2014(平成26)年度 比治山大学・比治山大学短期大学部 入学式式辞

平成26年度入学式式辞
比治山大学の正門をくぐり、坂道にかかるところの桜の木が満開の花を咲かせて皆さんを歓迎
していますし、左手にみえる太田川の碧き清き流れも祝福しています。今日ここに、ご来賓の皆
様方のご臨席を仰ぎ、また多数のご家族の皆様方のご参列をいただき、平成26年度(2014
年度)入学式を実施し、合計692名の新入生を本学にお迎えできますことは私ども教職員にと
って誠に喜ばしいことです。ご多用のなか、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様には厚くお礼申し
上げます。
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。本学を選んでいただきありがとうございまし
た。本学の教職員を代表して、心より歓迎したいと思います。またご家族の皆様のお喜びもひと
しおかと拝察し、心よりお祝い申し上げます。会場の都合で別室にてご参列いただいているご家
族の方もおられるかと思いますが、何卒、お許しください。
本年度は本学にとっても画期的な年であり、更なる飛躍を図る年でもあります。それは現代文
化学部と並んで健康栄養学部管理栄養学科を開設し、管理栄養士を志す第一期生を受け入れたこ
とであります。比治山女子短期大学からスタートし、比治山大学現代文化学部を開設し、そして
男女共学化を図るなど、地域に求められる大学として発展し続けていますが、その歴史に健康保
健分野の人材養成の第一歩を刻む画期的な年であります。大学として気持ちを新たにし、社会の
期待に応えるべくしっかり取り組んでいく所存であります。
さて新入生をお迎えするにあたって、今年はどうしてもお話しないといけないことがあります。
それは皆さんもよくご承知の日本のトップの研究者が集まっている理化学研究所の研究チームに
よる「STAP細胞,新万能細胞の発見」に係る一連の問題であります。最終的に全てが解明さ
れているわけではありませんのでその発見がどうとか言える段階にはありませんが、報道される
中で少なくとも大学として一番気になるところは、研究者が他の人の文章などをきちんと出典を
明記し、引用であることを示すことなく、そのままコピーしてあたかも自分の考え・文章である
かのごとく論文を執筆してしまったという許されない行為です。これは研究における大きな不正
事件であり、研究者の倫理に係る重大問題です。大学は研究を行う学問の府であり、多くの研究
者が新たな知見を得るべく日々寝食を忘れて努力している場です。学生も含めた大学人は、その
意味で、たとえ厳しい競争をしているからと言って、そのプレッシャーに負け、他人のものを剽
窃したり、無断で借用したりすることは決してしてはならないことです。大学生になると、レポ
ートや論文を執筆する機会も非常に増えることになります。その際、インターネットからコピー
して貼り付けるといった「コピペ」といわれる不正を行ってはいけません。適切にルールにのっ
とって、引用すれば許されるわけですから、他人の考えや文章と自分のそれとを明確に区別しな
がら、論ずるという姿勢が求められます。大学で学んだり、研究したりする人々の倫理です。本
学も改めてその点を重視し、皆さんが決して間違った「罠」に陥らないようにしたいと思います。
現代社会がその不確実性を増大させ、変化のスピードを増し、技術革新を進め、グローバル化
し、情報化・知識基盤化するに伴い、また労働市場の急激な変化に伴い、学校で勉強が終わる時
代は去って、会社で働いている時でも、退職した後でも、人は生涯にわたって学ぶ時代に生きて
いるといわれています。いわゆる生涯学習社会であります。ユネスコの報告書『秘められた宝』
によると学びの意味は次の4つにあるといいます。
1 知るために学ぶ。知識や教養を身につけるための学びです。
2 何かをするために学ぶ。仕事をするための学びに加えて、様々な状況に対応して生きていけ
る力を身につけるための学びです。知識を活かす学びでもあります。
3 共にいきるために学ぶ。人々が思いやりをもって、相互に理解し、助け合い、コンフリクト
(争い)を解決し、共生するための学びです。東日大震災で多くの日本人が学んだ「絆」の大
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切さ、地球的規模で拡大する環境問題、エネルギー問題、食糧問題など持続可能な社会の構築
の重要さ、などを考えると、
「共に生きるために学ぶ」という意味を深く理解できると思います。
4 “Learning to be” 明日の自分のために学ぶ。自分であり続けるために学ぶ。自分の能力を
発見し、磨き、自己実現を図るための学びです。自分で自分の人生を創成するための学びこそ
が最も重要な学びの意味だと教えています。
比治山大学は、皆さんを「生涯にわたって学び続けることができる人」に育てます。本学では、
才能、個性、自分らしさ、心優しい自分、社会に役立ちたい自分、天職(キャリア)などひとり
一人の「秘められている宝」を「学び」を通じて探せるように支援します。
ご案内のとおり、比治山学園は、昭和14年に広島文理科大学・広島高等師範学校の教育実習
校(高等女学校)としてその歴史の歩みを始め、本学は、昭和41年に比治山女子短期大学とし
てスタートし、その後四年制大学、大学院と発展し、今後も発展を続ける大学ですが、その建学
の精神は第三代校長国信玉三氏の教育理念であった「悠久不滅の生命の理想に向かって精進する」
という精神・理念にあります。つまり、
“人間の生命の尊厳性と永続性を基底として、現在を生き
る私たち人間の生命は、久遠の過去から連綿と現在に至っていることに感謝し、これを未来永劫
に向上発展させるべく、現在を精一杯いきるように精進する人間を育てたいという願いを表すも
のです。
”これまでの生命の歴史に思いをはせながら、今を生きている私たちの人間性を磨き、個
性を輝かせ、そして「自己実現」を図っていくことにあると思います。そのためには、ひとり一
人の学生を大切にし、確かな知力を身につけ、
「絆」を大切にできる豊かな人間力を高め、自らの
人生を切り開き、創成していく柔軟で挑戦できる力を育てるという精神です。本学は豊かな教養
と高度な専門性に裏打ちされた生涯学習力を基盤とする就業力を保証します。
大きな夢と希望を持って入学してきた皆さんを失望させることはありません。その夢が実現す
るようしっかりと支援し、応援し、指導してまいります。皆さんも途中で諦めることなく、最後
まで頑張ってください。大学生活はもちろん勉強だけではありません。多彩なクラブ活動もあり
ますし、大学の外には多様なボランティア活動の機会もあります。友人と一緒にそうした正課外
の活動も楽しみ、大学生活が充実した有意義なものとなるよう頑張ってください。その間にあっ
ていろいろな問題や困難に遭遇すると思いますが、その際決してひとりで問題を抱え込まないで
ください。今の現実はひとりで解決するにはあまりにも困難で厳しい状況です。大学を信頼し、
安心して相談してください。
それでは最後になりましたが、これから始まる新しい大学生活が希望に満ちた未来につながる
ことを祈念し、またご多用の中ご参列いただきましたご家族の皆様には、本学の教育に格別のご
理解とご支援を賜りますようお願い申し上げ、式辞とします。
平成26年(2014年)4月2日
比治山大学・比治山大学短期大学部
学長 二宮 皓
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