ニュースレターInvest in France No20

businessfrance.fr
QUARTERLY – N°20 – SUMMER 2015
Portfolio
PUBLISHED IN PARIS
Invest in
France
Everything you need to do business with France
4,000+
アキテーヌへようこそ
Sector spotlight
「フレンチテック」、
1,000+ 世界を席巻
パリのスタートアップ
企業数
世界最大規模の
インキュベーター
「ラ・アール・フレシネ
(Halle Freyssinet)」
が2016年までに
収容を見込む
スタートアップ企業数
37%
フランス人起業家、世界を舞台へ―
ラスベガスのInternational CES、バルセロナのMWC(Mobile World Congress)、米テキサス州オースティンのSXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)など、
テクノロジー業界の国際イベントで、新世代フランス人の活躍が目覚ましい。起業
家、投資家、エンジニア、デザイナーなど、多様な才能が「フレンチテック(フランス
流テクノロジー)」と名付けられたフランス政府主導の取り組みのもと、続々と頭角
を現している。
今
年 1 月、ラスベガスで 開 催された
テクノロジ ー 業 界 最 大 の 展 示 会
「International CES」に集まっ
たマニアたちは、驚きの色を隠せなかった。
イベントで紹介された新型機器のせいだけ
で はな い 。フランス語を話 す 人 が 多 いこと
に困 惑して い た の だ 。会 場 は右 も 左 もフラ
ンス人起業家という状態だった。そのあまり
の多さは、世界的なメディアも記事にしたほ
どである。
「CESはフランス人一色に染まっている」と
書いたのは、Yahooのテクノロジー担当編
集者のJason Gilbert氏。同氏は「CESの
覇者はフランスとなるだろう」と記事を締め
くくった。
フランス称賛はこれにとどまらない。国際オ
ンライン新聞 クリスチャン・サイエンス・モニ
ター(The Christian Science Monitor)
は「フランスは新規起業件数で欧州首位に立
ち、
“ 起業家(アントレプレナー)”のルーツと
しての面目を取り戻した」、エコノミスト紙は
起業を希望する
フランス人の割合
42万以上
フランスの
新規設立企業数
(2014年)
「( C E Sでの )フランスのプレゼンスは群を 総 人 口 の 3 7 %が独自の 事 業を立 ち上げた
抜いていた」、ブルームバーグ社はフランス いと考えている(2014年10月、Viavoice
のビジネスが「 大 挙して押し寄 せている」と 調べ)。
書いている。
「フランス発 のテクノロジーは今 、ついに世
エマニュエル・マクロン仏経済相は、パリで開 界全体に向けて扉を開こうとしている」と語
かれたCES開催前イベントで「ここのところ るのは、ロケーション技術に強い半導体メー
外国に盗まれていた状態だったが、
“ アントレ カーBeSpoon社のJean-Marie André
プレナー”はもともとフランス語。そのことを C E O 。
「 我 々は国 際 化して自 分たちの 実 力
決して忘れてはならない」と述べた。
を示すことに、ようやく躊躇しなくなった」と
フランス企 業 が 海 外 で 大きく取り上げられ 語った。
る一 方 、国 内では新 世 代 の 起 業 家が互 いに CESに出展した仏企業は120社と、欧州諸
切磋琢磨し、さらに多くの起業家を生む好循 国中で最も多かった。食べ過ぎると自動的に
環が生まれている。情報通信大手イリアド社 緩むEmiota社のスマートベルト、赤ちゃんが
(Iliad)を立ち上げたXavier Niel氏。同氏 飲んだミルクの量とスピードを記録するSlow
はP2P(ピアツーピア)教育法を使ったコン Control社のスマート哺乳瓶ホルダー、生演
ピュータプログラミング学校「42」、世界最 奏さながらのピュアな音質での再生が可能
大のインキュベーター、Halle Freyssinet なSoledge社のスピーカーなど、さまざま
な ど 、次 世 代 人 材 の 育 成 に 投 資 し て い な機器が世界の注目を集めた。
る 。また C r i t e o 社 の 共 同 創 設 者 、J e a n - スタートアップが新製品や新サービスを紹介
Baptiste Rudelle氏は、デジタルパフォーマ するテックゾーンであるユ ーレカ・パークで
ンス広告で世界トップを走る。現在、フランス は、米国に次いでフランスからの出展企業が
2ページに続く
Here and there
アキテーヌが選ばれる理由
3ページ
The essentials
さらに魅力を増すフランス
4ページ
Clusters close up
4ページ
Pole Avenia:地球科学を制覇してエネルギー
資源の最適化へ
Sector spotlight
カバーページより続く
「フレンチテック」、世界を席巻
エンジニアリングサ ービス、金 融 サ ービスな
