事業、組織、人の視点から事業活動を行い お客さま

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トップメッセージ
事業、組織、人の視点から事業活動を行い
お客さまや社会へ継続的に価値を
提供していきます。
執行役社長
Annual Report 2015
トップメッセージ
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Q1 中期経営計画(2013 〜 2015 年度)の中間年度である
2014 年度の業績の振り返りをお願いします。
中期経営計画では、2015 年度に「売上高 6,000 億円、営業利益率 10%超」
をめざし
ています。その中間点である2014 年度は、売上高 5,250 億円、営業利益率 7%を目標
として、さまざまな施策を実行してきました。
具体的には、半導体の実装材料分野で、2014 年 6 月にオープン・ラボをスタートさせ
ました。お客さまや装置メーカーとともに新しい実装材料・プロセスを効率的に開発して
いくビジネスモデルを確立させることができたと評価しています。また、蓄電デバイス事
業の拡大とグローバル展開の加速につなげるため、2015 年 1 月に台湾神戸電池股份有
限公司を連結子会社化したほか、2015 年 4 月に米国とタイにて地域統括会社を発足さ
せ、それぞれの地域における市場の変化に迅速に対応できる体制構築を進めました。一
方では、グローバルでのいっそうの成長をめざした構造改革の一環として、国内で早期
退職を募り、経営体質の強化に取り組みました。
業績の推移
これらの 施 策 を 実 施した 結 果、売 上 高 は
5,340 億円(前年度比 8.1%増)
、営業利益は
351 億円(前年度比 26.5%増)
となり、前年
度に引き続き増収増益を達成することができ
*
売上高(売上収益)
営業利益
4,647
(億円)
4,938
5,340
5,251
4,887
ました。営業利益率は 6.6%と目標値には届
きませんでした。その主な要因としては、新
たことや、構造改革による固定費削減の効果
2012
が一部 2015 年度に持ち越されたことが挙げ
られます。
2013
366
351
278
236
製品開発の立ち上げのスピードが不十分だっ
2014
292
2013
日本基準
2014 (年度)
IFRS
*() 内は IFRS に準じた表記
関連情報 P.15-18、P.27-28
中期経営計画の基本方針と戦略
基本方針
ハイエンド分野での材料技術による製品差別化と
グローバル展開による増収増益の必達
構造改革による体質強化
成長戦略
■ 事業戦略
高機能材料事業
収益ドライバーとして、ハイエンド分野での材料技術による製品差別化と
海外での製品展開による高収益体質の維持・向上
自動車部品事業
グローバルサプライヤーをめざし、
海外生産拡大による収益性改善
海外販路拡大、
次世代製品開発の加速
蓄電デバイス事業
将来の主力事業として、グローバル成長加速
2016 年度以降の本格成長に向けた磐石な事業基盤の確立
ライフサイエンス
関連事業
将来の基盤事業として、
診断領域を中心に実績拡大
新事業分野の探索
■ 研究開発戦略:新事業の創生に資する研究ポートフォリオへの変革
■ 投 資 戦 略:収益に直結する投資テーマ厳選(投資管理指標として ROIC 導入)
コスト構造改革
事業構造と業務構造の両面からの変革実行
Annual Report 2015
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トップメッセージ
Q2最終年度となる2015 年度の取り組みと
業績の見通しをお聞かせください。
2015 年度は、中期経営計画の仕上げとして、グローバルでのいっそうの成長に向け、
これまで実施してきた諸施策の成果を確実に刈り取るとともに、マーケットの変化に機敏
に対応できる柔軟な経営基盤を構築するための取り組みを引き続き実行していきます。
2015 年度の業績予想(IFRS)
としては、売上収益 5,700 億円、営業利益 550 億円を
見込んでいますが、M&A などの不確実性の高い要素は予想値から除いていますので、
実力的には中期経営計画の目標値である「売上高 6,000 億円、営業利益率 10% 超」
を
狙える位置にいると考えています。
Q3グローバルな事業展開の進捗はいかがですか?
