PDFをダウンロード - KAWANO CONSUL 株式会社 河野コンサル

2015
03
新春セミナーレポート
平成27年度
税制改正について
税理士 早川 智之
社長からの提言
新春セミナーレポート
株価評価について
TM パートナーズ 代表取締役 北口 勝也
Kawano’s
Messages
社長からの提言 2015 年 3 月 1 日
Kawano’s
Messages
社長からの提言
会員の皆様いよいよ 3 月春到来です、厳しい中目標値達成を目指
して経営に邁進していることと思います。又河野コンサルを引続きご
支援頂きまして感謝申し上げます。
自民党が衆議院議員総選挙に圧勝し 3 分の 2 以上の議席を獲得し
て強力な与党となりました、これからは立法もスピードが増し新しい
時代に即応した政治が行われる事は間違いないと思います。オーナー
企業のオーナーである会員の皆様方の経営・事業承継両面において
フォローの風、アゲインストの風が吹きそうです、民法・会社法・税
法の改正に耳を傾けて先駆けての対応が大切な年となる事は間違いあ
りません、河野コンサルもオーナー企業に関係の大きい改正に注力し
パートナーとのコワークを万全なものにしながら、事業承継ニーズに
応えて行きたいと思います。昨年は人口減少 26 万人と発表されてい
るように、団塊の世代が 65 歳を超え高齢化の荒波が我国にこれまで
平成27年度
税制改正について
に経験した事のない悪影響をもたらして来ています、中でも事業承継
税理士 早川 智之
の問題は国家の問題となっており継承出来ず閉鎖、閉店がいたる所で
目にし耳にするようになって来ました、縮小化時代の到来です、縮小
化は会員の皆様のビジネスにも少なからず影響が出始めて来ると思わ
れます。先を見据えると後継者の育成・社内人材育成と若返り・財務
内容の改善・後継者へのバトンタッチの準備など先手先手の対策が企
業の生き残りを図るには大切だと考えます。今は変化のスピードが過
去経験した事のない程早い、縮小化時代の流れからあらゆる企業が若
返りを図りながら、凄まじい変化に対応せざるを得ない時代になった
事は間違いないと考えます。
もう一点はオーナーその人が高年齢となり対応せざるを得ない状況
になって来ていることです、その為河野コンサルの会員に於いても急
死・癌等の情報も増えてきています、どうせ引継ぐのであれば元気な
代表取締役社長
内に、そして一回しか無い人生引継ぎで出来た時間楽しみに使おうで
はありませか。会員の皆様の決断と行動を期待します。
2014 年 10 月 31 日 第2回 日経 相続・事業承継フォーラムにて
平成26年12月30日に与党より平成27年度税制改正大綱が発表されました。主な改正の概要は以下のとおり
です。
Ⅰ.法人税
1.法人税率の引き下げ
【改正の内容】
① 法人税率が25.5%から23.9%に下がります。
② 中小法人の所得金額のうち年800万円以下の部分に適用される軽減税率の特例15%が延長されます。
【適用時期】
① 平成27年4月1日以後に開始する事業年度より適用
② 平成29年3月31日までに開始する事業年度まで延長
法人の区分
所得金額
現行
改正後
大法人
すべての所得
25.5%
23.9%
年800万円以下の部分
19%(15%)
19%(15%)
年800万円超の部分
25.5%
23.9%
中小法人
2
河野コンサル
2015.3
早川会計事務所
河野コンサル
2015.3
3
平成27年度税制改正について
平成27年度税制改正について
2.欠損金の繰越控除制度の見直し
【改正の内容】
外国子会社が、その所在地国において、配当を損金に算入している場合にも、日本の親会社が受け取る配
【改正の内容】
① 大法人について、控除限度割合が見直されます(中小法人については改正なし)。下図参照。
② 欠損金の繰越控除の期間が現行の9年から10年に延長されます。
【適用時期】
平成28年4月1日以後開始事業年度おいて受け取る配当について適用。ただし、平成28年4月1日において
【適用時期】
有する外国子会社からの配当については、平成30年4月1日以後開始する事業年度に受け取る配当について