ど、情報通信産業の各分野でそれぞれの技術
をアピールした。
米 テ キ サ ス 州 オ ー ス ティン で 開 催 さ れ た
SXSWでは、Chanel、Canal+といった企業
のみならず、音楽・マーケティン
グコミュニケ ーション・動 画・コ
ネクテッドデバイスの領域を押
し広げるスタートアップ各社
が「フレンチ・タッチ(フラン
ス流 )」をアピー ル 。例えば、
人のジェスチャーさらには体そ
の も のを楽 器に変えてしまう
P h o n o t o n i c 、ヘッドフォン
でホームシアターを体 験で
きる3DSoundLabs社の
3DヘッドフォンNeoh、足
で 操 作 する3 D ナビ ゲ ー
ション・モ ー ションコント
ローラの3DRUDDERな
どである。世界有数のオンデ
マンド音 楽ストリーミングサイ
ト、Deezer社の欧州事業開発責任
者Clement Cezar氏は、
「フラ
ンスには新規事業、ITベンチャー
を立ち上げるのに必要な制度、そ
して十分な知識と経験を持つ人材が揃ってお
り、投資するには最高の国である」という。
© Léo Dorfner
Interview
多く、全体の25%を占めた。また、すでに世界
的知名度を誇る仏企業もいくつか出展してい
た。スマートフォンと連携するヘルスケアデバ
イスのWithings社、気象情報・スマートサー
モスタットで有名なNetatmo社、コネクテッド
デバイスのSen.se社などである。ロレアル、
ラ・ポスト(La Poste)、ペルノー・リカール
など仏大手企業は、デジタル経済でビジネ
スが大きく変化していることを示した。
モバイルフロントホール技術の先駆者、EBlink
社のAlain Rolland CEO兼創始者は、
「フラ
ンスは投資・創造に最
適な国」と述べた。
「ここは多くの可能
性に満ちている」。
バルセロナで開催
されたMWCでも、
フラン ス は 出 展 企 業 数
でドイツ(112社)、中国
( 1 5 4 社 )、日 本( 3 0 社 )
を凌駕し、全体の10%を占め
た。M W C 2 0 1 5 の 会 場 の 各 国 パ
ビリオンの 中 でも最 大 規 模となったフ
レンチテック・パビリオンでは、出展企業
184社のうち、実に120社が中小企業
やスタートアップであった。モバイルアプ
リ、通信インフラ、モバイル広告、モバイルマ
ーケティング、携帯ゲーム、携帯アクセサリ、
Luiz Fuchs
Embraer Aviation Europe
社長
Embraer社は、ブラジルの最大120座席クラスの民間ジェ
ット機メーカー。世界最大手であると同時にブラジルの輸出
を支える企業の1つ。フランスに初上陸したのは30年前。
エマニュエル・マクロン経済相:
「若く変貌するフランスの顔」
フランソワ・オランド大統領が昨年8月、当時大統領顧問を務めていたエマニュエル・
マクロン氏を経済・産業・デジタル大臣に任命した時、氏はたった36歳であった。しか
し、世界の注目を集めたのはその若さではなく企業寄りの姿勢であった。
就任の2カ月後、ニューヨークタイムズ紙は「たちまちフランスの新社会主義の顔、フ
ランス社会モデルの近代化に熱心に取り組むテクノクラートとなった」と報じた。マク
ロン大臣は、投資銀行Rothschild et Compagnie社に4年在籍し、ファイザーか
らネスレへベビーフード部門を売却する119億米ドルの取引の仲介を経て、2012
年にオランド政権に加わった。
フランス北部アミアン出身、医者の家系に生まれ、フランス国立行政学院を卒業。新
卒時の就職先は、政府機関の監査を行う財務監督局であった。
政治では、その名を冠した「マクロン法案」で改革派としての名声を獲得した。これは
小売店の日曜営業に関する規制緩和や様々な業界における競争促進など一連の施
策を提案するものである。
同氏の法案推進・擁護の姿勢は海外メディアに好意的に受け取られている。今年3月、
ウォールストリートジャーナル紙は1面に、企業寄りの改革を押し進めるマクロン大臣
の突出した活躍を高く評価する記事を掲載。2月発行のフィナンシャル・タイムズ紙
は、同氏を「若く変貌するフランスの顔」と称えた。
大臣就任後間もなく、フランスは財界に厳しいという認識を打ち砕き、仏政府の改革
を推進するべくロンドンを訪問した。英インデペンデント紙は「経済界の若き指導者」
と表現した。
最近では、海外を訪れ、フランスのスタートアップ企業の宣伝も行っている。USA
Today紙は、ラスベガスのCESでマクロン大臣が「アントレプレナー(企業家)はフ
ランス語である、とテクノロジー業界に再認識を促した」ことを取り上げた。
そもそもなぜ、
フランスへの投資を選択したのですか。
フランスに進出してかれこれ30年になります。1983年当時、当
社はフランス空軍から100機を超える航空機を受注しました。当
時販売した航空機は今でも現役で空を飛んでいます。次に大きな
理由は、言わずもがなですが、ロジスティクスです。当社はアフリ
カ、中東、および欧州全域を管轄しており、各地へ製品を届け、各
航空会社にサポートを提供するためには、シャルル・
ド・ゴール空港
がなんといっても重要なのです。
投資家の目から見たフランスの魅力は何ですか?
