残薬問題と多職種連携~石川県薬剤師会のいーじーバックを用いて~ 石川県 瑠璃光薬局 ○齊藤 みほ、後藤万輝、佐藤里美、飯室千春、中谷隆正 【目的】近年残薬問題が大きく捉えられている。推定 450 億円と言われている残薬についてのマス メディアの報道は、世間に多大な影響を及ぼしていると言えよう。しかし残薬問題は最近発生した 事象ではなく、以前からあった医療問題なのである。残薬になってしまう背景としては、患者側、 薬剤師側、医師側と複雑な理由が絡む。特に残薬は患者にとっては精神的・心理的な感情が絡むた め、調剤薬局内では中々発覚しにくい。私たち医療人が患者宅に訪問・配達に行き始めると大量の 残薬に出会う。今回我々は多職種連携が良好になっている地域に対して、石川県薬剤師会が作成し た「いーじーバック」を用いて、薬局薬剤師として残薬問題に取組む事にした。 【方法】宝達志水町及びその近隣の医療機関に所属しているケアマネジャーないし訪問看護師に、 服薬アドヒアランスが低下している患者に対して、自局が作成した残薬の取り扱いについてのチラ シと石川県薬剤師会が作成した「いーじーバック」をセットにしたものを配付してもらうよう依頼 した。その後、残薬に困っている患者の存在について報告を受け、残薬になってしまう背景につい て薬剤師とケアマネジャーまたは訪問看護師と話し合いの場を設けた。その結果、患者の意思を尊 重しながら、患者または家族に対して服薬方法の再確認や薬の使い方を、薬局または患者宅にて残 薬処理および服薬支援を行った。 【結果】ケアマネジャーまたは訪問看護師の連絡により、薬剤師が訪問に行ってない患者の残薬の 解消をおこなうことが出来た。何故残薬になってしまうのかを解明することにより、根本的にある 服薬アドヒアランス低下の原因を解消した。投薬が本来あるべき治療効果を発揮出来るようにした。 残薬調整および服薬支援指導を行うことにより、薬のアドヒアランスはかなり向上し、血圧は 156/78→135/70、179/87→121/77 と安定している。かなりの数が残っていたビスホスホネート製剤 に関しても服薬支援を行うことにより確実に服薬出来るようになった。そのほかインスリンの低血 糖症状が度々起こっていた患者に対して、インスリンの適正使用指導および医療機関に情報提供す る事によって副作用も回避できている。 【考察】調剤薬局や病院などの医療機関では、患者に申告された残薬解消を行っている。残薬解消 の経済効果は大きいと言えよう。今現在の残薬解消するだけでは、今後の患者服薬アドヒアランス の向上に繋がるとは限らない。残薬がある患者の背景にある原因・理由を解消しなければ、継続的 に繰り返し残薬になってしまう。それは多くの薬局・医療機関が経験している現実である。残薬に なる理由を薬剤師は一つずつ解明する必要がある。残薬問題は患者にだけ理由・原因がある訳では ない。残薬になってしまう理由を患者インタビューを通して、丁寧にその手技を怠っては、やはり 同じような残薬になってしまう。薬を有効にかつ安全に使ってもらうため、我々薬剤師はその職能 をもって、真の服薬アドヒアランス向上のための残薬処理を行わなければならない。薬剤師の在宅 医療の参画が積極的なものとなり、多職種連携の意義が成立し、患者中心の在宅医療がより成熟さ れたものになると考えられる。
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