過程のエ 4
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