既に述べた通り、一番の理由はアフリカ、中東、欧州の各航空会社
様に技術的サポートを行うのに最適な立地という点です。投資面
で言えば、こうした地域への便数が多くアクセス性が高いことか
ら、フランスこそが当社ビジネスに最適な地と判断しました。今日
は中東、明日はアフリカへ、
ということが可能で、各地の航空会社
をサポートするにはこれ以上に最適な場所はありません。
今日でもフランスでのプレゼンスを維持し、同社の強みを強
化することに専念している。Embraer Aviation Europe
社のLuiz Fuchs社長がその考えを語った。
2
フランス人労働力の利点とは?
しっかりした教育を受けている点。またブラジルとフランスにはも
ともと文化的に近いものがあります。歴史的にも深いつながりを
持ち、フランス駐在のブラジル人従業員の多くが暮らしやすい国
だと感じています。フランス人従業員とは良い関係にあります。
昨今の規制緩和でEmbraer社にとってやりやすくなった点はあり
ますか?
あります。まず、入国手続きがわかりやすく、柔軟になりました。一
部の追加所得を免除する新しい法律、地方事業税に対する所定の
改正も挙げられます。付加価値税(VAT)控除分の支払いは月ごと
になり、新しい種類の従業員解雇契約も出てきました。
今後のフランスへの投資計画はどのようなものですか?
当社はフランスへ来て30年になりますが、今もなお成長し続けて
います。年頭の従業員数は約270人でしたが年末までに300人
に増やしたいと考えています。当社の事業はこの国で大きく拡大
しており、現在、先に話した3地域で1,000機以上の航空機に部
品供給やサポートを行っています。従って、
ここでの事業を維持し
ていくことは意義深いのです。
Here and there
アキテーヌが選ばれる理由
アキテーヌは生活の質(QOL)が極めて高く、自然の恵み豊かな地域圏だ。大西洋
に面した長い海岸線には海を楽しむリゾートが点在する一方、ピレネー国立公園や
ヨーロッパで最も広い森を擁するランド・ド・ガスコーニュ自然公園などの自然保護
区では山を楽しむことができる。
フ
ランスで 3 番 目に広 い 地 域 圏 で あ けのバタフライ弁、アクチュエータ、付属部品
るアキテーヌは、地中海性気候に近 を製造している。
い気候と、世界に名だたるワインや
食を楽しめる地域だ。ここにはなんと40万年 「 1 9 8 9 年 、
ドイツ企 業 の K S Bグル ープが 、
も前から人が居住しており、
ドルドーニュ県の アキテーヌで50年の歴史を持つ独立系中小
ヴェゼール渓谷は「文明のゆりかご」の名で知 企業であったAMRIを買収しました。AMRIは
られる。自然の恵みの豊かさを思えば、それも 技 術と専 門 性で定 評があり、この 買 収により
不思議ではない。
KSBは製品ポートフォリオにバタフライ弁を
取り込むことに成功しました。今日、同工場は
基 本 的には農 業 地 帯 で あるため人 口 密 度 は 世界各地のKSB拠点の中でも最大規模のも
低いが、人口はここ数十年で着実に増加して のであり、フランス国内の拠点の中では最大
おり、人口増加率は実に欧州平均の3倍を誇 です。当社はフランス国内で1,200人の従業
る。2009年からは、雇用創出力の分野でフ 員を抱えています。またボルドー付近には50
ランスNo.1の地域圏の座を誇っている。
名を抱える研究所があり、ここアキテーヌとリ
ー ル 、およびシャトー ル ーにそれぞれ製 造 拠
アキテーヌ地 域 圏には世 界 各 国から4 0 0 社 点があります」とBagard氏。
もの企業が進出している。これを支えている 「フランスで生 産する製 品 の 7 5 %は輸 出 用
のが、生産性が高く好業績な中小企業からな であり、うち半数以上はEU域外向けです。ア
る緊密なネットワークである。産業は、活気あ キテーヌは技術的専門性が豊富な肥沃な土地
ふ れる都 市 ボ ルドーを中 心に、航 空 宇 宙・防 とい えます 。またスペイ
衛から農 産 食 品 、林 業 、化 学 薬 品に至るまで ンとの 国 境に近く、ボ ル
多 種 多 様な業 種が立 地している。一 方 、ポー ドー港に近いため交通の
を中 心とした 地 域 で は少 量 だが 原 油 が 採 掘 便も良いことから立地条
されており、ラックは化 学 産 業 で 知られるよ 件も良好です。多数の供
