事業承継・ファミリービジネスの風景

事業承継・ファミリービジネスの風景
~同族経営はなぜ継続しなかったのか~
中堅中小企業の会社承継に多くのオーナー、創
業者が悩んでいます。私の法律事務所でも、〝二
代目にどう継がせるか〟〝親族と揉めてしまって
…〟〝古参社員に報いたいが…〟〝なんとか存続さ
せたい〟といった相談が数多くあります。その多
くはもっと早くご相談いただければ違った解決方
法があったのに、と思う事案がほとんどで、同
族・ファミリービジネスの事業承継の難しさを
日々実感しています。このコラムでは私の法律事
務所で実際に扱った事案に基づいて事業承継のポ
イントについてお話したいと思います。
老舗企業が破たんに…
数年ほど前、東京都区部の老舗建築会社Aが経
営破綻しました。A社は創業者である父親の逝去
第1回
にともない相続によって4人の兄弟姉妹が株式を
分け合いました。当初経営は、第三子とはいえ、
長男が承継すると思われていましたが、第一子の
長女の夫が一級建築士ということもあり代表取締
役に就任します。
A社は売上40億円、従業員30人程の中堅企業で
す。創業70年で順調に事業拡大をしていました。
創立者である先代の父親が、著名大企業の初代創
始者と懇意であり、内装等の工事関係業務を一手
に引き受けていました。地元でも有数の建築会社
でしたがバブル崩壊後、主要取引先であるその大
企業が競争入札を採用、しばらくは入札で受注し
ていましたが、やがてその大企業が破綻します。
当然A社の経営状態は悪化しました。本来であれ
ば、その大企業が競争入札に変更した時点で、長
女の夫である代表取締役、経理部長をやっていた
長女がその状況をいち早く看破し、次の手を打つ
べきでした。しかし実際は地元の金融機関からの
融資を受けて、1990年代に入ってからも数千万円
でゴルフ会員権を購入するなど、経営の転換を図
ることなど全く念頭にない放漫な経営を継続して
いたのです。
A社は実は、バブル崩壊前には借入金の合計額
を数倍も上回る預貯金があったのですが、それが
2000年に入ったころには、数億円の債務超過に陥
ります。そんなとき、代表取締役からすれば甥、
先代からみれば孫が、それまで勤務していた大手
建設会社を辞めて、A社に戻ってきたのです。
(つづく)
松村国際法律事務所代表弁護士・第二東京弁護士会所属
大村 扶美枝(おおむら・ふみえ)
米国法律事務所、国内大手渉外系法律事務所を経て現職。中堅中小
企業の事業承継、M&A、企業法務案件を多く手掛ける。中小企業
の経営者と共に歩み、問題を解決することをモットーとしている。
【お問い合わせ先】
〒102-0076 東京都千代田区五番町2-13 林五ビル2F
電話:03-3238-9370(代表)
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