① 65%は平成27年4月1日から平成29年3月31日開始事業年度に適用
適用。
50%は平成29年4月1日以後開始事業年度に適用
② 平成29年4月1日以後開始事業年度に生じた欠損金に適用
5.所得拡大促進税制の見直し
法人の区分
現行
H27.4.1‐H29.3.31
開始事業年度
H29.4.1以後
開始事業年度
大法人
80%
65%
50%
中小法人
100%
100%
100%
3.受取配当の益金不算入制度の見直し
株式の区分を見直すとともに、益金不算入の金額が変更になります。
現 行 保有割合
完全子法人株式等
100%
関係法人株式等
25%以上
100%未満
改正後
益金不算入の
金額
配当全額
【制度の概要】
当該事業年度の雇用者給与等支給額が基準事業年度の支給額より一定割合以上増加した場合など一定の要
件を満たす場合、支給増加額の10%を税額控除できる制度です。
【改正の内容】
この制度の要件である増加割合が下図のように見直されます。
法人の区分
【改正の内容】
区分
当について益金不算入の対象となっていましたが、改正後は益金に算入されます。
区分
完全子法人株式等
保有割合
100%
益金不算入の
金額
現行
改正後
全法人
大法人
中小法人
H27.4.1-H28.3.31
開始事業年度
3%
3%
3%
H28.4.1-H29.3.31
開始事業年度
5%
4%
3%
H29.4.1-H30.3.31
開始事業年度
5%
5%
3%
配当全額
6.住民税均等割の基準となる資本金等の見直し
(新設)
上記以外の株式等
25%未満
配当−負債利子
関係法人株式等
1/3超 100%未満 配当−負債利子
その他の株式等
5%超 1/3以下
配当×50%
非支配目的株式等
5%以下
配当×20%
(配当−負債利子)×50%
【改正の内容】
法人住民税の均等割額を計算する際の基準となる資本金等の金額について、資本金等の金額が資本金と資
本準備金の合計額を下回る場合には、資本金と資本準備金の合計額が均等割額を計算する際の基準となり
ます。
【適用時期】
現時点において不明(税制改正大綱に明記なし)
【適用時期】
現時点において不明(税制改正大綱に明記なし)
4.外国子会社配当益金不算入制度の見直し
【制度の概要】
日本の親会社が外国の子会社の発行済株式総数の25%以上を6ヶ月以上継続して保有していた場合、
外国子会社からの配当について、配当の金額の95%を益金に算入しない制度です。
Ⅱ.所得税
1.国外転出の場合の譲渡所得等の特例の創設(新設)
【制度の概要】
日本に住所又は居所を有しなくなる場合、出国の時に有価証券等を譲渡したものとみなして、有価証券等
の未実現キャピタルゲインに対して、所得税が課税されます。
4
河野コンサル
2015.3
河野コンサル
2015.3
5
平成27年度税制改正について
平成27年度税制改正について
① 保有する有価証券等の国外転出時の時価(注)が1億円以上であ
る者
対象者
② 国外転出の日前10年以内に、国内に住所又は居所を有していた
期間の合計が5年超である者
国外転出後5年を経過する日
までに帰国した場合
国外転出時に保有していた有価証券等で帰国の時まで引き続き保有し
ていたものについては、更正の請求により本特例の課税の取り消しを
受けることができる。
納税猶予分の所得税額に相当する担保を提供し、かつ納税管理人の
届出をした場合、国外転出の日から5年を経過する日まで納税が猶予
納税猶予
される。納税猶予の期限は、申請により国外転出の日から10年を経
過する日までとすることができる。
贈与、相続又は遺贈により
非居住者に有価証券等が
移転する場合
贈与、相続又は遺贈の時に、その時の時価に相当する金額で有価証
券等の譲渡があったものとみなして、譲渡所得等の金額を計算す
3.結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設(新設)
【制度の概要】
父母や祖父母等が、20歳以上50歳未満の子や孫等に対して、結婚資金及び子育て資金を一括贈与した場
合、非課税限度額(1,000万円。ただし結婚資金は300万円)について、贈与税が非課税となる制度で
す。
【適用時期】