うになった。
給 業 者に囲まれ、機 械 建
造 や 溶 接 、また 、航 空 宇
アキテーヌ地域圏は、GDP成長率でもフラン 宙クラスターの強みであ
ス国内でトップ3に入る。神経科学、医用画像、 る機械加工のノウハウも
材料などの分野で優れた研究成果を出してい 豊富です」。
る強力な研究ベースを持ち、技術革新・研究開 同氏はさらにこう語った。
発投資比率が他の地域圏と比べて高い。一方 「個人的にも、ここは住むにも、子育てするに
で、地代や人件費はパリ周辺地域と比較する も素晴らしい場所だと思います。最適なワー
と平均して2~3割は安く、コスト競争力も高 クライフバランスを得られるし、
ドルドーニュ
いのが特徴だ。
に行けば素晴らしい景色の中でアウトドア体
験を楽しむことができ、ジロンドに行けば海を
アキテーヌ地域圏の輸送ハブはボルドー。フ 楽しむことができます」。
ランス各地や欧州主要都市、さらには世界と 「この 度 1 , 2 0 0 万 ユ ーロを投じ、
ドルドーニ
短時間で結ばれている。現在行われている高 ュ北 西 に 位 置 するラ・ロシュ=シャレに 製 造
速道路の延伸工事が2017年に完了すれば、 施 設 を 建 設しました 。4 , 4 0 0 平 方メートル
ボルドーはパリからわずか2時間強となり、ぐ に及 ぶ 新しい 施 設 の 工 事 は順 調に進 ん でお
っと近くなる。
り、2016年6月には生産開始予定です。40
名を雇用し、高圧(最高150バール)と極低温
同地域圏への多額の投資を決定したCEOに、 ( - 1 6 0 ℃)で も 機 能 するハイテクバ ルブ の
話を聞いた。
Triodisシリーズを生産します。アキテーヌの
地方自治体とドルドーニュ県は非常に協力的
です」。
Philippe Bagard氏
ガスタービンをはじめ 高 精 密 機 械 部 品 専 業
メーカーVentana Narcastet( 旧Micron
Précision)社、精密板金加工部品専業メー
カーVentana
Argenteuil(旧CIMB)社、
複雑な機械組立部品のガスタービンへの取付
けを専門に行うVentana Meillon(旧GTA)
社、プロトタイプや大型部品の小ロットの機械
加工を行うVentana Taverny(旧ERI)社、
そしてアルミ合金の成形砂型を使った各種技
術部品を製造するVentana Toulouse(旧
Fonderie Mercié)社である。
「今日のわが社があるのは3名の功績による
もの。Guy Kihoffer氏と私は、航空宇宙部門
向けの精密部品メーカーMicron Précision
社で出会いました。のちに二人でVentanaと
なる企業を立ち上げ、1998年から2004年
にかけて22~35人を雇用しました。その後、
母国オーストリアで精密機械溶接の経験を持
つ、Ernst Lemberger
氏 が 加 わり 、我 が 社 の
さら な る 拡 大 に 出 資し
て く れ まし た 。彼 は 現
在 、当 社 の 大 株 主 です 」
Russo氏は語る。
「 2 0 0 4 年 から 今 日 ま
で、買収や事業拡大を繰
り返し、極めて急 速な成
長を遂げました。現在従
業 員 数 は 約 4 5 0 名 、売
上 は5 , 0 0 0 万 ユ ーロです 。フランス国 内に
子会社6社を持ち、
うち1つがロールスロイス
製エンジンやエアバス製ヘリコプター向けに
マグネシウム部品を供給しているVentana
Arudyです」。
「 2 0 1 5 年 は 規 模 を 2 倍 に 拡 大した いと考
えて い ます 。当 社 の 強 み は 技 術 の 最 先 端に
いられるかどうかにかかって います 。そ のた
め、2003年からこれまでに研究開発費とし
て1,500万ドルを投じてきました。これには
2014年まで継続した、3D印刷を使って鋳造
品を作ることを可能にするデジタル技術を使
う研究計画も含まれています。この鋳造技術
をものにできているのは当社だけです。その
他の3D印刷技術はまだここまで進歩してい
ません」。同氏はこう続ける。
「さらにArudy付近で何百人もの雇用創出を
見込む新しい生産施設の建設に2,500万ユ
ーロを投じる計画です。米国の某大手顧客の
ニーズに応えるためです」。
「 ア キ テ ー ヌ地 域 圏 に い る 大 き な メリット
