Annual Report No.29 2015 ダイヤモンドパワートランジスタ 現在の状況と未来の展望 Diamond Power Transistors- Present Status and Future Prospects H26海自15 派遣先 2014年米国材料科学会 秋季学会 期 間 平成26年11月29日~平成26年12月8日(11日間) 申請者 佐賀大学 大学院工学系研究科 教授 嘉 数 誠 2.発表の概要 海外における研究活動状況 (1) “Diamond Power Transistors- Present Status and Future Prospects” (招待講演) 研究目的 社会においては電力エネルギーの有効利用 Makoto Kasu に、インバーターやパワーコンディショナー 社会においては電力エネルギーの有効利用 等の大電力化、電力変換において発生するエ に、インバーターの大電力化やパワーコンディ ネルギー損失の低減化が強く求められている。 ショナー等の電力変換において発生するエネル ダイヤモンド半導体は高い耐電圧と高いキャリ ギー損失の低減化が強く求められている。ダ ア速度を兼ね備えているため、このような社会 イヤモンド半導体は高い耐電圧と高いキャリア の要求を満たすパワー素子が実現できる。 速度を兼ね備え、上記の社会からの技術への 要求を満たすことができるパワー素子になる。 海外における研究活動報告 最近、申請者は、①ドーピング技術、②パッ 1.会議の概要 シベーション技術、③単結晶成長技術の要素 Materials Research Societyは、会員数16,000 技術を開発し、ダイヤモンド素子の実用水準 人を有する世界でも最大規模の学会であり、 の動作を実証した。招待講演では、これらの 半導体をはじめ、酸化物、有機物の材料の創 要素技術の実験結果と物理的な考察を詳細に 成から物性、応用まで、広範囲にカバーする 説明すると共に、パワー素子におけるダイヤモ 材料科学分野の学会である。春、秋に開催さ ンドの位置づけ、今後の課題、可能性を議論 れる会議は、50以上のパラレルセッションが開 し、総合的なレビューを行った。 催され、世界中の研究者が集う、最高水準の (2) “Synchrotron X-ray Topography Observation 国際会議である。 Materials Research Society(MRS)より2014 MRS Fall Meetingから招待を受け、 ”Diamond of β-Ga2O3 Single Crystals”, M. Kasu, S. Masuya, R. Murakami, A. Power Transistors- Present Status and Future Kuramata, K. Koshi Prospects” 、 (ダイヤモンド パワートランジスタ β-Ga2 O3 はワイドギャップ半導体で、最近高 ―現状と将来の可能性)と題する講演を行っ 品質結晶が育成できるようになり、パワーデバ た。また2件の一般講演もあわせて 行った。 イス材料として期待されている。本講演では、 ─ 400 ─ The Murata Science Foundation β-Ga2O3単結晶中の結晶欠陥を、シンクロト 圧合成ダイヤモンドの結晶欠陥生成機構の ロン放射光を用いたX線トポグラフィーで観察 違いに関する質問を受けた。欠陥の分布、 し、結晶欠陥がa方向とc方向に延伸している 密度は大きく異なるが、低転位密度の転位 ことを明らかにした。 の特性を明らかにすることで、段階的に、 ダイヤ結晶中の欠陥の生成機構を解明して いく意義を強調した。 (3) “Synchrotron X-ray Topography Observation of HPHT and CVD Diamond Single Crystals”, M. Kasu, R. Murakami, S. Masuya, K. 4.その他感想、今後の抱負 Harada, and H. Sumiya MRSでは、米国の研究者がダイヤモンド、 最近、極めて低欠陥密度の高温高圧合成の 酸化物、窒化物半導体においても、意外に基 ダイヤモンド単結晶が得られるようになったが、 礎的な分野にも精力的に研究を行っているこ その結晶をシンクロトロン放射光を用いたX線 とに強い印象を受けた。 トポグラフィー観察し、転位の特性を調べた。 申請者らの研究成果は、特異な物理現象の 具体的には、様々なgベクトルで観察し、その 発見を含んでおり、このような基礎的な知見は、 結果を解析することにより、転位のバーガーズ 他の炭素材料、酸化物にも適用できる可能性 ベクトルを決定し、転位の種類を特定すること がある。MRSでは、広範囲な分野の材料科学 ができた。 者と研究成果について議論を深めることがで き、今後、研究成果が他分野に波及すること を期待している。 3.発表に対する反応 (1)今回のMRSからの招待講演は、申請者の 申請者は、企業から大学に赴任して3年で、 研究成果が、米国をはじめ世界的に認知さ 研究室の立ち上げ中であり、MRSからの招待講 れる絶好の機会となった。MRSにはRobert 演は全くの想定外であったが、本研究助成で講 Nemanich教授などの米国を代表する研究 演を行うことができ、心より感謝しております。 者が参加し、これらの研究者と議論をし、 お陰様で、MRSでは、他の2件の研究成果も一 今後の研究の方向性についてアドバイスを 般講演として、発表することができ、多くの研 頂くことができた。発表に関して、測定方 究者と議論する機会も得ることができました。 法に関する質問を受けた。またR.Nemanich この派遣の研究成果等を発表した 教授から、吸着分子がヘテロ接合形成後、 どのような形態を取っているのか、その形 態でのホール注入の機構はどう説明するか という質問を受けた。これは重要な指摘で あり、今後の研究課題としたい。 著書、論文、報告書の書名・講演題目 “Diamond Power Transistors- Present Status and Future Prospects” (招待講演) Makoto Kasu 最近、申請者は、①ドーピング技術、②パッシベー ション技術、③単結晶成長技術の要素技術を開発 (2)β-Ga2O3の転位密度に関する質問を受け、 し、ダイヤモンド素子の実用水準の動作を実証した。 招待講演では、これらの要素技術の実験結果と物理 低い転位密度に対し、高い評価を受けるこ 的な考察を詳細に説明すると共に、パワー素子にお とができた。 けるダイヤモンドの位置づけ、今後の課題、可能性 (3)質疑応答では、CVDダイヤモンドと高温高 を議論し、総合的なレビューを行った。 ─ 401 ─
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