グローバル化は著しく進展しています。2013 年度には海外売上高比率が 50%を超
え、2015 年 3 月末には海外の従業員比率も初めて 50%を超えました。これは、今まで
進めてきた海外事業への積極投資や M&A の成果の表れです。
当社グループの本格的な海外展開の第一次は 1990 年前後で、
日系の半導体メーカー
やプリント配線板メーカーの海外進出に合わせ、半導体用封止材やプリント配線板用感
光性フィルムの生産拠点を設置しました。第二次としては、自動車メーカーが中国や東南
アジア諸国において事業展開を本格化させる中、当社も自動車部品のグローバルサプラ
イヤーとなるべく、これらの地域に生産拠点を建設してきました。
これから進めていく第三次では、拡充してきたエレクトロニクス関連製品や自動車部品
の海外工場を活用して、それぞれの地域の特性や需要に応じた製品をつくり、さらに成果
を上げていくことを考えています。この一環として、2015 年 4 月にタイの連結子会社 4 社
(製造 3 社、販売 1 社)
を統合し、従来は各社が個別に展開してきた各種電池、粉末冶金
製品、ブレーキ用ディスクパッドの製造・販売を1社に集約しました。これによって、人財や
生産技術の相互融通、マーケット情報の共有化などを行い、経営の効率化をめざします。
関連情報 P.27-28
Q4蓄電デバイス事業を第 3 の基幹事業へ
成長させる理由をお聞かせください。
電池やキャパシタの性能は、それを構成する正極材、負極材、電解質、セパレータと
いう4 つの主要部材をいかに相性良く組み合わせるかによって決まります。そのため、
蓄電デバイス事業は、材料事業の延長線上にあり、これまで培ってきた材料技術をフル
に活用することができる分野と考えています。
蓄電デバイス事業を、機能材料事業や自動車部品事業と並ぶ中核事業へ育成するた
め、2012 年に蓄電デバイス事業に長い歴史を持つ新神戸電機株式会社を完全子会社
化しました。
また、新神戸電機を完全子会社化した理由の一つでもありますが、当社の蓄電デバイ
ス事業は、これまで海外展開が遅れていましたので、もっと海外で我々の技術力を試し
てみたいとの想いもあります。どこまで通用するかは、蓄積してきた技術を海外へどう展
開していくかということと、いかに強力な販売ルートを確保するかということが重要なポ
イントです。この一環として、2014 年度には、新神戸電機の関連会社であった台湾神戸
電池股份有限公司の株式を買い取り、当社の連結子会社としました。2015 年度は、新
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たに当社グループの一員となった同社に対し、できるだけ速やかに私たちの経営理念で
ある日立化成グループ・アイデンティティを浸透させるとともに、ガバナンスの一体化を
図り、蓄電デバイス事業を世界へ大きく飛躍させていきたいと考えています。
関連情報 P.28
蓄電デバイス事業における実績と今後のアクション
自動車用電池
産業用電池
次世代鉛蓄電池の開発と
顧客・販路拡充により成長を加速
第 3 の基幹事業創生を
計画的に推進
進捗状況
●
グローバルポジションの強化
●
ISS 用比率向上
▶ アライアンスによる
顧客・販路拡充
ISS・高回生
その他
▶ アイドリングストップ
システム
(ISS)
車向けを中心とした
次世代鉛蓄電池の開発
(高容量化技術による新製品を発売)
●
●
台湾神戸電池の連結子会社化
成長が期待できる電力貯蔵用途市場向けに
実証実験を積極的に獲得
2014 年度の獲得案件(1 件あたり 3 億円以上)
25% 28% 33%
2012 2013 2014
(年度)
用途・目的
電力系統安定化
変動抑制
件数
製品
リチウムイオン電池(LIB)
2件
4件
1件
ハイブリッド
リチウムイオンキャパシタ(LIC)
2015 年度の施策
●
グローバルポジションの強化
▶M&A、
アライアンスによる顧客・販路拡充
▶ISS 車向けを中心とした次世代鉛蓄電池の開発
●
●
台湾神戸電池とのシナジーによるグローバル展開加速
電力貯蔵用途市場向けに、大型実証案件獲得、
実績の積み上げ
▶システム会社
(日立グループなど)
との連携強化
高耐久性技術
電解液の濃度を制御し、電極の劣化現象
(成層化)を抑制→耐久性を向上
▶4 つの蓄電デバイス
(鉛蓄電池、
LIB、LIC、コンデンサ)を
組み合わせたソリューションの提供
●
LIB 新製品開発
▶高入出力、
高サイクル寿命の製品完成、アンシラリー応答性確保
Q5次の 50 年を見据えて定めた
「日立化成グループ・ビジョン」
は浸透してきていますか?