は、Aerospace Valleyクラスターです。こ
の地域には産業力があり、技能の高い人材を
発掘、確保するのは難しくありませ ん。また、
同クラスター は政 府 の 認 定を受 けて いるな
ど、その他のメリットもあります」。
同氏は「QOLもまた大事です。1時間もあれ
アキテーヌは
技術的専門知識が
集積している
豊かな土地だ
KSB Amri社、
バルブ事業担当副社長兼
ラ・ロシュ=シャレ工場長
KSBグループは、建築設備・産業・水工学・エネ
ルギー・鉱業部門向けのポンプ、バルブ、その
他関連システムの専業メーカー。売上は約23
億ユーロ。従業員は世界全体で16,200人を
超え、世界中の全大陸に進出を果たしている。
アキテーヌ地方の拠点では、化学・石油化学・
製紙・水・半導体をはじめとする様々な市場向
Gerard Russo氏
Ventana Group社長
Ventana Groupは6社から構成される企業
グループで、ポーに程近いナルカステに本拠
を置く。グループ企業は6社とも、機械または
鋳造を専門とする事業を行っている。6社は、
マグネシウム合 金 /アルミニウム合 金を使っ
た精密砂型鋳造で欧州の最先端を行くVentana Arudy(旧Fonderie Messier)社、
”
ば、ゲレンデやビーチに行けます。
トゥールー
ズ、ボルドー、スペインもたった2時間の距離
です」とも語る。
「サポートという点で言えば、フランス企業振
興機構ユビフランスと対仏投資庁の合併が功
を奏しています。ビジネスフランスの誕生によ
り、対仏投資や輸出に関する相談窓口が一本
化されました。当社のような小企業にとっては
大変やりやすくなります」。業にとっては大変
やりやすくなります」。
Bernard Martin氏
Toray Carbon Fibers Europe社長
東レ は 、子 会 社 T o r a y C a r b o n F i b e r s
Europe S.A.社がアキテーヌ地域圏のRoute
de Lagorに本拠地を構え、ポリアクリロニトリ
ル系カーボンファイバー製造を行っている。
「東レがアキテーヌに進出したのは1980年
代にさかのぼります。当時フランス政府はラフ
ァール戦闘機向けのカーボンファイバーを生
産する協力会社を探していました。やがて東レ
はエルフ・アキテーヌ社と、その後アルケマ社と
提携を結びました。従って産業協力の歴史は長
く、当社は東レの100%子会社です」と同氏は
話す。
「ポリアクリロニトリル繊維の製造には、安全
な環境が必要です。地下埋蔵石油の工業利用
の中心地であるラックから約1マイルの距離に
あり、天然ガスの抽出と開発、並びに硫黄の生
産も古くから行われています。そのためここは
理想的な場所です。そればかりではなく、滅多
にないことですが、地元住民はこの種の産業に
理解があります。住民には産業リスクを受け入
れている様子が見られ、むしろElf社やTotal社
などの企業に勤めたという家族の歴史を誇りに
思っています」。
同氏はさらにこう語る。
「東レがフランスを選ん
だのは、ここで事業を展開していける確信が得
られたから。日本人にとって、この種の自信は
非常に重要です。アキテーヌにいることで、
これ
までも地域圏自治体や地方当局からの多大な
る支援を受けてきました。各当局に対する信頼
もまた、地元住民の支持があってこそです。消
防や医療など治安インフラも確立した環境で、
さらにフランス人労働者は生産性、作業水準と
もに高いです」。
「この度新しい生産拠点に1億2,000万ユー
ロを超える資金を投じました。ここで70人を採
用する予定です。つまり、このアキテーヌ工場
は、世界最大のPAM生産能力を持つ工場とな
り、当社の他の製造拠点すべてを足し合わせた
3倍の生産が可能になります。東レグループに
とって、ラックは、航空宇宙・自動車・風力タービ
ン市場を支える欧州拠点となるのです」同氏は
このように締めくくった。
3
The essentials
In brief
さらに魅力を増すフランス
フィルハーモニー・
ド・パリ、
いよいよオープン
フランソワ・オランド大統領は、フランス経済の長所を強化させつつ、弱点に取り組むと
決意を固めている
フ
ランス政府は人件費が問題となり
得ることを 認 識して おり、これを
押さえるための施策を導入してい
る。2013年から14年にかけて展開した競
