+トラウマサポート ストレスとトラウマ克服に向けて:トムソンロイター・ジャーナリストのため の手引き <ストレスとトラウマを理解する> ジャーナリズムはストレスの多い職業です。戦争の前線で取材する場合も、為替 相場の動きを速報する場合も、一刻も早い報道を求められ、厳しい競争にさらさ れています。 ロイターのジャーナリストの多くは大きなプレッシャーを感じながらも、生産的 で満足のいくキャリアを築き上げています。しかし、常に人々の不幸に遭遇し、 金融市場の報道では容赦ない要求を突きつけられ、利益を追求せざるを得ない環 境に身を置いていれば、メンタル面の健康が大きく損なわれる恐れがあります。 プレッシャーがストレスに変われば、環境に適応する能力が損なわれかねません。 ストレスが激しくなれば、精神的に持ちこたえられなく危険もあります。それが 極端な状態になれば、心理的なトラウマにより、仕事や生活が破滅に追い込まれ ることすらあります。 ジャーナリズムの世界では「弱さ」が否定的に受け止められがちですが、私たち は人間であることに変わりありません。私たちの体は自分が感じているかどうか にかかわらず、ストレスやトラウマに反応するものです。それが認識されず、処 置も行われなければ、悪影響が積み重なって、不安、うつ、麻薬やアルコール中 毒など、長期にわたって深刻な障害を受ける恐れもあります。 このリーフレットは、ストレスやトラウマの原因を理解し、その兆候を認識する ための参考資料です。また、自分や他人をいかにサポートし、どこでサポートを 受けることができるかについても情報を提供しています。 <ストレスの原因> ジャーナリストは日々、人々の暴力や苦しみと向き合わなければなりません。そ れらによって危機的な状況に追い込まれているジャーナリストとコンタクトする ことも私たちの仕事です。戦争やテロ攻撃、自然および人為的な災害などは、い ずれも大きなストレスを引き起こす出来事です。 犯罪、貧困、気候変動も、ジャーナリストを苦しみや悲嘆に直面させることにな ります。金融市場に関する報道も、特に市場が混乱している場面ではストレスの 多い仕事です。 大きなストレスを受けるのは実際に現場で取材したジャーナリストだけとは限り ません。オーディオやビデオ、写真を視聴したり編集したりするだけでも、感情 が乱される可能性があります。 ジャーナリストがストレスを感じる原因はそれだけではありません。組織変更、 予算の制約、社内のコミュニケーション不足、ITに関する問題など、些細なこ とでも多くの要因が心を蝕む可能性があります。 出張が多いジャーナリストは、家族と長期的に良好な関係を築きあげるのが難し いばかりか、長期間にわたって家を留守にすることにより、孤独にさいなまれ、 場合によっては幻滅感に襲われることもあります。 <ストレスの兆候> あるジャーナリストが緊張やプレッシャーを感じることでも、別のジャーナリス トはそれを刺激的に感じ、わくわくするかもしれません。ストレスやトラウマは 外的要因の持つ性格ばかりでなく、個人それぞれの受け止め方によっても異なり ます。 多くの場合、本当に深刻な状態に陥るのはストレスが積み重なった時です。早い 段階で見られるストレスの兆候としては、不眠、消化不良、集中力不足、神経過 敏、気分の不安定、無気力、引きこもりなどが挙げられます。 こうしたストレスの蓄積が放置されれば、最終的には燃え尽き感に陥ることがあ ります。熱心でやる気にあふれた人ほどそのリスクは高く、極度の疲労感や深い 幻滅を覚えるのが特徴です。その他の兆候としては、 ・無力感や絶望感を感じる ・同僚や上司への不信感 ・極度の落ち込み ・薬物乱用 極端な場合、深いトラウマを伴う経験がPTSD(心的外傷後ストレス障害)に つながることもあります。これは非常に明確な臨床上の症状であり、専門的な対 応が必要です。ジャーナリストの多くはその職務上、何らかのPTSDの症状 (フラッシュバック、悪夢、侵入的想起など)を経験することがありますが、ほ とんどは自力で回復します。ただ、症状が続く場合には外部の助けが必要になり ます。 <対応策> トラウマやストレスによる問題への対応で間違いなく最善の方法は、同僚や上司、 友人、家族からの社会的なサポートと、効果的で持続的なセルフケアとの組み合 わせです。以下のような対応策があります。 ・自分の反応が自然で人間的なものであると認める ・同僚や友人に、自分の経験についてオープンに話す ・定期的な運動 ・良く食べ、十分な睡眠をとる ・自分の経験を振り返る(日記を書いたり瞑想をする) ・楽しみや喜びを味わう余裕を持つ 同僚や家族が苦しんでいる場合は、話をさせることが重要です。判断を示したり、 途中でさえぎったり、望まれないのに助言をしたりせず、ただ聞いてあげること が大事です。あらゆる感情を表現させるのです。そして、定期的に様子をみて、 可能であれば具体的なサポートを与えます。 <具体的な支援と治療> このリーフレットにあるような問題を自分が抱えていると感じたら、365日、 24時間、いつでもCiCトラウマサポートラインを利用できます。資格を持っ たカウンセラーや心理療法士が配置されており、無料で何度でもアクセスして、 仕事や個人的なさまざまな問題についてアドバイスを得ることができます。機密 も保持されます。また、必要に応じてカウンセリングが行われることもあります。 <CiCは以下のような問題についても助言を提供します> ・長期的な心理療法- 未解決の感情的な問題を抱えていて対応を必要とする場 合。 ・薬物やアルコールの治療- 依存症という問題を抱えていて対応を必要とする 場合。 <CiCにコンタクトする3通りの方法> 1)CiC(英国)に電話をかける。 +44 20 7938 0936 2)eメールを送る :[email protected] このeメールアドレスにメールすれば、あなたの要望がCiCトラウマサポート チームの携帯電話に直接届けられます。 注:eメールは、html 形式ではなく通常のテキスト形式で作成して下さい。ま た、件名(subject)は空白で、本文には以下の内容のみ記載して下さい。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 名前 職務 所在地 電話番号 eメールアドレス 連絡を希望する時間(現地時間かGMTか明記) 連絡を希望する言語 3)CiCの国際フリーダイアル。 ご自分の所在地の国際アクセス番号(米国:011、英国:00など)を入力後、 800 0587 2991 に電話してください。 CiCフリーダイアルは、10カ国(カナダ、米国、イスラエル、スペイン、香 港、南アフリカ、ドイツ、シンガポール、英国、フランス)の方々のみ利用可能。 これら以外の国からは、CiC(英国)に電話するか、eメールを利用してくだ さい。 CiCはできるだけ早く、遅くとも24時間以内に連絡を差し上げます。 相談内容の確認後、CiCのカウンセラーは相談者それぞれに必要な治療法を検 討し、担当するカウンセラーを決めます。 CiCは、あなたやあなたの部下が助けを必要とする時、世界中で専門医を紹介 することができます。 <オンラインでのトラウマサポートについて> ストレスやトラウマについて理解し対処するために、詳細な情報や指針を得るに は www.cic-learning.co.uk/Reuters-trauma/login.にアクセスしてください。 ユーザープロフィールを作成するよう求められますが、入力した個人情報は完全 に機密保持されます。 <回復への道のり> トラウマをもたらすような経験をすると、この世の終わりのように感じることが しばしばあります。しかし、そんなことはありません。ジャーナリストという職 業は重要であり、やりがいのある仕事です。そうしたやりがいを感じなくなった 場合でも、支援の手が差し伸べられ、回復することが可能です。ストレスや燃え 尽きを経験した人の大半は、その経験を糧に、新たな回復力や目的意識を得て、 自分への理解を深めることに成功しています。
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