研究の背景及び目的 我が国の農山村では、多くの地域が消滅の危機に直面する中、地域づくりの一環として、グリーン・ツーリズムが徐々に広まりを見せて いる。本研究では、事例の一つとして宮崎県西都市銀鏡・上揚地区を取り上げる。同地区では平成七年の山村留学制度導入に加え、平 成一六年からグリーン・ツーリズムへの取り組みが開始された。しかし、奥地山間に位置し、過疎化、高齢化が進行する中で、グリーン・ ツーリズム活動は停滞状況にある。ここでは、同地区におけるグリーン・ツーリズムの現状を明らかにし、課題や将来の展望を考察するこ とを目的とする。 実施状況 ●自然に囲まれた民宿 銀鏡・上揚地区概要 ・西都市の中心部から北西に約40km離れた山間に位置する ・ユズ、シイタケを主産業とする ・焼畑、狩猟といった独特な文化を持つ ・銀鏡・神社夜神楽が国指定重要無形文化財に指定 【これまでの地域づくり】 平成4年 平成6年 平成7年 平成16年 平成21年 ●廃校となった小学校 「銀鏡を考える会」設立 「奥日向銀上山村留学実行委員会」設立 山村留学開始 「東米良グリーン・ツーリズム協議会」設立 東米良グリーン・ツーリズム協議会が「西都市 グリーン・ツーリズ ム研究会」に統合 過疎化、高齢化に加え、人的資源の確保が難しく、一部地域住民に負担が集中することから、地域組織の機能は低下、住民は多忙 な生活に追われていた。そのため、山村留学制度の維持は困難になっており、住民は山村留学へ優先的に注力し、グリーン・ツーリ ズムの活動に取り組む余力に乏しい状況であった。 山村留学のおかげで地域内の交流やコミュニティ、外部とのつながりが生まれる。学校が無くなれば地域は無くなる。地域 にとってグリーン・ツーリズムより重要。 地域住民 【グリーン・ツーリズムの展開・農家民宿の実態】 ●地元の食材を使用したおもてなし 銀鏡・上揚地区には農家民宿が3軒あり、宿泊希望者の受け入れは中間支援として西都市商 工観光課観光ツーリズム係が行っている。受け入れ実績は少なく、農家民宿3軒では限界があ り、受け入れ態勢が整っていない状況である。 農家民宿3軒の聞き取り調査から見えた問題点 ●地域資源を活用できていない ●経営資源が異なるため、3者は没連携的 ●担い手、人材の不足 目標の達成度及び成果 今後の課題及び展開 銀鏡・上揚地区では人的資源そのものが縮小し、新たな地域 づくり活動に割く余力の無い限界的な状況の中、受け入れ態勢 の整備や地域資源の有効活用が出来ていないことからグリー ン・ツーリズムが停滞しているという実態が明らかになった。 山村留学に取り組むだけでも精一杯の状況でグリーン・ツーリ ズムに取り組み、これ以上の発展を望むことは地域住民にとって 負担が増すばかりで、あまりにも酷なことであるかもしれない。し かし、地域住民が地域の存続を望む限り力を尽くす価値は十分 にあり、支援組織は、地域住民の思いを汲み取りながら取り組ん でいく必要がある。 ①中間支援組織が雇用を創出 所属:森林緑地環境科学科 名前:椛島真依 対象領域:宮崎県西都市銀鏡・上揚地区 根本的な課題である人的資源の不足を補うため、新規参入者を生み 出し、担い手を確保する。 ②既存施設の利用 農家民宿にこだわらず、小学校廃校の利用によって地域内の連携を しやすくし、受け入れ態勢を拡大する。 ③地域資源の有効活用 農家民宿の個性を活かすこと。また、地域資源を再評価し、メニュー 化することや、外部とのつながりを神楽に活かす。 <問い合わせ先> みやだい COC 推進機構 住所:宮崎市学園木花台西1-1 Tel: 0985-58-7250 E-mail: [email protected]
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