争力強化・雇用促進税額控除(CICE)により、
数百万社が、法定最低賃金(SMIC)の2.5倍
まで支払われている従業員に対する社会保
障 負 担を免 除される。今では給 与 支 払 総 額
の6%の節減、または年間200億ユーロの
人件費削減に匹敵する。
今年、改 革 派 のエマニュエル・マクロン経 済
大臣の名を取った「マクロン法」と呼ばれる
新しい法律により経済の自由化を目的とした
多数の施策が導入されつつある。経済を少し
でも解放するため、ロンドンの年中無休のシ
ョッピング文 化に少しでも対 抗するべく、日
曜営業の規制は緩和されることになる。また
貿易を緩和し、解雇時の紛争を早期解決する
ための計画もある。今年2月、無投票で通過
した同 法は年 末までに発 効すると見 込まれ
る。2 月1 8日付 のフィナンシャル・タイムズ
紙社説は、オランド大統領の「中道左派政権
は今 週 、企 業 のお役 所 仕 事を削 減する様々
な規制緩和策を実施した」と報じた。
光
の都パリに、ベルリンフィルハーモ
ニーやウィーン楽友協会に対抗する
新しいコンサートホール「フィルハーモニ
ー・
ド・パリ」がオープンした。
設計を担当したのは、アラブ世界研究所、
ケ・ブランリ美術館、バルセロナのトーレ・ア
グバール
(Agbar Tower)
を設計した建築
家ジャン・ヌーヴェル氏。世界で最も多く観
光客が訪れる都市に、
またひとつ新たな集
客スポットが誕生した。オーケストラのコン
サート、独創的な現代音楽の発表の場、さ
らには他の音楽活動の場となることを想定
している。最高峰の音響設計を誇り、
フラ
ンスさらには世界中の主要楽団が利用で
きる。
仏製3D電子部品、彗星との
ランデブーに成功
昨
Clusters close up
Pole Avenia : 地球科学を制覇して
エネルギー資源の最適化へ
昨今の石油価格の高騰により、地球の将来を担う新たなエネルギー源を探る必要性
が改めて浮き彫りとなっている。フランス南西部のPole Aveniaイノベーションクラ
スターでは、明日の世界のエネルギー需要を満たす新技術の開発が積極的に進めら
れている。
ole Aveniaは地球科学に関する広範
「P
なノウハウを集結しており、
この分野
を専門とするフランス唯一のイノベーションク
ラスターです」と語るのは、2013年に代表に
就任したAlain Lehner氏だ。Pole Aveniaに
加わる前、石油メジャーのトタル社で
輝かしいキャリアを積んできた人物だ。
「ここへ 来た当 時 、5 0 名 のメンバー
が二酸化炭素貯留を研究していました
が、この地域にある幅広いノウハウを
十分に活用しているようには見えませ
んでした。我々は視野を広げ、現在で
は150人体制で、画期的なプロジェク
トやターゲットを絞ったパートナーシッ
プを通じ、地球科学の革新的研究を進
めています」。
的測量と画像取得、地球モデリング・油層モデ
リング、掘削、油井操業・機器、回収技術、モニタ
リング技術、廃棄物処理などが挙げられる。
このクラスターでは現在、上流、すなわち石油
ガスと、深部層地熱発電、およびエネルギー・
メン バ ー に は 、E N G I E 社 、
トタ ル
社、Varel Europe社などの多国籍企
業から、研究機関、大学、地域団体など
が含まれる。その中でも最も多いのが
中小企業で、150社のうち85社にの
ぼる。クラスター全体で、エネルギー資源(石 二酸化炭素貯留の3分野を手がけている。技
油、地熱、エネルギー・二酸化炭素貯留)
を活用 術移転を通じた他の市場への進出も目論んで
するためのあらゆるジオサイエンス技術が網 いる。
羅されている。具体的には、ジオサイエンスに 「現在のメンバーは、積極的に市場の声に耳
ビッグデータを応用するジオ情報、地球物理学 を傾け、その情報をイノベーション活動に持ち
込み、市場が望んでいるソリューションを共に
模索するのです」
とLehner氏は語った。
今日までに、同クラスターの23の研究プロ
ジェクトが認定された。予算総額は1億ユー
ロを超える(うち4,500万ユーロは国
の予算)。
そのなかに、天然ガス貯蔵が周辺環境
に与える影響を計測しようとするプロ
ジェクトがある。レーザーインターフェ
ロメトリという手法を使い、貯蔵による
地形変化を、最深地下800メートルま
で現地でモニタリングする。天然ガスの
