(様式 3)若手研究者支援研究費 平成 27年 4月 27日 琉球大学 学長大城肇殿 所属部局・職教育学部・准教授 氏 名照屋俊明⑫ 平成 26年度研究フ。ロジェクト支援事業(若手研究者支援研究費) 研究実績報告書 このことについて、以下のとおり報告いたします。 ①研究課題 沖縄産海洋生物由来の骨代謝調節分子の探索と作用機序の解明 骨では骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収による骨リモデリングが絶えず 繰り返されており、この骨形成と骨吸収のバランスにより骨の恒常性や血液中カルシウ ム濃度が維持されている。高齢化社会において急速に患者数が増加している骨粗繋症を はじめとする骨疾患は、種々の要因によりこのバランスが崩れて骨吸収が過剰になるこ とにより誘発される。これらの疾患は、直ちに命に影響するものではないが、骨粗繋症 による骨折リスクの増大は、そのまま寝たきりとなるリスクを伴う。したがって国民の 健康や生活の質の向上、ならびに医療費を削減するためにも、骨減少性疾患の予防・治 療対策は重要な課題の一つである。 骨粗繋症の治療薬としてはピスフォスフォネートや選択的エストロゲン受容体調節薬 をはじめとした骨吸収抑制薬が主として用いられており、一定の成果を上げている。し ②研究の概要 かし、その吸収の悪さから服用方法に制限のあるものが多いことに加えて、長期間投与 においては骨折リスクを高めるという報告もある。これらの状況から、望ましくは経口 投与可能な低分子化合物で、新たな作用機序に基づいて骨吸収を抑制する、あるいは骨 形成を促進する骨代謝改善剤の開発が求められている。 申請者はこれまでの破骨細胞を標的とした低分子化合物の探索で、既存の骨吸収抑制 薬とは異なる作用機序に基づいて骨吸収を抑制すると考えられる b i s e l y n g b y a s i d eを 、 また骨芽細胞を標的とした低分子化合物の探索では、骨芽細胞の分化促進物質として 一 o i ca c i dを単離しており、沖縄産海洋生物から、さらなる骨代謝を調節する 1 4 d i e n 1 9 低分子化合物の単離や作用機序の解明が期待できる。 本研究では沖縄産海洋生物から骨代謝を調節する低分子化合物を探索し、その作用機 序を明らかにすることが目的である。 1/3 ③研究成果の概要 回 n iasp.の抽出物が破骨細胞の分化を抑制する効果 沖縄県宜野湾市付近の海岸で採集した海洋ラン藻 Ok を示したことから、抽出物に含まれる成分の分離を試みた。各種クロマトグラフィーを用いて分離、精製を 進めたところ、破骨細胞の初期分化阻害物質として Okeaniasp. 1 . 0kg ,2 ) 。得られた化合物 新規化合物 Bを単離した(図 1 抽出 ( メタノール) Bについては 2次元 NMR、マススベクトルなどの各種 温過 濃縮 スベクトルの詳細な解析により平面構造を決定し メタノール抽出物 た。化合物 Bの絶対立体配置については、新モ ッシ 団 押 印 川) ャ一法により決定する予定である。 さらに、化合物 Bの構造類縁体である化合物 Aを単離し、絶対立体 水層 酢酸工チル層 配置を、 Marfey法により決定した。化合物 B得られ ヘ キ サ し 層 た量が少ないことから、絶対立体配置決定後に破骨 L 「 90%メタノール層 ODScolumn[ メタノール/水] HPLC[ODS5C18-AR-ll,メタノール/水l HPLC[ C h o l e s t e r, アセ卜二トリル/水] 細胞に対する作用を調べる予定である。また骨芽細 胞 に作用する低分子化合物については、石垣島で採 集した未同定ホヤ由来の放線菌から、骨芽細胞の初 化合物A 期分化マーカー酵素であるアノレカリ性ホスファター L P)活性を上昇させる化合物を単離じている。 ゼ(A 刊. 6mg 化合物B 3 8. 3mg 図1 化合物A,Bの分離スキーム さらに 2種類の海洋生物の抽出物が骨芽細胞の分化 促進活性を示すことを見出した(図 2)。 破骨細胞の分化阻害物質 未同定ラン藻から単離 (新規化合物と推定。構造未決定) ぞ〉 骨芽細胞の分化促進物質 1 . 放線菌から単離 (構造未決定) 2 . 2 種の抽出物中に含ま 図 2 骨のリモデリングと沖縄産海洋生物由来の骨代謝調節物質 れることを見出している ④研究成果の公表、あるいはその準備状況 得られた化合物については追加の実験を行っており 、それが終了 してから天然物化学系の雑誌への投稿な らびに学会発表を予定している。 2/3 ⑤科学研究費等の申請に向けた準備状況 本研究で得られた研究成果を基盤として平成 27年度科学研究費助成事業に応募し、平成 27年∼ 29年:科 研費基盤研究(C)代表「沖縄産海洋生物由来の骨代謝調節分子の探索と作用機序の解明」 総 額 468万円 (予定)を獲得した。 ⑤ 今 後 の研究の展開、展望 本プロジェクトの目的は沖縄産海洋生物に含まれる骨代謝調節分子の探索であり、骨疾患の原因である破 骨細胞や骨芽細胞の機能及び生存機構に関する学術的基礎研究に有用な新知見が得られるだけでなく、骨形 成促進剤、骨吸収抑制剤の標的となりえる分子に関する情報が得られ、新たな骨吸収抑制剤や骨形成促進剤 の探索手段を提供すると考えられる。また、高齢化 社会の中で患者数が急速に増加している骨粗繋症をはじ めとする骨疾患は、高齢化が進む 21世紀に大きな社会問題となっており、骨疾患の予防、治療薬の開発はま すます重要になると考えられる。 沖 縄 産 ラ ン 藻 ほe a n i asp.から単離した新規破骨細胞初期分化阻害物質については、中部大学の米津助教 と連携し作用機序の解析を行いたいと考えている。 さらに、骨芽細胞の分化を促進する化合物については、 抽出物から化合物を同定し、作用機序の解析を行う予定である。 また、動物での有効性の検討や、遺伝学的 なアプローチ、については医学部、理学部、熱帯生物圏研究センタ 一 、 沖縄高専等と連携し開発を進め、大 型予算を申請につなげたいと考えている。 |沖縄産海洋生物 〉 骨代謝調節物〉 作用機序の解析> 海洋生物 化合物探索 分子、細胞レベル (採集) 構造解析 個体レベル 理学部、 教育学部 仁 こ 〉 理学部、 教育学部 ーな一一 と = 〉 医学部、中部大学、 熱帯生物園研究 センタ一、沖縄高専、 *上記について、概ね 4ページ程度にまとめてください。また、別途関連する資料類(論文別刷など)が あれば添付してください。 ⑦実支出額の使用内訳 合計 1 , 4 0 0 , 0 0 0円 物品費 旅費 1 , 4 0 0 , 0 0 0円 0円 3/3 その他 謝金等 0円 0円
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