平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に拠出されたものについて適用
Ⅳ.納税環境整備
1.財産債務明細書の見直し
【改正の内容】
財産債務調書という形で整備され、提出基準と記載事項が見直されます。
る。
(現 行)その年分の所得金額が2,000万円超である者
(改正後)
平成27年7月1日以後に国外転出する場合、同日以後の非居住者への
適用時期
贈与、相続又は遺贈に適用
提出基準の見直し
(注)
イ 国外転出の日の属する年分の確定申告書の提出時までに納税管理人の届出をした場合 国外転出時の時価
1.非上場株式における贈与税の納税猶予の見直し
【改正の内容】
改正前は、2代目経営者が1代目経営者より非上場株式の贈与を受けて納税猶予制度の適用を受けた場
合、1代目経営者の存命中に2代目経営者から3代目経営者に対して当該株式を贈与した場合、2代目経営者
に対して猶予された贈与税の納税義務が生じました。
る財産の時価が3億円以上である者
② その年分の所得金額が2,000万円超で、その年の12月31日において有す
ロ イ以外の場合 国外転出の予定日の3月前の日の時価
Ⅲ.相続税・贈与税
① その年分の所得金額が2,000万円超で、その年の12月31日において有す
る有価証券等の時価の総額が1億円以上である者
(現 行)財産の種類、数量及び価額
記載事項の見直し
(改正後)財産の種類、数量及び価額、財産の所在、有価証券等の銘柄等
(国外財産調書の記載事項と同様の事項の記載)
過少申告加算税等の
特例
適用時期
財産債務調書の提出の有無等により、所得税又は相続税に係る過少申告加
算税等が加減算される
平成28年1月1日以後に提出すべき財産債務調書より適用
改正後は、3代目経営者が納税猶予制度を受けることを条件に、2代目経営者から3代目経営者に当該株式
を贈与しても、2代目経営者に対して猶予された贈与税の納税義務が免除されます。2代目から3代目への
バトンタッチがスムーズにいくようになります。
2.税務調査におけるマイナンバーの効率的な利用
(新設)
【制度の概要】
銀行等に対して、預貯金情報をマイナンバーにより検索可能な状態で管理することが義務付けられます。
【適用時期】
現時点において不明(税制改正大綱に明記なし)
2.住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の延長・拡充
【制度の概要】
【適用時期】
内閣官房が提出を予定している高度な情報通信技術の活用の進展に伴う個人情報の保護及び有用性の確保
に資するための個人情報の保護に関する法律案に規定する施行日より適用
父母や祖父母等が、子や孫等に対して、住宅取得等資金を贈与した場合、非課税限度額について、贈与税
が非課税となる制度です。
【改正の内容】
平成26年12月31日をもって終了しましたが、平成31年6月30日まで延長するとともに、非課税限度額が最
大3,000万円まで引き上げられます。
6
河野コンサル
2015.3
河野コンサル
2015.3
7
新春セミナーレポート
株価評価について
合意した価格の評価が採用される取引例
裁判所評価・・・裁判所が仲裁等する場合に採用される評価
例:株式買取請求など、いわゆる「揉めた場合」
相対評価・・・利害関係が明確に存在し、交渉の際に採用される評価
例:(外部との)M&A、第三者割当増資
上記が、合意価格を採用されるケースとなります。
客観的に売り手・買い手の利害が対立していることが明白である関係です。
1 月 29 日あべのハルカス、2 月 10 日丸の内
ビルディング(東京)の各会場にて、新春セミ
ナー「株価評価について」を行ってまいりました。
今回は、その際にご来場いただいた会員の皆様
にご説明した内容について、ダイジェストでご報
告させていただきます。
株式会社 TMパートナーズ
代表取締役 北口 勝也
税法通達の評価
恣意的な株価で取引される可能性のある関係において、株価が妥当かどうかの目安とするため国
税庁が定めた計算方式
相続税評価・・・相続・贈与・個人間売買の目安
(財産評価基本通達)
そもそも非上場会社の株価(時価)は?