輸送と貯蔵を手がけるTIGF社と研究
機関のGéosciences Montpellier
が共同実施するこのプロジェクトは、総
額23万ユーロにのぼるが、これにより
TIGF社はリスクをより的確に評価し、
ひいては環境やその他の利害関係者へ
の貯蔵による影響を軽減することが可
能になる。同プロジェクトは炭化水素開
発・地熱発電・貯蔵の各現場の監視と最
適化に高い精度をもたらすもので、現在、初の
量産プロトタイプ実現に向けて前進していると
ころである。
「この技術は他にも多岐にわたる
応用分野に役立つ可能性を秘めています」と
Lehner氏は語った。
年、史上初めて彗星にロボット型プ
ローブの着陸を成功させるという歴
史的偉業を達成した彗星探索機「ロゼッタ」。
この重要部品を供給しているのは、
パリに本
社を置くフランス企業「3D Plus」社。
同社はロゼッタ向けに、同一仕様のマイク
ロカメラ6台を供給した。このカメラは彗
星の表面を360°
のパノラマで捉えること
ができる。さらに同社は、彗星着陸機「フィ
ラエ」にマイクロDPUコンピュータを提供
した。ロゼッタはフィラエを彗星に運搬す
る役割だったが、探索機自体にもマイクロ
DPUコンピュータおよびマイクロカメラが
搭載されている。これらもまた3D Plus社
製である。
新10都市圏誕生
フ
ランスでは、あらたに10の大型都市
当局に対し、経済開発、住宅、公共交
通、水・廃棄物管理など、様々な分野の権限
が与えられることとなった。
10つの大都市は、
レンヌ、
ボルドー、
トゥー
ルーズ、ナント、
ブレスト、
リール、ルーアン、
グルノーブル、
ストラスブール、モンペリエ
である。
今後は、パリ、
リヨン、
エクス・マルセイユ・プ
ロヴァンスでも同様の権限移行が行われ
る予定。ニースではすでに移行が完了して
いる。
Publisher:
Business France
Contributing Editor:
Emma Vandore
Editor:
David Williams
Design and layout:
Printed on recycled paper
Circulation:
12,000 copies in English
500 copies in Japanese
* The Invest in France Agency and Ubifrance have
merged to form a new agency: Business France.
4
Portfolio
QUARTERLY – N°20 – SUMMER 2015
Welcome to
AQUITAINE
Ventana. 巨大な砂型を
使って金属パーツを製造す
るVentana社は、
ソフトウェ
ア開発も自社で行う。機械
加工や鋳造を手がける6つ
の事業会社からなるグルー
アキテーヌへようこそ
プ企業で、本社をポー近郊
ナルカステに置く。詳しくは
3ページ。
João Luiz
Bulcão, ブラジル生ま
れの写真家
(52歳)
。長き
に渡り社会経済・環境問
題に関心を寄せてきた。
アマゾン川を探索した作
見
従 来的なセクターから航 空・宇宙・防 衛、化学 薬品・材料、
製 薬、レーザー 光学などのハイテク部門に至るまで多岐に
わたる。
アキテーヌ地 方は、フランスでも最も経 済 的に多様 性に富
むほか、雇用創出力・イノベーション投資では国内ナンバー
ワンの 地 域 だ。そ の 活 気 の 源を探るべく、ブラジル出 身 の
写真家、João Luiz Bulcãoにアキテーヌ地域圏を訪れても
らった。アキテーヌの産業は、林 業、製紙、農 産 食品などの
有名なビアリッツの海岸線、ポーの石畳、ボルドーの美しい
噴水。こうした格好の被写体が点在するアキテーヌには、何
百年も受け継がれた生産方法と、最先端の研究開発の両方
が存在する。写真家の目がとらえた生産ライン、研究開発セ
ンター、ショールーム、そこで働く人々を紹介する。
業 種は宇宙航 空、ソフトウェア設 計、製 薬とさまざ
ま。また、人々の インスピレーションの 源となって
いる美しい自然も紹介する。
渡す限りの白浜と砂丘、鬱蒼と茂る薫り高い松林、中
世の街並み、
ドルドーニュの豊かなグルメ。どれを取
っても、アキテーヌの魅力は一目瞭然だ。だが、フラ
ンス南西部のこの地方に多くの起業家が投資するのは、美し