当社グループの事業は B to Bビジネスを中心としています。お客さまとの対話を通じ
てニーズに的確にお応えできる製品をつくりだす技術開発力を有しており、それが当社
グループの強みであると捉えています。
しかし、今後はそれだけでは不十分で、未だ顕在化していないお客さまのニーズや社
会的課題をいち早く見出し、自社の技術や製品で解決策を提案していくというプロアク
ティブな活動が求められています。
そこで、2014 年度から日立化成グループの未来を創る取り組みとして WOW-BB
(Working On Wonders Beyond Boundaries)
活動をスタートさせました。活動の
主軸になるのは、WOW グローバルアワードというボトムアップ活動です。WOW グロー
バルアワードは、チームごとに、①ニーズを見出す力を持つ、②未来のシナリオを描く、
③次のコア技術を生み出す、④グローバルで選ばれる企業になる、⑤共創しあえるワー
クスタイルをつくるという「5 つの挑戦」
からテーマを選んで挑戦し、その挑戦のプロセス
を称える活動です。初年度は全世界から937 チームがエントリーしました。各地域で予
選を勝ち抜き、最終選考に残った 10 チームが、2015 年 5 月に東京で開催された最終選
考会に臨みました。その結果、上位 4 チームがゴールドアワードに選ばれました。
小集団での改善活動は製造現場が得意とするところですが、総務や人事などの間接
部門からも多数のエントリーがあり、その質も非常に高いものでした。また、日本国内
85%、海外 27%、全世界平均で 61%という参加率の高さに、従業員の自発性とボトム
アップの力強さを感じました。
Annual Report 2015
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トップメッセージ
WOW グローバルアワードは 2015 年度も実施しますが、今年は海外からのエント
リーがさらに増えると予想しています。この活動を続けることによって、50 年先の当社グ
ループのあるべき姿である「化学を超えた『新たな価値』
を創造し、社会やお客さまの期
待を超える『驚き』
を実現する」
に着実に近づいていくはずです。
関連情報 P.39-40
Q6次期の中期経営計画(2016 ~ 2018 年度)に
向けた展望をお聞かせください。
従来の中期経営計画では、現在見えているテーマや課題を基に、3 年先の未来を予測
し、計画内容を立案してきました。そのため、どうしても目先の売上高と利益を目標とす
る計画になりがちで、将来的に会社をもっとこういう形にして、こういう方向へ進みたい
という想いを計画に落とし込むことができませんでした。
そこで、今後 10 年間の事業環境がどのように変わっていくのか。そして、それを基に
して 10 年後に日立化成グループがこうありたいという姿を重ね合わせた「10 年戦略」
を
まずしっかりつくることにしました。そうすれば、10 年後を見据えて最初の 3 年間にやる
べきこと、次の 3 年間にやるべきことが段階的に明確になります。この仕掛けを次の中期
経営計画へ織り込んでいきます。
関連情報 P.39
Q7「事業活動とCSR
の融合」
についてのお考えをお聞かせください。
CSRには社会貢献や環境への配慮という側面もありますが、当社は、グループが持続
的に成長し、お客さまや社会へ継続的に価値を提供できるように、売上を伸ばし、利益を
上げるという好循環をつくっていくことが CSR の根幹だと考えています。また、一度でも
経営の根幹を揺るがすような事態が起これば、2 万人近くの従業員とその家族はもちろ
ん、従業員以外のステークホルダーの方々に与える影響は計り知れません。持続的な成
長を担保する事業のサイクルや仕組みをつくることが不可欠です。
日立化成の第 2 期 CSR 中期計画(2011 〜 2015 年度)
では、
「事業の姿勢」
「会社の
姿勢」
「個人の姿勢」
を推進方針に掲げて取り組んでいます。これを、私が社長就任以来
第 2 期 CSR 中期計画