法人税評価
(法人税法基本通達)
原則:合意した価格=株価
※ただし、国税庁が血縁をベースとした範囲の者の取引は、 恣意的に価格が操作できる関係とみ
所得税評価
・・・法人が関与する場合の目安
(所得税法基本通達)
少数株主評価・・・少数株主の相続・売買の目安
(全通達共通) 持株会 遠い親戚 元役員 取引先 金融機関
なし、通達に定めた株価の評価方法を目安にすることとしている。
ひとつ評価例をご説明します。
世の中で取引されているものと同様に、物の価値は売り手・買い手の交渉のうえで成立したもの
がそのものの値段となります。
しかし、親子などのように利害が一致している関係で、いくらでも良いという恣意的な価格で取
引が成立する場合には、課税の公平性が損なわれるという観点より、国税庁は通達にて株価の計算
方法を定めています。
その点から見ると、非上場会社の株式を取引するのは、大株主であるオーナーが関係することが
• 建設業・資本金5千万円
• 発行済株数 1000 株(1 株資本金 =5 万円)
• 簿価純資産 10.5 億円 (1 株純資産 =105 万円 )
• 時価純資産 15.5 億円
多くなりますので、このケースを筆頭に合意価格よりも通達を目安に取引することが一般的に多く
• 従業員 51 人
なります。
• 配当 2.5 百万円 (5%)(1 株 =2.5 千円)
• 利益 5 千万円(1 株利益 =5 万円)
8
河野コンサル
2015.3
河野コンサル
2015.3
9
オーナー企業の未上場株式の評価
オーナー企業の未上場株式の評価
採用局面
採用評価方法
1 株あたり
時価総額
相続税評価
類似業種× 100%(会社規模による)
(図 1)
28 万円
2.8 億円
法人税評価
小会社方式(図 2)
又は純資産価額
150 万円
配当還元価額
2.5 万円
2.5 千万円
その時の企業・
株主の状況などから裁判所が個別判断
~ 150 万円+営業権
~ 15 億円+営業権
売り手・買い手双方の交渉
~ 150 万円+営業権
~ 15 億円+営業権
少数株主評価
裁判所評価
相対評価
85 万円
8.5 億円または 15 億円
相続税評価・法人税評価(所得税評価)ともに評価方法は下記の 3 通りのみです
① 類似業種比準価額方式
配当比較
同業上場企業株価
×
利益比較
自社配当
上場企業配当
+
自社利益
上場企業利益
簿価純資産比較
×3
+
自社純資産価額
上場企業純資産価額
× 0.5 ~ 0.7
5
( )
自社の
規模による
※自社の実績は毎決算ごとの数値がベースとなります。
上図のように、局面により 5 種類の評価があります。
大前提として、オーナーの純粋な財産としての価値はいくらかという問いがあった場合、自己資本の額
が清算した場合の株主に還元される価値のベースとなり、上記でいうところの 15 億円が株価総額になり
ます。
(清算課税は考慮していません。)
また、裁判所評価にあるとおり、裁判所に判断を任すと思ってもみない資金負担が必要となる場合もあ
② 純資産価額方式
< 相続税評価 >
るため、まずは揉めないことが重要です。
- 負債(時価)- 評価差額 × 40%
資産(時価)
そして、相続税評価額を見ると、下図の通り、会社規模で類似業種比準価額が 100%採用された結果、
発行済株式数(自己株を除く)
1 株 28 万円となっており、実に 1/5 の額になっていることがおわかりいただけるかと思います。
< 法人税評価 >
図1:相続税評価の決め方
会社の規模
- 負債(時価)
資産
(時価)
計算方法
発行済株式数(自己株を除く)
or 純資産価額 大会社
類似業種比準価額 中会社の大
類似業種比準価額×0.9+純資産価額×0.1 or 純資産価額
中会社の中
類似業種比準価額×0.75+純資産価額×0.25 or 純資産価額
中会社の小
類似業種比準価額×0.6+純資産価額×0.4 or 純資産価額
小会社
類似業種比準価額×0.5+純資産価額×0.5 or 純資産価額
※土地等 相評:路線価 法評:公示価格
※資産が突然不良化したりしない場合、毎期利益の分だけ株価が上昇します。
③ 配当還元価額方式
直前期以前 2 年間の配当実績を基に算出され、少数株主が所有する非上場企業株式の評価に際
して適用される価額(配当率 10%であれば旧額面と同額)
大事なポイントとしては
※ 規模は国税庁が定めた業種ごとの総資産・従業員数・取引金額で決まります。
※ 特例会社の場合は別の取扱いになりますが、今回は文字数の都合により割愛させていただきます。
類似業種比準価額は、同業上場会社株価を基礎として、毎決算期の配当・利益・純資産で
変動するという特徴となります。
図2:法人税評価の決め方
時価純資産価額 または 小会社方式(類似業種比準価額 ×0.5 +純資産価額 ×0.5)
10
河野コンサル
2015.3
この特徴を踏まえ、決算期が近づいてきたときに、来期の資本政策について検討しておくと、
円滑な対策の実行につながりますので、事前にぜひ河野コンサルにご相談いただきたいと
思います。
河野コンサル
2015.3
11
2015年3月1日発行 Up to Date 120号 発行/株式会社河野コンサル
〒542-0081 大阪市中央区南船場1-16-13 堺筋ベストビル 12階
オーナー企業の資本政策に特化したコンサルティング会社