い風景と素晴らしい食べ物だけが理由ではない。
品をきっかけにGamma
社のブラジル特派員とな
る。ブラジルの雑誌への
寄稿を経て渡米。Gamma
社ニューヨーク事務所に
2年間勤務。その後パリ
に移住し、Gamma社や
Corbis社と契約。現在は
フリーランスとして定期
Biarritz.(ビアリッツ)伝説
的な巨大ビーチ「ラ・グラン・プラー
ジュ」。カジノと有名な「オテル・デ
ュ・パレ」の間に位置する。かつてこ
こは「プラージュ・デ・フ
(愚か者の
ビーチ)
」
と呼ばれていた。大西洋
から来る波が高く、
絶好のサーフィ
ンスポットである。
的にブラジルに帰国し、
新
たな撮影プロジェクトに
参画。パリ在住。Galerie
Wの常任アーティスト。
I
Dune du Pilat.(ピラ砂丘)欧州で最も標高の高い砂丘。写真は、牡蠣の一
大産地であるキャップ・フェレからピラ砂丘を望む。無数の細い杭は、
アルカション湾
での牡蠣養殖に欠かせない装置。
Château Margaux.(シャトー・マルゴー)メドックをはじめとするボルドーの各地域では、先祖代々伝わ
るワイン栽培法が誇らしく継承されている。写真のように、今でも馬耕が行われているが、
この手法はピンポイ
ントで土を耕せるだけでなく、
ブドウを傷める危険性が低いのが特徴。シャトー・マルゴーは語り継がれている
長い歴史を持つ。メドックは1855年、ナポレオン3世によって初めてグラン・クリュ・クラッセの格付けがされた
時、第1級を与えられた。
II
Bordeaux.(ボルドー)
欧州で最も大きな広場、
カンコンス広場。この西側
には、
フランス革命でのジロンド派の活躍をたたえ
る記念碑がある。巨大な円柱の天端には、自由の
精神を象徴する像が飾られている。
1ページの写真:
「水の鏡」は現代ボルドーを象徴す
る観 光 スポット。ランドスケ ー プ ア ー ティスト
Michel Corajoudが、
ウォーターフロント再開発
事業の一環で設計した。2cmだけ張った水の表面
に18世紀のファサードが映り、それが人工霧の合
間に見え隠れする様子はなんとも幻想的。
Merck.(メルク)工場の一部では防護服を着用
しなければならない。目的は身体の保護ではなく、
開
発中の微生物を保護するため。同社はドイツに本社
を置く世界最古の製薬・化学会社。医療・ライフサイ
エンス・高性能材料分野のイノベーションに定評があ
る。
フランス進出は1967年。
Huttopia. 自然環境での宿泊サービスを提供。自然の中で過ごす経験を
求める人々に、
環境にやさしいヴァカンスを提供。写真の森林キャンプ場では、
森の真ん中で、
圧倒的な静けさに包まれて眠るという体験ができる。
Thales.(タレス)Avionics 2020コックピットは、ボルドーのコックピット専用イノ
ベーションハブ
(研究開発センター)
で誕生した。
このコックピットの特徴は、
パイロット
が直感的に操作できる触覚ディスプレイを採用している点にある。航空宇宙分野では、
同社は機内装置
(コックピットおよび客室の各種ソリューション)
および地上機器の世界
的大手。
フランス資本の多国籍企業であり、
航空宇宙・軍事・運輸・セキュリティ市場向け
に電気系統や各種サービスを手がける。
KSB. 工場の作業場でゴム製の密閉材を検査する作業員。KSBグループは建
築設備、
工業、
水工学、
エネルギー部門、
鉱業用ポンプ、
バルブ、
各種システムを供
給する専門メーカー。アキテーヌの工場では、
バタフライ弁、
アクチュエータ、
各
種付属部品を製造している。詳しくは3ページ。
III
Ceva. アニマルヘルスケア業界のトップ10社にランクインし、急成長を続ける同社は、世界42カ国に拠
点を持つ。研究開発センターは13カ所、
製造拠点は21カ所、
従業員は3,500人を超える。写真は生産ラ
イン。奥に見える人物は完全に隔離された生産施設。他には誰も立ち入れない。
Pau.(ポー)アキテーヌ第2の都市、ポー市の
眺め。南部をガーヴ川が流れる。
ピレネー山脈の
麓にあり、
大西洋までは1時間という立地から、
雪
とヤシの木、
両方の風景を楽しむことができる。
Lectra. 特殊ソフトとせん断装置の技術をリードする同社のショールーム。顧
客はファッション・アパレル、
自動車、
家具などさまざま。研究開発センターはボル
ドー・セスタの生産工場に併設されている。
IV