バイオテクノロジーのGSCへの寄与 Contribution of

S5-1
バイオテクノロジーのGSCへの寄与
Contribution of Biotechnology for the Development of GSC
五十嵐
泰夫
Igarashi Yasuo, Department of Biotechnology, The University of
113-865 東京都文京区弥生一丁目 1-1, 東京大学大学院農学生命科学研究科
Tel:03-5841-5142, Fax:03-5841-5272, E-mail:[email protected]
Biomass as a new substrate for Green & Sustainable Chemistry (GSC) attracts much attention by many researchers
in these days. Biotechnology is a suitable technology to convert biomass materials to valuable chemicals/fuels
because of many reasons. New concepts or methods are indispensable to realize the biomass bioconversion.
Development of a new biotechnological method to convert lignocellulose materials to useful chemicals/fuels
effectively is one of the essential technologies we have to develop. Utilization of a microbial community instead of an
isolated strain is believed to be a promising way to overcome this problem.
現在、日本人は一人あたり一年間に約17トン
の実現はあり得ない。第2点は「バイオマス日本」
の資源を消費し、約10トンの生産物を生み出し
から「バイオマスアジア」への政策の変換である。
ている。この他に約4トンの廃棄物と9トンを越
我が国には有機性廃棄物以外にこれといったバ
える炭酸ガスを排出している。現在使われている
イオマス資源が無い。未利用バイオマス資源が豊
資源の大部分は石油などの化石資源であり、その
富なアジア諸国との技術協力、経済協力等によっ
有限性や社会構造の持続性から考えて、太陽エネ
て、我が国および近隣諸国の繁栄と安定を図るこ
ルギー等による炭酸ガスからの再生産の可能な
とが重要と考える。第3は「糖質」から「繊維質」
バイオマスの利用が、今後より積極的に図られて
への原料の変換である。米国や南アメリカでは、
行くべきと考える。
コーンスターチやケーンシュガーが化成品/燃料
バイオマス変換によるGSCにはバイオテクノ
物質生産の原料として利用されているようであ
ロジーの利用はほぼ必須と考えられる。それは、
るが、人口が多くまた今後も増え続けることが予
バイオテクノロジーが、(1)常温・常圧で行わ
想されるアジアでは、非可食部を利用することを
れる、(2)触媒である酵素が、費用に応じて生
考えるべきである。バイオマス中最も多量に存在
産され、また分解される、といった低環境負荷型
する成分はリグノセルロースであり、特にブドウ
技術であるという理由だけでなく、(3)基本的
糖を主成分とするセルロース/ヘミセルロース成
に、地域性が高く、小型に適した技術であり、バ
分の有効利用が図られるべきである。
イオマス利用に向いている、(4)バイオマスの
セルロースのバイオテクノロジーによる有効
主成分である糖の分解・変換に最も適した技術で
利用は、以前から試みられてきたが、あまり成功
ある、等の理由にもよる。
していない。演者らは、単一の微生物の変わりに
上記のように、バイオマスを利用したバイオテ
集団としての微生物の機能を利用することを試
クノロジー/GSCは今後発展が期待できる技術
みている。本講演では、バイオマス・バイオテク
分野であるが、それを推進するにあたっては、新
ノロジー技術を概観した後、演者らの「微生物集
たな発想や技術の導入が必要となってくる。
団機能の利用」したバイオマス利用に関する研究
その第1は「廃棄物処理」から「有用物質変換」
への発想の転換である。これなしにはGSC社会
を紹介したい。