2015年 6月号:地域歯科診療所と歯科口腔保健法の関わりとは?

質問 平成23年に「歯科口腔保健の推
進に関する法律」が制定されました.最
地域歯科診療所と
歯科口腔保健法の関わりとは?
近ではあまり耳にしなくなったようにも
思いますが,条文を読むと「歯科医師等
の責務」という規定があり,国や地方公
共団体の施策に歯科医師が協力すること
が求められてもいます.これは私たちの
ように地域で開業している歯科医院と,
社会歯科学研究会
埼玉県保健医療部健康長寿課
遠藤浩正
え ん ど う ひ ろ ま さ
どのような関わりがあるのでしょうか?
同法(歯科口腔保健法)は,歯科
歯科技工士等の歯科医療等業務に従
特に(3)は,歯科業務従事者が
疾患の予防等による口腔の健康保持
事する者に対しては,歯科口腔保健
それぞれに重く,深く受け止めるべ
(歯科口腔保健)の推進に関して,
①
(歯の機能の回復によるものを含
きことだと思っています.
①基本理念を定め,②国や地方公共
む)に資するよう,歯科医療業務に
それに加えて国や自治体が行う歯
団体の責務を明らかにし,③歯科口
関連する②医師等との連携,③適切に
科口腔保健に関する施策への協力が
腔保健の推進に関する施策の基本的
その業務を行うとともに,④ 国や地
求められていますが,私は,例えば
事項を定めることを目的に制定され
方公共団体が行う施策に協力するこ
市町村が行う乳幼児健診や成人歯科
た法律です(第1条)
.
とを,求めています.
検診において,あるいは学校歯科医
第1条の中で,口腔の健康の意義
ここで注意すべきは下線部①です.
の職務において,それぞれに求めら
を「国民が健康で質の高い生活を営
この法律では「歯科口腔保健」を
れている役割を誠実に果たす,とい
む上で基礎的かつ重要な役割を果た
「歯科疾患の予防等による口腔の健
うことが,この法の主旨なのではな
している」と明記した上で,国民に
康の保持」と規定しており,予防に
いかと思います.
対しては
ウェイトを置いた定義と考えられま
こう書くと,大げさに聞こえてし
・歯科口腔保健に関する正しい知識
す.しかし第4条では「歯の機能の
まうかもしれませんが,歯科医師法
回復」を加えることにより,予防に
第1条を思い起こしてください.
「歯
加えて歯科医療の概念も付加したも
科医師は,歯科医療及び保健指導を
のと考えられます.また下線部②で
掌ることによつて,公衆衛生の向上
・定期的に歯科検診を受け,必要に
は医科や福祉,介護等との連携を図
及び増進に寄与し,もつて国民の健
応じて歯科保健指導を受けること
ることが示され,その上で「適切に
康な生活を確保するものとする」と
により歯科口腔保健に努めるよう求
その業務を行う」ことが責務とされ
あります.今こそ,この実践を歯科
めていることが特徴と言えるでしょ
ているのです.つまり
口腔保健法第4条を通して求められ
う(第6条).
(1)歯科保健および歯科医療を
ているのではないでしょうか.
■歯科医療従事者の責務
(2)医師等との連携を図りながら
*
では,国民の歯科口腔保健を守る
(3)歯科医師,歯科衛生士および
詳しくはヒョーロン社刊『歯科
上で,最前線に立つ歯科医師等の責
歯科技工士がその本分を適切
五法コンメンタール』の207 ~ 210
務とはどんなものなのでしょうか.
に行う
頁をご参照ください.
を持つこと
・生涯にわたり自らが歯科疾患の予
防に向けた取組を行うこと
第4条では,歯科医師,歯科衛生士,
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THE NIPPON
ことが求められているのです.
Dental Review
Vol.75 No.6(2015 -6)