フライアッシュ添加によるポリマーセメント系材料の改質効果の検討 徳島大学大学院 学生会員 ○久保田皐 徳島大学大学院 正会員 塚越雅幸 徳島大学大学院 非会員 野並優二 徳島大学大学院 正会員 上田隆雄 1.はじめに 表1 修復材の調合 ポリマーセメント系材料へのフライアッシュの添 配合 加が,断面修復材および,防水材の耐久性および力学 FA置換率 FA0 P0 FA0 P5 FA0 P10 FA10 P0 FA10 P5 FA10 P10 的性質に与える影響について実験的に検討した。 2.実験概要 断面修復材,および防水材検討用試験体として,そ れぞれの調合条件を表 1,表 2 に示す。断面補修検討 用試験体は,母材コンクリートとして,かぶり 20mm NaCl(5.5kg/m3)を混錬した 100×100×200mm の角柱 試験体の 1 面に,ポリマーセメントを 100mm 打ち継 P/C 0 0.05 0 0.1 0.1 0 0.05 0.45 0.1 FA30 P0 FA30 P5 FA30 P10 位 置 に SD295 鉄 筋 D13 を 配 し , あ ら か じ め W/C 0 0.05 0.1 0.3 表2 防水材の調合 いで,補修後のマクロセル腐食環境を模擬した試験 配合 S0 F0 S30 S10 F20 F30 体とした。また,防水材は厚さ 1 mm のシート状サン プルを作製後,ダンベル 1 号型に抜き出したものを 試験体とした。試験体の形状をまとめて図 1,写真 1 にそれぞれ示す。断面補修検討用試験体は 20oC の研 究室環境下に暴露し,電気抵抗率と,定期的に自然電 100mm 打継部より 100mm の母材コンクリートの位置とし 砂の割合 0 0.3 0.1 0 測定位置 100mm 200mm 100mm 位,分極抵抗,コンクリート抵抗を測定し内部の鉄筋 腐食状態をモニタリングした。モニタリング位置は FA置換率 0 0 0.2 0.3 W/B P/C 0.7 or 1.0 1.5 50mm50mm エポキシ 20mm 母材コンクリート (w/c=55%,塩分5.5Kg含有) ポリマーセメント た。次いで,防水材は「JASS8 防水工事」に準拠し, 単純引張り試験および,繰返し引張り試験により耐 疲労試験を行った。引張り速度 100 mm/min,伸長量 は伸び率 25%相当である 10 mm とした。 40mm 130mm 30mm 100mm 図1 修復材評価試験用供試体概要 10mm 3.試験結果 コンクリートの電気抵抗率と分極抵抗の経時変化 の一例としてポリマー添加率 10%の値について図 2, 図 3 にそれぞれ示す。ポリマーを添加する事で,コ 40mm ンクリートの電気抵抗率は大きくなり,自然電位も 貴な値へとなった。フライアッシュについては,単体 では普通コンクリートと大きな差は見られないが, ポリマーと併用することでポリマー単体の試験体と 同程度か,それ以上の電気抵抗率を示した。現段階で 厚さ 1 mm は測定期間が 42 日と短期であるが,フライアッシュ のポゾラン反応による緻密化等の作用が今後発揮さ れることで,さらに腐食を低減させる方向でと改質 されることが期待される。 引張試験機 ダンベル型 試験体片 写真1 試験体の形状と引張試験状況 ● : FA0 P0 , ○ : FA0 P10 △ : FA10 P10 ■ : FA30 P0, □ : FA30 P10 120 2.5 引張応力(N/mm2) 電気抵抗率 (kΩ ・cm) 140 100 80 60 40 2 1.5 1 0.5 20 0 0 0 7 14 21 28 試験期間 (日) 35 42 0 -0.05 400 600 800 図4 防水材の引張り試験結果 ● : FA0 P0 , ○ : FA0 P10 △ : FA10 P10 ■ : FA30 P0, □ : FA30 P10 0.8 引張応力(N/mm2) -0.07 200 伸び率 (%) 図2 コンクリートの電気抵抗率 分極抵抗 (kΩ /cm2) S0F0 S10 FA 20 FA30 S30 P/C=1.5 W/B=1.0 -0.09 -0.11 -0.13 -0.15 -0.17 1回目伸長 2回目 3回目 P/C=1.5 ヒステリシスロス W/B=1.0 S10 FA20 0.7 0.6 0.5 0.4 除荷 0.3 0.2 0.1 -0.19 0 0 7 14 21 28 35 42 0 2 4 試験期間 (日) 6 8 10 12 伸び量 (mm) 図3 修復材適用後の分極抵抗 図5 防水材の繰り返し疲労試験結果の一例 80 W/B=100%の結果を図 4 に示す。フライアッシュの添加 70 によって若干の引張り強度が増加した。フライアッシ ュ無添加の試験体では,引張り試験時,試験体裏面(型 枠面)にセメントと骨材の沈降の影響と思われるひび 割れが多く生じていた。微小粒子であるフライアッシ ュの添加により材料の均質性が高くなり,このような 効果が発揮されたものと思われる。次いで,繰返し伸長 試験時を行う事で,耐疲労性能について検討を行った。 図 5 に繰返し伸長試験結果の一例を示す。再載荷時に ヒステリシスロス率 (%) 次いで,防水材の引張り試験結果の一例として 60 1回目伸長 2回目 3回目 50 40 30 20 10 0 S30 S10 FA20 FA30 S0 FA0 図6 防水材のヒステリシスロス率 おける残留ひずみと,引張力載荷時から除去・再載荷時での応答の遅れ現象であるヒステリシスが生じた。ポ リマー自体の変形に起因したロスと,脆性材料であるセメントや骨材とポリマーの解離に起因したロスが生じ たもの考えられる。そこで,以下の式(1)を用いて,ヒステリシスロス率を求めた結果を図 6 に示す。 𝐴−𝐵 w=( ) × 100 ・・・式(1) 𝐴 ここで,W: ヒステリシスロス率(%),A : 引張り時の伸長曲線の面積,B: 除荷時の伸長曲線の面積 フライアッシュ添加によって引張り強度は増加したが,繰返し載荷時においてもヒステリシスロス率の増加 は見られない事から,脆性的な破壊挙動を示すこと無く,ある程度の柔軟性を保持している事がうかがえる。 4.まとめ 断面修復用ポリマーセメントにフライアッシュを添加することで,組織が緻密化され電気抵抗率を高め,腐 食環境を緩和する働きがみられた。また,防水材用ポリマーセメントにフライアッシュを添加することで,材 料分離を抑制しポリマーの特性である,しなやかな伸び率を保持しつつ強度は増加した。
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