(2011〜2015 年度)
目標
サスティナブルビジネスを推進し
「世界で通用する企業グループ」へと進化
目標・KPI の登録
三大方針
事業の
姿勢
会社の
姿勢
個人の
姿勢
Annual Report 2015
地球環境に貢献するサスティナブルビジネス
■ サスティナブルエンジニアリングの推進
■ 当社グループ事業活動の地域社会への貢献を
検証(可視化)し、時代に先駆けた価値の創造を追求
誠実な企業経営
■ 対話の文化醸成、情報の積極開示による企業価値向上
■ グループガバナンスの強化、透明な企業経営の推進
世界で通用し社会に貢献する人財集団
■ 持続的発展への全社員の意識改革
■ いかなる状況下でも社会人として誇れる行動を
とれる人財の育成
アプローチ方法
の見直し
第2期
CSR 中期計画
推進サイクル
グループ環境・CSR
会議への報告 (1回 / 年 )
各部門での
実践
トップメッセージ
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進めている3 つの変革、すなわち「事業の変革」
「組織の変革」
「人の変革」
の取り組み
と連動させ、事業活動が CSR そのものであるという考えのもと、世界で通用する企業グ
ループへと進化させていくことを目標としています。
関連情報 P.01
Q8非財務面での目標値はありますか。
多様性、
すなわちダイバーシティは、当社グループの経営戦略の一つです。当社グルー
プは多様な製品と技術を持っています。さまざまな技術を組み合わせる、あるいは融合
することで新しい製品を開発しています。人財面も同様で、新しい地域で仕事をしたり、
新しい事業を興したりするのは、多彩な人たちが才能を持ち寄ることで可能になります。
年齢や性別、国籍を超えて、それぞれの人たちが活躍する場を提供し、活躍できる仕組
みを整えていかなければなりません。
その一環として、報酬制度については、これまでの職能給を中心とした体系から、役割
に重点を置いたグレード給へと変更し、当社および国内グループ会社への適用を開始しま
した。経営戦略を立て、実行に移すための組織をつくれば、どのようなポジションが必要
になるかが明確になります。そのポジションに適した人財を配置することによって、その人
の力を存分に発揮してもらうものです。2015 年度は海外グループ会社へ適用していく
予定で、これによって真の意味でのダイバーシティが実現できると考えています。
2014 年度から日立化成が取り組むべき重点課題(マテリアリティ)
の優先付けをし、
開示しています。次期の中期経営計画では経営目標値の一つとして非財務指標の設定を
検討しています。ダイバーシティを含めてその実施目標を独自の KPI(主要業績評価指
数)
として設定し、達成状況を「見える化」
させていきたいと考えています。
関連情報 P.23、36
Q9最後に、ステークホルダーの方々へメッセージをお願いします。
日立化成は、
「時代を拓く優れた技術と製品の開発を通して社会に貢献すること」
をミッ
ションとしています。
そのミッションの1つは、前述したオープン・ラボを核に、装置メーカーやプロセス・部
材メーカーなどとオープン・イノベーションを推進することによって、次世代の部材・プロ
セスを開発し、新たな価値を生み出すことです。すなわち、さまざまな企業と連携して新
しい価値を生み出すプロセスをもデファクトスタンダード化していくことが重要であると
考えています。
また、グローバル化の加速とともに、日本と海外の区別なく事業を展開していますの
で、特に国内の従業員には外向きの気概を持ち、真のグローバル人財になってほしいと
考えています。それによって、新しい製品を創出して、事業を持続的に成長させ、株主の
皆さまやお客さま、社会への貢献を続けることにつながっていくからです。
日立化成は、事業・組織・人の視点から事業活動を実践し、化学を超えた「新たな価値」
を創造し、社会やお客さまの期待を超える「驚き」
を実現する企業グループへと成長し
続けていきます。
Annual Report 2015