松永先生講演会のご案内

松永和紀先生講演会(6 月 5 日)のご案内と講演要旨(WEB 用)
奥伊勢 BSC 総会記念講演会のご案内
関係者各位殿
平成 27 年 5 月 8 日
各位におかれましては、時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
この度、奥伊勢バイオサイエンスセンター(BSC)<http://okuise-bsc.com/>では科学
ライターとしてご活躍の松永和紀(まつなが わき)先生をお招きして下記の要領で講演会
を開催いたします。下記の所定事項をご記入の上メールにてお申し込みください。お申し込
みが 50 名以上の場合は先着順とさせて頂きます。悪しからずご了承ください。
演題:食品の機能性表示制度
~地域産業における意味と消費者が学ぶべきこと~
 日時:6 月 5 日(金)午後 6 時受付開始
 会場:ホテルグリーンパーク津 http://www.greens.co.jp/gptsu/
 参加費:1000 円 (お弁当と飲み物付、受付時にお支払いください)
 講演時間:18:30~19:30 ご講演後、討論/意見交換そして同じ会場で喉を潤しながら
交流会を行います。21 時には解散と致します。
 講演内容:添付の講演要旨をご覧ください
 参加申込:okuise-bsc.com の「お問い合わせ」からご連絡ください。締め切りは 5 月
18 日です。
松永和紀先生ご略歴:長崎市生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。毎日新聞社
の記者として 10 年勤務後、退職。2000 年からフリーの科学ライターとして活動を開始。
「メ
ディア・バイアス:あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で 2008 年科学ジャーナ
リスト大賞受賞。得意分野は農業、食品、環境など。近時は科学的根拠に基づく食情報を提
供する消費者団体 FOOCOM.NET を主宰、Food Science ジャーナリストとしてご活躍。是非、
FOOCOM の新着情報<http://www.foocom.net/>「安全性が確保できないという理由でトク
ホ“却下”の製品が機能性表示食品に」(4/22)をご覧ください。
以上
松永和紀先生講演会(6 月 5 日)のご案内と講演要旨(WEB 用)
食品の機能性表示制度:地域産業における意味と消費者が学ぶべきこと
科学ジャーナリスト
松永和紀
機能性表示食品制度が 2015 年 4 月からはじまった。栄養機能食品、特定保健用食品(トクホ)に
続き、第三の保健機能食品である。
企業や生産者が自らの責任により機能性を表示でき、国の審査がないのが大きな特徴。消費者庁
への届出から 60 日後に販売を始めることができるため、実際の製品が店頭に並ぶのは 6 月半ばとな
る。生鮮食品や一般的な加工食品、それに錠剤やカプセルなどの「サプリメント」も対象となる。
ただし、機能性、安全性、品質管理について、多くの要件があり、科学的根拠が求められる。
安全性については昔から大勢の人が食べてきたという「食経験」が重視される。不足していれば、
既存の研究で考察したり、トクホと同様の動物試験、ヒト試験の実施が求められる。食経験のある
生鮮食品も、乾燥させてその粉末を食べるなど摂取量が大幅に増えたり、加工して成分が変質した
りする場合などは別途、試験で問題ないことを確認しなければならない。
機能性については、どの成分がどのような機能性をもたらすのか、ヒトで検討され学術論文で発
表される必要がある。「臨床試験」や「前向きコホート研究」、既存の研究を複数集めて検討する
システマティックレビューなどが、根拠として認められる。
また、安全性や機能性がどの製造ロットにおいても保たれるように製品規格を設け、それを満た
す生産条件を守る必要がある。とくに、野菜や果物は栽培時期や栽培形態、肥料の与え方など諸条
件によって機能性関与成分の含有量も大きく変わるため、厳密な管理が求められる。
企業・生産者は、これらを書類で記述し論文なども添えて消費者庁に届け出る。同庁は書類のチ
ェックはするが、製品自体の審査や論文等の内容の妥当性の評価などはしない。その代わり、届け
出られた情報をウェブサイト等で公開することで、「消費者の誤認を招かない自主的かつ合理的な
商品選択に資する表示制度」とする、という仕組みだ。
このため、企業・生産者は、機能性と安全性については、一般消費者にも理解できるように専門
用語をかみくだいて平易な文章で説明することも求められている。情報は、容器包装にも細かく表
示しなければならない。その際に、届け出た機能性の表示と同一面に、「本品は、事業者の責任に
おいて特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届出されたもので
す。ただし、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません」
と disclaimer(打ち消し表示)を記載する。また、企業・生産者は、届け出た食品によって健康被
害が発生した場合に速やかに消費者や医療関係者などから連絡してもらえるように、窓口を設置し、
連絡先を容器包装に記しておく必要がある。
生鮮食品や一般加工食品については、脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類、ナトリウムの
過剰摂取につながるもの、アルコールは機能性表示を認められないことにも注意しておく必要があ
るだろう。
2015 年 5 月 5 日現在、20 の製品の情報が届出受理されたとして、消費者庁のウェブサイトで情報
公開されている。その中には、トクホとして申請され食品安全委員会が「安全性が確認できない」
との評価書案をまとめた機能性関与成分の製品も含まれている(同日現在、評価書案はパブリック
コメントを実施されたものの、まだ最終的なまとめに至っていない)。また、消費者庁の求めるレ
ベルを満たしていない臨床試験結果を根拠としているとみられる製品もあり、消費者団体の中で問
題にする動きが出ている。
生鮮食品・一般加工食品の機能性表示については、農業現場・地域産業関係者の間で関心が高い
ものの、まだ届け出られたものはない。臨床試験やシステマティックレビューなどのハードルは高
く、クリアして表示にこぎ着けるのは容易ではないだろう。こうした食品は多成分を含んでいるた
め、別の栄養素等の摂り過ぎなども起きやすい。機能性を求めて特定の生鮮食品・一般加工食品を
食べることにより、別の食品の摂取が減る場合もあり、健康影響は複雑だ。
機能性表示を行う場合、多角的に検討し、責任を持ってレベルの高い食品・製品を消費者に提供
し、情報公開にも努めて欲しい。
<参考文献>消費者庁・機能性表示食品に関する情報
http://www.caa.go.jp/foods/index23.html